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ゴースト・ウィンド:特異超常現象捜査課  作者: さだはる
シーズン2(旧)

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EPISODE 77「Ice age(絶対零度)」

最近起きている超常犯罪が二桁の番号を刻まれた「“セカンドナンバーズ”」の仕業であり、その裏に巨大な悪の影を感じた特異課の妖狩エージェントたち。


そこでまだ犯罪に手を染めていない「“セカンド”」たちを保護するというミッションを決行。


東京と北海道の二班に別れ行動を開始したが、北海道チームの方に早速動きがあった。


突如北海道の豊かな自然が広がる山奥へと飛ばされた。

北海道に送り込まれたのは花、龍我、琥珀の三人。


そして琥珀だけが他二人より早く巨大な“何か”を感じ取った。

その感覚のおかげで彼女らに迫る地鳴りにいち早く気づき、花と龍我を持ち上げて上空へと飛び立った。


琥珀の足が地面から50メートル離れた瞬間に地面から巨大な口が飛び出したと思ったら、まるで水中から垂直に飛び上がるイルカショーの如く巨大な怪獣が地面から飛び出して来たのだ。


「ぎゃああああ!!!」


【おい、おいどうした琥珀!】


作戦室の管制室から待機中の雷牙が急いで通信を繋いだ。


「ななななんか地面からバカでかい怪獣が出てきたのよぉ!!」


【なんだと…怪獣!?】



その頃洋風の屋敷の一室にて、メガネを掛けた青年と玉座に座る全身包帯だらけの男が話していた。

メガネの青年の右目の目元には「11」が刻まれていた。


「すでに二人、こちらから回収に向かわせましたが…正直言って相手は鴉丸の教え子です。「一人は」勝てる見込みがありませんが… 。」

 

