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魂粥術師(こんしゅくじゅつし):陰陽六氏とエクトプラズマーズ  作者: 金澤 弥芳


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9/24

9 魂の質量21g=エクトプラズム

病室の窓の外には、陽を浴びて黄金に輝く銀杏の大樹が覗いていた。

12月4日、日めくりカレンダーにメモ書きでバルーン抜去とある。

全身の激痛で、トイレに行けず、オムツを使用していたが、わずかな体動でも顔面がひしゃげる程痛かったので、尿道に管を入れて膀胱に留置し、先につながる蓄尿バッグに溜まる尿を破棄するだけとし、オムツ交換の回数を最小限にしてくれていた。

ようやく、トイレに行けそうなくらいに動けるようになったので、今日尿道の管を抜いてくれる事になったのである。

憂鬱なのは今日も潤子看護師が担当なのだろう。

若い女性患者の場合は女性看護師が手技を行うが、若い男性患者の場合は男女問わない。

男性の羞恥心がなおざりにされている。

これだけ肉食系の女子があふれているのにもかかわらず。

一般的な問題提起をしてみたが、話は少し複雑である。

女の形をした男の潤子が受け持ちNsとなっている。

我那覇病院は産婦人科であるが、多様性枠で入職したらしい。

世間は多様性という言葉が、イビツな印籠となっている。

男も女もゲイも『おネェ』も一定の割合でクズはいるが、多様性という後光を得た『おネェ』は、一定の割合のクズでも、ディスれない空気感をかもす。

場合もある。

感じのいい『おネェ』はいくらでもいるのに潤子は残念な方の『おネェ』なのだ。

うるおう子と書いて潤子。

名前負けも甚だしい。

ガッサガサのゴッリゴリ。

ツインテールの三つ編み、マッチョ、かもめ眉毛、ケツ顎、コッテコテの真っ赤なルージュ。全体的に剃り残し多め。何かと小指を立てる。指毛剛毛。

押し込めた男性ホルモンがバグって咲き誇ってしまったみたいだ。

潤子は日勤も夜勤も常にそこにいる。

そして休みの日も。

呪縛霊のように。

きっとここに本物の呪縛霊がいたとして、潤子が怖くてそそくさと成仏した事だろう。

多分、今潤子はこのベッドの下にいる、彼女の呼吸に合わせてベッドが巨大な横隔膜のように上下している。

寝返りをうちおそるおそるベッド下を覗くと、

「バァ」

「ヒぃ!」

何度見ても新鮮に驚いてしまう。

想定の顔面は脳裏にある筈なのにどうしてだろう。

しかも今日は、誰かに殴られたのか口元が腫れ、歯が1本欠けている。

ひきつってる僕の顔に舌なめずりをして、「んふ。かわい」と呟く。

低音に金切り音のようなものが混じっている。

身震いがした。

言っておくが王騎将軍は大好きである。「んふ」で王騎将軍を想起してしまった方々へ告ぐ。

「烏崑ちゃん、ちょっと汗かいたんじゃない?」

「いや、全然」

「そんな遠慮しないの。あたしが隅々まで皺と皺の間まで綺麗に拭いてあげるんだから。んふ」

と股間を凝視している。

烏崑は身震いし、

「い、いや、大丈夫です。清拭の後の方が汚れた気がするんで。精神的に。それより、潤子さん、そろそろ家に帰った方がいいんじゃない?」

「いいの」

「ハエがたかってるけど、お風呂とかは?」

「そこに飾ってあったユリで脇をゴシゴシやったから臭わないでしょ」

ゴミ箱にユリの花が無惨に捨ててある。

「あたしね、家帰っても受け持ち患者さんが心配ですぐ戻ってきちゃうの。仕事熱心で困っちゃう。まじめすぎなとこがたまに傷、んふ」

ドアが勢いよくスライドされ、血走った目をした女性看護師が入ってきて、

「潤子さん、まだここにいたの?点滴詰めてってお願いしたでしょ、岡野さんの採血は?男のとこばっか入り浸ってないで。クレームのポイントカードそろそろマックスでしょ」

と首を切るジェスチャーをして出ていく。

潤子は頬を膨らませ、

「ブー。ヒステリーな女っていやぁね、烏崑ちゃんまだ若いんだから女性じゃ恥ずかしいわよね」

お前の立ち位置何?

