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【連載】Dark × Marriage[ダーク×マリッジ]〜死せる花嫁と漆黒の護衛騎士〜  作者: シロヅキカスム
▼ショートカット/シナリオ版 

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シナリオ #09

 しばらく経ってから、フィオナは従者からの愛の告白(?)に応じました。


「うれしいわ。あなたがわたしのことを、こんなにも強く想ってくれていたなんて。

 亡者となったわたしには、もう……あなたしかいないのよ、ディオス」


 もちろん、これは演技です。

 彼をそそのかし、都合のよい駒にすること。そのための、偽りの愛の甘言にすぎません。


 復讐計画を練るなかで、彼女はすばらしいアイデアをひらめきました。

 リリアとエリオールの婚約祝いを壊す際、どうせだったら派手にめかしつけてやろうと考えたのです。


 絢爛(けんらん)豪華(ごうか)な婚礼衣装で、死したこの身を飾るのです。『わたしこそが真の花嫁である』と、主張するためにも。


 その凝った演出に必要な衣装道具を、ディオスに集めさせようという魂胆です。


 必要なのは花飾り、純白のドレス、そして宝石。


 フィオナはたくみに従者をたぶらかします。

 わたしとあなたが結ばれるため……神の前で、夫婦(めおと)の誓いをするために必要なのだと。


 令嬢の甘い言葉に、ディオスの返事は変わらぬ色を帯びていました。ただひと言、「御意」と彼は応えるのでした。



 * * *



 愉快な目標が定まったところで、もはやこんな陰気な教会には長居は無用です。

 蝋燭の火を吹き消し、二人は教会を後にしようと扉を開けました。


 するとなんと、出口を塞ぐよう待ち構えていたのは──見上げるほど巨体な化け物でした。

 その頭部は複数に分かれて、墓地で襲ってきた野犬の集合体であるとひと目でわかりました。


「な、なんなのよ、あれはッ!」

「あれは『幽鬼(ゆうき)』です」


 悲鳴を上げるフィオナに、ディオスが説明します。 


「幽鬼とは死者の門に導かれず、正しく生を終えなかった者たちのことを指します。

 今生の執念などに囚われ、幽体、もしくは受肉の残った者すべての総称のようです」


 とにかくなんとかしてほしいと令嬢が頼むと、従者はまた「御意」と短く返事をして前に出ます。


 どこからともなく、白い靄(もや)が彼にまとわりつきます。気づけば、その両手には二振りの細身の剣が握られていました。


 それから、あっという間でした。

 彼は犬の頭部をすべて切り落とすと、化け物を闇に屠(ほふ)ってしまいました。


 戦いのさなか、攻撃がかすったのでしょう。

 紐が千切れて、仮面が床に落ちました。


「!」


 晒(さら)された顔を見て、フィオナは息をのみました。


 ディオスの目元には横一閃の傷跡が走り、黒かった瞳はいまや白く濁っていました。


 死んだ主を生き返らせるために、禁忌に手を出した愚かな従者──その彼もまた、人成らざる者と化していたのでした。

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