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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第60説 イラクに自衛隊が出て行くことになった。……

 イラクに自衛隊が出て行くことになった。向かう所はどう言い繕っても戦場だ。アメリカはフセイン政権打倒という目的を果たしたから「戦争終結」を宣言したが、イラクの方はそれで終りということにはならない。

 もともとイラク戦争は大義のない戦争だった。(現代の戦争に大義などあるわけもないが。)米英はフセインのような好戦的な独裁者が大量破壊兵器を保有することで国際平和は脅威を受けているから、これを除去しなければなにらないということを開戦の理由としてきた。この主張は国際世論の支持を得られず、開戦を認める国連安保理決議も行われなかった。しかし米英は国際社会のルールを無視して戦争を強行した。フセイン政権は崩壊したが、大量破壊兵器は発見されなかった。ブッシュとブレアの両政権が世界に向かって戦争を正当化した根拠が失われたのだ。両政権に対する非難の声が高まった。

 大量破壊兵器が発見されないのは当然だろう。もしフセインがそれを保有していたのならイラク戦争で使ったはずだ。自己の存亡をかけた戦いに使用しないとしたら何のために保有していたのか。また、万一、大量破壊兵器が発見されたとしても、それは開戦を正当化する理由にはならない。フセイン政権は自己の崩壊を前にしてもそれを使わなかったことになり、この政権の自制力を証明することになるからだ。そんな政権が国連決議を待たずに攻撃しなければならないほどの切迫した脅威であるはずがないのだ。いずれにしてもブッシュとブレアの両政権は世界をペテンにかけたのだ。イラク戦争は他国の主権や他国民の政治的自決権を蹂躙した侵略戦争であり、そこにこの戦争が泥沼化する理由がある。侵略されたイラク側としては米英軍が軍事占領をやめ、撤退しない限り抵抗を続けるだろう。イラク復興には国連を中心とした新たな枠組みが必要なのだ。

 こうしたブッシュ政権の行動を開戦前から一貫して支持してきたのが小泉自公政権だ。小泉首相はブッシュに対してはイエスという言葉しか持っていない。そして今度は自衛隊を出すという。日本は戦後始めて自国の軍隊を戦場に送ることになる。国家主義的な保守派は万歳を叫びたいことだろう。長年の夢が叶うのだ。元日に靖国神社に詣でた小泉首相の行動は彼の得意な心情を表している。外交官二人の死に対しては政府葬が国民向けのパフォーマンスとして行われたが、今後出る死者にはそんな対応はあるまい。通り一遍の悔やみの言葉ですまされるだろう。

 小泉首相らの次の目標は改憲=九条の廃止、あるいは骨抜きだ。政策的には与党と大差のない民主党は改憲でも自民党と一致している。つまり改憲勢力は衆議院で必要な三分の二の議席数を既に越えているのだ。日本社会は一つの曲がり角を曲がろうとしている。平和と民主主義を守るために今こそ自衛隊のイラク派遣反対、憲法九条の改廃反対の声を大きく上げるべきときだ。                        


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