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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
シーズン1幕間

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EPISODE 71「A solitary full moon」

シン。元特異課所属であり、元・妖狩エージェント:『零』、財団HANDによって脳を改造されて二年間『死神』として掟を破った妖たちを処刑し、特異課と敵対していた。


自身の式神に身体を乗っ取られ「激情態」として風雅に戦いを挑み敗北、「魂に干渉する術式」を受け、救われたが、鴉丸の最期をその眼に焼き付けることになった。


現在は捕虜として特異課内部にある留置所にて監禁されているのだ。


武器である妖刀・月闇ツクヨミは保管庫に入れられ、灰色の囚人服を着せられ、両手には術式を封じる手枷をつけられている。


ある日、風雅は獄中のシンに昼食を運んできた。


「ほれ、俺特製の海鮮丼だ!たんと食え。」


「…俺は捕虜だ…なのに何故いつも飯が豪華なんだ。」


「立場上は捕虜っつってもあんたと敵対する理由はないし、お前も何もしないだろうしさ。

やっぱ残飯って嫌じゃん?それならまだ美味い飯食った方が嬉しいだろ?」


「……。」


確かにその通りかも知れないが、シンは返答に困ってしまった。

風雅は檻を開けてイクラの乗った海鮮丼を直接中に届けた。


「お前はよく俺に近づけるな…。」


「俺が何回ボコられたと思ってんだ…。それに他の職員はあんたにビビって近づけないだけだよ。」


渡された箸もコンビニの割り箸ではなく、ちゃんとした少し高級な箸だった。


自分に対するこの待遇はなんだ。ただの親切なのか一種の拷問なのか分からなくなり、箸を持っても中々食う気にはなれなかった。


「シン、食べるの食べないの?食べないなら私がもらうわよ?」


留置所の中に『死神』であった彼が唯一心を開いていた少女・ヒカリが入ってきた。


「ヒカリちゃんには少し重いんじゃ…。」


「私はこの人の光になるの…何があろうと何をしようとずっと一緒なのです。」


と得意気に自分の胸を叩いてシンの前に座り込む。本当に彼と一緒に海鮮丼を食べる気だ。

風雅は念のために持ってきていたもう一膳の箸を渡した。


「ていうか、ヒカリちゃんはなんでここが分かったの?」


「特異課の中をうろちょろしてたら花さんに会ったんです。あなたの後ろにいますよ。」

「よっ!」


「うわっ!気づかなかった…。」


ヒカリは捕虜という身ではあるが、シンと違って前科も何も情報が無いので特異課本部の中を自由に出歩けるのだ。


シンは花の姿を見ると、イクラをつまんでいた箸を置いて、姿勢を整えた後、突然床に額を付けた。


「緋月 花、今までの無礼を詫びる…すまなかった!お前が受けた傷は全て財団の俺が払う。」


シンは手刀で自分の腕を切り、血がボタボタと流れ落ちる。


「あっ、あぁーあ!」


「ダメダメダメ!私そんなの望んでないから謝らなくてもいいし、自分傷つけちゃダメだよ!!」


風雅はシンを羽交い締めにしてすぐに止め、花に椿を呼んでもらった。

椿の術式により腕の傷が修復され、シンも落ち着きを取り戻した。


「本当にすまない…。」


「まじで狂ったのかと思ったぞ。」


「しかし皆を傷つけたのは事実、鴉丸を殺したのも俺の責任だ…俺の剣で死んだ、俺が殺したのも同然だ。」


「…どいつもこいつも私が悪い、俺が悪いだの…この現実受け止めておやっさんの分まで生きるしかねぇだろ。いつまでも後悔してては前に進むことは出来ないぞ。」


「『神狼』…。」


「とりあえず今日は面会時間終わりだから、また来るわ。」


風雅と花は手を振ってシンに別れを告げた。ヒカリは一日中シンの側から離れないと言って隣で寝ていた。


「前を向くか…俺に出来るのだろうか、罪人の俺に。」



次の日、彼の檻の前に雷牙が立っていた。


「お前は、妖狩エージェント:『雷獣』…。」


「さすがは元・『死神』、後輩のコードネームもばっちしチェック済みか…。」


「何の用だ、拷問か…?」


雷牙はさらに近づき、シンは覚悟を決めた顔で身構える。

そして鉄格子に手を掛けて、シンの顔に近づいてこう尋ねた。


「お前、どんなゲーム好き?」

