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魂粥術師(こんしゅくじゅつし):陰陽六氏とエクトプラズマーズ  作者: 金澤 弥芳


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5 双頭の共有物

烏崑は自身の身体について、レントゲンをみながら医者に説明してもらった事がある。

頭部、右前額部には角のようなものが一つあるのみだが、他有棘骨は全身に及んでいる。

まず全ての骨が異様に太く、茨のような形状をしており、それらが神経を刺激しているらしい。

その為、神経を刺激しないよう最小限の動作となってしまう。

しかしその短所を補完するかのように、異様に力が強い。

筋肉量が多いという訳ではないので質の問題なのか。

力試しに公園の鉄棒に力を込めたら曲がってしまった。もっと曲がっただろうが、怖くなってやめた。

勤務している病院では、陽性症状で興奮状態にある患者に筋肉注射を打つため、一時的に抑えつける役割を任せられる事があるが、100kg超級の元柔道選手でも掴まえてしまえば一人で抑え込む事は容易である。

というか、かなり力を制限しないと壊れてしまう。


烏崑は本殿の外で、扉を背に、ノットラレの攻撃に備えている。

意識を失っているロクや生き絶え絶えのレミーや団員達。

緑ゴブリンが一匹でも潜り込めば終わる。

この扉だけは何としても死守しなければならない。

烏崑は、レミーから拝借した銃をぶっ放し、数m先の手綱を手にした緑ゴブリンにの頭部を破裂させるが、ロケット鉛筆のようにもう1匹がひょこっと脳天から上半身を出す。

そして、神経の束の手綱を引っ張り、涎を振り乱し、迫ってきた。

カチッ、カチッ・・・

「アレ?もうないじゃん」

烏崑は慌てて咄嗟に玉砂利をいくつか口に含み、近づくノットラレの緑ゴブリンにプと吹き飛ばし、顔面を破裂させる。

操縦者不在となったノットラレは膝から崩れ落ちた。

割といけるかもしれない。


双頭左のマーコは、右半身を魂粥でコーティングしたジンの重みで動きずらいはずなのに、先ほどよりも伸び伸びとした動きを魅せていた。

左足裏が、超電導磁石のようにうっすらと浮いており、自在に地面を滑っている。

魂粥刀で次々とノットラレを斬り裂いていく。


前方に集中し玉砂利を吐き出す事に集中していた烏崑の背中側から緑ゴブリンがアマガエルのようにぴょんぴょん登り、気づいた時には烏崑の反応が遅れ、緑ゴブリンは鼻の穴に突き刺すように飛び込んできた。

