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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第81説 サブプライム・ローンの焦げつきに……

 サブプライム・ローンの焦げつきに端を発する世界的な金融危機によって「百年に一度」といわれる大不況(恐慌)が世界を襲っている。一九七〇年代後半から世界資本主義を主導してきた新自由主義の経済政策が破局を迎えたという議論が展開されている。日本においても新自由主義に立脚する「構造改革」政治が推進された結果、「勝ち組」「負け組」に国民が二分される(「負け組」が圧倒的に多いのだが)格差社会が現出している。

 新自由主義は種々の規制を排して、「市場原理」を貫徹させることを主張する。新自由主義が「市場原理」の徹底を妨げると看做す主要なものは生存権や労働権などの社会権、そして資本のグローバルな展開の障壁となる国民国家主権である。前者は国民の基本的人権に関わり、国の社会保障政策や雇用政策によって保護されなければならないものだが、新自由主義はこれを縮小・排除しようとする。小泉政権以来推進されてきた「構造改革」はまさにこれを断行したものであり、その結果、社会保障費は毎年削減され、非正規雇用者が激増して、ワーキングプアが大量に生まれ、自殺や無差別殺人など、社会の荒廃が進んだ。

 新自由主義は経済活動の主幹を金融におく。金融機関による投機や金融商品取引から得られる利益が主要関心事となる。これは実際にモノを作って、それを売ることで利益を得る実体経済ではなく、マネーを右から左に動かすだけで手っ取り早く利を得ようとする虚業である。現在ではそれが可能となるような金融システムが作り上げられている。しかしそれは実体経済とは乖離したマネーゲームだ。投機的な信用バブルが膨れているときはいいが、いったんはじけると、一気に株価は暴落し、資金は収縮して金融市場は恐慌状態を現出する。

 今回の大不況(恐慌)が今後どうなるか。いずれは収束するとして、また同じことが起こらないという保障はない。マネーゲームがグローバル化している現在、同じことが更に大きな規模でくり返される可能性の方が高い。アメリカ政府は経営破綻した金融機関に公的資金を投入した。日本においてもバブル崩壊後、銀行の不良債権処理に公的資金(税金)が投入されたことが思い出される。儲けるときは自分だけ、損をすると皆で被る、という不条理をいつまでくり返さなければならないのか。

 資本主義という経済システムからの脱却を真剣に考えなければならない時にきている。

 資本主義は貧困を無くせない。むしろ貧富の差を拡げ、貧困を拡大する。地球環境問題も解決不能だ。地球の温暖化は年々進行している。どちらの問題も人類の存続に直結している。

 もう一つ、問題を提起したい。それは競争社会の克服ということだ。資本主義は競争をその本質的契機としている。利潤をめざして展開される際限のないレースだ。企業は生き残りをかけて常に争っている。優勝劣敗・弱肉強食が資本主義の掟だ。これが社会に浸透する。人間関係に浸透する。

本来、競争とは無関係な分野にまで競争が持ち込まれる。教育、然り。スポーツ、然り。芸術、然り。競争が持ち込まれると本末が転倒される。「本」は常に人間であるはずなのに、それ以外のものが目的として追求されるようになる。人間は手段になる。物事の中心から外されて脇に置かれる。これほど憤ろしいことはない。これほど人間の意気を阻喪させることはない。しかし資本主義が続く限り、人間が物事の中心に据えられることはないだろう。

 と、ここまで書いて、気がついた。私は競争を本質とする資本主義が存続する限り競争社会は克服できず、従って人間が手段の地位から上昇することはないとここまでは考えていた。うかつにも資本主義という経済システム自体が人間を手段とすることで成り立っていることを忘れていた。

 資本主義という経済システムにおいては人間は労働力という商品である。資本家はこの品を賃金を払って購入する。そしてこれを機械や原料と結合させて使用すると利潤が生まれるのだ。つまり人間は利潤を生み出す手段なのだ。これが資本主義のメカニズムであれば、競争を持ち出すまでもなく、資本主義を廃絶しない限り、人間は手段の地位から脱せられないということになる。                




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