EPISODE 90「I am there for you, beyond the difficulty of confronting you.(向き合った試練の先に私はいる)」
謎の男・ボスにより「“不死”」を奪われた挙句、絶望の淵に落ちそうだった凱を龍我は拳で救おうとする。
互いの覚悟と強さを高めるために二人は拳をぶつけ合う。
二人はそれぞれの妖影を“武装”して、戦う。
「どうした凱くん、あんたの力ってのはそんなもんか!?」
「うるせぇ!俺の本気はこんなもんじゃあねぇぞ。てめぇだっていつも“本気”出してねぇくせに!怖いのか?本気でやるのが…。」
「…!、別に怖くない、いつだって全力だ!」
互いの拳がぶつかる度に火花が散る。凱も龍我も血肉湧き踊る戦いに興奮が抑えられない。
「龍我くん、こう言うの何て言ってたっけ?!」
「おう、久しぶりの祭だよなぁぁ!」
凱は大地を操る術式「“仁王”」で地面から土で作られた拳を複数召喚して龍我に攻撃を仕掛け、対して龍我は水を操る術式「“流転”」で異界の川から水の弾丸を作って、土の拳を撃ち砕いていく。
しかし、凱は自ら川に入り、龍我の懐まで迫っていた。
さっきの拳はデコイ、全ては龍我に近づくためだ。
凱は術式の能力で手足に大地のエネルギーを吸収し、パワーアップ。
地に着いていれば、浅い水面でも吸収可能なのだ。
「そう来たか!」
龍我の腹に凱の拳が命中した。血を吐くと同時に、龍我も拳にミニ龍を纏わせてガントレットのような形にして、凱の眉間に食らわせた。
「水はさぁ…どんな形にもなるんだぜ?!」
「やってくれたなくそガキ…!」
両者狂ったように微笑みながら吹っ飛んだ。凱は川の上にある岩に激突、龍我は川底に沈んで気絶した。
一方、風雅はアスカにとある頼み事をしていた。
「頼むアスカ!俺を鍛えてくれ!」
「どうしたんだ急に…。」
「俺はもう今までの“武装”は使えない…このままじゃあいつらとは戦えないんだ。だから、あんたの「“形態”」ってやつを教えて欲しいんだ、頼む!」
風雅は土下座をしてまでもアスカに頼み込む。
アスカは「そこまでしなくていい。」となだめて彼を立たせた。
「なぁ頼むよぉアスカ師匠。激辛ラーメン奢るからさぁ。」
そう呼ばれたアスカの脳内には電撃が走った。
そして少しだけ頬を赤らめ、挙動不審な動きを始めた。
「し、師匠か…うん、いい響きだ。
よかろう、君の強化に協力しよう!」
「ちょろコイツw。」
二人は作戦室の横にあるトレーニングルームに入り、そこで特訓をすることにした。
そしてプロジェクターを起動して、辺り一面を荒野へと変えた。
「風雅、まず手始めに君の“武装”を見ておきたい。」
「お、おう。」
風雅は『神狼』を“武装”するがヒビ割れており、なんとか形を保っている程度だった。
「やはり完璧には治っていないか…風雅、君に必要なもの、それはズバリ“勇気”だ。君の勇気を俺に見せてみろ!」
アスカは刀と翼を同時に“武装”して、風雅と戦う。
風雅はボロボロの装甲を腕に纏ったまま戦うことになったが、勇気を見せるべく臆せず立ち向かう。
拳に風を纏って狼型のオーラを飛ばす「“疾風弾”」を使用するが、翼で軽々と回避され同時に炎を纏った刀で斬りつける。
「あっちぃ!」
「風は炎を強化する。君の能力は根本的に俺と相性が悪い。そしてはっきり言っておくが君に“勇気”はない!」
「何だって師匠!どういうことだよ、さっきと言ってること破綻してんじゃあねぇのか?!」
「君をやる気にさせるための煽りだ!」
「チッ。」
拳で責めることにするが、ボロボロにひび割れた今のガントレットではいつもの拳とさほど変わらない。
アスカでも軽々と受け止めることが出来た。
「君は幾度となく己の妖影に身体を奪われかけている。それは君に勇気が足りないからだ!思い出せ、覚醒のきっかけを!」
風雅は幼い頃、財団HANDの研究所から鴉丸と共に逃げ出す際、財団への恐怖と怒りによって術式「“疾風”」に覚醒し、
妖影である『神狼』には「力を寄越せ。」と強引な取引をして覚醒した。
「君は未だに『神狼』とあの日に恐怖している。
いいか、“勇気”とは内なる恐怖を受け入れ、我が物とすることだ!!
