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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『濃霧の屋敷を探索せよ。』
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EPISODE 42「我が家」

上京して一人暮らししている人、寮ぐらしで家族と離れて暮らしている人、家が恋しくなったことはないだろうか?

いわばホームシックというやつだ。


今回の超常現象はホームシックに関するものである。



龍我は作戦室に隣接する訓練室で一人、自分の肉体と術式操作を磨いていた。


鴉丸から『死神』の過去とデイブレイクを引き起こした七人の妖の話を聞き、このままでは自分は弱いままだと思ったのか、あれから休むことなく修行し続けている。


「はぁ…はぁ…妖狩エージェントの中で一番弱いのはオレなんだ…!先輩はもちろん強い、琥珀は心も強い、認めたくないけど凱くんだって日々成長している…。もっと、もっと強くならなきゃ…」


「そーんな思い詰めちゃ自分が壊れちゃうよ。うわーすごい湿気…。」


いつの間にか花が背後にたっていた。


「(え…気配感じなかった。)花ちゃんどうしてここに?」


「いやー私も何か力つけないとなーって!あはは…。」


花は空気清浄機を持ってきて一瞬で龍我が濡らした訓練室を除湿してくれた。

そして水の入ったペットボトルを龍我に投げた。


「雷牙くんから聞いたよ。龍我くんの術式って妖力と水分で成り立ってるんでしょ?訓練室行くなら水持ってけって雷牙くんが。」

「ははっ…なんか悪いね。わざわざ持ってきてもらって…。」


龍我は座り込んでペットボトルの水をごくごくと一口で飲み干してしまった。

あまりの飲みっぷりに花は拍手をしてくれた。


「でさ、何で龍我くんは強くなりたいの?」


その質問をされた龍我は口からペットボトルを話して話してくれた。


「ん?あぁ…オレ元々体が弱かったんだ。小走りしただけでバテる位でね、でもオレには尊敬できる兄さんがいたんだ。」


龍我の兄は妖だった。しかも術式は水を操るという能力。

体の弱い龍我に兄は言った。


「いいか龍我、他の人を守れるくらいうんと強くなるんだぞ?」


「別に強くなるだけでよくない…?なんで関係ない人まで守らなくちゃならないの?」


「理由なく振るう力はただの暴力に過ぎない。誰かを守ってこそ力の真の意味を理解するんだ。お前にもいつか分かるよ。」


その兄はデイブレイクの際、龍我を庇い兄弟共々死亡した。

そして龍我が妖として覚醒し、兄の術式が自分に宿っていた。


「それ以来オレはこれ以上妖の被害者を出さないために誰よりも強くなることを決めた。」


「お兄ちゃんの意志を継いでいるのね。ねーねー私に強くなる秘訣教えて!お願いします!」


花は土下座をして龍我に頼み込む。


「オレ難しいことは教えられないよ?」

「いいの!妖力のコントロールとかでいいから!」


龍我は渋々OKを出して花に教えを授けることになった。


一方、風雅と琥珀はとあるミッションのため、霧の濃い街へと訪れていた。


「ていうか、こんな廃れた街にどういうミッションなのよ…。湿気すご、防護服の肩ベタベタすんだけど。」


「文句言うなよ俺も湿気は大嫌いだ。」


前も後ろも見えないほど濃い霧が二人の行く手を阻み、進むこともままならないが、彼らの目の前に大きな屋敷が現れた。


「風雅、こんな家あったかしら。」


「どうやらココが目的地らしいぜ。」

「え゙ぇ゙ぇ゙!」


木造建築で築80年はありそうな巨大な屋敷だが、不可解な点があまりにも多い。


先程はなかったのに突如二人の目の前にこれほどまで大きな屋敷が顔を出した。

地面は舗装されたアスファルト、道のド真ん中に家が建っているわけがない。


「めちゃくちゃ怪しいわね。」


「ともかく入るしかねぇだろ、妖狩エージェント:『神狼』、『猫又』、ミッションを遂行する!」


風雅は宣言した後にも戸に指を掛けて開けようとしたが、途中で腕が止まった。

