第13話 略奪計画
「スプーキー」
ジョン・マクノエンがスキルボールを構えて唱えると、いつもの扉が目の前に現れた。彼は扉をゆっくりと開いた。
「いらっしゃいませ。ジョン様」
いつものようにカウンター越しに出迎えるリッチに、ジョンは手を上げて挨拶する。いつもであれば誰もいない店内だが、今日は数人の客がいた。
「今日は客が居るんだな」
「ひどい言いようですね。それじゃまるで、閑古鳥かんこどりが鳴いている店みたいじゃないですか」
「そうだな。すまない」
リッチが苦笑いを浮かべながら答えると、ジョンも少し笑って謝罪した。
「それより、今日は換金に来たんだが、大丈夫か?」
「拝見しましょう」
ジョンは先ほど手にしていた装飾品を、机へと無造作に広げる。リッチはルーペを取り出し、それらを調べ始めた。
「ほとんどはスチールですが、いくつか装飾がしっかりしている物は、かなりいいものですね」
リッチが装飾品を褒めていると、客席にいた一人が近づいてきた。
「これは、どこかの組織のエンブレムですね。おそらく幹部などの役職に就いている者が持っていたのでしょう」
「あんた、一体誰だ?」
「私はコリー。装飾品などを加工する工芸職人です。横から声をかけて申し訳ない」
コリーは割り込んだことを詫びながらも、ジョンが持ってきたバックルを見つめていた。
「コリーさん。こいつはどれくらいの価値がありますか?」
「そうですね。このバックルでチップ1枚くらいですから、全部でチップ2枚から4枚ほどになるでしょうね」
「左様ですか。でしたらジョン様、これを」
リッチはジョンに3枚のチップを差し出す。
「まあ、プロの相場にケチをつける気はないからな。あと、こいつで38口径の弾とをくれないか。一箱だ」
ジョンが受け取ったチップを1枚差し出して要求すると、リッチは手元から50発入りの38口径弾の箱を取り出した。
「ところで、同口径のリボルバーはないか? できればS&Wがいいな」
「申し訳ございません。私の店では扱っておりませんので、担当の者を紹介しましょう」
リッチは申し訳なさそうにジョンへと伝える。
「そうか。残念だな」
「ところでミスター・ジョン。このバックルは、どこかの組織の幹部が付けていた物でしょう? 私にいい考えがあるのですが」
「なんだい、いい考えってのは」
「終わったら、そのバックルを私に譲っていただくという条件でいかがでしょう?」
「いいだろう。謳ってみろ(※)」
コリーの提案に乗ったジョンは、彼の作戦を聞いたあと、不敵な笑みを浮かべて店を出ていった。
「お帰り、ジョン。換金はできたのかい?」
クラレット・シュナウの店で待機していたガディールが、帰宅したジョンを出迎えた。
「おう。わざわざ待っていてくれてすまねぇな」
「大丈夫だよ。ところで、この後はどうするんだ?」
「奴らが集めた金をいただく。まずは、彼らの集会所を調べようと思う」
「それなら、今キャッシーが見に行っています」
抜かりなく偵察を送っていることに、ジョンは感心した顔をしていた。
「ただ、あのエルフが言っていた通り、回収した後だとしたら、どこにあると思う?」
「こういう奴らは、2パターンの運搬方法を使う。主要道を外れた場所を軽く隠して進むか、主要道で偽装して進むかだ」
「この街に通じる道は、人通りが少ない。軽く隠せば問題なく持ち出せそうだな」
「そうだな。だとしたら、目立つ街道に入る前に積み替えなどをするはずだ。小さな集落か、目立たない場所を使うだろう」
ジョンとガディールは、目の前にある国内地図を見つめた。
「こことかいいんじゃないかしら。主街道から外れた里で、人通りのある街道にも通じているわ」
不意に聞こえたクラレットの声に目をやると、外出着に着替えた彼女が立っていた。
「地元のあんたが言うのなら間違いないだろう。だが、そこへ向かう道がはっきりしない。どこを使うと思う?」
「ここだと思うわよ。細い道で目立たないから」
「なるほどな」
ジョンはしばらく地図を見たあと、持っていたバックルに目をやり、思い出したかのように笑みを浮かべた。
「いいことを思いついた」
「何を企んでいるの?」
「まあ、任せろって」
ジョンはそう言って、ガディールと共にT型フォードへと向かった。
「そうだ。あの若いやつの服を一着貸してくれないか?」
「えっ。ええ……」
クラレットは、店の奥に置かれていたマント(仕事着)を手渡す。
「ありがとよ」
ジョンはそのまま車へと向かっていった。




