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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第66説 二〇〇四年一月二パソコンを購入した。……

 二〇〇四年一月にパソコンを購入した。それから十六ヶ月ほどになるが、なかなか奥が深い。ワードやエクセルについては操作のガイド本を買って基本的な操作は一通り学習したが、身にはついていないし、分からないことは多い。自由自在に操作するという目標に到達できるのはいつのことか。それだけではない。パソコンには様々な機能がある。メールの送受信、デジタルカメラとの接続、テレビの視聴、音楽・映像の再生・保存、インターネットとの接続、データのバックアップなど。これらの機能に手をつけ始めたのはようやく今年に入ってからだ。ガイドと首っ引きでやっているがスムースにはいかない。

 私の望みはパソコンの全機能を使いこなすことだ。遠大な目標である。どこまで行けるか分からない。そのうち意欲を喪失するのかも知れないが、今はパソコンについての自分の知識・技術が日進月歩していくのが楽しい。毎日とはいかないが、二日に一度はパソコンの前に座る。テレビを眺めながら飲酒量を増やすよりは健康にも良い。パソコンを始めると時間はすぐに経ってしまう。その割には進歩がなくて苛立つこともある。

 とにかくこの人類の知性の到達点の一つを示す発明品は大した代物だ。二十一世紀に生きる人間としてパソコンと没交渉というのは淋し過ぎる。パソコンによる情報革命は人間社会の質をそれ以前とは別なものに変えるだろう。私としては情報が普通の個人に益々公開され、万人のものとなることによって、民主主義が成熟発展することを期待しているのだ。むろん弊害も現に生まれているが、大局的には人類の進歩に貢献する発明だと評価している。

 コンピューターの歴史をみると、一九四五年、最初に実用化されたコンピューターは弾道計算用に作られたもので、重量三〇トン、設置するには百畳ほどの場所が必要であったという。それが半世紀で現在のように小さく、軽くなったのだ。もちろん性能を飛躍的に向上させて。驚くべき速度で進歩したと言える。将来には現在のスーパーコンピューターの計算速度をはるかに凌駕する量子コンピューターも構想されている。コンピューターは人間の知力の地平を押し広げる。

 個人情報保護法が本年四月より完全施行となったが、万人に公開されるべき情報と個人のプライバシーとして秘匿されるべきものとの区別は今後大いに議論されることとなるだろう。これは民主主義の発展にとって避けて通れない大事な議論だ。パソコンの普及はこの問題を惹起した主要な原因だ。パソコンを操作する者は全てこの問題の当事者であり、この課題の実りある解決に対して責任を負っている。そんなことも考える。


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