「いや…それでいい。」


と掠れた声で包帯の男はつぶやく。


「幹部に引き入れたのはお前ら番号付きの奴らだけじゃあねぇ…もっとでっかい、ビックな奴らさ…。」


「と、おっしゃいますと…?」


「七つの原罪を背負いし咎人…「“七つの大罪”」たちだよ!」

「…そうですか…。」


青年は比較的冷静、いやドライな反応だった。

思っていた反応と違っていたため、包帯の男も思わず目を丸くしてしまった。


「なんか冷たない…?仮にもお前らの家族とか街ぶっ壊した張本人だぜ…?」


「死人も、壊れた物も…今の僕たちにとっちゃ何の価値もない、関係ない。

むしろいらないゴミを片付けてくれて感謝です。」


「おぉ、怖いねぇ…さすがのイカれっぷりだ。(勧誘要員の番号ども…そして迎撃要員の七つの大罪…くたばりやがれ、特異課!)」



そして突如現れた大怪獣、巨大な口を開けて三人を捕食しようとした。


「ありがと琥珀ちゃん…!」


「あいつ、オレたちを食おうとしたのか!」


「龍ちゃん…アンタだったらアイツに勝てると思う…?」


琥珀は恐怖と驚きで声を震わせながら意気込みを聞いたが龍我本人も声と体が震えていた。


「無理だね…確実に死ぬわ!」


すると怪物は巨大な腕で地面を掻きながら這い出し、その全身が徐々に小さくなっていた。


全身に生えた茶褐色の体毛は抜け落ち、現れたのは、肥満体型の大柄の男。

しかし顔に知性はまったく見受けられず、食べることのみを考えているような木偶の坊。


「んんー何をするんだっけなぁ…あぁそうだ、あいつら殺せば良いんだ!」


突如男は琥珀がいる上空を向いて口を大きく開いた後、口を閉じ、歯がガキンっ!と鳴り響く。


その瞬間琥珀たちはすでに地面に着いていた。


『!?』


「何でオレたち地面に!」


「いっただきま~す!」


再び男は口を大きく開けて咀嚼した。

琥珀たちは男の眼前まで急接近していたのだ。


「なんですって!」


三人の眼前には顎が外れるほど大口を開けた門が迫っていた。


「ごちそうだぁ~!!」


「食われてたまるか、『青龍』・“武装”!!」


龍我は身体から五匹のミニ龍を発現させて、五匹全員で三人を引っ張って男から遠ざけた。


「なんだこいつ…こいつが口を開け閉じする度に、オレちはあの大男に近づいている…!?」


「たしかにアタシたちは空にいたのに、アイツが口を閉じた瞬間に地面に着いていた…!」


「お前何もんだ…!」


「おいらはぁ何だったかなぁあ、そうだ!おいらは『暴食グラトニー』。」


「!?…『暴食グラトニー』…だと!」


聞いたことのあるその名前、かつて東京で大暴れした七つの大罪を背負いしもの。

そして悪食の罪を司る者が三人の前に現れたのだ。


「おいらが口を開けたりすると何でも食べちゃうんだよねぇ…でも開ける度に空気まで食っちゃうんだよねぇ、でも食べても食べてもお腹いっぱいにならねぇんだ。「“暴食グーラ・ブルート”」って言うんだけどぉ。」