素早い動きが苦手な烏崑の手が間に合わない。

かと思われたその刹那、マーコが魂粥ゴム弾で緑ゴブリンを弾き飛ばしてくれた。

「あ、ありがとうございます」

マーコは綺麗な歯並びを見せた。

マーコは、何というか、才能がある。

マーコは魂粥刀の刀さばきは惚れ惚れとする。つま先から刀の先までが一体となり、いとも簡単にノットラレの首をはねていく。

UFCのチャンピオンを秒殺するレベルのノットラレが無能に思えてくる。

襲い掛かるノットラレの人間離れした速度の蹴りをマーコは難なくかわした。

筈だったが、ジンの白い魂粥コーティングがパッと解け、バランスを崩し、顎に打撃を受ける。

「ジン、ちょっと急に出てこないでよ」

「いや、ちょっと朝の事で思い出してよ」

「いや、今じゃないでしょ」

双頭は何とか態勢を立て直し、ノットラレと打防を繰り返しながら、

「マーコは潔癖すぎんだよ」

ジンの(つばき)がマーコにかかり、

「ジン、唾かかるし」

マーコは左手で顔にかかった唾を拭き、

「ほら潔癖じゃんかよ」

「潔癖とは違う。偽物は嫌いだって言ってんだよ」

と、地面に刺さっていたロープ止めを引き抜き、跳びあがりノットラレの脳天から突き刺す。

ジンはマーコの顔しか見ていない。

「シリコンが入ってたっていーじゃねーか」

「いや、それはない」

「乳首は本物なんだからからいいじゃんか」

「仕方ないだろ、これは生理的にイヤなんだよ」

マーコも譲らない。

「いつも共同作業だって言ってんじゃねーか。もうちょっと自己暗示するなりして興奮してくれよ」

ジンはノットラレにこん棒で殴られるが、

「ってーな。今こっちは大事話してんだろが、ボケ」

ジンを殴ったノットラレの鼻の穴から交互に緑ゴブリンがキュルキュルと楽しそうに出入りしている。

マーコは目の端でそれをとらえると、ノットラレの鼻を削ぐ。露わになった緑ゴブリン2匹はブラを取られたかのように胸を隠した。

マーコはチラとジンを見て、

「いーや、そこだけは無理。本能は一番の上司だからね」

右のジンは2匹の緑ゴブリンのこめかみを爪楊枝で串刺しに連ねる。

2匹の緑ゴブリンは横並びに走って逃げていった。

「もう1回言うが、興奮するのは周辺じゃなくて乳首だろが。そこが本物なんだからいーじゃねーか、クソが」

「いーや、あんな皮膚の伸びきった痛々しい作り物のおっぱいは哀れでしかない。哀れなものにどうやって興奮できる?グレープフルーツみたいに丸々したヤツなんて不自然すぎて吐き気がする。小さきゃ小さいなりに魅力はあるもんなのに。身体改造っていうのか、おでこにシリコン入れて角を作ってる奴見たことある?」

「あっけど」

「あれと同じだよ。あんなの見てどう興奮すりゃいいのか分からない」

「頭硬すぎ。そんぐらいの硬さが股間に欲しいだけなのに。クソが」

ジンは何故か落ちていたゴルフのドライバーでノットラレの股間をフルスイングすると剥きだしの脳から紫ゴブリンが飛び出す。

「あ、当たりだ・・」

とマーコが呟き、

SAR(ポケモンカードの)。じゃなくて、こればっかりは協力しねーと、ポコチンは1本しかねんだから頼むよ、クソが」

ジンは上空から落ちてきた紫ゴブリンをドライバーでかっ飛ばす。

「・・・・・結構飛んだな」

「遠くに飛ばしてーんだよ、クソが」

「まだ、その話する?」

「大事な話だぞ。セックスレスで悩む妻とおんなじ気持ちだぞ。クソが。それで離婚しようか悩むんだかんな」

「お別れは物理的に無理でしょう」

「だろ、だからこそ、協力してくれって。迷いの森を早く抜け出してーんだよ。クソが。この娘のおっぱいは大丈夫って思っても、すぐシリコンだって言うしよ。このシリコン警察が。どう見分けりゃいいんだよ、クソが」

