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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『黒光りの偽善者を駆除せよ。』
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EPISODE 44「神速のG」

ミッションのない日曜の午後。琥珀はソファでくつろぎながらポテトチップスの袋からお菓子を探りながらテレビを見ていた。


「あはははっ!やっぱおもれーめちゃイケ!」


そのときだった、彼女の目線の先、テレビの右下に蠢く影があった。


黒く光る体に長い触覚、そして素早い動き皆の注目をかっさらう

そいつの名は


              G


真っ先にその生命体が視界に入った瞬間、瞳孔が縦に広がった。

すぐにソファの上に駆け上がり、無意識に『猫又』を“武装”して無駄な臨戦態勢に入った。


(こ、ここここいつは…みんなが大嫌いなGゴキブリ!どうしよう…早く花姉ぇたちを呼びに行きたいけど声を出したらヤツが動いちゃうわ…!)


いっそ“重力グラビテーション”で潰してしまおうかと考えたが対象が一瞬で全画面モザイクになる未来が見えたのですぐに右手を引っ込めた。


そのとき、花と風雅が戸を開けてリビングに入ってきてしまった。

二人が来て安堵したのか咄嗟に大きな声を出してしまった。


「風雅、花姉ぇ!」


「どした琥珀。」

「ヤツが、Gが…!!」


二人の視界にもヤツが映った。Gは行動を開始し、六本の小さな足を高速で動かし、風雅の方へと向かって目の前で飛んで見せた。


「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!」


と聞いたことのない汚い大声を出しながら花を抱えて部屋の隅に逃げ込んだ。


「何やってんのよ捕まえなさいよ大人でしょ!?」


「大人だからって何でも得意だと思うなよ!?虫だけは、Gだけは絶対無理ムリ!!」


風雅もGが大の苦手で無意識に『神狼』を“武装”していた。

竜巻を作って拘束しろと琥珀は叫ぶが、風雅は恐怖で頭が回らず術式操作が上手くいかない。


「風雅くん、琥珀ちゃん私がなんとかしてみる…!」


花は立ち上がり、龍我との特訓で学んだ妖力を纏う基本技を使って代わりに自分が食い止めようとするが、やっぱり無理で琥珀の登っているソファに上がってしまう。


Gは縦横無尽に動きまわり、三人をビビらせる。

そして羽を展開し、風雅の顔に飛びつこうとした。


「何で俺ばっかりなんだよ!」


眼前に迫った時、突如室内に雷が落ち、Gを直撃した。

黒い体はさらに黒く焦げ、煙を上げながら床に落ちた。


「おぉ兄貴、救世主よ!」 


「ったくこんな虫一匹に何ビビってんだお前ら。」


「普通の虫は苦い顔するよ、でもヤツら黒光り軍は違う!絶望だ、何しても死なねぇんだよ!」


風雅は雷牙の足にすがりつきながら訴えるが、けだるそうに流して自室へと戻っていった。


「ま、殺してくれたことには感謝ね。で、誰が後片付けするの…?」


『!?』


琥珀の一言に、彼女を含む三人の脳内に電流が走った。

そして三人は拳を握り、睨み合い同時に繰り出した。


  「……男気ジャンケンじゃんけんポン!!」


負けたのは風雅ただ一人。ビニール袋に手を突っ込んで、目を瞑りながら死骸を回収。すぐに縛ってゴミ箱へとスリーポイントシュートをかました。



            ー翌日ー


風雅はとある現場に呼ばれていた。

都内にある公立の高校である。校庭は黄色いテープで仕切られ、刑事たちが操作をしている。


風雅はバイクで高校に入り、駐車場に止めてからテープをくぐった。


「お疲れさんっす、特異課でーす。」

「アタシも特異課でぇす。」


「『神狼』さん、『猫又』さんお久しぶりです。」


刑事たちは風雅たちに挨拶をして、事の経緯を聞いた。


「なんかあったんすか。」


「えぇ、この高校の生徒5人が校庭で遺体となって見つかったんです…男子生徒の一人が第一発見者とのことです。」


「その子は今どこに?見た所生徒は誰もいないはずだが。」


「臨時休校ですよ、さすがに人が5人も死んでるんでね。」


被害者はこの高校の生徒でかなりの問題児たちだったようだ。

三人は校庭の中央に埋められ、一人は木の中に全身が折り畳まれるように入れられ、最後の一人は校舎の壁に埋められていた。


「うっわ酷いわね…ねぇ風雅、」


「あぁ、紛れもなく妖の仕業です。人間業じゃないっすよ。」


二人は5人の遺体を確認し、手を合わせた。


「こんなクズでも命は命だ…弔ってやることでこの世に未練が残らないようにしないとな。」


風雅は後ろに琥珀を乗せ、刑事たちに挨拶をしてバイクを走らせた。


「ねぇ、どこ行くの?」

「第一発見者だよ、住所は一応聞いといたらしいから話を聞いてみるわ。」


風雅はその学生の住むマンションに到着し、インターホンを鳴らした。

しかし三回鳴らしてもその学生は出てこなかった。


「高木くーん、高木くーん?