琥珀がどうしたのかと聞くと


「なぁ…こんな時に言うのもなんだけどさ、家族に会いたいって思わないか…?」


「はぁ?何よ急に。」

「いや、ほらホームシックってやつだよ。なんか久々に思い出しちゃってね、母さんを。」


「家族…ねぇ…。」


琥珀の脳裏には母と手を繋いで仲良く買い物に出かけた記憶と自分を被って死んだ記憶が同時に映った。


「…生きてたら会いたかったわね。」

「…同感。」


風雅は本題に戻り、戸を最後まで開け、二人は家の中へと入っていく。


「こんにちはー特異課でーす。」

「こにゃにゃちわー。」


玄関や内装は一般的な日本家屋と変わらず、不思議と思い入れが湧いてきた。


「なんか田舎のおばあちゃん家って感じね。」


「なんだこの不思議と温かくなる感じ…実家に帰ってきたみたいな…なぁ、琥珀はどう思…琥珀?」


玄関を抜け、廊下を歩いていると隣に琥珀の姿はなかった。

嫌な気配を感じた風雅は廊下を駆ける。


廊下が延々と続き、両側にある襖も置物もいくら走っても配置が変わっていない。


「琥珀!どこだ!」


走るのは諦め、襖を片っ端から開けて部屋を一つ一つ確認していく。


(怪異の類!?いや、術式か…?)


そしてとある襖を開けた瞬間、風雅は唖然とした。


彼の目の前には今は亡き母が畳の上に座っていたのだ。


「母…さん…。」


「あら?おかえりなさい風雅。あなたの帰りをずっと待ってたのよ?早くお夕飯食べましょ。」


「あっ!やっと帰ってきたな!?お母さん待たすなよ風雅。」


母の隣には幼い兄・雷牙の姿もあった。


その衝撃的な光景を一度受け入れようとした自分の頬を叩いた。


「何惑わされてんだ俺。これは術式、騙されてんだ早く気づけ俺!」


「もぉ自分のお顔叩いちゃだめよ風雅。早く座って。一緒に食べましょ。」


(足を下げろ…畳に伸ばすな!母さんは死んだ、兄貴は家でポテチとコーラ流し込んでる…!)


         「うん、いただきます!」


風雅は先程までの焦燥感など忘れ、部屋の中へと片足を突っ込み、母親と食卓を囲んだ。


体は子供に戻り、物騒な防護服も子供服となる。いつも巻いている赤いマフラーはさらに新品のようになっている。


「風雅、お夕飯だからマフラー外しなさい。」


と優しく注意してくれた母の声色に惑わされ、マフラーを外そうとした。


(外すな俺…これを外したら完全に持っていかれる!絶対外すな!)


「はーい、ごめんなさーい。」

(アホっ!クソガキ!)


その暴言を基に風雅の意識は沈んだ。


「お母さん、今日のご飯なーに!」


「今日は貴方たちが好きなすき焼きよー。」


「夏なのにアツアツのすき焼き!?」

「そりゃすごいねママ!」


     母・八雲 イブキはいつもどこかズレていた



一方、琥珀は風雅と同様屋敷の中を駆け巡っていた。


「風雅!?風雅どこーー!」


どうやら二人とも同じような状況でありながら違う現象にあっているようだ。


風雅の世界からは琥珀が消え、琥珀の世界から風雅が消えている。


そして風雅と同様片っ端から襖を開けていく。

最後の襖を開けると、違う一室に変わった。


琥珀の体は固まった。

襖に掛けた指も固まって離れない。


「アパート…!」


琥珀は目を見開いたまま、吸い込まれるようにアパートの一室を模した部屋へと踏み入れてしまった。


中は処理していないごみ袋が溢れかえり、母親と思しき女性はそっぽを向いてタバコを吹かしていた。


「違う…アタシのお母さんはこんな人じゃない…!綺麗好きでタバコなんて吸わない…アンタ誰よ!」


「あぁもううっさいわねブツブツブツ!」


母親は灰皿を子供になった琥珀に投げつけ、顔を掠った。


「っ!」


術式を使用しようとするが、何も発動しなかった。

子供に戻っていただけではない、人間にも戻っていた。


その反抗を基に琥珀の意識も奥底へと沈んだ。


               EPISODE 42「我が家」完

           次回 第43話

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