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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
シーズン1幕間

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EPISODE 70「水着回、待った?」

          東京は夏 熱い


これでは悪事を働く妖も動くことは出来ないであろう。

この日東京は35℃という当時では珍しい猛暑を記録したのだ。


八雲邸では琥珀と花がソファで溶けてしまっていた。エアコンも扇風機もあまり効き目がなかった。


「あぢぃ〜!去年ってこんな暑かったけぇ…。」


「私こんな暑いの初めて…。」 


まるで溶けたアイスだ。

人一倍暑さに弱い琥珀は原形が無くなるほどにソファの上でだらけきっていた。


その光景を見かねた風雅は二人にとある提案をした。


「なぁ、せっかく夏だし海行かないか?」


「え!海ぃ!!」



           ビーチin沖縄



「めんそーれー!!」


沖縄の方言を叫びながら浮き輪を腰につけた琥珀が砂浜から飛び出した。


浮き輪を両手で支えながら砂浜を駆け、勢いよく海に飛び込んだ。

凱も水着を着用し、琥珀の後を追って大ジャンプして海に飛び込んでいった。


風雅と花はパラソルの下ではしゃぐ二人を穏やかな笑顔で見守っていた。


彼らが訪れてたのは沖縄のあまり人気のない綺麗なビーチ。

風雅、花、凱、琥珀は特異課本部にあるワープドアを利用して最短距離で沖縄に来たのだ。


花と琥珀は店で選んだ水着を買って大はしゃぎ、風雅はサングラスを掛けながらビーチで昼寝をしていた。


「あれ、雷牙くんと龍我くんは?」


「仕事終わらせてから合流するってさ。でも懐かしいなぁ…ガキの頃は鴉丸に連れられて海に来たなぁ。」


鴉丸に散々しごかれた夏の日、さすがに娯楽が無いのも可哀想だと思った鴉丸はみんなをハワイの海に連れ出して豪遊したらしい。


その思い出話を聞いて、花を罪悪感が襲った。

膝を曲げて顔をうずめてしまった。


「ごめんなさい…私のせいで鴉丸さんが…。」


「君のせいじゃないだろ?全部財団が悪かったの。それより花ちゃんが笑えてることが俺は何よりも嬉しいよ。」

「風雅くぅん!」


「相変わらずいちゃついてますねぇ二人とも。」


『!?』


二人の背後には4玉のスイカを網に入れてぶら下げている龍我と、もう一本のパラソルとクーラーボックスを片手に持ったアロハシャツを着た雷牙が到着した。


「おぉ、お疲れさん。我が兄と可愛い後輩よ。」


「凱くーんスイカだよー!」


龍我は一玉のスイカをメジャーリーガーと同じスピードで投げつけ見事後頭部に直撃した。


頭蓋骨が砕かれ、赤い果汁が砂浜に落ちて染められていく。


「てめぇ…またやりやがったな!昔も俺の顔にスイカ投げてきたよな!?」


「そうだっけ?」


凱は激昂して、龍我に飛びつき、彼は華麗に回避して二人は砂浜で追いかけっこを始めた。


「まーたやってるわあの二人…。ま、財団はもういないんだし、これくらい足伸ばしても良いわよね。」


琥珀は浮き輪で海の上を漂いながら凱たちを見ていた。再び訪れたしばしの平和を噛み締めながら、自身の腰に刻まれた「8」という数字に触れる。


散々な地獄を見せてきた財団HAND、それを恩師の命と引き換えに全てを終わらせた。

風雅たちには言っていないが、琥珀はそのことに簡単には納得していない。


それはきっと皆も同じだろう。風雅は鴉丸の最期まで見届けた。

琥珀以上の想いがあるだろう。


腹に刻まれた数字を撫で、雲一つない青い空を見上げ、浮き輪の上で呟いた。


「アタシつよいぞー泣いてないぞぉ…お父さん…。」


琥珀が海から帰還すると、いつの間にかスイカ割りが始まろうとしていた。


凱は目隠しをして、竹刀を持つかと思いきやいつも使っている大剣を持っている。


龍我は指示を飛ばしながら、絶妙にスイカの位置を変えて、凱を混乱させている。

この二人は相変わらずのようだ。


風雅はいつも掛けているサングラスで日差しから自分の目を守りながら二人の寸劇に腹を抱えて笑っている。


時々花に拾ってきたナマコを見せびらかしてビビらせ、それに乗った琥珀もナマコを拾って花を追いかけ回した。


「相変わらずめちゃくちゃだな…それだけ財団の呪縛が強かったわけだが。俺は日陰でのんびり昼寝でもしますかね。」


「えー雷牙先輩も遊びましょうよ。」


「俺は焼けたくないし、動きたくないの。本当ならここには来ずに配信の準備するはずだったんだよ。」


「あっ、そこに凱くん来ますよ先輩。」「は?」


目を開けると、目隠しをして大剣を振るう凱がこっちに向かって近づいてきていた。

咄嗟に反応した雷牙は思わず凱の顎を蹴り上げて打ち上げた。


何が起きたか知らない凱は打ち上がった後、スイカの上に頭をぶつけ、スイカが割れた。


「あ、すまん。」


「あーあ、シャビシャビだなこりゃ…。凱には悪いが食べようぜ。」


琥珀は皆を優しく見つめる花の顔を凝視していた。


「え、どうしたの琥珀ちゃん?」


「えぇ、なんか花姉ぇすごい嬉しそうだからこっちも嬉し。あれ、もしかして風雅にもう言われた?」


と二人の関係を弄るように、尋ねる。


「ふふ、ありがとね皆…私と一緒に居てくれて!」


「なーに言ってんの花姉ぇもアタシたちの家族じゃない!ほらスイカ食べよ!」

「うん…!」


花は琥珀に手を取られ、皆の元へと走っていく。

初めて出来た暑さも吹き飛ぶ一夏の思い出、この先も花は忘れることはないだろう。


この先も平和が続いてほしいものだ。



          EPISODE 70「水着回、待った?」完

           次回 第71話

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