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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
シーズン2(旧)

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EPISODE 86「The Goddess of Mercy Cuts Her Hair(慈母神の散髪)」

真白に例の件を押し付けた風雅は再びベッドの上で横になっていた。

骨折も傷も全ては元通りだ。あとは立ち上がるやる気さえあればいい。


体を動かす気にはなれなかった。

自分の中の何かが砂になったかのような倦怠感だった。

アスカはそんなことなく、作戦室で木刀を振るって己を磨いていた。


「大丈夫ですか…?」


「え?お、おぉヒカリちゃん!」


自由な捕虜、ヒカリが風雅のベッドの下から現れた。

普段一人でなんとか出来ているヒカリであるが、今回は何やら急用があるようだ。


「どしたん、なんかあったのか?」


「それが…シンのことなんですけど…。」


彼女はどこか気まずそうだったが、風雅の手を無理矢理引っ張ってベッドから降ろした。


「おぉ、やっと立てたぜ。」


サングラスを整えてから靴を履き直してヒカリに走ってついていく。

向かう先はシンが収監されている独房。


中に入った風雅は驚いた。

元々シンの髪の毛は女性かと見間違えるほど長く美しかったが、収監されている間に伸び続け、ついには鉄格子からはみ出ていたのだ。


「こ、こりゃあ一体…。」


「昔は自分の刀で髪の毛を切っていたんだけど、今のシンにはとても無理で…」


「これも捕虜として運命さだめ…俺の事など放っておけ。」

「かっこつけんなよ助けて欲しいくせに〜。こーんな伸びちゃって…。」


風雅は鉄格子からはみ出た髪の毛を持ち上げて、今の自分に何が出来るかを考えていたが、中々良い案は出ない。


「風雅さんあなたの「“鎌鼬”」でなんとかできませんか…?」


「そしたらシンの髪どころか首が落ちるぞ?」


自分で提案しておきながら引いてしまったヒカリは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

その時、背後から二人を呼ぶ甘い声が聞こえた。


「髪の毛のお悩みなら私にお任せよ!」


「!?その声は…」


「そう、愛に生きる戦う乙女、ローズちゃん見参よぉ〜!!」


「やかましい奴が来たでおい。」


北海道で喫茶店を営んでいた正義の乙女…正義のオカマことローズが何故かシンの独房に現れた。

ローズは独房に収監されたシンを見ると優雅な歩き方で近づいていく。


「あら、あなた…もしかして『零』ちゃん!?あらぁアンゴラウサギみたいになってるじゃない♡」


「貴様はまさか…特殊殲滅部隊“ローズ”の総隊長、“金剛寺 恋次”か…!何故女口調なんだ…。」


「まぁ細かいことは良いじゃない!そ・れ・よ・り私が来たからにはもう安心よ…。私がカーンペキなヘアスタイルにして、あなたを元のイケメンに戻してあ・げ・る♡」


ローズの投げキッスからはハートが放たれ、シンは避けることが出来ずに髪の毛の中に入り込んだ。

いつもはクールで無口なシンでもさすがに耐え難く全身に痒みが走った。


「いや、あんた出来んのかよ。ツインテールとかにすんなよ?」


「私を舐めないで頂戴風雅ちゃん…。舐めるのは花ちゃんのピーとかピーとかにしなさい!」

「ちょ、何言ってんのこのおっさん!?」


「実は私、美容師の刺客も持っているのよ?軽いカットならばお茶の子さいさいよ〜!」


ローズは勝手にシンを独房から出し、空き部屋に連れて行った。


風雅に椅子はないかと尋ね、彼は何も言わずに椅子と大きめの布を用意して、髪の毛を床に引きずっているシンを座らせた。


「じっとしててね『零』…シンちゃん。」


ローズはハサミを取り出して華麗に振り回して、ポーズを決めて自身のオーラを高めた。


「風雅さん、大丈夫でしょうか。」

「こればっかりはアイツの無事を祈るしかねぇよ。」


ついにハサミがシンの長い後ろ髪を切り落とした。

それからローズは軽々とシンの頭にハサミを入れていく。


部屋のドアは開いており、髪の毛をカットする音が漏れていた。


そこに屋形船でのミッションを終えた花が風雅に癒してもらうべくフラフラと組織内を徘徊していると、偶然シンが髪を切っている部屋を通りかかった。


「あれ、シンさん!?」


その後も髪を切る音を聞きつけた凱、龍我、琥珀たちがぞろぞろと集まってきた。


「あら、いつの間にかこんなにギャラリーが来てたのね。」


「なんか…恥ずかしい。」

「あら、あなたにも恥じらいの感情があったのねシン。」


「うん、出来たわ…♡はい、これが新しいあなたよ…。」


ローズはどこから手に入れたか分からない三面鏡を取り出して、シンに見せた。

長かった髪の毛を大幅にカット。そしてセンター分けとして生まれ変わったのだ。


「これが…俺…だと。」


「おぉ、いいじゃないっすか大先輩。」

「イカすじゃあねぇっすか!」


凱と龍我の後輩二人はシンの新たな髪型を褒め、花とヒカリはその顔の美しさで思わず見入ってしまっていた。


「どうよシン、新しく生まれ変わった自分は。」


風雅はシンの肩にもたれ掛かって感想を求める。

シンは分かれた前髪を触ってから鏡を見て今一度自分の姿を確認する。


「お前たちが褒めたんだ…きっと似合っているのだろう。…鴉丸にも見せてやりたかった…。」


その一言に風雅の顔から笑顔が消えたのち、優しげな顔になった。


「見てるよ、きっと…。」


「なんで私がその髪型にしたか分かる?」


その場にいた全員が首を横に振った。


「その髪型は若い頃の鴉丸ちゃんがしてた髪型なのよ。シンちゃんは昔過ぎて覚えてなかったかしら?

この中で彼と付き合いが長いのは私なのよん♡あの人に惚れてから…んん~目覚めたの…♡」


『うっ…。』


その場にいた全員が寒気を感じた。頬を染めて体をくねくねさせながらローズは鴉丸との思い出を語った。


「まぁ、とりあえず…これから“仲間”として、“家族”としてよろしく、シン!」


風雅は改めてシンに手を伸ばした。

シン自身も覚悟を決めた顔となり、その手を握り返した。


これにて特異課はヒカリ、シンを釈放とし、新たな仲間であり、家族として迎え入れたのだった。



EPISODE 86「The Goddess of Mercy Cuts Her Hair(慈母神の散髪)」完

           次回 第87話

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