「何…?」


そんな突拍子のない質問にシンの身構えた姿勢は緩んだ。


「お前も鴉丸の弟子だろ、ゲームの知識は一ミリくらい入れられてるはずだぜ?」


「…スー◯ーフ◯ミコンとやらか…一度あいつとやったことがある。」


「そうか、俺はゲーム◯ーイであいつと遊んだことがある。そのおかげで俺はゲーマーになれた。刑期終えたらゲームでボコボコにしてやるぜ、兄弟子さんよぉ。」


そう言った後、雷牙はそのまま去ってしまった。

そのまた次の日には、凱と龍我が訪ねてきた。


「『玄武』と『青龍』か…。」


「なぁ死神さんよぉ、好きな女のタイプ…なんだ!」


「死神さんって現役の時どれくらい強かったの!?」


「どうせまたくだらない質問なんだろうな」と予測したが、まさにその通りだった。


「何を…言っている。(昨日の『雷獣』よりもイカれた質問だ。)」


「お前も男なんだからよぉ好きなタイプとかあるだろ?好きな女の好みがねぇ奴は男じゃねぇ!」


「それ思ってんの君だけだろ。別にこれには答えなくていいっすよ大先輩。」


「包容力のある女だ…。」

「あっ、だめだこの人冗談全部通じないタイプだ!」


「そうか、そうかやっぱりお前も男だなぁ俺より強いだけあるぜ!」


「こんのアホ頭!」


その時、背後からの琥珀の強烈な踵落としが凱の脳天に直撃し、倒れた。


「にゃあ~シンさんごめんなさい!うちの頭が…。」


「いこいこ。」


そのまま三人は独自の寸劇を繰り広げた後シンの思考を置き去りにして去っていった。


「じゃあ、また来ます!今度は手合わせしてくださいね大先輩!」


龍我はシンへの敬意を忘れずに手を合わせてから部屋を出ていった。


「本当に何なんだあいつらは…。」


2日後、今度は花が訪ねてきた。


「シンさぁん!私たち沖縄行ってきたんです。はい、お土産です!」


花がシンに見せたのは、沖縄名物「紅芋タルト」であった。

ついに痺れを切らしたシンは比較的まともな花に質問した。


「お前たちは、何故俺に構うのだ…放っておけばいいものを、好きな遊戯を聞いたり女の趣味を聞いたり…。暇なのか?」


「うーん、半分暇かも。」


「なら何故、俺に構う…罪人の死神など、放っておけば勝手にくたばるものを。」


「構いたくなるよぉ…だって、すごく淋しそうな目をしてたんだもん。」


「…!」


「みんな困った人がいればお節介やくほどに構ってくるの。ちょっとうざいかも知れないけど。

あとね、ここに来たのはあなたにお礼がしたからだったの。」


「お礼…だと。」


「10年前のデイブレイクの時、財団に攫われる前の私を助けてくれたのは、あなただったの。」


東京での大規模テロを一人で鎮めた『零』時代のシンは

一人の少女を助けていたのだ。

それこそが後の花であった。


「あの後財団に攫われちゃってその時に忘れちゃったんだ。

でも赫夜に乗っ取られていた時に私の魂は沈んだ…その時にあなたのことを思い出せたの。

ありがとう、私のヒーローさん。」


「…!!」


初めて言われた感謝の言葉、今まで人を助けても蔑まれ続けた氷の心は少しずつ溶けていくような気がした。


彼女を初めて笑顔にしたのはシンだった。

今の彼にはその笑顔と「ありがとう。」という感謝の言葉だけで胸がいっぱいになった。


震えながら鉄格子にしがみつき、一筋の涙が頬を伝った。


「俺は…生きても良いのだろうか…!」


「生きなきゃだめ…生きて他の人達を悪い人から守って…風雅くんたちと一緒に!」


「努力しよう、しばし一人になりたい…今日は帰ってくれ。」


「りょーかい。お土産置いていくね。」


花は部屋から出る前に手を振った後、風雅から教えてもらったサムズアップをして去っていった。


「…俺の行動は間違っていなかった…人を助けて良かったんだ。ならば俺は彼女の意思に応えよう…!彼らと共に努力しよう…!」


花が去って静かになった独房で、彼は大粒の涙を流しながら静かに泣き、光を掴もうと、再び天に手を伸ばしたのだ。


「鴉丸…お前の分も俺が生きよう!冥土で見守っていてくれ…俺は、人を助けて笑顔にしてから死ぬのだ…!」



         EPISODE 71「A solitary full moon」完

    次回 第72話 次回からシーズン2かも?

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