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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『女王の器を奪還せよ。』

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EPISODE 62「鬼神、激情」

幼き頃の風雅が受けた地獄の痛み、抵抗すれば殴られ、泣いても殴られ、その日の実験ご終われば用済みかのように檻に戻される。


妖は普通の人間よりも生命力があるためか、実験の繰り返しでも倒れることはなく、死にたいと思っても死にきれない。


「あのまま家族と死んでいればよかった。」そう思う者も少なくはなかった。

そんな地獄が半年ほど続いたある日、何者かが研究所に侵入した。


素手で壁を砕き、風雅たちが収容されている檻にたどり着いたのは、後に彼らの父親代わり兼師匠となる鴉丸だった。


「お前ら出ろ…俺がこの地獄から連れ出してやるよ。」



彼との出会いで地獄が終わった。そして瞼を開けば目の前には妖刀・月闇ツクヨミを構えた『死神』が立ち塞がっていた。


「消え失せろ…『神狼』…!」


「そこどけよ…ぶっ飛ばすぞ!」


今の風雅は冷静さを欠いている。一度邪魔をすれば火薬庫の如く爆発する。

現状風雅の火薬庫に一番刺激を与えるのは財団のモブではない、幹部クラスの強敵だ。


翠緑色と赤黒いオーラが湧き出し、地下全体が揺れ始めた。

振動によって床に落ちた物資の音と同時に風雅は走り出した。


右腕に『神狼』のガントレットを武装して殴りかかる。『死神』は刀身で難なく受け止めてしまった。


「落ち着け『神狼』…。冷静になれ。」


「なんで花ちゃん連れてった本人に言われなきゃいけないんだよっ!!もう誰も俺の前から消えてほしくないんだよっ!!」


鴉丸と共に研究所を脱出する時、出口はすぐ目の前だった。

この時彼は何かを感じ取ったのか、背後にいる風雅たちに「止まれ!」と叫んだ。


しかし、外の世界に焦がれていた21〜30番までの実験体たちは鴉丸の制止を聞かずにゲートを超えた。その直後だった。


21番から30番までの10人の体がその場で弾け、風雅の目の前に転がった。

その後も多くの仲間が消息を絶ち、いつの間にか元の9人になっていた。



『死神』は式神を左腕に武装して風雅の腹に強烈な一撃を叩き込み、鋼鉄で出来た壁まで吹き飛ばした。


パワーは今までよりも遥かに上がっており、風雅も口からの吐血が止まらない。

しかし、『死神』は突如動きを止め、左腕を抑え始めたのだ。


「ぐっ…!何故だ…何故動かない!」


今まで彼は“武装”するとパワーが上昇するが、その直後に激しい痛みが襲い掛かる。


その痛みは毎回増していき、今度は声も上げることなく立ってることがままならない程の激痛に襲われた。


「動け…!」


『やっとこの時が来た…もらうぞ貴様の体…。』

「…!?」


そして何かがプツンと切れたかのように突然左腕から手を離し、糸に吊るされた人形のように立ち上がった。


不審に思った風雅が近づこうとすると、『死神』はゆっくりと顔を上げた。

すると足元から黒いモヤが発生し、全身がそのモヤによって包みこまれてしまった。


身体を包む黒いモヤは竜巻のように回転し、左腕が飛び出して黒いモヤを真っ二つに引き裂いた。


その中から現れた『死神』の姿は、片方だけだった角は反対側にも生え、黒く禍々しい鬼型の亜人となっていた。


「これは…「“激情態”」…!」


「“激情態”」とは自身に宿る式神が暴走し、宿主を乗っ取ることで発動するモードである。

宿主は完全に意識を失い、式神は本能のまま暴れ出す。


「…消え失せろ!」


『死神』の体を乗っ取った『鬼神オーガ』は高く飛び上がり風雅に襲い掛かる。


上空からの拳は回避することが出来たが、『鬼神オーガ』は静かに風雅へ手を伸ばした。

その瞬間に風雅の体に無数の刃物による切り傷が発生し、片膝をついてしまう。


「こいつ…今自分の妖力を刃物にして飛ばしたのか!?しかも目視させることなく…?」


「消え失せろ…!」


風雅は傷が痛みながらも立ち上がって「“鎌鼬”」を発動する。

しかし、不可視の斬撃によって風の斬撃は細切れにされ、本体にも大きく袈裟斬りにされたかのような傷が出来てしまう。

さらには眉間にも大きな傷を作ってしまった。


傷口に触れた後に前を向いた時、目の前からすでに『鬼神オーガ』の姿は無かった。

辺りを見渡してもどこにもいないと思っていたが、すでに背後に立っていた。


気づいた時には既に手遅れ。振り返る隙もなく拳によって体は飛ばされ、コンテナに激突してしまう。


右腕を突き出して「“疾風弾”」を繰り出そうとするが、『鬼神オーガ』は足元の影を伸ばして風雅のガントレットを固定してしまった。


影の力が強く、今まで無傷だったガントレットに小さな亀裂が入り始めた。


「そうか、さっきの瞬間移動も影を使ったのか…式神は術式の本来の持ち主…扱いは長けてるってか!」


鬼神オーガ』はそのままガントレットに縛り付いた影を引き寄せて風雅にトドメの一撃を与えようとする。


しかし、風雅は逆手にとって逆転の一撃を繰り出したのだ。


「“疾風弾”っ!!」


拳が使えない上での右足から放った狼の咆哮が『鬼神オーガ』の胸に直撃した。

その時、『鬼神オーガ』の体の内側に大きな衝撃が広がって咆哮が響く。


そして影はほどけて元に戻り、風雅は体勢を立て直す。

胸を抑えながら影から妖力・月闇を取り出してから刀を振るい、不可視となった刃のオーラを放った。


しかし風雅は避けることなく、真正面から立ち向かい、両手のラッシュだけでオーラを相殺しようとしたのだ。


右腕のガントレットには擦り傷が、生身の左腕は刃によってズタズタに傷ついた。

それでも全て相殺しきったと思った矢先、「“斬月”」が風雅に直撃。


胴体は切断されることは無かったが、肉は横一文字に抉られ、血がボタボタと流れ、瞳から光は消え失せ、体は冷たい鉄の床に倒れた。


モニター越しに見ていた男は大喜びし、花は絶句して風雅を応援していた笑顔が消えた。


「あっ、死んだ?『死神』ちゃんないっす〜!」


「うそ…風雅くん?風雅くん!!起きて、風雅くん!!」


             EPISODE 62「鬼神、激情」完         

           次回 第63話

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