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杞憂

イアンと大我の間に緊迫した空気が流れる。


近くにいたレオはじっと二人を見つめた。


「何度言えばわかるんですか?私は誠二さんを傷つけるようなことはしません。それに三人に銃口を向けられているあなたの方が、この状況では分が悪いと思いますよ」


大我はその言葉を聞くとふっと笑う。


「じゃあ、俺が撃たれるのが先かお前の頭を撃ち抜くのが先か試してみる?」


イアンは小さなため息をついた。


「ご冗談を。腕利きのスナイパーなら可能でしょうが。あなたはまだ若い。その歳では経験が伴っていないはずてす」


「だから言ってるじゃん。試してみるかって」


彼は一歩も譲らない。


その行動にイアンは違和感を覚えた。




顎に手を当てしばらく考え込むと口を開く。


「わかりました。では、私と勝負をしましょう」


「勝負……。強さ比べするってこと?」


彼は首を横に振ると懐からリボルバーの拳銃を取り出した。


「ロシアンルーレットですよ。この拳銃に一発だけ実弾を装填し、こめかみにその銃口を当てお互い引き金を引く」


その言葉を聞きレオは険しい顔をする。


「やめとけ。大我。そんな危険な勝負する必要はねぇ」


大我はレオの方をちらりと見ると微笑んだ。


「心配しないで。レオ。大丈夫だから」


「おい!」


彼は抗議の声を上げるが、聞き流されてしまう。


「いいよ。その勝負受けてやる。ただし、ふたつ条件がある」


「条件ですか?」


大我は頷くとイアンの持っている拳銃を指さした。


「まず実弾を入れる前にその拳銃を確認させろ。あんたが用意した物は信用できない。何か細工がしてあるかもしれないからな」


「心外ですね。まぁ、構いませんが」


イアンは拳銃を近くにいた男に手渡す。


「これをあの青年に渡してください」


「はい」


男はこちらに来ると拳銃を渡した。


大我はそれを受け取ると念入りに調べる。


「細工はしてないみたいだね」


「初めからそう言っているでしょう。それで、次はなんです?」


彼は傍に来た男に目を向ける。


「実弾を入れるのはこの人。あの三人だと何かしそうだしね。それで弾を入れた後はお前に合図を送れないように、こちらに背を向けて壁を見る。手を前に組んで」


男の眉が微かに動く。


「用心深い人ですね。まぁ、いいでしょう。今、言ったこと聞いていましたね。彼の言う通りにしてください」


「承知しました」


彼は拳銃を受け取ると懐から弾をひとつだけ取り出し装填した。


そしてもう一度、大我に拳銃を渡すと壁の方に体を向け前で腕を組んだ。




「さぁ、これであなたの提示した条件は呑みましたよ。勝負を始めてもいいですか」


「ああ。じゃあ、改めてルールを教えてくれる?」


大我はイアンを冷ややかな目で見る。


「いいでしょう。拳銃の中の弾は五発。トリガーは私とあなたで交互に一回ずつ引く。弾が発砲されるまでね。引く順番はあなたが選んでください」


「じゃあ、俺が先で」


その返事を聞いてイアンは人差し指を立てた。


「それと私も鬼ではありません。トリガーに手をかけたとき、弾が飛び出すと思ったら天井に向けて撃っても構いませんよ。ただし、それが不発だった場合はあなたの負けです」


「いいよ。じゃあ、始めようか」




扉の前に立っていたイアンは大我の傍に歩いてくると近くにいるレオを見つめる。


「レオさん。大我さんが負けたときは、リオンもこの件から手を引いていただきますよ」


彼はすごい剣幕で目の前の男を睨むと舌打ちをする。


「わかってるよ。だが、大我が勝ったらお前らコルボノワールが手を引くんだぞ。今後、誠二に手を出すことは許さねぇ」


「わかりました。あの青年と私はこの勝負に命を懸ける。そのぐらいの見返りは必要でしょう」


レオは大我に視線を向けた。


「心配しないでよ。レオ。絶対勝つからさ」


「ああ……」




大我は拳銃をこめかみに当てる。


そして、撃鉄を起こすとトリガーに手をかけた。


だが、いくら待っても撃つ気配がない。


「おや。やはりあなたにはまだ、早かったですか?怖いなら降参しても構いませんよ」


イアンは首を傾げたが、突然自分の頬を銃弾が掠めた。


周囲にいたレオ達も目を大きく見開き、一斉に大我の方を見る。


彼は舌打ちをすると眉間に深い皺を寄せて、吐き捨てるようにこう言った。


「やっぱりお前は最低のクズ野郎だ。撃鉄を起こしたら変な音がした。細工がしてあったのは銃じゃなくて弾丸だな」


その言葉にレオはイアンに鋭い視線を向ける。


「流石ですね。気づかれないと思っていたのですが……。まぁ、五分五分だったので良いとしましょう」


大我は拳を強く握った。


「俺が銃の異変に気づかずに撃てばリオンにこの件から手を引かせられる。それが成功しなかったとしても、さっきレオが言った約束を反故にできる。お前らしい考えだな。どちらをとっても損がないし、自分に危険も及ばない」


レオは目を瞬かせると、口を開く。


「待て。俺との約束を反故にできるってどういうことだ?」


「この勝負は最初からイアンが仕組んでた。これじゃあフェアとはいえない。だから、勝負そのものが無効になるんだよ」


イアンは満面の笑みを浮かべると大きく拍手をした。


その行動に大我もレオを顔を顰める。


「素晴らしいです。やはりあなた方は興味深い。今回はこの辺で手を引きましょう。誠二さんは連れ帰って構いませんよ。倒れた原因もわかりませんし」


「……次会ったら殺す」


大我は低い声で威嚇するように言った。


「楽しみにしてます。では、私共はこれで」


イアンは頭を下げると二人の横を通り、幹部達と共にエレベーターの中に姿を消した。




「レオ。早く誠二さんを助けに行こう」


「ああ」


二人は扉に近づく。


「気をつけて。中にイアンの手下がいるかも」


レオは頷くとゆっくりと扉を開ける。


部屋の中には誠二の他に人の姿はない。


二人は床に倒れている彼に駆け寄った。


「誠二さん!!」


大我は彼を抱き上げる。


微かに瞼が震えて目が開かれた。


「大我……?よかった。ずっと、会いたかったんだ」


ふわりと笑うと誠二はまた気を失う。


そんな姿を見て大我の顔はこわばりその手は震えていた。

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