第11話 仕掛け
「ところで、ガディール。あなたは、何でうちの店に来たの?」
しばらく話を聞いてくれなさそうなジョン・マクノエンに代わって、クラレット・シュナウがガディールの訪問理由を問う。
「実は、あのパーティーの後、俺を雇っていた雇用主が亡くなってしまってな。行く当てもないから、俺を殴り倒した男の所に行ってみようと思って来たのですよ」
「それで、彼を連れてきた私の店に来たというわけね」
「そういう事です」
ガディールの答えに、クラレットの顔が不安げに曇った。
「あなたの雇用主ってジョウノ市長よね。あの人が亡くなったってホント?」
「いや。あいつは、雇用主のパトロンだ。俺は、『グスフス団』という傭兵崩れの集まりに所属していたんだ。ほとんどが荒くれ者たちだったがな」
「そうだったのね。しかし、あなたの雇用主をやったのは、一体誰なのかしら?」
クラレットとガディールの話を片耳で聞きながら、ジョンは襲撃前にリッチの言っていた「荷物」について思い出す。彼は立ち上がり、自身の車へと戻っていった。
「あら、ジョン。何かあったのかしら?」
クラレットも彼の後についていく。
「荷物って一体何なんだ? コルト以外に何か載せてくれているのかな」
ジョンがバックドアを開けると、ボクシングの賞品である「ボマールの大樹」の苗木が、ごろっと置かれていた。
「おっ。これって、この前もらった賞品じゃないか。リッチの奴も気が利くじゃねぇか」
「あの状況で持ってきてくれたの? ありがとう」
クラレットがそう言って、横から苗木を取ろうと手を伸ばす。
「おいおい。俺がもらった賞品だぜ」
「あなたを引き上げたのを忘れたの? それに、この苗木をあなたが持っていても、何の役にも立てられないわよ」
「だからって、ただで渡すわけにはいかないな。ちょっとは、色を付けてくれないと」
彼の言葉にムッとした顔で店へと戻っていくクラレット。思い切り扉を閉める音に、ジョンは少しビビらされた。
「少し意地を張ったものの……これ、どうすればいいんだ?」
ジョンが目の前にある苗木を手に取って眺めていると、先日絡んできたエルフのガインが、視界の端でこちらを覗いているのに気づいた。
「やばっ!」
慌てて逃げていったガインを目で追いながら、ジョンの顔には、新しい玩具を見つけた子供のような満面の笑みが浮かんでいた。
「なぁ、クラレットさんよ! さっきは意地悪なことを言って悪かったよ」
ジョンがそう言って店に入ってくると、膨れっ面のクラレットが、座った目で睨みつける。ジョンは吹き出しそうな顔を堪え、一つ咳払いをしてから話を続けた。
「これをあんたに渡そうと思う。ただ、少し手伝ってほしいことがあるんだ」
「一体何をさせようっていうの?」
「ついさっき、この前来た荒くれ者を率いていた『とんがり耳』が覗いていたんだよ。あいつら、集金に失敗していただろうから、今日あたりに無理強いしに来ると思ってね」
「それって、私が囮になるんじゃないの!」
流れに気づいたクラレットは、机を叩きながらジョンに吠えた。
「怒るなって。手伝ってくれたら、あいつらを黙らすだけじゃなく、ビジネスも考えてやるからさ」
「ビジネス?」
「まぁ、手伝ってくれたらわかるよ」
クラレットは渋々丸め込まれると、その苗木を受け取った。
「ガディール。お前さんも、暇なら手伝ってくれ」
「お前からの頼みだ。付き合ってやるよ」
ガディールが肩を鳴らしながら立ち上がると、ジョンの顔が少し真面目になった。
「それじゃあ。作戦を教えていくぞ」
その日の夜
月明かり以外の光が全くなくなった夜更け。怪しく動く数人の人影がクラレットの店へと向かっていった。何人かは手慣れた武器を持っており、かなりの殺気を放っている。
「いいか。あのトンチキな服の男が来る前に、店主から奪い取るぞ」
先頭に立つガインが、後ろのゴロツキたちに指示を出した。
「あのアバズレが、あんなに良いものを持っているとはな。ボスもきっと喜ぶぞ」
手柄の大きさを想像してほくそ笑むガインの口元からは、暗がりの中でも白い歯が覗いていた。
「アニキ!トンチキ男が出ていきましたぜ」
夜目の利くウェアキャットが、暗がりを歩くジョンを見つけてガインに伝えた。
「よし。あいつがいなかったら、こっちのものだ。行くぞ!」
ガインを先頭に、ゴロツキの一団が彼女しかいないであろう店へと突っ込んでいった。
「イラっしゃいマセ、お客サン」
中に飛び込んできたガーディンは、目の前にいた、ワイシャツと黒いズボンに身を包んだガディールの姿に度肝を抜かれた。
「オーガだと! 聞いていないぞ!」
「落ち着け! 数はこちらのほうが多い。押し込め!」
ゴロツキたちは動揺しながらも、ガディールへと向かっていった。
その時。
「バン!」
後ろから乾いた破裂音が響くと同時に、最後尾にいたゴロツキが頭から血を流して倒れた。
「いらっしゃいませ。招かれざるお客様」
背後に立っていたのは、帰ったはずのジョンだった。その手には「白銀の相棒」こと、M1905が構えられてい




