EPISODE 74「Crimson wings of fire(紅い炎の翼)」
風雅を助けた妖狩:『朱雀』こと紅 アスカ。
彼は一見紳士的な青年だが、花を見た瞬間に刃を向ける。
何でも彼女が新たな厄災となるのを恐れたかららしい。
風雅はアスカの頭を冷やすため、異界の荒野に連れ出し、大喧嘩を始める。
アスカは『朱雀』の“武装”「形態:“炎刃”」で日本刀ような剣を作り出し、風雅に斬りつける。
かなり本気のようだ。
風雅は『神狼』のガントレットを右腕に装備して刃を受け止める。
「落ち着けってアスカ!」
「落ち着いていられるかぁ!!」
アスカは空いた左手で風雅の腹に触れると、触れた瞬間に風雅の身体が一瞬火だるまになってふっ飛ばされた。
「風雅くん!」
「ちょっと、アスカの奴やりすぎな位本気じゃない!?」
「どうしよう…私のせいで…。」
「別に花子のせいじゃねぇよ。俺たちにはお前さんと過ごした日常がある。アイツには無い、アイツから見れば厄災の種としか見えんのだろう。
で、お前はどう思うんだナユタ。」
アスカと共に花に刃を向けた全身黒ずくめでペストマスクを着けた謎の妖狩ナユタは、しばらくの沈黙の後、ノイズ混じりの声で答えた。
「あの時、術式を使おうとした…でも貴方はプリンが欲しいのだと勘違いした…そんな天然な人が世界支配できるはずない…。」
「それ、褒めてます…?ていうか、それなら何で止めないんですか?!」
「あの二人喧嘩すること滅多にない…面白いから。」
「えぇ…。」
幸い風のバリアを張っていたため、炎は直撃しなかったが、風と炎では相性が悪すぎる。
一度風を起こせばそれを利用され火力が上がる可能性があるからだ。
アスカは両手をパン!と音を立てて合わせ、ゆっくりと左手を引くと同時に炎の弓が出現し、連続で三本の炎の矢を発射した。
「“灯矢”!」
「この、わからずや!」
風雅は矢の一本を掴むが、熱に耐えきれずすぐに手放してしまった。
さらに二本の矢が自動追尾弾のように風雅の後を追ってくる。
「“鎌鼬”!」
風の刃を放出して炎の矢を断ち切った。そして風雅は術式を切り替えることにする。
これは凱やアスカさえも知らない二つ目の術式。
「“魂の咆哮”!!」
翠緑色のオーラは七色の粒子が舞う白銀色のオーラへと変化し、ヒビ割れた右腕のガントレットに集中する。
「ちょっとくすぐったいぞ…!」
そして風雅は防御もなしにアスカへと向かっていく。
術式が切り替わったことに気づいていないアスカは再び「“灯矢”」を発動して射抜こうとする。
しかし不思議と矢は風雅に当たらず、自動追尾弾のはずなのに、それでも風雅の体をかすっていく。
「“疾風弾・V2”!」
アスカに拳が直撃した。しかし、その衝撃でまたヒビが入り、装甲がパラパラと地面に落ちていく。
「なんだあの兄弟の妖力は…見てるこっちも何かビリビリするぜ…!」
「あれが私を赫夜から助けてくれた「“魂に干渉する術式”」!」
装甲は削れたが術式を撃ち込むことには成功した。その直後、アスカの体から何か黒いモヤのような物が抜けたような気がした。
彼は口からを血を吐いて倒れ、風雅も術式を過剰に打ち込んでしまった影響か、自身も倒れてしまった。
「兄弟、アスカぁ!」
凱たちはすぐに降りて二人を保護しに言ったが、たった一撃で出血が酷く、すぐに二人を抱えて異界から離脱した。
二時間後
アスカは医務室で目を覚ました。隣のベッドには風雅が横を向いて寝転がっていた。
椿医師がカーテンを開けて二人の様子を見に来た。
「アスカくん久しぶりだね。風雅くんと何かあったのかい?」
「覚えてません…クロから風雅を助けた所までは覚えているのですがそれからは…。」
「ふざけんなよ、お前が最初に花ちゃんに剣向けたんだろうが、ナユタまで使ってよぉ。」
「そうか!俺はなんてことを…」
すると椿の脇から花がひょこっと顔を出した。
「二人とも生きてる〜?」
「おう、なんとかな。この馬鹿っ!も目覚ましたし。」
「花さん、俺は君に大変な無礼をはたらいた…鴉丸さんが亡くなったと聞き、気持ちの整理がつかず…。」
とベッドの上で正座をした後、花に向かって見事な土下座をした。
土下座の世界選手権があれば間違いなく世界一位だろう。
「いいですよそんな頭下げなくても!アスカさんが元に戻って何よりですよ!」
「お前、昔から感情の制御できねぇもんな。それでも今回は異常だったぜ?」
「今は何だかスッキリした気分だ。」
椿は椅子に座って二人に質問をした。
「それにしても…本当なのかい?僕たちと同じ番号付きの妖が…超常犯罪をしてるというのは。」