本来術式と武装の覚醒は、恐怖を克服し覚悟と勇気を持たねばならない。しかし君は半ば飛び級のような形で覚醒してしまったんだ。」
「だから俺だけ遅れていたの…?」
「純粋な術式だけで今まで戦い抜いていたのがすごいと褒めざるを得ない。
こうなると、君の修行相手は俺ではなさそうだな。」
「あいつに聞けってか…!」
「その方が俺より答えに近づけるだろう。」
アスカは腹パンで風雅を無理矢理気絶させて、その場に寝かせた。
そして彼は暗闇の空間へと放置された。
前にも味わった深海のような雰囲気。下には崩壊した街が沈んでおり、いくら泳ごうとも上に上がることは出来ない。
このまま沈んでいくかと思いきや突然暗闇が晴れた。
だが思っていた光景ではなかった。恐怖を克服しきれていなかった時に悪夢でよく見たあの日の東京の景色だった。
「またこの景色か…。」
『何だよ、また来たのか!?』
風雅の目の前には『神狼』が立っていた。が、いつもと違ってどこか寂しそうだった。
『やっと俺に向き合う気になったか…風雅。』
「何だよお前、また俺の身体奪おうってのか。」
『チゲぇよ…何故お前はいつも知らねぇ他人のために命を張れる、知らねぇ奴の笑顔のために死ぬ思いしてんだよ!』
「簡単な事さ、人間の笑顔と平和を守る…それが俺の戦う理由だ。」
『やっぱり…お前ら(妖狩)みたいな他人のために力使ってる奴らは簡単に支配できねぇから大嫌いだ!』
『神狼』は爪を伸ばして全身に風を纏い始めた。風雅も臨戦態勢に切り替えて、翠緑色のオーラを纏った。
『今度こそ殺してやるぞ!八雲 風雅ぁ!』
「やっぱそのテンションが似合ってるぜ!
俺はお前を…“恐怖”を受け入れて自分の力にしてやる!!」
アスカは刀を振るって自分も修行にはげんでいた。
ふとした時に寝ている風雅を見ると苦しそうな顔をして呻いていた。
「頑張れよ風雅…俺も共に強くなる。俺たち妖に必要なのは、良い意味でも悪い意味でも恐怖を我が物とすること。それと、強くなろうとする想像!」
場面は変わって異界の川で気絶している両者にも、妖影が現れた。
龍我には自由奔放で無邪気な正確の『青龍』が顔を出した。
蒼い鱗が全身にあり、中華服のような衣装に龍の顔を持った亜人だ。
『やっほー!久しぶりだネェ。』
「お前か、なんの用だよ…。」
『からかいに来ただけだヨ。身体奪わないだけマシでショー?
君はボクという恐怖を力に変えタ…もうボクにどうこうする義理はないヨ。』
「ほんとにからかいに来ただけなんだな…。」
『うん、でもー…君は自分の力に恐怖しているネ?本気で戦うのが怖いんだ。』
「違うオレはいつでも本気だ!」
と声を荒げると、『青龍』は一瞬で耳元まで移動しており、狂気を孕んだ優しい声で囁いた。
『ウソつくなヨ…ボクは君であり君はボクダ、隠し事なんて無駄無駄。
君は全力を出せば『神狼』より強いんだヨ?こだわって力を隠す必要はない…隠すくらいならこれからその全力を強くすればいいのサ!』
その言葉に衝撃を受けた。“全力”をさらに伸ばして強くすればいい。
最強を目指す彼にとって助言のような一言だった。
一方の凱は再び黒い鎧を纏った亜人『玄武』と遭った。
『貴様、絶望を無くす気か?』
「俺はもう絶望しない、恐怖は完全に俺の物だ!」
覚悟を決めた器の顔を見た『玄武』は手を叩いて喜び、彼を称賛した。
『そうだ、その意気や良し!!やはり人間は面白い!期待しておるぞ、お前の人生の結末を!ではまたこちらもお主が全力を出せるように尽力しようではないか!強くなれよ凱よぉぉ!!』
その豪快な見送りによって凱は目を覚ました。
同時に龍我も目覚めていた。
凱は頭部から出血していたが、不死ではないため治らない。龍我は口から吐血しても微笑んでいた。
「恐怖と共に強くなる男」と「恐怖を自分の力にした男」。
二人は顔を合わせると再び笑みが零れ出てしばらく笑った、山にこだまするくらい大きな声で笑った。
そして互いに言い放った。
『てめぇぶっ殺す!』
その頃琥珀が特異課本部をぶらついていると、彼女は誰かに声を掛けられた。
「よぉ、久しぶりだな。」
「げっ、その声は…。」
彼女の背後から声を掛けたのは謎の少年。髪は赤く、後ろ髪は編み込まれていて肩に付いていた。
見た目は琥珀と同世代くらいの少年で彼女に舐め腐った態度をとっていた。
「あ…あ、あ、あんたは!“雲雀”!!?」
「相変わらずブスだなぁ、メス猫。」
EPISODE 90「I am there for you, beyond the difficulty of confronting you.(向き合った試練の先に私はいる)」完
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