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魂粥術師(こんしゅくじゅつし):陰陽六氏とエクトプラズマーズ  作者: 金澤 弥芳


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14/23

14 眉間に刺さった注射器が揺れている

「クソッ、どいつもこいつも」

タケルはテポドンのような速さで会長の取り落としたAEDを拾い戻ってくる。

烏崑の最も憧れるスピードという奴をタケルは持っている。

蓮寺久麻野宇須神社で無双したあの野獣モードが狂おしく欲しい。

烏崑は点滴の準備を始め、「生食は・・」と呟くと、

じじぃとはばばぁ達はビシッとよしおの股間を指さす。

「違う」

次にビシッとタケルの股間を指さす。

「生殖器じゃなく、点滴の生理食塩水だバカ」

タケルはAEDを烏崑に投げ、片足で心臓マッサージしながら、生食のボトルに点滴ラインを接続し流れるような手技でよしおの腕に駆血帯を巻き、肘の内側に留置針を入れ、点滴を全開にして落とす。

烏崑はよしおの胸にAEDのパットを装着する。

タケルはAEDが心臓の動きを解析している間に素早くズボンをはき、機械音の指示を老人達にハッキリと伝える。

「よしおに触れんなよ」

タケルのこの場慣れした感じは何だ?と首を捻る。

「医者ですか?」

「この齢の医者がいるかバカ。忍びだバカ。シリンジと18ゲージ」

タケルに言われたものを渡す。

タケルはボスミンのアンプルの蓋をピンと弾き飛ばし、

「ボーッとしてんな。酸素入れとけ」

烏崑がバッグバルブマスクでよしおの口に酸素を押し込む。

「お前こそ何モンだバカ」

「ひよこの准看護師です」

「なんだよ本職じゃねーかバカ」

「まだ卵の殻がついているひよこなんで」

「チッ、使えねー、てめぇ塾生か?」

と、ボスミンを点滴の側管から注入し、

「さっさと3分タイマー入れろバカ」

この人は『でやんす』のように語尾を『バカ』とする人なのだろうか。

そっちがその気なら。

烏崑は3分のタイマーをスタートさせ、

「魂粥塾の試験には落ちたんでやんす」

「お前の年齢であの下らない試験で落ちるぐらいなら才能ねぇ」

「タケルさんも塾の新人なんでやんすよね」

「俺らは訳あって入塾が遅れたが、俺らからしたら5歳児レベルの試験だ、クソ」

「俺らって、お仲間がいるでやんすか?」

「俺らは伊賀の最後の3忍だバカ」

「伊賀の忍者ですか。漫画みたいでやんすね」

「魂粥術だって漫画みたいなもんだろ、クソ野郎」

「確かにそうでやんすね」

「そう。忍術も元を正せば魂粥術から派生している、バカ」

「忍術以外にも魂粥術を改めて学ぶ必要性を感じたという事でやんすか?」

タケルは、心臓マッサージをしていた右足を止め、

「どうでもいいがお前さっきからなんだ『でやんす』って鼻につく」

「自分でも辞め時を探っていたでやんす」

「はん?」

「はん?」

タケルは舌打ちをし、

「お前、齢いくつ?」

「17才です」

「同じじゃねーか」

「え?」

烏崑は、よしおの心臓が気になり、

「し、心臓マッサージ」

「はん?」

とタケルは心臓マッサージを足で再開する。

烏崑は咳払いをして、

「伊賀のお友達も年齢は近いの?」

とため口にしてみる。

「友達じゃねぇ、腐れ縁だ、藤林楽々(らら)は1個上で、伊賀最後の女だ。俺の子孫を残さなくちゃいけねぇ。服部玉臣(たまおみ)は俺と同じ。変人幸せクソヤロー。奴らは、今頃、大城組と赤嶺組を制圧している筈だ」

「みさきばぁさんの刺客が失敗に終わって終わりじゃないの?」

「馬鹿野郎。認知症チーゴナーには、能力が発動しないように催眠がかけられているが、ヤクザ共は、お互い、催眠術師を雇って、認知症チーゴナーのロックを解除し、お互いんとこにカチコミをかけようとしてる。南北それぞれ現役時代にヤベー、チーゴナーがいるから、そいつらを覚醒させられたらトンでもねー事になるから迅速に制圧しなくちゃならねー。実力的には俺がそっちに行くべきだが、楽々(らら)が、逆に被害が甚大になるからこっちへ行けっつーから仕方なくこんなくだらねー事してる」

「北棟担当の塾生はいないの?」

「甲賀のクソ共は獄獣の方に行きやがった。ド畜生!上の連中は俺ら伊賀の使い道を、間違ってやがる。どう考えても俺らはここじゃねー。獄獣を駆逐する最前線に割り振るべきだってのに。ボケカスどもが」

タケルは心臓マッサージを放棄し、救急カートを蹴り飛ばす。

烏崑はタケルに替わってバッグバルブマスクを押し、心マに戻る。

タケルの怒りは収まらない。

「クソ。こんなろくでもねーじじぃのろくでもねー(ともしび)にかかずらわっている時に奴らがマグレで活躍してやがったら、こんの蘇生したじじぃをぶっ殺しに来てやる、あーどちゃクソバカバカしい」

と、頭を掻きむしるが、「クソッ、どけろ」

とタケルは烏崑を押しのけ、心マを始める。

「蘇生に失敗したら、楽々に何言われるか分からねー。早く起きやがれ」

とタケルは、心マの合間によしおの頬をはたき、乳首をツネる。

「タケルは獄獣を殺った事は?」

「ったりめーだバカか。子犬や金魚レベルの獄獣もいる。ランクHであればお前だって処分できる」

「そんな分類がされてるんだ」

「そんな事も知らねーで、魂粥塾とかよく口に出せんな」

「だってまだ入ってないし」

烏崑はAEDの電子音声の指示に従い、スイッチを押す。

ドン!

