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第10話スキルの石と魔法の石

 ジョン・マクノエンがクラレット・シュナウの店に居座ることになって数日が過ぎた頃。


 一人の珍客が彼女の店を訪問した。


 「クラレットさん。オ久しブリデス」


 「いらっしゃいって……貴方はジョウノ市長の所にいた……」


 数日前、ジョウノ・タピオスが開いたパーティーにおいて、ジョンが出るまで10人を殴り倒したオーガのガディールであった。


 「チャンプがココにいるト思ッテ訪ねに来タノデスガ、ご一緒デハないのですか?」


 ガディールの問いに、クラレットが隣のテーブルを指さす。そこには、ガラス玉とにらめっこをするジョンの姿があった。


 「そこニいらっしゃいマシタカ、チャンプ。色々と探シテ回っていたのデスヨ」


 「おお。あんたは、あの時の悪魔か。今は、相手をする気になれないんだ。すまないな」


 「ドウしたんだ?」


 ジョンは、手に持ったスキルボールを見せる。


 「こいつの使い方がわからなくてな。頭を抱えてるんだ」


二日前 «««


 「スプーキー」


 ジョンがそう言ってペンダントを見つめると、しばらくして「潜り酒場スピークイージー」の扉が目の前に現れた。

 彼がその扉を開けると、カウンター越しにリッチが慣れた手つきでグラスを拭いていた。


 「いらっしゃいませ。本日は、何の御用でしょうか、ジョン様」


 出迎えに応えるように、ジョンの体はカウンターの席に吸い寄せられる。


 「落ち着いたから、色々聞きたいんだよ。この『スキル』ってやつについてな」


 「なるほど。でしたら、当店の仕組みについてお聞かせしましょう」


 リッチは、テーブルにあるメニュー表を取り出すと、ジョンに手渡した。


黄金の20年代ゴールデントゥエンティースについて》


当店は、ジョン様のお力になる人物を紹介するために開店しております。

基本は、バーテンダーである「リッチ」が常駐しており、彼の紹介による「スピーキーズ」が協力してくれます。


当店に来店される「スピーキーズ」の皆様は、あなたがいた時代において、優秀といえる者たちを集めております。


ただし、彼らが仕事を行うためには、それに見合う報酬が必要となります。

彼らへの支払いは、「チップ」となります。

チップを入手する際は、リッチに両替してもらうか、彼らの依頼を受けた報酬として受け取ることになります。


また、彼らは常にこの店で待っているわけではありません。

場合によっては、数日会えないこともあるでしょうから、会えた際に必要なものや情報をまとめて入手することが重要です。

もしも会えない場合が多ければ、リッチに言伝を頼むことで、引き継ぐことができます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「俺の能力なのに、金を取るってのか?」


 「私共も慈善活動をしているのではないのですよ。それなりの報酬を頂かないとね」


 ジョンは渋い顔でリッチを見たが、相変わらず何を考えているかわからない表情の彼に、諦めたようにうつむいた。


 「分かったよ。まずはレートを教えてくれ。チップ1枚がどれほどの価値か知りたい」


 「そうですね。ジョン様が今いる世界の通貨で説明しても分からないでしょうから、『ドル』で換算しましょう。大体チップ1枚につき5ドル(この頃の1ドルで2000円ほど)となります」


 「案外するじゃないの! 無一文にはきつい金額だぜ」


 「言われましても、そういう取引ですので」


 苦笑しながら肩をすくめるリッチに、不満そうにカウンターを蹴ってから、ジョンは店を出て行った。


 »»»現在


 「……っていう感じなんだ。俺の助けになるっていうなら、しっかり助けろっていうんだよ」


 スキルボールをぶら下げながら愚痴をこぼすジョンを、ガディールは「何を言っているのか」という顔で見ていた。


 「スキルを使用スルノに、コストを支払ウのは当然デショウ」


 ガディールの回答は、この世界における常識であった。


 「俺のスキルだって、血ヲ支払ウ事デ使エルのダカラな」


 ガディールは、自分の腕を持っていた短刀で傷つけると、垂らした血を固めて見せた。


 「『血石ジャスパー』ト言ウンダ。使い勝手は悪イガ、この能力で戦争を生き残っタンダ」


 ガディールが固まった血をしばらく手元で転がすと、また液体に戻っていった。


 「一定時間を過ギルト、元ノ血ニ戻ルンダ」


 「ほー。それじゃあ、俺が拾われた時に服を乾かしてくれたのもスキルっていうのか?」


 「その点ハ、彼女ノ方ガ詳しいダロウ」


 ガディールがクラレットを指差す。


 「あれは、『錬磨石れんませき』を使ったものよ。大抵の人は、スキルボールみたいなものを持っていないの。その代わりに使うのが、魔法製錬技法で作った『錬磨石』という物なの」


 クラレットは、自分が身につけているペンダントを見せる。真ん中の要石と、両脇を彩る多色な石が着けられた綺麗なものだ。


 「普通の人たちは、日常生活に使うものを、こうやって装飾品として身に着けているわね」


 「《ドライヤー》とか《コンロ》を持ち歩けるってことか。便利なもんだな」


 ジョンは、彼女のペンダントをまじまじと見て呟いた。


 「あなたが持っている物は、この世界に誕生した際か、ニューグ神に認められた時に与えられる特別な物だからね。使えないなんて言わないで、大事にしなさいよ」


 「はい、はい」


 ジョンは再びスキルボールを眺め始める。


 「こりゃだめだな」


 残された二人は、呆れながら彼を見つめていた。

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