因縁
病室から出た二人は武器庫に向かった。
「イアンに武器取られてないといいけど」
大我は隣を歩くレオを見る。
「大丈夫だろ。コルボノワールは大きい組織だ。銃やナイフなんて捨てるほどある」
「そうだね」
そんな会話をしているうちに武器庫の扉についた。
念のため懐から拳銃を取り出すと、ゆっくりと扉を開ける。
「よかった。ここには入ってないみたい」
大我は昨日と同じ配置に置かれた武器を見て、安堵した。
「だな。急いでイアンのもとに向かわねぇと。手短に済ませるぞ」
「うん」
彼は頷くと拳銃の弾や手榴弾などを取り懐にしまう。
「何丁いるかな?」
拳銃を持ってレオの方を見る。
「ホルスターにかけれるだけ持ってくか」
「うん」
少しすると二人は武器庫から出てきた。
「ライ達にも連絡する。怪我したアルマを一人で放っておけないからな」
「そうだね。イアンは非道だから何をするかわからない。用心するに越したことはないよ」
レオは大我の言葉に首を縦に振ると懐からスマホを取り出した。
数回着信音が聞こえた後に電話が繋がる。
「ボス?どうしたんだ?」
「アルマが撃たれて誠二が攫われた。一度、こっちに戻ってくれるか?」
その言葉に動揺したような声が返ってきた。
「撃たれたって。無事なのか?」
「ああ。肩を撃たれてるが治療も終わってる。ただ、このままアルマを一人で置いていくのは心配でな。イアンは何をするかわからねぇし」
スマホの向こうから安心したようなため息が聞こえる。
「OK。そういうことなら一度、そっちに戻る。他の連中にも俺から連絡しとくよ」
「悪ぃな。助かる」
それからしばらくして散らばっていたリオンの幹部達が帰ってきた。
三人は病室で眠っているアルマを見ると渋い顔をする。
「まさか、アルマが撃たれるとは」
「相手はイアンだからね。けど、安心して。あいつはレオと俺で消すから」
その言葉にウルは意図を汲み取るように視線をレオに向ける。
レオはふっと笑うと口を開いた。
「ああ。今までは大目に見てきたが、あいつはうちの連中に手を出した。つまりリオンに喧嘩を売ったんだよ。イアンも馬鹿じゃない。そんなことをすればどうなるか、わかってるはずだ」
ライは顎に手を当てると呟いた。
「……つまりうちと揉めてでも誠二を手に入れたかったってことか?」
大我は一瞬、目を伏せると真剣な顔をする。
「誠二さんは必ずイアンから取り返す。だから、皆はアルマを守ってあげて」
レオも頷くと三人の顔を見回した。
「頼んだぞ」
『OK。ボス。健闘を祈る』
二人は外に出ると誠二が連れて行かれたビルに向かった。
タクシーを乗り継いで、目的の場所に着く。
ビルの前には屈強な男が二人立っている。
「どうする?やっぱ正面突破かな」
大我は隣でじっと様子を観察している男性に話しかけた。
「いつもならもう少し考えて行動しろと言いたいところだが、裏道もなさそうだしな……。正面から行くぞ」
「わかった」
彼はそう言うと目にも止まらぬ速さで男達に近づき、拳銃の持ち手で頭を殴る。
二人の男は短いうめき声を上げてその場に倒れた。
「レオ。人が集まる前に早く行こ」
大我は少し離れた場所に立っているレオに急かすように声をかけた。
「いや、正面突破とは言ったが。何もそんな手荒にすることはないだろ……」
彼は倒れた男達を見てため息をついた。
「じゃあ、そう言ってよ。レオは昔から言葉が足りないな」
「ああ?」
言い返そうとしたが、周囲に人が集まってきたのを見て急いで走ると大我の腕を引き建物の中に入った。
建物の中は真ん中にエレベーターがあるだけで人はいない。
「急に引っ張らないでよ。びっくりした」
大我は間延びしたような声で腕を軽く振る。
「お前……。後で覚えとけよ」
「え?俺、何か怒らせるようなことした?」