タケルは心臓マッサージを再開し、

「いいか、ランクDまではだな、獄獣と拳銃を持った成人男性を戦わせて、何人いれば倒せるかってのを目安にしている」

「実際の統計?」

「バカ、AIのシミュレーションに決まってんだろ」

「そっか。トマトさんが変態したのがランクCとか言ってたな」

モーターヘッドが変態中のアカヤドク2型を駆除した件である。

「ランクC以上は一般人が手を出しちゃあまずい。俺は邪魔が入ったがランクCをあと少しまで追い詰めた事がある。すなわち俺は六獄レベルにある」

「六獄ってのはランクCと同等なの?」

「ランクCを一人で倒せるレベル」

「そんなに凄いの?」

「見れば分かるだろ。この天才にしか出せないオーラ。だのに・・だのに・・だー(頭を抱え)、100匹の獄獣なんてクッソチャンスなのに、なんでこんなどーでもいいじじぃの生き死になんて。時間の無駄だ。あーもうやめた」

2本目のボスミンを注射器に吸っていたが、投げ捨てる。

「へ?」

タケルの投げ捨てた注射器の先端がよしおの眉間にぶっ刺ささり、ビーンと奮える。

「チーゴナー達の前で正式にランクC以上をぶっ殺してくる」

タケルは踵を返し、徐々に速度を上げていく。

「あ、いや、このじぃさんは?」

「知るか?そんなこたぁ無能な暇人がやれ」

「おい、ちょっ」

タケルは行ってしまった。

よしおの眉間で注射器が揺れている。

烏崑は仕方なく心臓マッサージを続けるが成し遂げる自信は皆無だ。

不安が苛立ちへと変わっていく。

何なんだよ。世の中変なヤツばかりなのか。それとも引き寄せの法則がこじれてこんなんなったのか。

はるとは、よしおのチンコを描いている。

世の中、本当はまっとうなヤツがたくさんいるのに、僕の周りだけ変なヤツで固められているのか。

僕が動けば、僕を中心に変なヤツらも一緒に団体で動くのか。

よしおの眉間で注射器が揺れている。

バッグバルブマスクを2回押し、心マを続ける。

1,2,3,4・・・・・

ピッ・・ピッ・・

モニターに目を移すとよしおの心臓が動いている。

「え?」

よしおはパッと目を見開くと、パチクリし「おう、坊主世話んなったな」

ガバッと起き上がる。

眉間の注射針が、秘孔でも突いたのか。

よしおはコトが終わった男子のように、ズボンを履く。

何事もなかったかのように。

股間を描いていた『はると』が慌てて、

「ちょ、ちょっと今描いてるんだから、履かないでよ」

とズボンに手をかけると、よしおはその手を払いのけ、

「それ何に使うんだよ」

「だから遺影ですよ」

「勝手に殺すなよ、生きてんだろ」

「せっかく書いたんだから死んで下さいよ」

「は?その紙はデスノートか」

「じゃ、せっかく書いたこれどうするんですか」

「知るか老害め」

「酷くないですか?ツーサイズ盛ってさしあげたのに」

「ふざけるな。葬式で遺影にチンコだったら、受付に『18禁』の表示でも貼るのか?それに、参列者がよしおの本体がチンコだったと勘違いする。付属物にのっとられる『よしお』ではない。だよな、小僧」

「はぁ・・」

何の話をしているのだ?

よしおは、はるとをシッシッと手で払い、

「ところで今日は何をやらかした?」

ホントに別人のようだ。

さっきまでホントにチンコに乗っ取られていたんじゃないのか?

よしおは伸びをしながら、

「ほいで何があった?」

「えぇ、みさきさんに蓄尿バッグを鎖鎌のように振り回して・・」

「またあのばばぁに手をだそうとしたんか。よしゃいいのに。んで、みさきちゃんは無事だよな」

「みさきちゃん?」

そうか、多分この人は魂粥塾でみさきさんと一緒に修行した仲間なのかもしれない。

だが、赤嶺組にみさきさんを返り討ちにするよう送り込まれた。

「あのババァのこった」

「元気というか元気の向こう側というか」

「そうだよな。無事じゃない訳がない。俺っち、ボケると誰彼構わずチョメチョメしようとする。昔はベッピンだったから分かるが、今はアレだぞ。よしおのバカ。チョメるなら早紀ちゃんとか、ヒナちゃんとか狙えよな。よりによってみさきちゃんとかありえねぇ。どーにかしてるぜ。だが失敗に終わって良かった。失敗した自分を褒めよう。ブラボー」

と拍手し、

「お、こっちは無事か」

と蓄尿バッグを引っ張り、

「ちなみに、チョメる時、このチューブはピッタリ薄くなりつつ、いい感じの凹凸になる特注だ、ブラボー」

と拍手する。

烏崑は、蘇生の為に散らかした救急カート周囲をアピールするように見渡し、

「よくこういう状態になるんですか?」

よしおは首をコキと鳴らし、

「1日23時間57分は認知症だからな」

3分間を除いてチンコに乗っ取られている。

「3分間は自分として活躍できるんですね。ウルトラマンみたいだ」

「おうよ、この3分間が重要なのよ」

「その重要な3分間は何をするんですか?」

「昼寝」

「え?」

「昼寝」

「え?」

「ほんじゃ、おやすみ」

よしおは部屋へ戻っていく。

よしおの眉間で注射器が揺れている・・。

・・・・・。


 


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