EPISODE 85「Vampires by the Water.(水辺の吸血鬼たち)」
北海道と東京にいた「“セカンド”」たちを保護することに成功し、特異課本部に帰還した妖狩たちだったが、鋼の糸を操る妖・操の戦闘により、ヒビ割れていた風雅の“武装”が完全破壊された。
さらに妖の中に眠るもう一人の影「“妖影”」・『神狼』によって身体の主導権を奪われた風雅は操に善戦するが彼の仲間が割って入って操を取り逃がしてしまった。
そして特異課本部にある医務室のベッドで目を覚ました。
ローズのドアップ唇付きで。
「うおぉぉぉぉぉモンスター!!」
「もぉ〜失礼しちゃうわ誰がモンスターよ!!私よみんなのアイドル、ローズちゃんよぉ!?」
「お前みたいなゴリマッチョオカマ知らん!俺のアイドルはモー娘。だ!」
「あら、集団エンジェル?」
「騒がしいぞお前ら…傷口に響く…。」
隣のベッドに寝ていたのはアスカで、カーテンを開けて注意したが全身に包帯を巻いていた。
「風雅くん、目覚めたのね!?」
彼の声を聞きつけた花が真っ先に病室に入って、真っ先に風雅に抱きついた。
「花ちゃんありがと~。」
「体は大丈夫?右腕は?お目々は?この指何本に見える!?」
「わかったから、落ち着けっての!とりあえず俺は大丈夫よ。また身体を取られた…俺の妖影に…!」
風雅は枕元に置いてあったサングラスを掛けて、少し機嫌が良くなった。
「まったく〜僕が助けなかったら皆死んでたね。うん、絶対死んでた。」
彼らの前には真白と小雪のコンビもいた。
「あっ、真白!」
「いやー僕が戻ってきて良かったねぇ〜どうなってことやr」
「このやろぉ!!」
真白の顔に風雅渾身の右ストレートパンチが直撃し、真白は倒れた。
間髪入れずに倒れた真白の脇腹に蹴りを入れる。
「てめぇが何も言わずに消えたせいで色々苦労したんだよ!この三年!苦しめ、惑え!!」
「痛い痛い!ごめんなさい!助けてアスカくん…!」
その声に反応して再びカーテンを開けた全身包帯だらけのアスカは顔を覗かせた。
「貴様…よく俺たちに顔を見せられたな。三年前言ったよなぁ君のその面俺に見せたら燃やすと…!」
彼も怒り心頭で、手から炎を出して真白を威嚇する。
「助けて雪ちゃん!」
「あなたが撒いた種です自分でどうにかしてください。」
「そんなぁ!」
それから二時間、二人に殴られまくった。
真白と小雪は特異課本部を抜けて東京に移動し、花と共に歩いて回っていた。
顔はボコボコで自分で作った氷で冷やしていた。
「多少は良い気味ですね真白さん。」
「もぉ〜顔怖いよ雪ちゃん。ほら、スマイルスマイル!」
「その顔で言われても説得力ないです。」
「スマイルスマイル」真白が両頬に指を当てて笑顔を見せる。
恐怖で支配されていた小雪が笑顔を取り戻すきっかけになったが今の彼女には効き目なし。
三人は同じ店でアイスを買って和んでいた。
花はストロベリー、真白と小雪はバニラである。
「まぁでも風雅くんとアスカさん許してくれたからいいじゃん。」
「それはそうですが…。まぁ反省はしてるそうですが…というか、何故お台場に?」
「風雅くんが今負傷中だからボコられてる時にある事件を引き受けたのさ。」
最近東京でカラカラに乾いた死体が相次いで見つかっているそうだ。しかも必ず水場限定だ。
真白は現場に向かうべく屋形船に乗り込む予定だったのだ。
「お嬢さん二人は町を観光してなよ。さすがにハードな現場に女の子を連れていけないし。」
「嫌です!」と小雪は断固その提案を拒否し、真白と軽い口論になる。
「なんでわかってくれないかなぁ…!」
「どさくさに紛れてナンパするからですよ!」
グーの音も出なかった。
とりあえず真白たちは現場へ向かうことに。
河原にはブルーシートが引かれており、警察たちの許可を得て中へと入る。
「ひどい…。」
花は風雅と数々の現場を回って多少は慣れてしまっているが、小雪は初めて人間の遺体を見て思わず手で口を抑えてしまった。
花は怯える小雪の手を握って安心させた。
真白は乾いた遺体に手を合わせ、涙を流していた。
「これは…身体中の水分を奪われての殺害ではないですね。これは、失血死です。」
「失血死!?」
真白は遺体の首元に指をさして警察たちに見せた。
「ひと目では気づきにくいですが、ここに小さな穴が空いています。おそらく吸血されたんでしょう。」
「だけど、こんな小さな穴で身体中の血液が吸えるんでしょうか…。」
小雪は恐る恐る真白に質問した。
「不可能を可能にするのが僕たち妖さ。超能力と超常的な体力が合わされば出来ないことはほぼほぼない…かも知れない!」
「花さん、あなたの術式は血を操るものと聞きましたがどうにかできませんか?」
小雪は少しだけ強く手を握って花に頼むが、彼女は首を横に振った。
