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想い

イアンに捕まった誠二は不気味なほど殺風景な部屋に通された。


室内はベットとテレビ、椅子やテーブルなど必要最低限の物しか置かれていない。


「先程は手荒な真似をしてすみません。私はあなたに用があったんですよ。広野誠二さん」


イアンはそう言うと椅子に腰を下ろし、こちらを見て微笑んでいる。


「……俺にですか?」


誠二は警戒するような目を向けた。


「まぁ、そんなに警戒なさらないでください。あなたに危害を加えるつもりはありませんよ。何せやっと見つけることができたんですから」


「どうしてそこまでして俺を探してたんですか?俺なんか見つけても何も有益なことはないと思います」


彼はその言葉を聞くと小さなため息をつく。


「報告どおりですね。あなたは幼い時の記憶がない」


誠二は目を大きく見開いた。


「私はあなたの失ってる記憶を探してたんですよ。まぁ、思い出すまでここで待っていてください」


「……大我さんとレオさんはどうするつもりですか?」


イアンは意味深な笑みを浮かべる。


「あの二人は宴のディナーです。ずっと楽しみにしていた……ね」


そう言い残すと彼は部屋から出ていった。




一人部屋に残された誠二は力なく椅子に座る。


「アルマさん。大丈夫かな……」


隠れているときに聞いた銃声とアルマの呻き声を思い出す。


震える手を見つめながら背を丸めた。


「危険な世界だってわかってたはずなのに。実際に目の当たりにするとすごく怖い」


彼は目を閉じる。


浮かぶのは大我やアルマの笑顔。


(大我さんもレオさんも優しいけど。こんな世界で生きてるんだよな)


そう考えると、突然自分の頬を叩いた。


「悩んでもしょうがない。まずはここから出る方法を探そう」


誠二は椅子から立ち上がると扉に向かう。


そして取っ手に手をかける。


「開かないな」


力を込めて引いても扉が開く気配はない。




彼はため息をつきながら部屋の中を見回した。


ベット、テーブル、テレビ……。


その中で一箇所だけ気になる場所があった。


テレビが置かれた木製の台。


そこには扉がついている。


(何か入ってるのか?)


テレビ近づくと姿勢を低くして、台にある扉をゆっくりと開けた。


中には黒い箱が入っている。


誠二はその箱を慎重に取り出すとテーブルの上に運んだ。


(危険物じゃないよな。爆弾とか……)


じっと目の前にある物を見つめた。


警戒しながら箱に触れると蓋を開ける。


中にはパソコンが入っていた。


(パソコン。なんでこんな所に?)


首を傾げながらパソコンをテーブルの上に置く。




電源ボタンを押して起動すると画面にはロック中と短い言葉が表示されていた。


(ウィルスが入ったスマホは隠し部屋に忘れたままだ。前にロックを解除した方法は使えない。どうしようか……)


彼はパソコンが入れられていた黒い箱を調べる。


箱の底に小さな紙が貼り付けられていた。


『ロック解除には隠された文字を使え』


紙にはそう書かれている。


「隠された文字?」


しばらく頭を悩ませながら画面を見つめた。


「普通のパソコンならパスワードを忘れても特定のキーを押せば別の画面に切り替わるけど」


誠二はキーボードを押した。


パソコンはなんの反応も示さない。


「やっぱり駄目か」


ふと、傍にあった黒い箱を見つめる。


「隠された文字……。パソコンはこの黒い箱に入ってた」


彼はblack boxと打ち込んだ。


『ロック解除。データを読み込み中』


画面にはそんな言葉が表示された。


「開いた」




しばらくすると資料が現れる。


「なんだこれ?極秘ハッキングシステム?」


書かれている資料を読み進めているうちに誠二は顔色を変えた。


「こんなものが完成したら。コルボノワールに全ての情報が筒抜けになる」


一文字も見逃さないように真剣な目をする。


最後のページには手書きの文字があった。


『これが完成すればフランスだけでなく全世界がコルボノワールの手に落ちる。それだけは防がないと。こんな物を作ってしまった私がなんとかしなければ……」


それを見た途端、頭に鈍い痛みが走る。


「痛い。けど、この文字見覚えがー」




立ち上がろうとするが、視界が歪み床に倒れ込んだ。


(頭が割れるように痛い。まるで、思い出すなと言うみたいに)


荒い息で揺れる壁を見つめる。


ふと、声が響く。


『誠二』


動くことができず視線だけ上に向ける。


そこには悲痛な顔をした男女が立っていた。


「誰……?」


小さな声でそう聞くと二人は屈んで誠二の背中に触れる。


『すまない。父さんのせいでお前まで巻き込んでしまって』


男性がそう言うと女性は涙を流す。


『誠二。一緒にいてあげられなくてごめんなさい。全てあなたに託してしまった……』


彼の頭は酷く混乱していた。


(この二人は俺の両親なのか?でも、どうしてこんな悲しそうな顔をしてるんだ?)


女性は立ち上がると後ろを振り返る。


『そろそろ行かないと。時間が来たわ』


男性は頷くとこう言った。


『誠二。どうか生きてくれ。そして、唯一残された家族。弟の大我を守ってやってくれ。頼んだぞ』


その言葉を残して二人の姿は忽然と消える。


「家族?弟の大我って一体……」


彼の意識はそこで途絶えた。

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