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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
シーズン2(旧)

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EPISODE 78「Northern Agent(北国のエージェント)」

            絶対零度とは


物質の温度の最低値であり有する温度は摂氏−273.15度。

そして、これ以下の温度は理論上存在しない。


物質は物質を構成する分子、原子が激しく動いて熱運動を起こし、温度を作り出す。

しかし、温度は低くなればなるほど物質を構成する分子の動きが遅くなる。


それが−273℃に到達するとどうだろうか、止まる、分子の熱運動が完全に停止するのだ。

それゆえにこれより低い温度は理論上存在しない。



花たちは北海道の山奥にて「“七つの大罪”」の一人『暴食グラトニー』に襲われる。

さらには自身の式神『悪食豚ベヒーモス』で怪獣に変身。


花たち北海道班の三人を追い詰めるが、突如彼女たちの前に白髪の青年が現れた。

青年が地面を踏みしめる度にアスファルトに霜が降りていく。

空気がどんどんと冷え込む。


いつの間にか『暴食』の懐に入り込み、ドアをノックするように腹を手の甲でトントンと叩くと、一気に怪獣の腹は凍結し、ガラス細工のように砕けてしまった。


中からは実に十年分の今まで自分がその口で食らってきた物が一気に放出された。


血も凍るほどの凍結能力で、腹が砕けても痛みはなかった。

そして指揮者の真似事のように指を動かして怪獣の体を一刀両断に切り裂いたのだ。


「僕たちの平和な生活を脅かすものには罰を…凍結地獄さ。」


青年のコードネームは妖狩エージェント:『白虎』。彼が指をぱちん!と鳴らすと切り分けられた怪獣の肉体が凍結して白く染まり、一瞬にして砕けた。


「す、すごい…!」


「あれが『白虎』の…極低温の冷気を操る術式、「“絶対零度アイスエイジ”」よ!!」


砕かれたことで放出した冷気が地面に流れ込んで霧のようになった。

人里は濃い霧に覆われ、花たちの足元は一気に冷え込む。


ニコニコと優しそうな笑顔を浮かべながら霧の中を歩いてくるのは先程の白髪の青年『白虎』。


「まったくアンタね、何年連絡寄越さなかったか知ってんの!?こっちはn…」


「お怪我はありませんかお嬢さん!」


琥珀が今まで彼に抱いていた怒りを直接ぶつけようと立ち上がったのに、『白虎』は片膝を付いて花の小さく可愛い手を握っていた。


「アンタねぇ…まだその女癖直ってなかったのね…!」


「えーと、これはどういう。」


「気をつけて花姉ぇ、そいつ結構な女好きなの。サ◯ジとかタケ◯みたいなもんね。」


「いてて…。」


元来妖が持つ超回復力で傷ついた龍我の身体は止血され、意識が戻り、すぐに立ち上がった。


「あれ、“真白ましろ”先輩じゃないっすか!」


「龍我くん久しぶり〜。」


琥珀は頭を痛めながら花にこの風雅よりも飄々とした青年の紹介をした。


「花姉ぇ紹介するわ、こいつは『白虎』こと真白。ある日忽然と姿を消した妖狩エージェントよ。」


その時だった、氷の塊の中から人間態に戻った『暴食』が飛び出した。


「よくもおいらを…ヒエヒエにしてくれたなぁ!!氷は味がなくて嫌いなんだよぉぉぉぉ!!!!」


「あれ、まだ生きてたの?言ったよねぇ僕たち“二人の”生活を邪魔するやつは許さないって…!」


『暴食』は温厚な真白から氷のように凍てつく視線を送られても動じることはない、彼は食欲のために、睡眠欲も性欲も、知性さえも犠牲にした。

全て食えばいいだけだ。


「そっか、聞かないか…化物だもんね…バイバイ。」


再び周囲に強烈な冷気が立ち込め、『暴食』の体は徐々に凍りつき、氷柱まで垂れ始めた。


「こんなもの…我慢して食えば何ともない!」


『暴食』はすでに凍りついた右腕を食らって捨てた。口の中も凍りつこうが今は眼前の敵を食らうまでだった。


しかし、真白は獲物を狙う獣のように腰を落とし、人差し指を真っ直ぐ伸ばす。

そして一気に、獲物を貫く。


「“白蓮”!!」


指先から放たれた氷の刃が伸びて、一瞬にして貫き、凍結した。

完全な氷像と化した『暴食』、そして最後に指をパチンと鳴らすと氷像は崩れ去った。


「さようなら、十年前の悪魔…。」


   

     「“七つの大罪”」メンバー『暴食』陥落!



「邪魔者は排除したし、僕は帰るよ。ばいばい。」


真白は仲間のはずなのに琥珀たちに背を向けて帰ろうとしていた。

花が呼び止めようと手を伸ばして声を出そうとした途端、彼は突然立ち止まり、振り返った。


「…誰かアイス持ってない?燃料切れだぁ…。」


琥珀も花もずっこけた。


その後、町に下りてコンビニでバニラソフトを買ってドロドロに溶けたように脱力しきった真白に手渡した。


「これだよ〜これー!!」


ソフトクリームを一口を舐めると一気に回復し、幸せそうな顔でアイスを食べる。


「そういう所も変わらないわねアンタ…。」


「アイスは僕の大好物であり原動力。術式もこれがなきゃ発動出来ない!さっきのデカブツ倒すのに結構妖力と凍気を消費しちゃってねぇ…。」


龍我の傷もすっかりいえ、ある程度動けるようになった。

そこで花は何故特異課に戻ってこないか本人に尋ねた。


しかし、それを予見していたのか花が話す前にアイスを頬張って足早にその場から去ろうとしていた。

その時、遠くから怒りながらこちらへと走ってくる女性の声が聞こえた。


「こらぁぁぁぁぁ!!」


そしてベンチの裏から飛び出した水色髪の少女は鋭いキックで真白の後頭部を打ち抜いた。


「あぎゃあぁぁぁぁ!!」


真白は気絶してしまい、少女は倒れて突き上がった真白の尻に片足を乗せて叱りつけた。


「まったく、突然立ち止まってどこかへと行ったかと思えばここにいたんですね!」


少女は琥珀たちの視線を感じて、気絶した成人男性の尻を踏んづけているという絵面で気まずくなってしまった。

すぐに足を離して琥珀たちに頭を下げた。


「すすすすみません!お見苦しい所をお見せしてしまいました!!」


「いや、良いわよ何か面白かったし!」

「こ、琥珀ちゃん…。」


「私は真白さんの付き人の“小雪”と申します。」


制服姿の水色髪でボブカットの少女の名は小雪と明らかとなり、真白は涙を浮かべながら気絶していた。



EPISODE 78「Northern Agent(北国のエージェント)」完

           次回 第79話

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