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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2010年代

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第84説 民主党鳩山政権が発足した。……

 民主党鳩山政権が発足した。所信表明演説はなかなかよかった。「真の意味での国民主権の国づくり」「弱者や少数者の視点に立つ友愛政治」結構なことだ。少なくとも自民党政権ではこんな言葉を発する首相はいなかった。戦後の歴史で自民党が政権を離れるのは細川内閣以来二度目だが、今回は民主党が総選挙で圧勝しての政権交代であり、自民党に対してこのように国民が明確なノンを表明したのはかってなかったことだった。私は国民生活を窮乏に追い込む自公政権の弱肉強食政治がストップしたことだけでもほっとしている。

 発足後百日以上が経ったが、まあまあよくやっているのではないか。初の予算案が決まったが、公共事業費は二〇%近く削られ、社会福祉関係予算が十%以上増えている。〈コンクリートから人へ〉という基本スタンスの表れと新政権は誇っているが、確かに自公政権では考えられなかったことである。欲を言えば在日米軍への「思いやり予算」を含む軍事費を削り、大企業・金持ち優遇の税制を改めてほしいが、根が保守である民主党にいきなりそこまで求めることはできないだろう。

 米軍普天間基地の移設問題をめぐって、新政権が明確な方針を出さないことに対して、マスコミの論調は批判的なようだが、なぜ急ぐ必要があるのかと私は思う。政権が交代し、従来とは異なる政策を掲げた政党が政府をつくったのだから、これまでの政策の見直しや検討を行うのは当然だし、それには政府間の合意も含まれるだろう。しかも、新政権には国外移設を主張する社民党も連立与党として加わっているのだ。米国の言う通りに、ハイ、直ちに、と応じられるわけがない。長年にわたる自民党の対米追随外交がマスコミにも浸透し、少しでもアメリカの意に沿わない対応をすれば、日米関係にヒビが入ると過敏な反応をしてしまう。情けないことだ。新政権が米国に待ってくれと言った。そして日本側の要求も出して話し合おうとしている。日本政府としてかってないことだ。日米が対等なパートナーとなる第一歩だ。これも政権交代の大きな意味だ。もちろん普天間基地は国外に移設すべきだ。沖縄の犠牲と忍従は限界にきている。在日米軍基地に対する日本政府の今後の立場は、縮小・撤去を基本とすべきだ。しかし、根が保守である民主党政権にそれは不可能だろう。が、とにかく、待った、をかけたのは評価できる。

 偽装献金をめぐる鳩山首相の疑惑は、母親からの資金提供だった。その額も、その事実を知らなかったという鳩山氏の金銭感覚も、我々庶民のそれとはかけ離れたものだ。しかし不正な方法で入手した金ではなかったわけだ。彼は確かにお坊ちゃまだ。あれだけの金を持つ母親がいれば、金のために汚い事をする必要もなく、世間一般の人が味わう苦労も知らずに生きてこれたことだろう。ただ、あの記者会見を見ているとそこまで言うかと思うほどウソがなかった。自民党の歴代首相には決してできない、いや、決してしない記者会見だった。使途の解明はまだだが、私の心証はシロだ。


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