潤子は続けて、

「看護師のあのテキパキ圧は患者を委縮させるんだから。寄り添う気持ちが大事なのに分かってない。ぷんぷん」

その寄り添いが気持ち悪いのだ。

「じゃ、さっそくバルーン抜いちゃおっか」

バルーンは、尿道から膀胱につながっている管の先に水を入れた小さな風船を留置して抜けないようにしているのだが、その水を抜いてしまえば簡単に引っこ抜ける。

10ミリのシリンジがあれば簡単に出来る。

自分でやると必死に訴えたが、

「あたしは息子ちゃんのママの気持ちで面倒みてきたの。烏崑ちゃんがよくても、息子ちゃんには大事な卒業式なんだから」

と、理屈が通じる様子はない。なら早くやってくれと息子を開放したが、つんつん・・・つん・・キャッ・・

「やっぱ自分で(やる)」

「待って」

「シリンジを貸し(貸せこのやろう)・・」

「もうせっかちなんだから。このォ」

「せめてグローブしてくれ」

息子と思い出話でもしているのか、

「うん・・・うん・・え?キャハッあの時ね、だってあの時さぁ、フフフ、」

などと盛り上がっている。

ナースコールか110番か?いやいや精神科ドクターか、

「そうだ、アリス先生にしよう」

と携帯を取り出すと、潤子は慌ててバルーンを抜いて退室した。

アリスは、我那覇病院の院長で、マユの母親である。

僕の姉がマユなので必然的に母親がアリスという事になっている。

アリスの祖先はアイルランドとイギリスだとか聞いた事がある。

常に多忙で、家を空ける事が多かった。

いつも微笑んでいる印象で、優しそうな雰囲気を醸しているが、何となく線引きされているような気がして居心地はあまり良くなかった。

早く自立しようと思ったのも、そんな事が関係しているんだと思う。

潤子の件くらいで気軽に連絡する事は出来ない。

マユの件でも連絡するかどうか迷っている。

マユはあのあと、面会に来る事はなく、ラインすら既読とならない。

家はすぐそこなのに。

医学部が忙しいのはそう何だろうけど。

ほんとにそっちが忙しいのだろうか。

そういえば、手品の師匠のところで、新作を考える時、夢中になりすぎて連絡がとれない時がある・・・・。

今まで、ホントに新作を考えていたのか?

その時に黒づくめとしての活動を?

このところ、マユの事を考えると疑心暗鬼が紐づいてしまう。

何だかモヤモヤする。

家に戻ろう。


烏崑は病衣のまま、中庭に出ると、ギプスをしたイカツイおっさんと、革ジャンリーゼントの青年が日向ぼっこをしながら、鳩に餌をやっている。

産婦人科病院なのに、何でこんなにむさ苦しいのかと思ったが、人外の影響で一般科病床数が足りず、精神科や産婦人科にも患者が回ってくるのを思い出した。

ん?革ジャンの青年がベンチに振り返った時、モーターヘッドのロゴが見えた。

彼もあの時、熊野宇須神社にいたのだろうか。

そして急性期を脱して、ここに転院してきたのだろうか。

声をかけてみると、彼は入院患者ではなくレミーさんの見舞いだという。

レミーさんは、さして大きな外傷などはなかったような気がしたが、まだ入院していたのか。


3階奥の特別室にレミーこと『剛力権三郎』のネームプレートがあった。

半年前、アイドル上がりの女優が出産前に使用していた部屋である。

ガハハハハとドアを震わす声が聞こえてくる。

間違いない。

レミーさんは、破壊王みたいな見た目であるが、僕みたいな小者でも、話しかけに応じてくれると思わせる包容力がある。

大きく息を吸い、ノックをする。

コンコン。

一瞬の静寂のあと、レミーさんとは違うドスの効いた声が分厚く響く。

「まだ懲りねーのか、この野郎。つんぎは、肉片ごと歯ぁ引き抜いて鼻に詰めんだんぞこの野郎!!」

と、ドアがスライドする。

ヌッと凄い剣幕で顔を近づけてきたのは、ピアスまみれで人相の悪いピンク髪のドレッド。

「うぉ!誰だてめぇ」

と、ピアスまみれはのけ反る。

この押しの強いルックス、見覚えがある。

思い出すのと同時に更にドアが開かれ、首元でつながる別のイケメン。

双頭兄弟である。

もう一度説明すると、双頭右がジンで双頭左がマーコ。

ジンはピンク髪のドレッドでツーブロック、入れ墨、ピアス、スプリットタン(蛇舌)とゴリッゴリの感じ、マーコはそのすっぴん。しっかりとした鼻筋がセクシーなイケメン。

「あぁ、おめぇー!!」

思い出したジンは、目を丸くして、

「あん時のぼてくらかし少年ビッチ、だよな?」

それは僕で合っているのか?

