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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
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EPISODE 92「Carve it! The beat of the bullet(刻め!弾丸のビート)」

財団HANDの残党によって捕らえられた妖を救出するべく音を操る妖狩エージェント雲雀と、重力を操る妖狩エージェント琥珀がクルーズ船へと乗り込んだ。


雲雀は単身で突っ込んで残党たちを倒していく。


「もう一度言うぜ?俺はかーなーり強い!」


雲雀はブーツからサバイバルナイフを取り出して、相手の背後に回って頸動脈ごと突き刺して絶命させるという残虐な方法で倒す。


それでも敵が大勢迫った時、雲雀は突然手を叩いて合わせた。


「ドォォォン!!」


その直後、残党集団の足元が大爆発を起こして木っ端微塵に砕け散った。

雲雀は音を操る「“音撃ムジーク”」という術式は漫画のオノマトペのように口から発せばその通りの事象を起こすことができる。

切る時の「ズバン」や爆発の「ドォン」などだ。


「世界は俺の思うがままだ!」


雲雀が残党たちと戦っている間に琥珀は捕まっている妖たちの檻を壊して逃がした。


「あとで特異課のボート呼んであげるから、みんなはここで固まってて!」


すると、反対側からはライフルを持った特殊部隊のような装備を身に纏った残党たちが現れた。

琥珀が気づいた時にはすでに一斉射撃を開始していた。


急いで術式を発動し、銃弾を目の前で止めた。そして全て跳ね返した。


しかし今の一瞬の集中力で妖力を消費しすぎた。

その時だった、一発の銃弾が琥珀の肩を撃ち抜いた。


その場にいた妖たちは驚愕した。

いくら超人的な視力を手に入れていたとしても弾丸が肩を貫いたところを確認できなかった。


すでに弾丸は床にめり込んでいたのだ。肩には風穴が空き、遅れて血が溢れた。

琥珀は膝をついてしまい、右腕が上がらない。


敵の位置を探るために、琥珀は腕を抑えながらも辺りを見渡した。

すると、天井近くの手すりからスナイパーライフルの銃口が見えた。


しかし違和感があった。

ライフルの銃口は自分と絶対照準が合わない位置から出ていたのだ。

普通は真正面から狙えば当たるが、横から撃っても絶対当たるわけがない。


「どうなってるの…?」


しばらくして雲雀の元にもスナイパーの凶弾が襲いかかる。

しかし、自称最強を語る雲雀はそれを軽々と回避した。

雲雀は全ての音が分かる絶対音感。銃に触る音すらも騒音の中でもこの耳に届く。


「おめぇは弱いからすぐやられんだよメス猫。余計なことしねぇで全部俺に任せておけばいいんだよ!」


そしてまた一発発射された。

雲雀は止まって耳を澄ませ、軌道を感じ取ろうとした。


弾丸が当たる瞬間に雲雀は身体を動かして回避に成功。さらに三、四発が発射された。


(たく、一体どこから撃ってやがる…狙撃手は横を向いて撃っているというのに…あ?)


