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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『女王を死守せよ。』
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EPISODE 49「懐妊」

怠惰スロウス』の手下である脱獄囚『鉄鼠』の襲撃を回避した風雅たちは花を連れて京都にある特異課の本部へと避難した。


         ーそれから2週間ー


脱獄囚たちの犯罪は不自然なほどに途絶え、他の妖たちもこの2週間悪事を働く者はいなかった。


超常現象犯罪が無いこの現状こそまるで異変だが、花の身にも異変を起こった。



この日、花は微熱と吐き気に襲われていた。全体的にもダルいようで一人でまっすぐ歩くのも難しいようだ。


幸い特異課には椿医師という優秀な人材がいたため、彼を訪ねることにした。


風雅は花に自分の肩を貸しながら歩いていたが、歩くことさえ少し辛そうだと感じ取った彼は花を背負って医務室へと向かう。


「椿先生、昨日の夜から花ちゃんの具合が悪いんです…診察いいっすか。」


「あぁ、良いよ。」


その際花は「お腹のあたりが変な感じがする。」と訴え、それを聞き入れた椿はレントゲン検査を行った。


花の体に向けてX線が放射され、その後画像化を終え、レントゲンした花の体の内部がモニターに映し出された。

モニターを見ながらカルテに記録しようとした椿は画像に目を通した瞬間、ペンが床に落ちた。


椿はすぐに特異課の妖狩エージェントたちを招集した。

風雅たちが駆けつけ椿に花の容態を聞いた。


そして無言で椿は画像化したレントゲン写真を見せた。


「単刀直入に言うよ。花ちゃんのお腹には…胎児の影があった。つまり、彼女は妊娠している…。」


『!?』


一同は衝撃を受けた。知らない内の妊娠、本人もまったく身に覚えのない出来事だった。


「どういう事だよ先生!なんで…なんで花ちゃんの腹に赤ちゃんがいんだよ!」


「そんなの僕も知らないさ!言っちゃなんだが花ちゃんは処女のはずだ、そんな聖母マリアみたいなことが現実で起きるなんてビックリ仰天だよ!」


聖母マリアは処女受胎によりキリストを身籠ったとされる。それと似たような現象が花にも起きたというのか。


「風雅くん、花ちゃんの症状は妊娠4〜7週間の妊婦に起こる症状と似ていたんだ。おそらく吐き気というのはつわりのことだろう。その後も微熱や倦怠感が起こるものだ。」


しかし花が体調不良を訴えのは昨日の深夜のはずだ。妊婦ではないのだ。

琥珀は心配になり、すぐにベッドで横になる花に寄り添う。


「花姉ぇ大丈夫?」

「大丈夫だよぉ。でもお腹がすごいむずむずする…。」


風雅も寄り添い、安心させてあげようと花の頭を撫でた。

男との肉体関係など元から無いし、ここ最近誰かに連れ去られたということもない。ただ謎だけが残った。


何故妊娠したのか、誰の子なのだろうか。

そんなことを考えながらレントゲンの写真を見ていた凱は写真の中のとある違和感に気づき、思わず後ずさる。


「どうしたの凱くん。」


「なぁ…赤ん坊ってこんなくっきり映るもんなのか…?」


花の症状から見て胎児の成長は最低7週目に等しい。

この頃は肉体や臓器が形成される期間であるが、写真はどこかおかしかった。


椿も頭を悩ませていた。


「そうなんだよ。本来つわりや倦怠感は4〜7週目にあることなんだが、写真に写っている胎児は妊娠16週〜19週の安定期の姿なんだ。

それなら花ちゃんのお腹が膨らんでいてもおかしくないのに通常通りなんだよ。」


「花姉ぇ、お腹を蹴られる感覚ある?」


「う〜ん無いなぁ。でも赤ちゃんがいる感覚もない。でもダルい…想像妊娠ってやつ?」


被写体は花本人で、椿が画像加工して妊娠している風に見せている可能性はない。


凱はまだ固まり、冷や汗が頬を伝った。

龍我は動かない凱を見てツンツンと小突いた。

彼の感じた異変はこれだけではなかったのだ。それに気づいた椿も写真を凝視した。


「凱くん何じっと見てんのさ…。」


「おい龍我…なんでこの赤ん坊“笑ってんだ”…?」


モニターを見るとそこに映っていた胎児はニヤリと口角をあげ笑っていた。

胎児は表情をつくるための準備として顔を動かすが、本来24週〜28週になってから現れるものだが、やはりこの胎児はどこかおかしい。


「おそらくそいつは『女王』だ。」


医務室に鴉丸司令官が入室した。どうやら彼は花が身籠った胎児について知っているようだ。


「花、お前が身籠ったのは『女王』の幼体。身に覚えがなくても当然だ。『女王』は『器』の中で成長し、やがて外に解き放たれる。」


今まで術式をコントロールする前に別人のように態度が変わったのは体の奥底に存在した『女王』のせいでもあったのだ。

そして機が熟したのかついに胎児となって花の体に現れた。


「花、少し触れていいか。」

「え、大丈夫ですよ?」


何かを試すために鴉丸は手を伸ばして花の腕を掴もうとした。



     【妾の器に気安く触れるなぁぁぁぁ!】



その刹那どこからともなく謎の怒号が室内に響き、鴉丸の体から血が大量に噴き出した。

今の一瞬のやりとりで腕は愚か腹部や足に傷を刻まれた。


想像以上の出来事に鴉丸は倒れ、風雅たちはすぐに駆け寄る。

椿はすぐに手をかざし、「“万物復元リカバリー”」という術式を使用。

傷は一瞬で完治したが、花は自分がやってしまったと深く落ち込み、すぐに謝った。


「いや大丈夫だ…お前のせいじゃない。やったのは『女王』だ…気に病むな。」


「こりゃ簡単に分離できねぇな。」


花は怯えてしまい、ベッドの上にうずくまってしまった。

風雅は自分も切られる覚悟をしながら近づき布団を被せてあげた。


「ほら、寒くなっちゃうから布団被っときな。」


「風雅くん、私怖いよ…どうすればいいの?」

「大丈夫さ、きっとその『女王』を体から追い出す方法はあるさ!安心して、頼りないかもだけど俺たちがついてる!」


花の手をギュッと握った。それで安心したのか、涙を流しながら「ありがとう…!」と何度も呟いた。


「とりあえず花ちゃんは僕が診よう。君たち妖狩エージェントは花ちゃんを狙う奴らに気をつけてくれ。」


「うす!」


花は椿と鴉丸に任せて、風雅たちは京都周辺に散らばり、脱獄囚たちがいないか見張りをすることになった。


それと同時刻、『怠惰スロウス』含めた最恐の脱獄囚たちが『女王の器』捕獲のため動き出した…。


               EPISODE 49「懐妊」完

           次回 第50話

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