            『暴食グラトニー

          術式「“暴食の獣”」

        真名「骨と肉が交わる宴」


「こいつ!」


龍我は再びミニ龍たちを展開して『暴食』に攻撃を仕掛けようとする。

ミニ龍と共に拳を繰り出したその瞬間、『暴食』は反射的に口を閉じたことで右腕のミニ龍の顔が抉られてしまった。


「ぐっ!」


『暴食』も拳を突き出してその圧倒的なパワーで龍我を吹き飛ばした。

花と琥珀の二人がかりで飛んでくる龍我をキャッチし、ひとまずこの化物から離れなくては


「オレの龍が食われた…おい、起きろ!」


『み…ミ!』


何はともあれ右腕の抉られた龍がなんとか復活した。


「アイツの術式…たぶん何でも食うんだ!口を開ける度に何かを食らうなら、さっきのアタシとアイツの間にある“空間を食った”んだ!」


空中に浮いていたのにすでに地面にいた。遠くにいたのにすでに目の前に移動させられていた。

これらはすべて『暴食』が空間さえも捕食したことで可能となった事象だったのだ。


「私、正直言って力になれないかもしれない…でもこの子ならできる!」


危機に等しいこの状況、花は突然指をぱちんと鳴らした。

その時、空から突然花の護身用武器である空飛ぶ箒が降り立った。


花はその手に箒を掴み、水平に置いて地面から浮遊させた。


「乗って二人とも!」


花が箒を操縦し、二人も飛び乗る。


「これ三人も乗れるのか!」


「大丈夫って雷牙くんが言ってた!とにかく早く逃げないと、空間を食べられちゃうならもっと速く逃げないと!!」


と、花は思っているだろう。

『暴食』はゆっくりと近づく、それは何故か…どれだけゆっくり動こうとも、目先の物をすべて食らえばいずれたどり着くという「やる気」のみが彼の動悸だ。


無限の食欲がもたらす超人的な胃袋がそのやる気を可能にしている。

だからわざわざ考えなくても「食べる」という本能だけで動くことができる。


「どれだけ速くても食べちゃえば一緒なんだなー。『巨悪豚ベヒーモス』・“武装”。」


突如、『暴食』の体に茶褐色の体毛が溢れ出て、筋肉は膨張。

手からはモグラのような爪が出現するも顔は猪と獅子が合体したような生物となった。

先程三人を襲った怪獣の完成だ。


「食っちゃうぞぉ…厄災の「器」はどんな味なんだろなあ…あっ、でも厄災が抜けたから術式が空っぽなんだぁ…でも女の子食ったことないから食べちゃお。」



            ガブッ


咀嚼音が三人の耳元に聞こえた。


振り返った琥珀は顔が青白くなった。


すぐ背後には怪獣が地面の土や岩を食らいながら接近していた。


「なんですってぇぇ!!」


「こいつ、式神の“武装”だったのか…花ちゃん、高度を上げてくれ!!」


龍我の指示で花は箒の高度を上げ、先程同様上空へと避難した。


「何やってんのよ龍ちゃん、さっきのアタシを見たでしょ!?無重力だったのに空間を食われたのよ!」


「二人とも、ロケット噴射って知ってるか?オレの龍たちでこの箒を押し出す!!」


高度を上げると、巨大となった『暴食』も立ち上がり、口の中へと箒へと入ってしまった。


「さぁ、たーんと食いなっ!!“百龍ノ激”っ!!!!」


五匹のミニ龍たちは泣きながら無理矢理口に突っ込まれることとなる。

そして百匹に分裂し、一気に口の中へと流し込む。


そしてその威力で箒の推進力を上げ、飛距離を伸ばした。


「あばばばば!!」


「無限の食欲ならよぉ体の中にぶち込んで胃袋を破裂させりゃあいいのさ!!」


箒はぐんと進み、人里へともう少しというところまで飛べた。

しかし人里へと危険が及ぶ可能性がある。だが正直言ってこの三人では『暴食』を倒すほどの力はない。


不死身の凱、魂を直接叩ける風雅、単純に強い雷牙、アスカを呼ぶ必要がある。

今のメンツに出来るのは逃げる事だけだ。


悔しいことだがそれは龍我も重々分かっていた。それゆえに無茶をしてまでも仲間を生かす。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「あばばび…ば…ば…ごちそうさま…♡」


「なにっ!!」


どれだけ高く飛ぼうと、空さえ食ってしまえばどうってことはない。

その巨体で全てを食らい、ついに花の箒のエンジン部分さえも食らい、三人は地面に墜落した。


幸い残った三匹のミニ龍が三人を受け止め、龍我だけは重傷を負った。


「龍ちゃん!」

「龍我くん!」


「…戻ってこい、お前たち…!」


落下の衝撃で血まみれになり、頭から、膝から出血してしまっていた。

たとえ自分が弱くとも向かってくる怪獣に一人立ち向かう。


仲間の制止を振り切って、速攻でミニ龍たちを五匹に戻して攻撃を繰り出すが、百匹に分裂した龍たちは全て食われてしまい、壁のように巨大な拳で龍我の全身は砕かれ、鼻血を垂れ流して琥珀たちの元まで戻された。


「うそ…龍我くん!」


「安易に突っ込むからよ龍ちゃん…!」



「女の子は食べたことないけど…美味しそうだなぁー!!」


すでに『暴食』は彼女たちの眼前まで迫っていた。

全てが詰んだと覚悟したその瞬間、冷たい空気があたりに漂い始めた。


いくら食べることしか考えていない『暴食』でも、突如発生した冷気に反応し、口を止めた。


「なんだぁこれぇ…ひんやりするぞぉ…。」


「もしかして、この冷気は…!」


「いやーなんか近所で騒音がするからさー。来てみればこんなことになっていたとは…。」


二人の背後から歩いて近づく、白髪の青年。


青年の体からは冷気が立ち込み、近づく度に道路に霜が付き始める。


「あんたは…『白虎』!!」


「おひさー。」


『白虎』と呼ばれた青年は琥珀に名前を呼ばれたことで悠長に笑顔で手を振って答えた。


「だれだぁお前は!」


「ただの通りすがりの妖狩エージェントさ。」


『白虎』は怪獣『暴食』の懐に潜り込み、腹をノックした。


すると怪獣の腹は白く染まり、ノックした瞬間にバキバキに砕け、腹の中から白骨化した人間の死体や土、岩、溜め込んだ空気が一気にあふれ出した。


「へぇ…君、今まで何人食ったの…?」


「そうか、無限の食欲でも、食べることだけ…排泄することは出来ないのね!」


胃に溜め込んだ死体、実に十年物!


「なんにせよ僕の平和な生活を脅かす君はこのまま生かしておくことができないよ。死んで…。」


『暴食』の体に手を触れただけで白く染まり、まるで洋楽の演奏を指揮する指揮者のように人差し指を弾いた。

完全に全身が凍結した『暴食』の身体は一刀両断に切り裂かれた。


「はい、おしまい…。」


「すごい…!」


「あれが『白虎』の…氷と冷気を操る能力!全てを止める絶対零度の能力。

あの空気下では全ての物体、気体さえも凍結し、動きを止めるのよ…。」


「僕たちの生活を邪魔した罰だ…罪人には究極の罰を…凍結地獄さ。」


       

         EPISODE 77「Ice age(絶対零度)」完

           次回 第78話

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