とジンは泣きべそをかく。

「普通に分かるでしょ。それでも分かんなけりゃ腕上げたり、横になった時見てみなよ。超絶不自然なんだから」

「それが分かんねーんだから」

「じゃあ、第六チャクラでも使って」

「馬鹿か。パソコン上のセクシー女優に使って何が分かるんだよ」

「だったら、全部僕が選べばいいじゃん」

「ふざけんなよ。マーコ極端なブス専じゃん。もー、一人だけじゃ海綿体は完全体にならねーんだから頼むよ。クソが。いっその事、チンコにシリコン入れようかな」

「共同の所有物なんだから」

銃声がして、ジンの右後方から銃弾が頬を貫通した。

ジンは青筋をマッチョにして、

「今大事な話してんだつってんだろ」

振り向きざま発砲者を探すが、間近にノットラレのうじゃうじゃが迫っており、身動きがとれなくなっていく。

「うじゃうじゃクソが。ビーチフラッグみたいに1本のチンポを取り合うのにケリをつけなきゃなんねーのに。クソが!ウォー!」

ノットラレに飲み込まれていく双頭兄弟。


烏崑は地蔵モードで、眼球のみを動かし、玉砂利を吐く。

このウジャウジャにで双頭は見えなくなってしまった。

増殖していくノットラレ達は、本体の月面人外を守ることが本能的に組み込まれているのだろうか、じわじわと月面人外の元へと大移動している。

キリがないので、扉に害をなすと感じたノットラレに対してのみ玉砂利を吹き出し頭頂部の緑ゴブリンを潰していく。

のび太が、銃の腕前だけは一級品である事に親近感を感じる。

実に地味な仕事でシュールだが、当の本人は一所懸命である。

ノットラレ達を見ていてふと疑問が湧いた。

見渡す限り、ほとんどのノットラレの眉から上の頭骨は切り取られ、緑の脳を露出している。

少しサイバイマン(ドラゴンボールの)っぽい。

それはいいが、月面人外に頭骨を切り取られたのは一部の筈で、ほとんどのノットラレは口などから乗っ取られている。

操縦の関係上、緑ゴブリンが内側から頭骨を切り取っているのだろうか。

人外に理屈を考えるのはナンセンスなのかもしれないが。

烏崑は急激に込み上げる胸騒ぎに左を向くと、女の顔がゼロ距離にある。

烏崑がのけ反ろうと反射するも、女はすかさず、スプリットタン(ジンと同じく二又の舌)を、烏崑の鼻の穴に引っ掛け固定される。

両鼻の穴にぬるりと入り込んだ舌は、焼き魚とアルコールが混じったようでいて生臭い。

ウッ・・・

目を見開くと女の眉より上が切り取られていない。

ノットラレじゃあない?

烏崑は女を引き剥がそうと、肩の向こうの髪を引っ張ってみる。

ズルリと頭骨のついた頭頂部が落ち、掴んでいた髪の下に重みを感じ、取り落とす。

烏崑は咄嗟にのけ反ると、鼻の穴に引っ掛かっていた女の舌が外れた。

女の眼窩からドロリと緑の液体がこぼれ、脳のてっぺんから緑ゴブリンがピョコと半身を現す。

ウォー!!!!!

烏崑は女の脳天に指を突っ込み、喉元で緑ゴブリンを捕まえ、引きずり出し、ブチュと頭を潰す。

あっつ!

体液に触れる小さな煙が出て、咄嗟に地面に捨てた。

ふと顔を上げると顎を外し、下顎を揺らし両手を挙げたノットラレ達が津波のように襲ってきていた。

ワァッ!!

腕や肩、腹などを噛まれるが、外部の痛みと内側からの激痛。

この数数数!

