表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『女王を死守せよ。』
50/62

EPISODE 48「金獅子、吼える」

『怠惰』の子分である脱獄囚『鉄鼠』が街中にネズミの式神を放ったことで花の居場所が特定されてしまった。


凱、龍我、琥珀が花を連れて逃走し、八雲兄弟で『鉄鼠』に挑む。


しかし彼の術式は刺激を与えられると己の分身を複製する厄介な能力をもっていたのだった。


下手に攻撃をすればさらに増えてしまう。しかし風雅はいつもの癖で普通に分身体を殴ってしまう。


案の定さらに二人の分身が生まれ、四人になってしまった。


「あっ。ごめん兄貴ぃ。」「この馬鹿っ!」


「チャーチャチャチャ!最強の妖狩エージェントとやらがオツム弱くて助かったぜ!」


「んだと!」


馬鹿にされた怒りで翠緑色のオーラが放出されるが、すぐに雷牙が制止した。

相談の末、なるべく術式や必殺技を使ってはいけない縛りを設けて攻略するしかないと結論づけたが、『鉄鼠』は衝撃的な行動をした。


「そんな作戦ムリムリ!刺激は常に与え続けられるっ!!」


『鉄鼠』は自分で自分の分身を殴り、その分身はまた6人に分裂し、分身が分身を殴って増やすという地獄が繰り広げられた。


「そんなのアリかよ!?」


凱たちの方にも分身の魔の手がせまり、式神であったネズミが『鉄鼠』の分身体に変化した。


凱はすかさず術式で地面を隆起させ、分身たちの行く手を阻む。

しかし、その隆起した地面を分身が積み重なることで崩壊し、さらに分身が増えた。


刺激を与えれば際限なく増えていく。


「兄貴どうすれば…!」


「簡単だ、本体を見つけ出してぶっ倒す。ここには本体はいないんだ!」


『鉄鼠』は一つ墓穴を掘っていた。実は分身体から妖力は放出されておらず、雷牙の目には遠くに白色のオーラが見えていたのだ。


そしてそのオーラは分身が増えていくごとに遠くへ移動している。

雷牙は本体と思しきオーラを追うことにした。


「いいか風雅、絶対にこれ以上増やすなよ!」

「分かってるよ!」


強力な一撃を叩き込めばまた分裂される。ならばどうするか、

分身体が襲い掛かってくれば、デコピンをしたり、手で払うなど簡易的な抵抗をするしかない。


龍我たちも同じような方法で対策をするが、『鉄鼠』は再度自分で自分の分身体を殴り、噛みつき、様々な自傷行為で増やしていく。


数十は数百となり、波のように押し寄せる。


花の背後からと数百の『鉄鼠』の分身体が迫る。

琥珀は彼女の前衛となり「“斥力リパルジョン”」でネズミの大群を弾き飛ばす。


「切りがない、花姉ぇだけでも逃げて!」


「ダメだ!花子が一人で逃げた先でもし仲間がいたらどうすんだ、最後まで諦らめんな!」


花はただ立ち尽くしてみんなに守られているだけ、そんな自分にはもううんざりだ。

でも自分には一体何が出来るのか、そんなことを悶々と考えながら服の裾を握りしめた。



「キミの熱血演説はごもっともだけどね、花ちゃんはもうキミたちにただ守られるだけの女王さまじゃないんだよ。でしょ?花ちゃん!」


龍我の一言が花に発破をかけた。

以前の妖力操作の修行を基に、花は龍我から力の使い方を学び、術式の基礎・応用までを学ぶまでに至っていた。


花は服の裾から手を離し、目つきが変わった。


「そう、私はもう守られるだけじゃない、皆を守る!私は私のままこの力を…使う!!」


花の体から水色のオーラが溢れ出した後、血のようなものが下からボコボコと音を立てながら赤色のオーラへと変わった。


その気配は匂いとなって風雅の元へと届いた。

その匂いは花から発せられた物とは思えないほど血生臭く、不穏な匂いがした。


「花ちゃん…なのか?」


花の掌には球体状に圧縮された血液が現れ、それを分身体の一人に投げつけた。


すると球体の血液は輪へと変化し、分身体の一人を拘束したのだ。


その際の刺激で再び分裂しようとするが、その輪に拘束されていることと、

刺が生えたことにより、分身体は四方八方から貫かれた結果、抜け出すことはできず、完全に固定することができたのだ。


「八番・“いばらの刺輪”!」


「これが花姉ぇの術式!」


「前より使いこなせてるね花ちゃん!」

「やった、先生に褒められたぁ!」


しかし恐らく術式に使うのは自身の血液。連続して使えば彼女の身が危険に陥る。


今の彼女では「“八番”」を使用しただけで膝をついてしまう。

そんな時、凱たちの背後で爆音が轟き、複数の分身体が宙に舞い上がった。


凱は一言「嘘だろ…。」と言って足を一歩下げた。

そのせいでさらに分身は増えるがその轟音の主はそれでも止まらずに『鉄鼠』たちを舞い上げ続ける。