「ビッチじゃねーか。なぁ、マーコ、こいつはあん時のビッチだ。な、だから生きてるっつったろ」

と、ジンはテキーラをビンごとあおり、マーコを見やると、マーコは赤ら顔で、

「ふにゃ、へろろろ。よ、よぉ、ビッチ」

と片手を上げる。

どういう仕組みなのか、マーコはミネラルウォーターを手にしているのに、マーコのみ酔い潰れている。

ジンはテキーラをゴクゴクとあおり、

「会いたかったぜ」

と、烏崑を抱きしめた。

近づいてきたとき恐ろしくてパンツが湿ってしまった。

「自尿確認」

「あん?」

「いや」

「悪かったな、この病院、イカレチンポな看護師が出没するんでよ。俺らもおっさんの部屋も出禁にしてんのに、何かをかいくぐって何度でも来やがる。今朝ブチのめしてやったが、懲りずにまた来やがったと思ったら血が上っちまった」

潤子の事だ。歯が欠けていた。

レミーさんや双頭兄弟のジュニアの受け持ちNsになろうと出しゃばったのだろう。

「もしかして、潤子ですか」

「ガハハハハ、お前んとこにも出没したか」

奥のベッドで病衣を着たレミーが座っており、紙パンツがチラと見える。

「出没どころか、住みつかれてましたよ。僕が何も出来ない事をいいことに多種多様なハラスメントのコングロマリットみたいな感じで」

「意味は分からんが、雰囲気は伝わる。ガハハハ」

とレミーは笑っている。

しかし、何だこの部屋は、まるでジャングルだ。

土が敷き詰められ、観葉植物の間に東南アジアの民族像や、トーテムポール、食虫植物、カラフルなオオハシや、サル、アリクイなどが生息している。

レミーは氷の入ったビールに青汁を入れ、アイスピックでかき混ぜながら、

「朝目覚めた時、民族像に紛れて潤子がいつの間にか居やがった。患者のチンコは自分の物だと疑ってやまぬあの不動の心、ある意味モチベーションは人外だ。イヤ、チン害だ。ガハハハ。つまらんギャグだが、それが男のサガ。ガハハハハ」