烏崑は必死に緑ゴブリンを身体から引き剥がし、踏みつぶし、吹き飛ばす。

体内の有棘骨が神経をギッタンギッタンに傷つけ、激痛に眼球の毛細血管が千切れ、両目が真っ赤になり、紅い涙が滴った。

覆いかぶさってくるノットラレ達。

もうダメか・・

諦めの言葉が浮かびかけたその時、またもや黒づくめAが烏崑の前に割り込み、白金(はくきん)の光とともに烏崑周囲のノットラレを数十匹吹っ飛ばす。

「何故中(本殿)に入っていない。バカなのか?」

と黒づくめAは背中越しに語気を荒げる。

「何故僕を助けてくれる?やっぱりマユなのか?」

黒づくめAのフードの中を覗き込もうとするも、烏崑を背中で押し、本堂の分厚い引き戸を後ろ手に開け烏崑を踵で押し込み、

「中でバリケードでも作ってろ」

と、乱暴に閉める。

ボイスチェンジャ―が乱れ、その隙間にマユの声が混じっているような気がした。


本堂の中は、オレンジ色の電球に照らされ、動物というよりは静物となったモーターヘッド達、レミー、ロクが横たわっている。

本堂の弱々しいうめき声に混じり、外で黒づくめAがノットラレ達を蹴散らしている音が聞こえる。

烏崑は両足の痒みのまじった激痛を感じ、見ると、

びっしりと緑ゴブリンがしがみついている。

キュルキュル

「グウワァ!!」

彼らと目が合うと同時に散り散りになる。

ここで一人でもノットラレると終わる。

烏崑は口に残っていた玉砂利を発砲するが、素早く緑ゴブリンは避け、ロクのシャツの中に潜りこんだ。

烏崑は激痛に歯を食いしばり、しゃがみ込み、ロクのシャツの中に入った緑ゴブリンを引きずり出そうと、シャツの中に手を入れ、まさぐるがすばしこく捕まらない。

「ッてぇ!」

噛みつかれた。

「動くなこのやろう」

更にまさぐり、グミのような感触。

「捕まえた」

と思ったが、シャツの端からゴブリンが出てくる。

「え?」

ロクの潤んだ目が見つめている。

「ロク、大丈夫か?」

「痛い」

「え?」

バシッ

烏崑はロクに頬を叩かれる。

「あ、いや、ゴメ」

叩いたロクの手には緑ゴブリンがいる。

キュルル。

烏崑はゆっくりとつまんでいたロクの乳首を離す。

緑ゴブリンはロクに握られ、親指をカジカジ齧っている。

「どうする?これ」

と、半身を起こし、力を緩める。

「強く!ガッツリ握って離さないで。ホントヤバいから。酸が出るから、床に頭押し付けて」

ロクは烏崑の言う通りゴブリンの頭を床に押し付けると、烏崑は落ちていた拳銃の角で押しつぶす。

ロクは嫌な顔をして、

「コレ、何?」

「説明はあと。こいつら全部潰さないとヤバいから」

烏崑が目を走らせると、モーターヘッドメンバーの口元に滑り込む緑ゴブリンを見つけた。

「ヤバッ」

烏崑は前のめりになるが、間に合わない。

ゴキュッ。

閉眼していたモーターヘッドは本能的に開眼し緑ゴブリンを嚙みちぎると、シュワと口元の一部が緑にただれた。

烏崑は安堵し、

「この緑ゴブリンは、個だとモブキャラだけど、人に寄生するとバケモンみたいな力を発揮する」

ロクは何かを感じているのか、じっと見ていた柱の上の陰から、両手を広げた緑ゴブリンがロクの顔面目掛けて跳び降りてくる。

咄嗟にロクは魔貫光殺法のようにして指先を緑ゴブリンに向けると魂粥弾が緑ゴブリンをとらえ、破裂させる。

「え?」

烏崑は口をあんぐりさせ、

「そんな事できるの?」

「術の初歩だよ、あの黒づくめ達には効きやしない。あいつらは?」

「外でラスボスみたいなヤツと戦ってる。ヤツらでもあのクレーターお化けには歯が立たないみたい」

「ヤツら相当出来る筈だけど」

「あのゴーレムが規格外すぎんのかもしれない。それに外は緑ゴブリンにノットラレた人、(ノウ)()ラレ・がウジャウジャ増殖していく。どうしようもなくて、慶さんが呼んでくれた蓮寺の応援を待っているところ」

(ノウ)()ラレ・・・」

「一人でもノットラレるとここは終わる」

と烏崑は全身をセンサーにし息をひそめる。

「相性しだいだけど、イケるかも」

ロクは目を瞑り、数秒後・・・

「見つけた」

ロクは手で銃をつくり、指先が発光する。

ギャピッ

連続的に指先が発光し、緑ゴブリンの悲鳴が続く。

「あと、2匹」

「ロク、すっげーな」

「少しだけど、ママが教えてくれたから」

「才能の塊じゃん」

「ホントにこれは大したことないんだよ。ママが本格的に教えてくれる筈だったけど、いなくなっちゃったからね」

「どこ行ったんだろう」

「さぁね、術を使えるって事は陰陽六氏のどこかに所属していた可能性はあると思うだよね」

ロクの指先の発光に続いて、緑ゴブリンの悲鳴が二つ続く。

「オゥ!すっげ・・・。だから蓮寺の塾受けたんだ」

「魂粥塾に入れば母さんにいつか会えそうな気がしてっていうのもある」

「ロクのその能力で母さん探せないもんなの?」

「母さんにチューニング出来ればいいんだけど上手くいかない。それにブルーマーは基本閉じてるらしい」

「ブルーマー?」

「能力が開花した人の事。ま、色々あるみたいだけど、瞬間的に母さんの存在を感じる事があるから、どこかで生きていると思いたい。そう信じてる」

と母の存在を感じるように胸をおさえた。

「あの、ロク、何て言うか・・・さっきはゴメン」

「何が?」

「あ、いや、変なとこ触って」

ロクは顔を赤らめ、俯き、

「痛かった」

「ゴ、ゴメン」

「痛かった!!」

「ゴメン」

「もうやめろよ、この話」

ズガダン!

本堂の大きな揺れとともに、重厚な引き戸が内側に飛んできた。

人外の本体が勢いよく倒れて扉を吹き飛ばしたのである。

ロクは飛んできた扉を、右腕のみでガードし、踏ん張るも勢いを抑えきれない。

ロクの両足が浮いたその刹那、烏崑に支えられ、扉を押し倒した。

月面人外は起き上がると、足元のノットラレ達を踏みつぶし、ドシドシと地響きを鳴らし慶と黒づくめ達の元へ戻って行った。


本堂の天井が部分的に崩れ落ちていく。

上空では、切れ目なくおぞましい程のカラスが赤焼けの空を埋め尽くしていた。

境内にカァと鳴く声が多重に響いている。

低空を飛行するカラスの頭部は緑色である。

よく見ると頭骨は切り取られ、緑ゴブリンが操縦している。

もしかして全部のカラスがノットラレとなっている?

