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妖狩:特異超常現象捜査課  作者: 定春
『珍獣を調査せよ。』
36/44

EPISODE 36「予言獣:『件』」

もし自分の未来が視えたら、あなたは喜びますか?落ち込みますか?


また、他人の未来も視えたら…あなたは喜びますか…恨みますか?


この日、特異課にとある奇妙な生物が収容された。風雅や凱たち妖狩エージェント全員が鴉丸に案内されその生物を見に行くことになった。


          『珍獣を調査せよ。』


特異課には珍獣や呪物を収容するための監獄も設備されており、その一室に目的の珍獣はいる。


他の檻は金属製で入り口に強化ガラスが取り付けられているがその珍獣の収容されている檻は金色のふすまが取り付けられ、いかにも荘厳な雰囲気だった。


「おっさん、なんでここだけ違うんだ?」


「どうも“本人の希望”でこの部屋を用意してくれと言ったらしい。」

「あっ喋るんだ。」


鴉丸はゆっくりとふすまを開け、座敷へと入っていくその後に風雅たちも座敷へと上がっていく。

そして例の獣を見た瞬間、皆は言葉を失った。


座敷の中央にいたのは、半人半牛の不気味な生物。生まれたばかりなのか、わずかに血が付き、体は湿っている。

顔は生まれたばかりの乳幼児ではなく、三歳児ほどの丸い輪郭で全てを飲み込みそうな大きな瞳を持っていた。

体は子牛ほどの大きさだ。


「鴉丸…こいつは『くだん』だ…!」


「風雅くん、くだんって何?」


          ー『件』ー

『件』とは半人半牛の「妖怪」と言われる物の怪の類である。

災いが起こる前兆にこの世に生まれ、予言を遺し、死亡する。


「御名答…私はあなた方の言う『件』という生物で間違いありません。」


と『件』は口を開け風雅に応える。驚いた妖狩エージェントたちは驚いて鴉丸の体の後ろに隠れる。


「お前ら妖狩エージェントだろ、いい歳こいた大人が何ビビってんだ。」


琥珀はひょっこりと覗いて


「アタシ現役14歳ー!」


と訴え、風雅たちも顔を出して


「俺たち現役20代ー!」

と訴えた。


「お前らだけ確実におっさんへの道歩んでんだろ。」


「皆様愉快ですね。私が怖いのも無理はありません…私が生まれた時、両親は私を殺そうとしました…。」


風雅は上手く隠れようと凱たちを押しのけていたが、その話を聞いた時、手を止め、『件』の前に近づいた。


「いやまぁ正直言うと怖いけどさ、そこまでって感じかな…仕事柄お前より怖いやつはめっちゃいるよ。」


「そうですか…はっ!」


その時、『件』はただでさえ大きな目をさらに見開いて何かを閃いた。


「どないしたん。」


「私、見えました…あなたたちの未来。」


『件』は他人の未来を見ることができ、今まさに風雅たちの辿る未来が見えたのだ。


「私ははるか古代から予言を遺してきました…聞きたいですか、仕事なので言わないといけないのです。」


「あっ、どうぞ。」


「八雲 風雅、八雲 雷牙、緋月 花、石動 凱、東雲 琥珀、鴉丸 総次郎…あなたたちは近い内に悲惨な出来事をその目に焼き付けることになるでしょう。」

「…!?」


とまだ名乗ってもいないのに皆の名前をスラスラと言い、さらに不幸な予言をした。さらに、


「八雲 雷牙、あなたは言われのない罪をなすりつけられ、チャンネルを乗っ取られ、誹謗・中傷の嵐でやがて精神を病んで自殺します。」


「やぁぁぁめぇぇろぉぉぉぉぉ!!!!」


普段冷静な雷牙が頭をかきむしりながら絶叫し、膝を付いた。


「安心しろガキ共、デタラメだ。」


鴉丸は何も取り乱さず冷静に風雅たちをなだめる。


「『件』のする予言はすべて「最悪の結果」だ。俺たちをあまりからかうんじゃない。たった一日しか生きれないくせによくそんな無駄な嘘を吐けるな。」


「ごめんなさい少しからかいすぎましたね。」


と『件』はイタズラであることを認め、頭を下げた。しかしその時、畳に一滴の血が垂れた。


「おや…もうすぐ時間ですか。」


『件』から鼻血が出ていた。しかし『件』は至って冷静に話し、「花さん、ちり紙を取ってくれますか。」と頼み、花はちり紙ことティッシュ箱から2枚取り出し鼻血を拭き取ってあげた。


