EPISODE 88「Undead Death(不死の死)」
謎の爆破事件が発生。
そして調査に向かった凱は触れたものを爆弾に変える妖に遭遇する。
掌に「15」という数字が刻まれた番号持ちの妖だったのだ。
凱は腹に触れられ爆破した。
しかし術式効果で瞬時に再生する。
「ごほっ…俺は…不死身だ!」
「化物め…不死と言えども痛みは感じるみてぇだなぁ!もっと触って粉々にしてやるぜ!」
と「“爆弾魔”」の術式を持つカズが赤色のオーラを高めると、凱は大剣を突き立てて倒れてしまった。
「お、さすがに直撃では意識を保つのはムズかったか。さぁてどうこいつを料理してやろうか…。」
「つまらん遊びはやめろ。」
カズに声を掛けたのは舌に「10」の数字を刻まれた糸を操る妖、操。
「操ちゃん何でここにいんだよ、怪我はもういいのかぁ?」
と、暴走した風雅にこてんぱんにやられた操のことをわざわざ顔を近づけながら煽る。
「殺されてぇのかてめぇは…次はあいつら必ず殺す…!てめぇはさっさと人間どもを爆破しやがれ、花火好きなんだろ?!」
「へいへい、言われなくても楽しみますよ。ボスに感謝を…。」
そこで凱は目を覚まし、二人に向けて再び大剣を構える。
「こんな所で放してたまるか…俺は特異課の妖狩…てめぇら全員ここでぶっ倒す!!」
「昔からお前は威勢だけはいいよなぁ…その他は何もないが…死ねよ。」
凱が立ち上がろうとした刹那、操の指先から出た鋼糸で頭を真っ二つに切断され、再び倒れた。
「こいつは不死身だぜ?死ぬわけねぇって。」
「だからだよ、こいつはボスに任せる…。行くぞ。」
二時間後
凱は頬に何かが当たって目覚めた。
手で触ってみると濡れていた。雨だ、曇天の空から雨が振り始めた。
「こうしちゃいられねぇ…奴を追わなくては!」
凱はその場から地上に下りて、カズの行方を追うことに。
道行く人にカズの特徴を伝えながら足取りを辿っていた。
「おいあんた、やたらと派手な格好してる細身の男知らねぇか?」
「あぁそれなら俺にぶつかってからどっかに行っちまっ…ん?なんか、身体が熱い、ん!?」
突如凱の前で男性が湯気を出しながら膨張し、体に当たる雨粒はその体温で「ジュウ」と音を立てながら蒸発した。
「(火薬の臭い…!)みんな離れろぉ!!爆発するぞぉぉ!!」
凱の一声に全員が反応することはなく、男性はそのまま爆発した。
爆炎が周囲を包み込み、先程のように多数の重軽傷者を出した。
半径十二メートルが完全に吹き飛んで焦土と化した。
凱だけは無事であり、弔う暇もなく追いかける。
「あいつまさか…人間を爆弾に変えながら逃げたのか…!この人数だ誰が爆弾なのか分かりゃしねぇし、いつ爆発するかもわからねぇ!!」
「おいあんた酷い火傷だな、大丈夫かい?」
「すまねぇ、派手な格好した男がどこ行ったか知らねぇか!?」
「それなら西の方に…ぐっ!」
老人ですらも爆弾の一人だった。
今度は多くの人が近くの爆音を聞いていたおかげで回避することは出来たが犠牲者は増える一方だ。
爆発した老人の言う通り西に向かうと、そこには保育園があった。
凱はまさかと思ってその保育園の中に入っていく。
「おい、大丈夫…か。」
そして絶句した。
カズは保育園の園児たちを人質にして、保育士の一人の首元にナイフを突きつけていた。
「何してんだてめぇは!」
「おっと、動くなよ?あと一歩でも動いたらこのねぇちゃんの首をスパッだぜ?」
「何で保育園なんかに…!」
「ちょうどいい隠れ蓑見つけたのによぉ、勘づきやがって。ガキと女は人質だ。
それと今まで爆破したのはほんのお遊びと試運転だ。」
「ふざけんじゃねぇぇ!!」
「動くなよスカタン!まずはその武器を置け…そしたらガキども解放してやっからよぉ。」
怒りが頂点に登っているが、いつものようにすぐに動いては人質の身が危ない。
だが武装を解除しても解放してくれるかも分からない。
「ほれ、早くしろ!」
カズはナイフを保育士の首にさして、出血させた。
子供たちはそれを目の当たりにして泣き出してしまった。
保育士が殺される前に素早く行動すれば助けられるがリスクは大きい、両手を上げても罠かもしれない。
一刻も早く動かないと彼女の首に刃は徐々に食い込んでいく。
どちらを選択すべきか迷った末に凱は過呼吸になりながら人命を優先をするという選択に出た。
大剣を床に置いて、両手を上げた。
「これで…良いんだろ。先生とチビたち解放しろ…!」
「よし、解放してやるよ。この世からなぁ!!イッツ、ショーターーイム!!!!」
「!?」
その直後、保育士、子供たちの体が赤熱化して、膨れ上がった。
「やめろ」という凱の声を遮って、保育園は大爆発を起こした。