「本当っすよ、自分から見せてきました。手の甲に刻まれた「16」の数字…。」
「それと、最近目覚めたとも言っていました。財団の研究者から脱出した後、我々とは違った時差で覚醒したのでしょう。」
風雅は起き上がって烏人間であるクロの調査を引き続き行おうとしたが、先程の戦闘での負荷がたたったのか、起き上がることが出来ずにベッドに沈み込んでしまった。
「風雅くん大丈夫!?」
「アスカ、お前のせいだからな…。責任とれよ…。」
「代わりに俺が調査に向かうよ。」
そしてその夜、再びクロによる被害者が出てしまった。カップルだったが、その内の彼氏が一瞬の内に連れ去られており、振り返った時にはすでに電柱に激突して原形が分からなくなるくらいぐちゃぐちゃになっていた。
そして恋人を失った彼女の悲痛な叫びが夜の街にこだまする。
そしてその叫び声を聞き、クロは恍惚とした表情を浮かべる。
「笑えるか、人の死が…!」
クロが振り返ると、妖狩:『朱雀』ことアスカが怒りに満ちた顔で立っていた。
「これはこれは怒りん坊のアスカくんじゃないか。どうだ、厄災の種は殺せまちたか?カッカッカッ!」
と挑発めいた発言をし、うざったい笑い声を上げる。
「貴様ら妖はつくづく俺を怒らせる…!そうか、お前のせいか、俺がおかしくなったのは!
羽根一枚に忍ばせていた別の何かを俺に打ち込んだか。本来ならば一番身近な風雅に打ち込んで花さんを殺そうとしたんだな…?」
「殺せるなら別に誰でも良いさ…そして俺は逃げる!あばよぉぉぉ!」
クロは翼を広げて風を送り、アスカがその強風に耐えている間に飛び立った。
「…飛べるのがお前だけだと思うなよ!『朱雀』、“武装”っ!!」
アスカの体から赤色のオーラに包まれ、背後に鳥人型の式神である『朱雀』の幻影が現れ、甲高い鳴き声を上げた。
すると彼の目元には翼の形を模した痣が、背面からは深紅のエネルギー状の翼が出現し、羽ばたかせて夜空へと飛翔する。
「形態:“金翅鳥”!!」
一方、医務室では風雅が花に看病されていた。
「風雅くん、アスカさんに任せて良かったの?」
「逆に今回の任務はアイツか琥珀にしか任せられないよ。」
「え?」
「飛べるかどうかだよ…アスカは二つの“武装”を使用する「形態」という方法を編み出した。
炎の剣「“炎刃”」、炎の翼「“金翅鳥”」そしてそれを同時に発動しても、消費される妖力に差は無いんだ。」
深紅の翼を生やしたアスカはクロを空から追跡する。
何も知らないクロは後ろから近づく巨大な妖力を感じて振り返ると、ゴーグルを眼に掛けたアスカが全速力で自分を追跡していた。
「こいつ、飛べるのかよ!」
「クロぉぉぉぉ!」
風雅の前述通りアスカは同時に二つの“武装”をすることが可能であり、右手に「“炎刃”」を持って空中を高速飛行するクロに斬りつける。
「俺の翼がぁぁ!!!」
そしてそのままビルの屋上へと墜落し、アスカも降り立ってクロを追跡する。
「このくそがぁ!」
焼け焦げた翼を引きちぎり、新たな翼を生やした。
「人間は全て俺“たち”の手で根絶やしにしてやるのだ…!」
「ふざけるな、これ以上お前らのエゴのために人間たちが犠牲になることは俺たちが許さないっ!!」
「ふんっ!」
新たに生えた翼で再び自身の術式である「“黒鳥弾頭”」を使用し、一度ビルから離れてから一直線にアスカに衝突しようと急接近をする。
「いくら一緒に財団から逃げても根本の性格は変わらなかったようだな。
異能に魅入られたその魂、俺が解放しよう!」
刀を構え、妖力を集中させると、刀身から熱気が発生しその温度は実に5000℃。
そして全ての神経を集中させた一撃を放つのだ。
そのまま突っ込んでくるクロは何も動きを取らないアスカを嘲笑い、何の疑いもなく突進しようとした。
しかし、刀を目の前まで持ち直したアスカはクロが目前に迫った所で真っ直ぐ振り下ろした。
「へっ、何も起きねぇじゃねぇか…だがもう一d…あ…れ…あら?」
何も起こらずに高を括っていたクロだったが、次第に体に切れ込みが入り、身体が炎に包まれた後、空中で縦に真っ二つに別れ爆散した。
「“焔斬り”…!」
一撃必殺の剣技を決めたアスカは爆発を目視することなく、踵を返し、残心を残さずに屋上を後にした。
「ミッション、コンプリート…。」
しかし、クロの死をきっかけとして新たな勢力が動き始めるのだった。
EPISODE 74「Crimson wings of fire(紅い炎の翼)」完
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