雲雀は頭上に何かを見つけた。

そして「なるほど。」とニヤけて顎を触った。


雲雀が頭上で発見したのは小さな機械。四つの隅にプロペラが着いており、宙に浮かんでいる。

まるで後に開発されて民衆に広まるドローンのようだ。


すると、ドローンは突然高速で回転し始めて、中央に空いた穴から四発の弾丸が四方に発砲された。

四方の内には琥珀の元へと飛んでいく。


速すぎて弾丸を重力で止めることなどできなかった琥珀に防御するなど到底無理な話だ。

雲雀は舌打ちしながら高速でナイフを投げつけて琥珀を弾丸から護って、自分の元へと飛んできた弾丸はスレスレで回避した。


ナイフは弾丸が食い込みながらも受け止めて、砕けてしまった。


「この俺様に銃で勝とうとはな…なんておこがましい奴だ…。」


雲雀はそのまま歩いてドローンの真下に立った。


「おい、隠れてないで出てこいよ。俺はどこから撃っても歓迎するぜぇ?それとも隠れてないとまともに敵も撃てないへっぽこか?」


すると天井から舌打ちが聞こえて、スナイパーが姿を現した。

片目に白い眼帯をつけた男であった。


「さすがは最強の妖と持て囃されているだけはあるな…妖狩エージェント:『獏』!我らが財団の恨み…貴様らの命を持って晴らさせてもらう!!」


「俺に勝てると思ってんのかぁ?その無謀、俺が受け止めてやるよ!」



          「『獏』、“武装”!」



雲雀の妖影ゴーストは悪夢を食らう幻獣を模した『獏』。

そして幻獣は銃へと変形して雲雀の右手に装備された。


「偶然だなぁ俺も狙撃手だ。」


「チッ…行くぞ『風霊シルフ』!」


スナイパーの妖影ゴーストは『風霊』。“武装”状態では妖精のような可憐な姿ではなく近代的なドローンとなる。


スナイパーは雲雀の方ではなく、ドローンの方へと四発撃った直後リロードした。

弾丸はドローンの穴へと吸収され、また高速回転を始めた。


「これがアイツの術式か…おい『獏』、コイツ何秒で殺せるよ。」

『うーん、2分ってとこかな?』


「やっぱそれくらい掛かるか…じゃ、ちょっとビビらせてやるか!」


雲雀はスナイパーに向けて、自分の妖力を見せつけた。

天井を貫くほどの桃色のオーラが立ち昇った。

スナイパーは冷や汗を流した、それは何故か。

雲雀の妖力には底が見えないからだった。


雲雀は生まれつき妖として生を受けた。

その際に、尽きることの無い底なしの妖力をまるで神からのプレゼントのようにもたらされた。


幼少の頃からその力に苦悩していた。

何もしていなくても周りから雑音が聞こえて止まない。小さな音でも耳の奥にこびりついて離れなかった。


それでも姉と鴉丸、そして風雅たちが自分を庇い、受け入れてくれた。

どれだけ憎まれ口を叩こうとも、疎ましく思ったことなど一度もない。鴉丸には信頼を置いていた。


雲雀は財団HAND随一のスナイパーに銃口を向ける。


「食らえよ、音の弾丸…刻めビート!ぶっ飛ばすほど…シュート!!」


トリガーを押すとシリンダーが回って、「“音の弾丸”」が一発発射された。

このスナイパーからしたらそんな弾丸一発程度など照準に目を合わせながら回避することは可能。


しかしこの弾丸はただの弾丸ではない、自動追尾弾だ。

一発目がスナイパーの身体を貫通した。

だが出血はせずに体内に激痛が走った。それも立てないほどの。


「この弾には俺が今まで聞いた音が詰まっている。撃たれたものはその衝撃に襲われる…それこそが俺様の“音撃ムジーク”!!

もう一発くらって泣き叫べよバカがぁ!」


さらにもう一発と発砲してスナイパーを追い詰めようとする。

しかし、高速回転するドローンが残っていた。


そこから四発発射されたが、雲雀は背後にも四発放ってドローンから発射された銃弾を破壊した。

弾丸は当たった際にアメコミの効果音のような音とフォントを表示する。


スナイパーは当たる寸前に回避して弾丸は壁に当たって砕けた。


「一度は自動追尾弾とやらに肝を冷やしたが…その銃は形状から見て六連式のリボルバー。

俺への攻撃で二発、俺の弾丸を撃ち落とすのに四発使った…これで貴様の武器は無意味になったな!ハッーハッハッハ!」


しかし、いつの間にかスナイパーの片耳が撃ち抜かれ、壁に引っ付いていた。

痛みは遅れてやってきた。


「ぐあぁ!!貴様ぁ…弾薬はとうに使い切ったはずでは…!」


「は?何勘違いしてんの?俺の弾丸は全て俺の妖力で作られている…ここでおさらいだ、俺の妖力は?」


「底のない無限…まさか!」


「そう!妖力が尽きない限り弾丸は生成可能だが俺の妖力は“無限”!よって作れる弾丸も無限だぁ!!」


スナイパーの動揺に合わせてドローンも挙動不審な行動をし始めて、雲雀がドローンに向かって一発撃った後、『猫又』を“武装”した琥珀によってドローンは切り裂かれた。


「よくもやってくれたわね…片目野郎!」 


琥珀は重力を駆使して縦横無尽に動き、“紫の茨”を伸ばしてスナイパーを拘束してから地面に叩きつけた。

彼は琥珀に向けて発砲しようと爪で銃口を切り落とされてしまった。


「トドメは俺のもんだメス猫!「“音撃ムジーク”:幻想曲ファンタジア」…!」


雲雀が遠方から弾丸を放つと、途中から二発の弾丸に分裂し、琥珀の身体を透明になって貫通して、スナイパーの心臓と頭に命中し、音の衝撃と風穴を空けて琥珀より先に仕留めたのだ。


「よし、きっかり二分だ。」


「こんのクソガキ!アタシに当てる気か!」


「当てたぜ?貫通したから良かったじゃあねぇか…。」


雲雀はポケットからキャンディを取り出し、包みをほどいて口に放り込んだ。


「やっぱアイツ大っきらい…ベーっだ!!」



EPISODE 92「Carve it! The beat of the bullet(刻め!弾丸のビート)」完

          次回 第93話

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