「私の術式は私の中にいた赫夜の術式なの、あの子が体から抜けてからはもう空っぽ…ごめんね。」
真白は立ち上がって、近場で運航している屋形船や小舟から監視する作戦に出た。
屋形船
「さぁ皆様張り切っていきまっしょい!!」
「……。」
真白の顔は赤く火照り、気分が高揚して酒瓶を持って踊り狂っていた。
「……」
「……」
真白は屋形船で酔っ払っていた。捜査そっちのけで飲んで食って遊んでいた。
小雪と花は真顔になってジュースをちょびちょびと口に運んでいた。
「あっ、そこの綺麗なお嬢さん方ー!僕と一緒に飲まない!?」
「こんのクソナンパ師がぁぁぁ!!!!」
同じく乗船していた女性客に真白は酔ってナンパを仕掛ける。
ついに見かねた小雪はドロップキックで真白を吹き飛ばした。
「やっぱりそういうことだったんですね、やっぱりナンパするじゃないですか!!」
女性三人は満更でもなさそうな感じだったが、小雪がそれを許さない。
真白は頭から血を流して気絶していた。
花は内輪で気絶した真白に風を送ってあげていた。
女性三人の家、ピンクのワンピースを着た人はお手洗いに行った。
なんとなく残りの二人と少し打ち解けられたが、その後真白は目を覚まして、涼むために外に出た。
女性は三人そろっており、少女二人も船の中でうたた寝
をしていた。
「あー酔っ払う気なかったのに…この船アイスないかなぁ…。ん?」
涼みながら外を見ていた真白は川の上に浮かぶ何かに目が止まった。
「あれは…!」
真白は身を乗り出して川を凍らし、漂流していた何かを回収した。
「これは…船長!そういえばさっきから船が止まっている…。」
真白はすぐに船の舵をとって、船を近くの川岸に止めて全員を降ろした。
船長は残念ながら亡くなっていた。
死因は今までの犠牲者と同じく失血死だ。
「この船にいたのは、僕と花ちゃん、雪ちゃん、そしてlady三人。認めたくはないがこの中に犯人がいる!そして僕はなんかもう知ってます!」
「待ってください、うたた寝をしていたとはいえ私たち以外の女性たちもここにいましたよ?」
「雪ちゃん、こんな事件推理するだけ無駄さ。犯行はすでに行われ、終わった。妖は君だよ、お手洗いに行ったそこのレディ?」
「!?」
「この船のトイレがあるのは船首の近く、ぼくらから離れられば犯行できるし、ぼくに酒を進めて感を鈍らせたのは君だったよね?」
犯人と疑われた女性はバツが悪そうな顔をして、彼から後ずさる。
どうやら図星のようだ。
すると、女性客は体から黒いモヤを出して、背中から虫のような羽が生えた。
さらにはくちばしが尖った虫の仮面を身に着けたのだ。
「そうか、君の妖影は“蚊”なんだね。」
「くっ、お前たちも戦え!」
「おう!」
するとまさかの残り二人の女性客も蚊のような姿へと変貌したのだ。
「どうして!?同じ術式と妖影は存在しないのに…!」
「こいつら二人は私の体から分けた妖影さ。水辺に卵を産めば無制限に増殖する!」
「二人とも下がって、ここはぼくが…妖狩:『白虎』が風雅くんの代わりにミッションを遂行する!!」
蚊の妖三匹は真白に狙いを定めて取り囲む。
そして真白も『白虎』を“武装”して臨戦態勢にはいる。
「やれやれ、女性に傷をつけたくはないんだけどなぁもう化物だからその意味ないや!」
爪に冷気が集中したのと同時に蚊たちが一斉に飛び掛かる。
その時を待っていたかのように真白は瞬時にその間をすり抜けて、爪を振り下ろした。
「はい、終わり…「“雪寅”」…!」
一回の斬撃で、三匹のくちばしを切り落とし、冷気と同時に相手の傷口と血肉を同時に凍結させた。
真白が指をパチンと鳴らすと三匹は凍った血肉を吹き出しながら倒れた。
「ふぅ、これにてミッションかんりょ、」
「真白さん、一人生きてます!」
気づいた時にはすでに遅かった。
残りの二人、本体は灰となって消滅、もう一人は煙のように溶けた。
かろうじて生き残った一人は妖影であるが、花に狙いを定めて吸血を試みる。
「口が折れてるからなんだ!女王その命もらうぞぉぉ!!」
「花ちゃん!」
「ひっ!」
バオンッ!!
という鈍い音が聞こえた。
花が恐る恐る目を開けると、目の前には蚊の妖影が倒れて消滅した。胸に足跡のような窪みが刻まれながら。
「花ちゃん、大丈夫!?ごめんね。」
「まったくごめんで済みませんよ馬鹿!花さん大丈夫
ですか…?」
二人には花が倒したことには気づいていない、いやあまりの速さに認識できていないようだった。
「ううん、大丈夫…。(何、今の!私がやったの…?!)」
先日から発現し始めた花の新たな能力、それを知るのはまだまだ先の話である。
EPISODE 85「Vampires by the Water.(水辺の吸血鬼たち)」完




