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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第70説 相も変わらず暗い事件が頻発している。……

 相も変わらず暗い事件が頻発している。最近は少年・少女が自宅に放火し、親兄弟が焼死する事件が耳目を引いた。この種の事件は一度起きて、マスコミが報道すると、連続して起こるというのが最近の特徴で、それだけ問題の根が深く広いとも言えるし、マスコミの浸透力が大きくなっているとも言える。こういう親殺し、あるいは反対の子殺し事件の頻発は、親子関係の崩壊、空洞化が日本社会において広く進行していることを物語る。親子関係は人間のつながりの基底をなすものであるだけに問題は深刻だ。

 自殺者も八年も連続して三万人を越えている。私はJRで通勤しているが、「人身事故」のため列車が遅れるという事態に遭遇するのは年に一、二度ではない。減らない自殺者と、親殺し子殺しはつながっているように思われる。現在の日本社会は大人も不幸だが、子供たちも不幸なのだ。

 少子化がますます進行し、出生率は戦後最低を更新した。これは、この社会では子供は産めない、育てられないという国民の表明だ。親殺し子殺し事件をこれだけ見せつけられると、子供はいらないと思うし、その前提である結婚を望まない者も増えることが予想される。実際、結婚しない男女が増えている。私の周囲にもたくさんいる。独身者は「幸せな家庭」をもはや憧れとして思い描かなくなっているのかも知れない。奈良県で自宅に放火し、母親と弟、妹を焼死させた高校一年生は、学校だけがほっと寛げる場所だったという。幼稚園時代から医師である父親の監視下で勉強させられ、祖父母からも医者になれといわれ続けた彼にとって、家庭とは拘置所のようなものだったか。親殺し子殺し事件が起きた家庭が憩いの場ではなくなっているのは確かだ。

 家庭がそんな状況なら、大人が働く職場もストレスが多く、決してよい状況にはない。

 そんな社会状況の中で、ホリエモンや村上ファンドのような楽して儲けようとする連中が「勝ち組」として幅を利かしている。日銀総裁が村上ファンドに一千万投資していたことに端的に表れているように、国の政治経済の施策はそんな連中のバックアップに回っている。小泉政治は自民党ではなく、日本社会をぶっこわしつつある。              

                                 



















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