ジンは、レミーに向かってテキーラの瓶を掲げ、

「それにこの加害者みたいな顔したおっさんが被害者になるんだから笑っちまう」

「ジンが人の事を言えるツラか」

マーコはトロンと充血した目で、

「ヒック、ジンは加害者とゆーより被害者ヅラだよ。ピアスだらだらけで拷問受けた人みたい。ヒヒヒヒ」

この人達仲がいいな。烏崑はついニヤけてしまう。

「良かった」

「あん?」

ジンは視線を烏崑に戻した。

烏崑はジンの目つきが怖いので、レミーに向かって、

「被害者の会のメンバーが他にもいてくれて良かったです。なんだか、脳の皺と皺の間に潤子がたくさん住み着いてる感じで、それがちょっと分散された感じで」

「分散すんな、んなもん。シュファー」

とレミーは銃を発射するような仕草をする。

「なんですかソレ」

「ケルヒャー。皺に隠れる潤子を水圧最強モードで次々と吹き飛ばしてやってるとこだ。ガハハハハ」

レミーは豪快に笑う。

マーコもヒヒヒと笑いながら、手榴弾を投げる素振りで、

「バルサン」

モゾモゾと逃げていく潤子が目に浮かぶ。

レミーは豪快に笑い、烏崑に「そこらに座んな」と、男根の石像を指さす。

「え?潤子の話のあとにコレですか?」

「お、ソレ、チンコか。ガハハハハ。遠慮すんな。潤子に座んな」

「やめて下さいよ」

と言いながら烏崑は仕方なくリュックを下ろし、男根像に座ると、レミーは部屋を見渡し、

「凄えだろ、この部屋」

「むせ返る程の何かを感じます」

「だろ。ジンとマーコにパワー回復グッズをお願いしたら、全国のパワースポットを根こそぎ集めてきやがった」

パワースポットとして有名な出羽三山とマジックで書かれた石畳や、どこかの狛犬や、屋久島のコケや、御神木の枝、出雲大社のしめ縄の一部などもある。

「こんだけのパワースポット集めるの大変だったんだからな」

とジンは得意げ。

「凄い労力だと思いますけど、逆にバチが当たりませんか?」

「何だと!!・・・・確かに」

マーコもピンと人差し指を立て、

「潤子!」

「繋がった。バッチバチにバチが当たってんじゃねーか」

レミーは、オーバーアクションで十字をきり、

「ジン、急いで帰して来い」

「やっべー、盲点だった」

黒猫が横切りニャァと鳴く。

「不吉のオンパレードじゃねーか」

と、一同はガハハハハと笑う。

黒猫は落ちていた手のひら(だい)の人魚のミイラらしきを口に咥えた。

烏崑は黒猫に、

「そんなの食べたら、お腹壊すよ」

と、リュックを探るが、黒猫の口に出来そうなものはない。

たぶんその人魚のミイラ、有名なヤツ。魚の皮と紙、布、綿などで出来た作り物。

「ジン、この人魚のミイラはどこにあった?」

「こんなの持ってきたかな。岡山行った時にマキオがくすねて来たかもしれねぇ」

「どう見ても呪物だろ」

「だけど、エネルギーはありそうじゃねーか。良薬口に苦しみたいな感じで」

「ニュアンスで誤魔化そうとすな」

ガハハハハハ。

何にでも笑いに変換できるレミーさんに呪物も口角を上げる事だろう。

「レミーさんは、とても元気そうですけど、まだエネルギーを欲してるんですか?」

「まぁな、あん時咄嗟に、魂の一部を千切っちまったんだから、そりゃ大変なもんだった。魂殻(こんかく)を保持できずに死ぬ可能性すらあった。少しでも魂を補充せにゃいかんという事もあって色んな物を集めてもらった。まぁ、バチ当たりだが、ここいらのパワーアイテムは確かにエネルギーはある。ジンとマーコには感謝している。完全じゃないが、魂の重量は戻ってきている」

「魂に重量があるんですか?」

黒猫に餌をやっていたジンは片眉を上げ、

「やっぱ、お前ソレ知らないのか?」

と、烏崑の顔をのぞき込む。

「は、はい」

魂粥(こんしゅく)塾にも行ってないのか?」

「はい」

「それで、あの馬力、何もんだコイツ?」

「骨奇形の痛みで運動が出来ない、ただの準看護師です」

「お、おぅ、働いてんのか、高校生かと思った」

「17歳です」

「だよな。しっかし、魂粥塾にいかずにあんだけ出来るたぁ逸材かもしれねーな」

とジンは嬉しそうに烏崑の背中をバンバン叩く。

烏崑はビキンとした痛みをやり過ごしたあと、口を開いた。

「塾について詳しいんですか?」

「まぁな、レミーのおっさんは、高賀茂、俺とマーコは小野の魂粥塾に行っていた。陰陽六氏は知ってるな」

「詳しくは知らないですけど、蓮寺もその一つですよね」

「まぁな、俺らはそこの抜け忍みたいなもんだ。分かるか?抜け忍って」

「ナルトは観てましたから。でも、そんなすんなり辞められるもんなんですか?」

「ある程度のレベルになると、辞めるのは許されないが、俺はそこまでのレベルには到達していない。マーコだけならそのレベルに行ったけど、俺とくっついてるから、情報は制限されてて助かった」

