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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
シーズン2(旧)

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EPISODE 89「Jet black despair.(漆黒の絶望)」

怒りと後悔の中爆弾魔を倒した凱。

しかしその直後、彼らのボスと思われる全身に包帯を巻いた男が現れた。


「不死の術式をもらう。」などと言われ、攻撃に出るが圧倒的なパワーでただの手刀だけで凱の身体は切り裂かれ、二つ目の術式である「“不死アンデッド”」が奪われた。


大雨の中重傷のまま放置された凱は身体から灰が零れ始め、徐々に崩れていく。

消えかける意識の中、男の声が聞こえた。


「本来二つ持っていることが間違いなんだ…『玄武』、お前は言うなればバグだ。そのバグを俺が正した、あばよ。」



凱は目覚めた暗闇の中で…


身体は自分から動かせないが、何かに動かされている。

そして目の前には、黒曜石のような鎧を身に纏った堅牢な亜人が彼の前に立っていたのだ。


「お前さん…もしかして『玄武』か。」


『いかにも、ワシはお前さんの妖影ゴースト『玄武』だ…二つ目の術式をまんまと奪われた挙句、今のお前さんは死にかけている。』


「らしいな…それより俺は…何も守れなかったことが一番悔しい…目の前で助けを求めている奴らがいたのに俺は何もできなかった!」


凱は暗闇の空間で動けぬまま涙を流した。

すると『玄武』は鎧で見えないが口角が上がって、凱の事情を聞いた上で笑い出した。


『そうだその顔だ!ワシはお主のその絶望しきった顔が見たかったのだ!』


「お前…お前いったい何なんだよ!」


『言ったであろう妖影ゴーストと…いずれはお主の身体と精神を奪い、全てを支配してやる…。』


「兄弟も言ってたが、ほんとお前らいい性格してるよな…!」


『お前さんたちの一つ一つの絶望の積み重ねが、我々を育て、力が増していくのだ!さぁ、もっとワシに絶望した顔を見せておくれ…!』


「俺たちは…妖狩エージェント…たとえ絶望しようとも、必ずまた這い上がる。お前たちの好き勝手にはさせねぇぇぇぇ!!」


凱の身体から橙色のオーラが立ち昇り、暗闇の空間を照らし始めた。

そして彼を呼ぶ声が聞こえた。


『絶望しても生き続けるのか…?』


「生きるしかねぇんだよ。あばよ!」


まぶたの向こう側に光を薄く感じる。眼球が動いた時、凱はゆっくりと目を開けた。

まだ視界がはっきりしていないが、目の前には風雅や花がいた。


「兄弟…花子…?」


そして、突然目の前にペストマスクが近寄ってきたのでぼやけていた視界ははっきりして、凱は飛び起きた。


「あっ、凱さん!?椿先生凱さん起きたぁ!!」


「起きたはいいけど、寝起き一発目にその顔はねぇだろうがナユタ!!俺の心臓止める気か!?」


「ごめん。死人みたいな顔してたから…あっ、私たち死んでたわね。」

「妖ジョークやめて、ブラック過ぎるから。」


花が椿を呼びに行ったことで、彼はすぐに起きた凱の元へと駆け込んだ。


「凱くん、大丈夫か!」


「あぁ…椿さん…俺、どうなったんだ?」


「ナユタが体が裂けた君を見つけてここまで運んでくれたんだ。そして私が術式で治した。どうだ、それ以上の負傷はないと思うが…。」


「…先生、メスをとってくれないか。」


椿は凱の要望を疑問も持たずに聞き入れ、メスを持ってきて凱に手渡した。

すると、凱はメスで自分の腕を切りつけた。


「何をやってるんだ凱!」


「黙ってろ兄弟…。」


いつもなら術式で自動で治療されるはずだった。

しかし、傷は何秒経っても治らないし、血も止まらない。


「痛い!治して先生!」


椿はすぐに腕を治したが、みんなは顔をしかめた。凱は「やっぱりか…。」とため息をついた。


「やっぱりか…って何があったんだ凱。」


「俺は、ミッションの途中で…包帯野郎に術式を奪われた。だから俺はもう不死身でも何でもない…。」


失意と後悔、そして己の無力さを思い知らされることとなる凱。

病室の外では、龍我が話を聞いており、「つまんな。」と一言吐いて去ってしまった。


その後特異課では全妖狩エージェントに包帯を巻いた男の情報を開示した。


翌日花は作戦室の冷蔵庫からまたプリンを盗ろうと忍び寄る。

しかし、いつの間にか隣にはナユタがいて、花を覗いていた。


「あれ、前にもこんなことが…。」


「その、プリン…頂戴。」


花はまだナユタの黒ずくめとペストマスクに中々慣れないから、恐る恐る近づいてプリンを渡そうとする。


「あまり近づかないで…感染うつしちゃう。花粉症と夏風邪だから…マスクつけてる。」


「それ夏風邪だったの!?」


「治ったら取る…あなた優しそうだから、琥珀と小雪と一緒に話したい…。」


「そっか、じゃあ治ったらいっぱいお話ししよっ!」



その頃凱は病室を出てまるでゾンビのように廊下を徘徊していた。

下を向いて歩いていたその時、見覚えのある足が見えて顔を上げた。


「何しょんぼりしてんだよ気持ち悪い。」


龍我が腕を組んで目の前に立っていた。


「特異課のみんな言ってたよ、落ち込んでる凱気持ち悪いって。」


「俺のイメージどうなってんだよ。」


「来いよ、凱くん。」


凱は龍我の誘いを受けて、異界の川辺にたどり着いた。相変わらず空は赤いが、水はいつもの色だった。


「まったく、つまらない奴になりやがって…。」


「ごめんな…もう不死身じゃないんだ、いいサンドバッグが消えてつまんねぇよな。」


「そうじゃないよ。口だけは元気繕えるくせにすぐに弱音を吐くつまんねぇ人間になったなって失望してんだよ!君は簡単に絶望するような男じゃないだろ!」


「お前に俺の何が分かる…救えたはずの人間が目の前から消えていったんだ!」


「そんなのうん十回と味わっただろ、ウジウジしても過去は変わらない…それを噛み締めてこれからに繋げていく。

それが残されたオレたちに出来る唯一の償いだ!

オレだって、先輩たちだって経験した…君にはその覚悟すらないのか?無いならば…ここで君を殺す!」


龍我の身体からオーラが溢れ出す。

凱も拳を血が出るほど強く握りしめて、オーラを放出させる。

その眼は覚悟を示していた。


「オレも凱くんも強くならなければならない…先輩たちに置いていかれないように!」


「そうだな、絶望なんて懲り懲りだ!俺は、今ここで…てめぇを越えてやる!」


「そのまま返すよ…オレはあんたを殺して越える!!」


二人は同時に“武装”を展開して、お互いを本気で殺す気の特訓が今始まる。



   EPISODE 89「Jet black despair.(漆黒の絶望)」完

           次回 第90話

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