EPISODE 0 前編「妖狩(エージェント):『零』」
『死神』と対峙した凱に詰められた鴉丸は妖狩全員を集めた。
『死神』のこと、自分のこと全てをここで言うと決めた。
皆が固唾を飲んで鴉丸の話を聞く。
その時衝撃の一言が飛び出した。
「俺は元々、財団HANDの研究員だった…。」
「っ!?」
「は?!おやっさんが!?」
「ボスが元々財団の研究員!?その顔で!?」
「うるせぇガキ共。話を戻すぞ…俺はとある被験体の子供の教育担当だった…。」
ー20年前 1990年 7月ー
生まれた時から10歳の子供と変わらぬ体躯を持っていた少年は日々人体実験にさらされ、体も心もボロボロだった。
そして外の世界も知らず鉄の檻でいつも膝を抱えていた。
その少年は血のように紅い瞳に床に着くほどの長い黒髮を持っていた。
心が壊れてしまった影響なのか虚ろな目で酷いクマを掘ってしまっていた。
7月のとある日、鴉丸が彼の新たな教育担当者になった。
その前に先輩の研究員から一つ忠告を受けていた。
「気をつけろよ、新人。0号は触れると相手の生命力を吸うからな。」
「へーい。」
当時の彼は26歳。周りの人間たちは皆無表情で抑揚のないロボットの喋り方をしていて気持ちが悪かった。
新人だったこともあって感情は完全には死んでいなかった故に周囲からは浮いていた。
「よぉガキ、お前名前なんだ?」
鴉丸は少年の目線に合わせて腰を落とした。
「俺は…0号。」
「それは名前じゃねぇ番号だ。…そうだ、お前に名前付けてやるよ!」
少年はずっとうつむいて聞く耳を持たなかったが、鴉丸はそんなのお構いなしで話し続けた。
「名前…名前…そうだ!いいか、お前は今日から0号じゃねぇ“神牙”だ!」
「!?」
0号改めシンは名前与えられたことに衝撃を受け一瞬だけ目に光が宿った。
「神牙、俺の…名前…!」
「0号なんて人の心ねぇ名前名乗んな!」
「そこで出会った神牙こそ後の妖狩:『零』であり…断罪者『死神』の過去だ…。」
その後も鴉丸は神牙と交流を深めていった。次第に神牙側も心を開き、積極的に話しかけるようになった。
二人は同じ檻の中で体育座りで雑談するのが日課だ。
「鴉丸…何故お前は財団にいる?ここの人間は機械のような連中ばかりなのに…。」
「借金返せなくてバイト探したら詐欺られた…外の世界とは全然ちげぇや。」
「そうだな…帰りたい…。」
話しによると神牙はとある因習村出身なのだが、6歳の時に生贄にされたことにより妖として覚醒。
術式の暴走により村も人も自分の名前さえも闇に葬ってしまった。
「そして財団に捕まり、実験の日々…術式もこの枷で封じられ…抵抗も出来ずに傷だけが増えていく…。」
10歳とは思えない達観した話し方に唖然とするが、神牙の身の上話を隣でずっと聞いていた。
教育担当として毎日読み書きを教えたり、外の世界で流行っている物も教えた。
「鴉丸、この灰色の四角はなんだ。」
「あぁ、スーパーファ◯コンだ。これで色んなゲームで遊べるぜ?」
「神牙、THE BLUE HEARTSの「情熱の薔薇」を聞け、テンション上がるし元気になるぞ。」
しかし平和な時間はいつまでも続かない、事あるごとに人体実験を施され、ボロボロになって帰ってきたは鴉丸が抱きとめた。
「鴉丸…また我慢してやったぞ…殺さなかった、偉いだろ…!」
「あぁよく頑張ったな…!」
そしてとある日、神牙は声も出ないほど疲弊した状態で帰ってきた。
体には酷い青痣が出来ており、出血もしていた。
どうやら反抗した相手が財団の上位の人間であり、一方的に殴られたようだ。
感情が死んでいるくせに凶暴性は誰よりも人間のようだ。