「地獄かよ?」

ロクが呟く。

「ロクがいるからかそうでもない」

「え?」

「何でもない」

なんか恥ずい事言ってしまった。

烏崑の呟きにロクの両目がほころぶ。


境内はノットラレで溢れていて、ノットラレの頭上でノットラレが舞っている。

まるで音楽フェスでファンの頭上を人が流れるかのようにノットラレが流れていく。

双頭兄弟も流れていた。あっち側に擬態しているのだろうか。

ジンはフォーと声を上げていた。


1匹のカラスが烏崑めがけて急降下してきた。

キュルル。

ロクは床に刺さってあったアーミーナイフをまさぐり引き抜き、操縦していた緑ゴブリンの頭頂部へ振り下ろす。

キュピー!

しかし、2匹目3匹目とカラスが急降下し、ロクが腕でガードした隙に手を噛みつかれアーミーナイフを取り落とす。

カラスも人と同様、ノットラレとなるとアクセルがべた踏み状態となり、異様な速度と荒々しさで襲い掛かる。

刃物と化した嘴が、ロクや烏崑の皮膚を斬り裂いていく。

双頭兄弟はそっち側ではないとバレたか、ジンの頸動脈が斬り裂かれ、血が噴出し、とっさに抑えるが、新たなカラスの矢を防ぐたびに噴出する。

明らかにジンがマーコの足を引っ張っている。

「烏崑、足元」

ロクが鋭く叫んだ。

地面にウジャウジャといる緑ゴブリンを踏みつぶそうにも上から下から切れ目ない攻撃にどうしようもない。

緑ゴブリンは2人の身体を這い登ってくる。

烏崑とロクは背中に這いつくばるウジャウジャを潰してやろうと勢いよく背中から倒れんだ。

ギャピピー!

ロクは素早く膝立ちとなり、タイピングでもするかのように緑ゴブリンを潰し、襲い掛かるノットラレの急所に打撃を与えていく。

ロクはギアが上がり、速度が人ではない。

「ロク、すっげーな」

「魂氣を回せば、このくらいは烏崑も出来るようになる。大事なのは、魂粥を回せるかなんだ」


ロクは烏崑の手を引き、立たせるもノットラレが幾重にも覆いかぶさってきて、再び倒れ込む。

烏崑は顔周りの緑ゴブリンを潰したいが、激痛で思うように腕が動かない。

「クソッ、(緑ゴブリンを吐き出し)この感情が強さとイコールなら!こんなクソみたい器を自由に操縦することが出来たら!クソッ」

ロクだけでも守れないのか。

こんなクソみたいな自分はどうだっていい。

「ロク、逃げてくれ」

ロクだけは・・。

ノットラレカラスは烏崑の顔前で羽ばたき、右前額部の突起を突つき、羽ばたく。

追い払おうにも身体がいう事をきかない。

もうダメ・・か・・。

「諦めるな、烏崑!お前も蓮寺でしなきゃいけない事があるんだよ!」

ロクが必死に烏崑周りの緑ゴブリンとノットラレを剥がしている音が遠のいていく。


薄れゆく意識のなか、耳元で緑ゴブリンの悲鳴が同時多発的に響く。

キュピャー!


紅いぼんやりした光景。


次第に焦点が定まっていった。

紅い炎をまとったカラスがハラハラと落ちてきている。幾千も。

そして身体を蠢く緑ゴブリン達は緑色に発火し、次々と気体になっていく。

烏崑の左目の横を通る裸足の人。袴が揺れている・・。

烏崑がその人の背中を目で追うと、ノットラレの頭部を踏みつけ駆けていく。ノットラレ達の緑の脳が次々と発火していった。


双頭は周囲の燃えるノットラレを掻き分け立ち上がった。

マーコは、その人の背中を目で追い、

「蓮寺のエクトプラズマーか」

「おせーよ」

と、ジンは呟き、二人は同時にフッと意識を失い、バッタリと倒れる。

蓮寺のその人は立ち止まり、巨大な炎を操り、枝分かれした炎が次々とカラスを呑み込んでいく。

その人は黒蓮の印が大きく描かれた木箱を背負っていた。




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