「すみません。ご心配をおかけしました。」


「大丈夫?」


「心配してくれたのはあなたが初めてです。」


おそらく嘘でも予言は予言。そのせいで無駄に体力を消費してしまい、残りの寿命がかなり削られたのだろう。


「ほらぁ変な嘘言うから!」


「良いんです…私は予言を言うために生まれて死ぬだけの存在…もうこの輪廻を早く終わらせたいんです。だから嘘をつくという術を学びました。」


「そうまでして死にたいのか…。」


「せっかく赤ちゃんが生まれると喜んでいた矢先に化け物が産まれたんです。恨みますよね。今でもこの檻の外に私の両親がうなだれています。」


「!、ボス一般人をこのなかに入れたのか!?」


と凱は鴉丸を詰めるが両手を上げて降参のポーズをした鴉丸は弁明する。


「まぁ待て、どうせ最後は記憶消すんだこれくらいしたっていいだろう…それと、『件』。お前まだ予言がのこってるだろ。」


「あなたは人間なのに鋭いんですね。そうですよ…先程の閃いたのが本当の予言…聞きたいですか?これを聞けば破滅の道が待っていますよ。」


その問いに、鴉丸は何の躊躇いもなく「言え。」と答えた。


「今から、一年もしない内に四体の“厄災”がこの世に再び降臨します。

“支配”を司る白き厄災、“戦争”を司る赤き厄災、

“飢餓”を司る黒き厄災、“死”を司る青き厄災。

彼らはこの世に生まれ落ちようと…今まさに暗闇から這い出ようとしています。」


「厄災…ついに出てきたか…!」


鴉丸だけは“厄災”を知っているようで、予言に興味津々だった。

そしてその正確な日付を聞き出そうとした瞬間、『件』は吐血をして倒れてしまった。


「予言とは本来禁忌の力…話すだけでも神からの罰は下ります…しかし私は『件』…『件』として産まれた以上職務を放棄するわけには行かないのです…!」


「早くお医者さんを!」

「…いや、いい。」


と風雅は花の腕を優しく掴んで制止させた。


「こいつは役目を果たしたんだ…俺たちが入り込むわけにはいかない。お前はたしかに化け物だが、心は人間だ…それ以上もそれ以下も言わせねぇよ。」


「ありがとう…私は古代から生きてきた…でもここまで話してくれたのは、あなた達が初めてでした…最期にいい思い出ができまし…た。」


そして持ち上げた弱々しい首が、まるで吊るしていた糸が切れたように畳に倒れ、そのまま息を引き取った。


皆は『件』の亡骸に手を合わせ、檻を出る。

檻の外には彼を産んだ両親がおり、風雅たちが出てくるや否や椅子から立ち上がって彼にしがみつく。


「あの化け物…殺してくれたんですか!?」


母親から出た言葉は想像通りだった。『件』が言っていた。産まれたすぐに殺そうとしたと…

最初は乳幼児と同じ体長だったが、いきなり膨張し成長したという。


風雅が「はい。」と冷たい声で答えると、二人は安堵し、涙を浮かべその場に座り込んだ。


「きっとアイツは生きたかったと思いますよ…殺されかけてもあなた達の事を「両親」と呼んでいた。きっと今までの人生も同じ経験をしたんだと思います。」


そして立ち去る前に一言掛けて去っていく。


「どんなに姿が違っても、どれだけ悍ましくても…命なんですよ。だから…どうか憎まないでください。」


風雅の顔は優しく、どこか悲しそうだった。二人は立ち上がって『件』の亡骸がある檻へと入っていき、「ごめんね。ごめんね。」と言いながら、泣きながら手を合わせた。



「俺でもたぶん、いや絶対怖がるよ。でも、人ってそういうもんだから…。」


「風雅くん、それでもあの二人の記憶消しちゃうの…?」


「あぁ、それが特異課の掟だから。」


その後『件』の亡骸に手を合わせた夫婦は記憶を消され、出産したという記憶も、記録も全て消され現在は仲睦まじく暮らしている。


最近はベビー用品を買って今度生まれる“第一子”に向けて準備をしているようだ。


「最後に、特異課に私が言えることは…地球ほしが滅ぶ時間はすぐそこだよ…。」

           

           EPISODE 36「予言獣:『件』」完

          次回 第37話

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