レオはその返答に大きくため息をつくと、表情を変えた。
「おふざけはここまでだ。こっからは気を引き締めて行くぞ」
「うん」
二人は懐から拳銃を取り出すとエレベーターに乗り込む。
「何階だろ?」
二十四階まであるボタンを見つめながら大我が首を傾げた。
「あー。最上階じゃねぇか?」
「OK」
彼は二十四階のボタンを押す。
エレベーターは一瞬、揺れた後にゆっくりと上に動き始めた。
「コルボノワールの幹部もイアンのそばにいるよね」
「恐らくな」
レオの言葉に大我は冷たい顔をする。
「……殺しても構わないよね。誠二さんに手を出したんだ。許せない」
「ああ。けど、無茶だけはするな」
「わかってる」
そう言い終わると同時にエレベーターが止まった。
二人は拳銃の遊底をスライドさせると構える。
扉が開かれて、不気味なほどに白で統一された部屋に入った。
周囲には数人の男が立っている。
「待っていましたよ。レオさんそれと、大我さん」
奥にある扉の前には左右で目の色が違う男が笑みを浮かべていた。
「イアン。誠二さんはどこ?傷つけたら許さないよ」
「傷つけるなんてとんでもない。私はずっと彼を探してたんです。そんなことするばすがないでしょう?」
心外だとでもいうように首を左右に振る。
大我は拳を強く握るとイアンを睨む。
「お前の理由なんか関係ない。誠二さんは返してもらう」
「それは困ります」
彼は軽く手を叩くと左右から三人の男が現れる。
「コルボノワールの傘下、エーグル、シュエット、フォコンのボスです。ボートゥールはそちらの青年に消されてしまったのでいませんが」
イアンは大我の方をじっと見つめた。
大我は顔を歪ませると銃口をイアンの方に向ける。
「自分は安全だと思ってるのか?その気になればお前なんかいつでも殺せる」
その言葉に彼は微笑んだ。
「あなたは実に興味深い。殺気、身のこなしどれをとっても完璧だ。その若さでここまでに至るには血の滲むような努力をされたんでしょう」
「うるさい。全てお前のせいだろう。俺がこの道に進まなきゃいけなくなったのはイアン、お前が元凶だ」
イアンは顎に手を当てると何か思案するような顔をした。
「さて。身に覚えがありませんね」
大我は舌打ちをすると眉間に皺を寄せる。
「もういい。誠二さんはお前の後ろにある扉の中にいるんだろ」
「ええ。よくわかりましたね」
「こんなに大人数で守ってるなんて、何か奪われたくないものがあるとしか考えられないからな」
彼はそう吐き捨てるように言うと拳銃で周囲を取り囲んでいた男達を撃った。
「血の気が多いですね」
イアンは片方の手を軽く上げる。
近くにいた三人の男が銃を取り出すとそれを大我に向けた。
その時、扉の中からスーツを着た男が慌てた様子で現れる。
「イアン様。ご報告が!」
「なんです?今、取り込み中ですよ」
不機嫌そうに扉の方を振り返る。
「先程、様子を確認するために部屋に入ったのですが広野誠二が倒れていまして……。呼びかけても反応がなくどうすればいいでしょうか?」
男は動揺しながら、困り果てたような表情を浮かべていた。
「何?丁重に扱えと言ったはずですが」
明らかに怒気を含んだような声でイアンは男を睨む。
「誤解です!私は本当に何もしておりません!部屋の監視カメラを確認しても彼に手を出したものは見当たりませんでした。なぜか急に倒れたんです」
その言葉にイアンは三人に視線を向けると口を開いた。
「私は誠二さんの様子を見てきます。あの二人を決して中に入れないように」
三人の男は同時に頷く。
彼が背を向けて扉に手をかけると突然、真横を銃弾が掠める。
振り向くと眉間に皺を寄せ、こめかみに青筋が浮かんでいる大我が拳銃を構えていた。
「誠二さんに何をした」