おっかしいな、親が出るはずだが…それにずっと焦げ臭い匂いがするぞ?お前もなんか感じな…」


琥珀の方を向こうとして顔を横に動かした時、風雅の顔は一気に強張った。


「?どしたん?」


「後ろ…志村(琥珀)後ろっ!!」

「へ?」


琥珀の背後には人型の黒光りをする謎の妖が今まさに彼女を襲撃しようとしていた。


「!?」


妖は琥珀に向けて拳を振り下ろすが、彼女は瞬時に回避し、マンションの廊下はそのパワーで凹んだ。


「ちっ、」


妖は舌打ちをして、ツヤツヤとした羽を展開し、屋上へと上がっていった。


「行くぞ琥珀!」

「え、あれジー…。」


二人は屋上に上がり、その妖の全身が見えた。


黒く光る巨大な外殻、長い触覚、マッシブな肉体…そう、人型のGである。


「……オオェェェェ!!」


「吐いたぁぁぁ!」


その解像度の高さと不快感が10倍になった見た目を見て琥珀は屋上で嘔吐してしまった。


「お前たち、『死神』殿が言っていた妖を狩る妖狩エージェントか!」


「だったらなんだよ…。」


「ただでさえ少ない同族を殺すとは何という奴らだ…この正義の執行人『スーパーG』が成敗してくれよう!」


といちいちかっこつけたようなポーズをとりながら話す『G』に風雅はイライラした。

さっきの焦げ臭い匂いは『G』の気配だったのだろう。風雅は妖の発する独特な匂いを嗅ぎ分けることができるのだ。


「なんと私のこの黒く光る美貌に吐いてしまったのだね可哀想に…!」


「あんたがキモくて吐いてんのよ…アゴジリジリさせながら話すのやめなさいよリアル過ぎるのよ!」


風雅だってGのことは超がつくほど大嫌いだ。しかし不審な妖は無力化しなくてはならない。


「悪いけど、ちょっと大人しくなってもらうぜ?(冷や汗)」


直接触れたくないので風の刃「“鎌鼬”」を足から繰り出す。


しかし『G』の体は「“鎌鼬”」をすり抜けた。


「残念、残像だよ青年!」


風雅の背後には『G』の本体がおり、蹴りを繰り出して彼を吹き飛ばした。

身体能力はGの強化版、その蹴りは重く、屋上の出入り口のドアにぶつかるまで威力を殺すことは出来なかった。


琥珀の隣には風雅ではなく『G』が成り代わっており、一気に寒気がした。

本能的に『猫又』を“武装”して二又の尻尾にクナイを掴ませて切りつけるが、『G』は軽々と回避した。


さらに妖力で作られた『猫又』の尾を掴んでから振り回し、風雅の元まで投げつけた。


風雅はすぐに風のクッションを作って琥珀を受け止めた。


「さいっあく!アイツに尻尾触られたんだけど!?」


「こりゃ嫌々言ってる場合じゃないな…“武装”!」


その様子を別のマンションの屋上から『死神』が覗いていた。


「奴の術式 ー「超速クイック」ー は文字通り超高速で移動する能力だ。

その速さは世界一だ、誰も奴に追いつくことも捉えることもできない。見た目はアレだがな…。」


“武装”した二人でもまるで弄ばれるかのように扱われ、『G』に手も足も出ない。


「やばい、だんだん不快感だけがたまっていく…!」


「しかもアタシたちに攻撃当てた時にポーズ決めるのがね…。ヒーロー気取りかしらゴキの分際で!ヒーローならバッタにしなさいよね!?」


「バッタは災厄の使い。ゴキブリはその圧倒的なスピードで相手を翻弄し、闇に紛れ悪を討つ…ヒーローならゴキブリが優れているのだ少女よ!」


「いやバッ◯マンとかいるし…。」


そして『G』は風雅たちにクネクネと体を動かしながら迫ってくる。

そのとき、何者かが『G』に蹴りを入れた。