この男、保育園に入った時に保育士と子供全員に触れていた。
そして任意で爆破した。
凱は爆風と爆炎で外に吹き飛び、仰向けで大雨に打たれながら自分の失態を思い知って発狂する。
「……はぁ、はぁ、はぁ!あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」
「ぶっはっはっはっはっ!!おもしれぇ息できねぇ!!まんまと信じやがって、やっぱ馬鹿だな。
だぁはっはっは…ぶごぉ!!」
黒曜石のようなガントレットが、カズの顔にめり込んだ。
鼻も顔も砕け、血が止まらなかった。
「お前…何笑ってんだよ…何笑ってんだって聞いてんだよ!!」
「おい、ほんの冗談だろ?なにムキになってんだよ…たはは。」
「てめぇのせいで爆ぜた命は帰ってこないんだ二度と…お前はその命を嘲笑った!!(俺のせいだ、俺のせいで…!くそ、くそぉ!!)」
怒りと悲しみの混ざっている凱は今にも泣き出しそうな顔をしながら血の涙を流していた。
「お前だけは、許さない!」
「おい、見逃してくれよ…ほんのお遊びだろ?…ぐふぉ!?」
凱は無言で『玄武』を“武装”した拳でカズを殴り続ける。
馬乗りになって殴り続ける。
一発殴る度に爆破した現場の被害者、目の前で爆発した人々、そして怯える子供たち、鮮明に脳裏に映る。
彼は一生この光景を忘れることはないだろう。保育園のグラウンドに赤い血液が滲む。
そして首を掴んで上へと放り投げ、落下するタイミングで強力で無慈悲なラッシュを叩き込む。
「オラオラオラオラオラオラァ!!地獄でもういっぺん死ねぇぇぇぇ!!!」
最後は両手の拳を突き出して、カズをコンクリートの壁まで吹き飛ばした。
土埃があがって壁は大破したが、カズは全身から出血しながらまだ立ち上がる。
「“連鎖爆弾”…!」
指先を雨粒に付けると、雨粒すら爆弾へと変化し、それが連鎖的に爆発して、凱の元まで届いた。
凱が後ろに手を伸ばすと、保育園の瓦礫の中から大剣が飛び出して、そのまま彼を通過してカズの右腕を切り落として、凱の手元に戻ってきた。
「てめぇ、もう許さねぇぞ!!」
「それはてめぇの吐くセリフじゃあねぇぞ…!」
カズの赤色のオーラは黒いモヤと共に頭の大きな人型のシルエットを作り出した。
「出て来い俺の妖影、『ジャック・オー・ランタン』っ!!!!」
頭がカボチャで出来た亜人を背後に召喚し、カズは妖影を“武装”した。
周囲には小さな丸いカボチャが浮かんでおり、投げつける。
「これが俺の“武装”、どこまでも追いかけるカボチャ爆弾だぁ!!」
しかし、凱は避けることなど一切せずにカボチャ爆弾を真正面から受ける。
体は『玄武』の能力により全身にバリアが付与されて爆弾のダメージは一切効かないようになっている。
その間に大剣を構え、ゆっくりとカズに近づく。
「何で効かねぇんだよクソが!!」
カボチャ爆弾も底を尽きたカズは切り落とされた自分の右腕を爆弾に変えて凱に投げつけた。
しかしそれも凱の大剣によって両断された。
「来るなぁ!!」
「死ねぇぇ!!」
凱は大剣で何度も何度も何度も斬りつけて、遂には倒れたカズの腹に刃を突き刺して、腹を裂くように大剣を動かした。
カズの身体は耐えきれずに爆発四散した。
凱は再び爆炎に包まれたが、不死の術式により完治した。
全てが終わって力が抜けた。誰も守れなかったという罪悪感が彼の中で渦巻いていた。
「くそが…俺は…クソ野郎だ…。」
「そう自分を責めるなよぉ。」
「!?」
凱の背後に何者かが立っていた。
すぐに距離を取ると、男の姿が見えた。
全身に包帯を巻いた裸足の男が彼の背後に立っていたのだ。
「誰だお前さん…こいつらの仲間か!」
「仲間っつーか、ボスって感じだな。それより、お前のその「不死」の術式、俺にくれや。」
「は!?誰が渡すか、つーか渡せるわけねぇだろ!!」
凱は再び“武装”して、ボスと呼ばれる謎の男に立ち向かっていく。
拳が当たる瞬間、男は目の前から消えていた。
そして気配は背後へと、回る。
「俺に立ち向かう勇気は結構、称賛に値する…。だがお前には、俺に勝てる経験値とレベルが足りない…!」
男は手刀を振り下ろして凱の鎖骨から胸に掛けて切り裂いた。
「もらったぞ…お前の「“不死”」!!」
「がはっ!」
「これでお前は、ただの妖…特別でも何でもない、そのまま灰になって死ぬがいい。」
包帯だらけの男は雨に濡れながらも上機嫌でその場を去り、凱は大雨の中に倒れ、身体からは灰が零れ出ていた。
EPISODE 88「Undead Death(不死の死)」完
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