「皆さんは魂粥塾で修行してたから、あんな術が使えてたんですね」

「まぁ、俺はからっきしだけど、マーコは結構すげーよ。なぁ」

「んが?」

マーコはペットボトルをトントンと舌にあて、水滴を落とし、

「ヒック、ジンはほとんど透視術の修行しかしなかったからね」

「畜生、何故か男は透視できるが、女となると雑念で何も見えねー。結局男のチンコしか見えねーの。この能力潤子に500万で売れねーかな」

「潤子に売るくらいなら僕が買いますよ。魂粥術っていったいどういった原理なんですか?」

レミーはジンとマーコとアイコンタクトをし、

「名は何と言ったか?」

「烏崑です」

「烏崑、おまんは遅かれ早かれ知るべき人間だと思う。もはや既にこっち側の人間なのかもしれん、教えよう」

少し空気が変わり、烏崑はゴクリと唾を呑み込んだ。

レミーはベッドの上で座禅を組む。

ロン毛に髭。どっかの教祖みたいだ。

「さっきの魂の重量についてたが、魂の重さが21gというのを聞いた事があるか?」

「いえ、21グラム・・」

「生を終えた瞬間、体重が21g減る。それを魂の重さと言う」

レミーはヘソ下に握り拳を作り、

「ここは、丹田、第二チャクラともういう。女性には子宮がある。魂とは想像の通り、肉体に満ちているものだが、この丹田に『魂殻(こんかく)』という球体がある。体内に満ちている魂、塾では『魂氣』と呼ぶが、人が生を終えると、体内に満ちている『魂氣』が『魂殻』に収束し、『あの世』への門、『太極門』を抜ける。その時、魂の重さが消失する」

「その『魂氣』が術の源なんですか?」

レミーは、アイスピックを、ノーモーションでマーコの顔に投げつけ、尖端が右眼にぶつかり、烏崑は目を背けるが、アイスピックは貫通せず土に落ち、マーコは無傷であった。

「っぶな。ジンだったらぶっ刺さってるよ」

と、真っ赤な顔で怒る。

「だからマーコにやった」

とレミーはニヤリと笑い話し続ける。

「『魂氣』を練る事により身体を硬質化する事は出来る。そして武術に応用する事が出来る」

「そういえば、ノットラレに襲われてる時、ジンさんが硬質化してた」

「おう、俺だって、硬度は別としてそのくらいは出来るし、少しくらいなら放出だって出来る」

とドヤ顔。

レミーは微笑み、

「それを『魂氣術』と呼ぶ。「氣功術」と原理は似ている。だが、それだけでは銃を手にした人間よりは劣る場合がある。魂粥術は『魂氣術』から更に一歩踏み込んだ術だ。『魂殻(こんかく)』という球体の中に収納されている『魂粥』を引っ張り出して術として使用するものなのだ」

「『魂粥』は『魂氣』を濃縮したようなイメージで合ってますか?」

「まぁ、そんなとこだ。『魂粥』とは文字通り、白い粥状のもので、万能物質に変質する事が出来る。西洋ではエクトプラズムと呼ばれている」

「蓮寺の慶さんとか黒づくめが刀のようなものを出していたのは『魂粥』を引っ張り出して作っていたんですか」

「そういう事だ」

「でも、魂は21gなんですよね。あの刀の質量とは釣り合わない」

「まっとうな疑問だ。『魂粥』は『魂殻』の内と外では質量が変化する」

「難しいですけど、そういう性質だと思っておきます」

「うむ。そして『魂粥』は刀として変質して使用する時も『魂殻』と繋がっていなくてはいけない。絶対に千切ってはいけない。『魂粥』の放出などもっての他だ。魂が一定量をきると『魂殻』は球体を保持できなくなり、魂が崩壊してしまう。そして太極門を抜ける事が出来ずに霧散する。だから俺は先の一件で仲間を救おうと頭に血が上って『魂粥』ぶっちぎってしまって、魂が霧散するスレスレのところだった」

「レミーさんも僕も皆平等に魂は21gなんですか?」

「いや、人によって重量は違うと言われている。入塾出来るレベルのやつは少なくとも30gはあると言われている」

赤髪や、木箱の人は、元の量がどのくらいなのだろうか。

「死んだらその重量の魂が、太極門?を抜けてどこへ行くんですか?」

「太極図は見た事があるか?」

「一つの円に黒と白の勾玉(まがだま)みたいな形をしたのが、ウロボロスみたいに描かれてるヤツですよね」

「そうだ、魂が太極門を抜ける時、魂の性質によって太極門は白か黒のどちらかに染まる。白は天国、黒は地獄への扉となり、どちらかに振り分けられる。今お騒がせの人外は、地獄で怪物に変質した魂が、太極門を裏側から開け、逃げ出し、女性の子宮に入り込んだものだと言われている」

スプリットタンの先端を交互にして遊んでいたジンが、レミーの話を引き継ぐ。

「昔から同様の現象はあったが、昨今の人外の出現の多さは異常らしい。人口爆発で地獄のキャパオーバーなんじゃねーの?何て言うヤツもいる。俺も天国に行ける自信はねぇ。マーコを道連れにしてやる」

「ふにゃ」

烏崑は首を傾げ、

「ちょっと待って下さい。何で天国とか地獄とか分かるんですか?太極門の先に行って帰ってきた人がいるんですか?」

とレミーに訊ねた。



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