一方本物の『鉄鼠』はありったけの分身体を出して妖狩エージェントを翻弄し、路地裏から逃走を図ろうと全速力で走っていた。

しかし雷牙にはそんなものは通用しない。


最速の妖である彼は一瞬で『鉄鼠』に追いつき、後頭部を掴んで地面に擦り付けた。


「よぉ卑怯者…。」


「お前、なんでここまで!」


「お前のオーラがダダ漏れだったんだよ、分身作るのに集中力割きすぎ。妖力を高めてた自覚なかったろ?」


雷牙の予想はほとんど的中。後から自分の失態に気づいた『鉄鼠』は声を震わせながら冷や汗をかく。


「うわ、汚ね。」と手を離した後、『鉄鼠』は何を好機と見たか、すぐに彼を振りほどいて分身を作り出した。


「どうだ?攻撃してみろよ、攻撃すればするだけ無限に増えるぜぇ?チャーチャチャチャ!」


『鉄鼠』の独特な笑い方を気にも留めず、背中から二振りの太刀“雷切”を抜いた。

雷牙の顔はずっと変わらない、ずっと静かに怒っている。


「お前の攻略方法はわかったぜ?」


と言って“雷牙”を離し、地面に落としたのだ。

降参すると思った愚かな脱獄囚は雷牙を嘲笑った。


すると雷牙の体から青い電撃と黄金のオーラが立ち昇った。

オーラ自体も雷のようにバリバリと音を鳴らし周囲に緊張が走る。


「俺の式神は『雷獣』ってんだ。『雷獣』は決まった形を持たない亜人だ。

俺の精神次第で形は変わる…さてここでお前に質問だ。『雷獣コイツ』は、今どんな形をしていると思う…。」


『鉄鼠』の前に『雷獣』が出現し、その姿を見た彼は顎が外れるほど口を開き、鼻水を垂れ流した。



その時、本体の精神状態に触発されたのか、分身たちの動きが緩慢になった。


しかし先程まで分身体たちを宙に吹き飛ばしていた主の姿が見えたのだ。

凱と龍我はその姿をはっきりと捉えた。


白い和服に長い黒髮、そして今にも抜刀しようとしている構え、『死神』である。


「やばい…やばいやばいやべぇのが来んぞ全員伏せろぉぉぉぉぉ!!!!」


凱が花たちに声を掛けた直後、『死神』が超高出力の「“斬月”」を放った。


赤黒い巨大な三日月がビルを巻き込み、分身体たちを真っ二つにしたのだ。


刺激が加わった。

しかし分身体たちは分裂せずにその場で黒いモヤになって崩れ去った。


幸い花たちは凱の呼びかけで伏せることで「“斬月”」を回避することが出来た…が、凱は頭頂部の髪の毛がごっそり消えていた。


それを見た龍我は涙を流しながら笑い転げた。


「ぶるっはははははっwwなんじゃそりゃ!ハゲたwハゲw!」


「このガキ、ぶち殺してやろうか!!」



『死神』は遠方に凱たちがいることは把握していた。もちろん『女王の器』である花も。

しかし彼は刀を納め、その場から立ち去った。



『鉄鼠』が固まるほど怯えた雷牙の式神『雷獣』の形。それは電撃を纏った金色の獅子であった。


咆哮一つで固まった『鉄鼠』は吹き飛び、二体の分身体が雷牙に襲い掛かる。


「『雷獣』、“武装”…!」


“武装”と唱えると『雷獣』は咆哮を上げて雷牙に吸収され、目元に雷の痣が、頭部には金色の角が出現。

『雷獣』の“武装”は両足に装着されたアンクレット。


妖狩エージェント:『雷獣』…ゲームスタート。」


常に足から電撃を放ち、向かってきた分身体の一人の胴体をたった一発の蹴りで消滅させた。


「ひっ!なんで…なんでだ!」


「俺の仮説が当たったな。こいつら分身体は並の刺激を与えれば分裂するが、それを超える“致命傷”になりうる刺激を与えれば式神は分裂出来ずに消滅する!」


雷牙のアンクレットは通常のキックを放ったと同時に強烈な電気ショックを相手に浴びせる。

両足に雷を纏っているような物だ。


回し蹴りで最後の分身体を撃破。さらにクラウチングスタートの構えを取り、溜め込んだ力を全て解放した。


自身が貫かれた映像が頭に映った瞬間、己自身が雷となった一撃が『鉄鼠』を貫いた。


         「“神速・神鳴”!!!」


全てが一瞬で片が付いた。貫かれた穴は熱で解け、キックした後の着地は火花が散り、『鉄鼠』は苦しみながら爆散した。


その際雷牙は振り返ることなく、『鉄鼠』の撃破を確認した。


「ゲームオーバーだぜ?ネズミ野郎…。」


風雅は花たちと合流し、『鉄鼠』撃破を確認した。


「このままでは危険だ今から全員で京都の本部へ向かうぞ!」


「了解。」

「行こう花姉ぇ!」「うん!」


と走り出そうとした瞬間、花は異変を感じ、立ち止まった。

しかしその異変は一瞬だったのか、特に気にすることなく走り出した。


      今、彼女の中で“何か”が胎動する



           EPISODE 48「金獅子、吼える」完

           次回 第49話

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