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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
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EPISODE 91「Dance Music Revolution(舞と音楽の革命児)」

風雅たちが新たな勢力に対する力を身につけるために修行している傍ら、琥珀は懐かしいが苦手な人物と再会する。


編み込んだ赤髪にギターのピックのようなアホ毛を持つ彼の名は“雲雀ひばり”。

海外へ遠征していた妖狩エージェントの一人。

左手の中指に「7」の数字が刻まれている。


琥珀は怪訝そうな顔で雲雀に帰国理由を聞き、さらに警戒する猫のように腰を落としてゆっくりと雲雀の周りを動き始めた。


「久しぶりだなメス猫。復帰してたんだな…一年ぶりか?」


「誰がメス猫じゃい!なんの用よ…ボスなら亡くなったわよ…!」


「んなことはわかってんだよぉ!

おっさんの命が止まる音がこっちまで“聞こえた”からな…。それより姉貴の病室はどこ。」


「あぁ天音さんならそこの角を曲がって…ってなんでアタシがアンタなんかに説明しなけりゃならないのよ!?」


「ニャーニャーうっせぇなぁ…発情期でも来たか?お前も来いよ俺に道案内することを許可してやろう。」


「なんて傲慢…!」


そう、琥珀が彼を嫌うのはルックスとかではなくそのどこまでも他人を舐め腐った傲慢な態度。

全てにおいて自分がナンバーワンだと思っている節があり、座右の銘は「天上天下唯我独尊」である。


彼は琥珀に嫌々ながらも姉の天音がいる病室まで案内した。

琥珀はコンコンとノックしたあとにドアを開けた。


「天音さぁん、愚弟が来ましたよー。」


「誰が愚弟だ。姉貴…来たぜ。」


天音は眠そうな目をこすって久々に会った弟の顔を見ると慈愛に満ちた笑顔を浮かべた。


「あら雲雀ちゃん、久しぶりね…元気?」

「まぁな…。」


(そ、そんな…あんな憎たらしい雲雀が天音さんの前ではこんな塩らしく…まぁそうか身内の前だしねぇ、でもありえない!?)


「おいメス猫、何ジロジロ見てんだぁ?出てけよ…姉貴との久々の再会なんだよ。」

「あーはいはい。出てきますよーだ!べー!」


「もう雲雀ったらまた琥珀ちゃんにイジワルなこと言ってるの?メッよ。入れて上げなさい。」


姉の命令にだけは従うしかない傲慢な男はすぐに塩らしい態度になって琥珀をそこに居座らせた。


20分ほどの時間を経てお見舞いが終わった。

雲雀は八雲邸に繫がる作戦室の椅子に腰掛けていた。


「なにアタシのことジロジロ見てんのよ。」


「お前、次のミッションに使えそうだな…他の連中は出払ってるし、お前の術式は利用しやすい。」


雲雀は円卓の上にあるリモコンを動かして、プロジェクターから空間に投影した。

そこに映ったのはかつて壊滅した憎き財団HANDのマークと、大海原を進む豪華客船の二枚の写真だった。


「今の俺のミッションは、おっさんが遺したものを完了させること。

財団HANDはまだ潰れちゃいねぇ、残党はクルーズ船を偽って術式に覚醒していない妖を捕まえて実験を行うつもりだ。そうなる前に叩き潰す!」


「アンタの頼みってのは解せないけど財団を潰すためならアタシも行くわ。で、場所はどこ!」


「サンフランシスコだ。」

「はにゃ?」



  サンフランシスコ 午後7時(日本時間午前11時)



ワープドアで高層ビルの扉からサンフランシスコに到着した二人は夜の海を進む豪華絢爛なクルーズ船を発見した。


「こんな遠くからでも見えるってすごい船ね…。」

「目立ちたいんだろ。」


「で、どうやって行くのよ。」


「わざと捕まる!」

「えぇ!?」



          クルーズ船 船内



「ふん、簡単だったな。」


二人は船に乗るために正装をしたついでに妖であることをあえて暴露し、財団職員だったその船員たちはすぐに二人を捕まえて他の妖と同様に檻に収監した。


外見は絢爛で、カジノやオークションなどと富豪のための娯楽で満ちあふれていたが、ひとたび深部に潜ればどす黒い悪の巣窟の顔を覗かせた。


辺り一面物悲しい殺風景な光景が広がり、8つほどの鉄の檻がポツンと置かれているだけだった。

まるで倉庫である。


「ほぉ…この俺さまをこんな鉄の塊に閉じ込めるとは…無礼なやつだな。」

「言ってる場合か!」


「そこ、うるさいぞ!」


と職員の一人が鉄の棒で雲雀の入った檻を思い切り叩いて黙らせた。

その音を聞いた瞬間、今まで飄々としていた雲雀は首にぶら下げたヘッドフォンを握って耳を塞いだ。


「ったく…汚ぇ音だぜ!琥珀!」


「はいはい。」


琥珀は術式「“超重力”」で簡単に鉄格子を曲げて脱出。雲雀の檻も曲げて彼を解放した。

そして彼女は捕まった他の妖たちにも声を掛ける。


「みんなは必ずアタシが助けるからもう少し待っててね!」

「おい、そこはアタシ“たち”にしてくれよ?」


音を聞きつけて財団職員たちが一斉に駆けつけた。


「何者だ貴様ら。」


「何者だと…?てめぇらに付けられたこの数字、忘れたとは言わせねぇぞ!?」


雲雀は中指を立てて「7」を強調し、さらに琥珀の服をめくって脇腹に刻まれた「8」を見せた。


「へにゃぁ!?何すんのよ変態!」


「その番号…まさかナンバーズか。」

「なんでこいつらは表情変えずに淡々と流すの?バカなの?」


まずは三人の職員が電撃を発する特殊警棒を持って立ち塞がった。

雲雀は無言で琥珀の前に立って正装を特殊防護服へと変化させた。


「おいおい、お前ら俺を倒す気かよ?できるわけねーだろバーカっ!!」


「ちょっと、大丈夫なの…?」

「たかが雑魚だろ?5秒で終わらせる。」


雲雀はヘッドフォンのボタンを押して音楽を流した。そして軽快に動きながら5秒以内に倒すと宣言した相手に近づいていく。


「死ね、妖狩エージェント!」


「いいかオッサン、俺はかーなーり強いぞ!」


男は警棒を振り下ろすが、そこには何もなかった。

気づいた時には雲雀は背後に逆さまの状態で浮いていた。


「3…2…。」


そして男は後から実感した。

警棒を避けられた際に、頭を踏み台にされて背後に回られていたことに。


「0だ…“音撃ムジークズバァン”!!」


雲雀が手をナイフのような形にして、斬撃の時に発せられる効果音を叫ぶと、男の背中が切り裂かれて地に伏した。


雲雀の術式は音を操り、全ての音を支配する能力。

名は「“音撃ムジーク”」


雲雀に付けられたコードネームは妖狩エージェント:『獏』。

悪夢を喰らい、自由気ままに生きる幻獣の名を冠している。


「さぁ、次は誰が俺に食われたい!!」



EPISODE 91「Dance Music Revolution(舞と音楽の革命児)」完

           次回 第92話

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