第63説 マイケル‐ムーア監督の「華氏911」を観た。……
マイケル・ムーア監督の「華氏911」を観た。聞きしに勝る内容で、一種感銘を覚えた。ブッシュの大統領当選のいかがわしさを告発することで始まった映画は、その後四年間のブッシュ政権の政治の裏側を調べ上げた事実の提示によって暴いていく。9・11テロの二日後の13日、全ての航空機の離着陸が禁止されている中で、テロの黒幕と目されているオサマ・ビン・ラディンの親族二十数名が出国を許可されていた事実は衝撃的だ。その背景にはブッシュ父子とビン・ラディンの親族との親密な関係があった。イラク戦争については、米国に宣戦布告をしていない、その攻撃が差し迫ってもいない、米国人を一人も殺したことのない国への侵略戦争であるとこの映画は明確に断じている。ブッシュは当初からフセイン政権の打倒を目的にしていた。その理由は経済的な利権の確保だ。ブッシュ父子はテキサス州の石油資本とのつながりが深い。サウジアラビアの王族とも親密な関係を有している。映画はイラクの「復興」事業でブッシュと関係の深い企業が仕事をいくつも落札していく様子を伝える。その会社の役員は「米軍兵士は決して犬死にしていない」という。戦争の結果、彼らがしっかり儲けているからだ。イラクの石油埋蔵量は世界第二位だ。そうでなかったらこの戦争はなかったとその役員は明言する。
米軍は志願兵を募集している。徴募官は貧困地区に入っていく。軍隊の高給と種々の資格取得の可能性が貧乏人を戦場に連れ出す。米国社会で満足や快適を拒まれた人生を送る定めになっている人々が、その社会を支え守るために最も多く命を投げ出すことには感心するというナレイションは印象深い。
映像は既に事実を意味しており、その積み重ねは説得力を持つ。よく調べ、その事実を証する映像をよく集めている。はじめて知る事実が多い。情報化社会などと言いながら、我々がいかに肝心なことを知らされていないか。肝心なことは何も知らないのに、いかに知っているような気持になっているかに気づかされる。それがこの映画の最大のメリットだろう。
現政権をこれだけ真正面から叩くというのは勇気のいることだ。こんなことができる人物は日本の文化界には見当たらない。マイケル・ムーアは凄いと思うが、大丈夫かとも思う。暗殺が懸念される。ケネディ大統領やキング牧師の暗殺が思い浮かぶ。アメリカの支配層は戦争が大好きだ。それが利権と結びついているからだ。戦争を縮小しようとしたり、戦争に反対する者はたとえ大統領でも抹殺される。その点、ブッシュは支配層にとって好ましい大統領だ。
気なったのはこの映画を上映する映画館が北九州市に一つしかなく、上映回数も一日一回に制限されていることだ。博多地区も同様のようだ。何か規制が働いているのではないか。