ここから鴉丸は財団を潰すために計画を練るようになった。
一人の友のために…
「手始めに俺は財団の持つ空間転移の技術を盗んだ。」
「それって…。」
風雅たちの目線の先にあるのは白いワープドア。これはThe Backroomsのような怪異を利用した扉である。
「元は財団の技術だったのね…。」
「その後も特殊防護服の素材、特異課の基盤、ルール、全て俺一人で秘密裏に作った。」
鴉丸は神牙に取り付けられていた両手の枷を外した。
「鴉丸、何をしている!これを外せば俺は…」
「自分の力を恐れるな神牙…こんなクソ組織潰してやろうぜ!」
そして二人は研究所を抜け出し、組織から抜けようとした。
その時、財団メンバーが彼らの前に立ちはだかった。
「鴉丸、騒ぎを起こしたのはお前か。0号は我々の計画に必要不可欠なサンプル。返してもらおう。」
「こいつは0号なんかじゃない、“神牙”だ!こいつだって立派な人間なんだ!」
神牙は自分の名前を由来を聞いたことがあった。
「鴉丸、なぜ神牙などという厳つい名前なのだ…?」
「あ?それはな、神を殺すための牙をお前は持ってるからだ。」
今ならはっきり分かる気がする。財団は自らを神か何かかと勘違いしている。その神を殺す牙になる時が来た。
「鴉丸…下がっていろ、俺が全て壊す…!!」
神牙の体からは紫と黒のモヤが溢れ出し、大声を上げた。
彼の背後に現れし亜人は鬼の如く筋骨隆々で禍々しいオーラを放っている。
「これが俺の式神…『黒鬼』!」
すると一人の研究員が膝をついて『黒鬼』を崇め始めた。
「おぉ…これが「PROJECT:ZERO」の最高傑作!!お前のために他の子供をどれだけ犠牲にしたか!」
「お前ら…神牙以外の子供たちも殺したのか…!!」
「『黒鬼』、潰せ。」
『オォォォォォォ!!!』
『黒鬼』は俊足の拳を振り下ろし、崇めていた研究員を潰した。床に血肉が散る。
それに怯えた他の研究員は逃げ出そうとするが、禍々しいオーラを纏った神牙が単身突っ込み、全員の首を蹴りで跳ねて殺害した。
「鴉丸…俺はこの場所を消す…!」
そして神牙の驚異的な力により、この研究所は地図からも世界からも地球からもその存在を消された。
「かつての神牙の能力には全てを闇に飲み込むという特性があったが、成長と共に調整されたのか消えてしまった…。」
「じゃあ何だ、『死神』…神牙は俺たちの大先輩にあたるってのかい?」
「そういうことだ…では次に、「デイブレイク」について話そう…!」
ー研究所壊滅から10年後 2000年ー
鴉丸は神牙と共に「特異超常現象捜査課」を作った。
初期のメンバーはかつて財団HANDに所属していた者たちで構成されていた。
さらに妖狩という精鋭を作った。
数字は刻まれていないが風雅たちが現在座っている円卓も作成した。
20歳に成長した神牙は長い黒髮を束ね、黒い特殊防護服のプロトタイプを装着し、妖刀である「月闇」を腰に差していた。
「鴉丸、妖狩は俺だけなのになぜ10席分もあるんだ…。」
「これから増えるんだよ…俺は皆から笑顔や自由を奪う妖が許せない…俺とお前、そしてこれから生まれる後輩たちと一緒に戦うんだ。」
その時、作戦室に置かれたFAX付き電話機から一枚のFAXが出てきた。
手に取り内容を確かめる。
『妖魔を撃破せよ。』
「どうやらミッションのようだな。」
「では行ってくる、妖狩:『零』…ミッションを遂行する!」
EPISODE 0前編「妖狩:『零』」完 後半へ続く
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