シナリオ #08
まるで、詩集でも読むかのように。
流暢な口ぶりで、彼は令嬢を嘲り、罵り、否定と拒絶を続けました。
これが物言わぬ従者の、腹に抱えていた本音だというのか。
絶望に打ちひしがれていたフィオナですが、この耐えがたい裏切りを前に、徐々に心に怒りがたぎっていくのでした。
すると罵倒は一転、今度は暗くて甘いささやきに変わります。
「可憐さよりも穢れに口づけ、終末の世に耽る奇人あり。おまえの心、わたしの箱にそっとしまおうか……」
「!」
まるで愛の告白です。
従者からの思わぬ熱情に、フィオナは死以上の衝撃を受けるのでした。
彼女は悟りました。
従者であるディオスは、あろうことか主であるこの自分に……横恋慕しているのだと。
腐っても華は、華。
すべてはフィオナがあまりにも魅力的すぎるがゆえの不幸、というわけです。
それでもフィオナが愛を誓う相手はただ一人、公爵家のエリオール・シルクスだけです。その事実に変わりはありません。
だからこそディオスは恋に狂い、死した主を亡者として復活させてでも自分のものにしようとしたのでしょう……たぶん。
ふと、フィオナはあることを思いつきました。
卑劣なやり方で婚約者を奪った、リリア・ベルベット。
その彼女に一矢報いるため、二人の婚約祝いの席に亡者となった自分が乱入してはどうだろうか、と。
大勢の前で告発してやるのです。
リリアこそ、自分に毒を盛って死に追いやった犯人──恐ろしき魔女なのだと。
そしてこの復讐計画に、ディオスの恋心をおおいに利用できると、令嬢はほくそ笑みました。