「二人が苦戦してるなんて珍しいね。」


「龍我!」


蹴りを入れたのは妖狩エージェント:『青龍』、龍我だった。


「ほう、君も妖狩エージェントか!」

「げっ、ゴキブリ…!」


龍我は超高速の『G』のパンチを回避し、胸に発勁を繰り出す。


「ホワタァ!!」


さらに拳法を使って先程まで攻撃出来なかった『G』にダメージを与えていく。


「ほらほらもっと頑張りなよ!キミこのままだと死んじゃうぜ!?」

「くっ!」


『G』は術式を使用、先程まで当たっていた拳法が全て回避され、残像に翻弄された上に背後から重たい一撃を食らった。


さらに蹴り飛ばされマンションから落下してしまうが、“武装”を発動し、体から生えた五匹のミニ龍たちが外壁に顔を突っ込んで転落死することなく、地面に降りた。


「ありがとみんな。」

『ミーミー!』


そして“武装”を解除し、上を見るとすでに屋上から『G』の姿はなかった。


「すまん龍我、取り逃した。」


「いいっすよ先輩、オレの不覚です。」


その後作戦室に帰還し、雷牙に事件を報告した。


「昨日も今日もG退治か、大変だな。」


「頼むよ兄貴、この中で一番強いのあんたなんだからさぁ!」


と風雅は手を擦って頼み込むが、雷牙はまったく意に介していない。


「そんなの昔話だよ、今の俺に戦えるほどの技量はない。」


「俺が暴走した時は『死神』から守ってくれたクセに。」

「あん時はお前が死ぬと思って動いただけだ。ダルいんだよ…まったく。」


かつては風雅と肩を並べるほどの強者、いやそれ以上の実力を持っていたはずだが、人間を守ることに嫌気が差し、「ダルい」と言い訳をしてはネットで配信する日々だ。


「ま、あのゴキブリ野郎のことは調べといてやったから、そのサイト見とけ。俺は今から古龍種一狩りしてくる…!」


雷牙は新型のノートパソコンという機械で、怪しいサイトを閲覧した。


琥珀と龍我も一緒に閲覧することにした。


「なになに。「嫌いな人処刑します。Gサービス」?なんじゃこのサイト…。」


「どうやら殺してほしい人間の名前を書いたら殺しに来るっていうサイトね。今どきこんなの使うやついるのかしら?」


「書き込んだやつがいたからあんな事件が起きたんだろ?今のところ書き込んだ依頼人は一人…高木…?」


龍我がその名前を呼ぶと、二人は急に目をかっぴらいてサイトに顔を近づけた。


「高木って第一発見者よね…?」

「どうりで怪しいと思ったぜ…居留守使ったろコイツ。」


二人はすぐにバイクに乗って再びあのマンションへと向かった。


龍我は他のミッションがあったのでそちらへと向かう。

花は雷牙の部屋におり、彼に対して質問をする。


「ねー何で風雅くんたちに協力してくれないのー?」


「ダルいからだよ…俺はこうやって裏方作業やってるほうが楽なんだよ…。」


「じゃあ風雅くんたちが手に負えないような奴が出てきたら?それでもダルいって言うの?」


と優しく言われ、コントローラーを動かしていた指が止まった。


「どうだろうな…でも力にビビって言い訳して逃げてるクソオタクにあまり協力を求めない方がいいぞ。」


「私お菓子持ってくるね、お腹すいたでしょ?」

「おぉ、ありがと…。」


花はこれ以上空気が重くなるのを避け、部屋を出ていった。

モニターを見つめる雷牙の目はずっと座ったままだった。


             EPISODE 44「神速のG」完

           次回 第45話

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