第56説 小泉内閣の「改革」の実体が次第に……
小泉内閣の「改革」の実体が次第に鮮明になってきている。「改革」を一枚看板としたこの内閣に国民が期待したのは長引く不況からの脱出、家計の安定、老後の安心、政・官・財癒着による腐敗の一掃だった。ところが小泉内閣が行ってきた、また今後行おうとしている「改革」の中身は国民のそんな期待に逆行するものばかりだ。不況対策としては「改革なくして成長なし」というお題目のもとで、不良債権の処理を最優先して押し進めてきた。〇二年十月に発表した「改革加速のための総合対応策」では、その「加速」の必要性をあげている。ところが、不良債権は減るどころか増え続けている。〇二年三月末の金融再生法開示債権の残高は前年同期比で九、四兆円増えて五二兆四四二〇億円となっている。莫大な税金も投入して処理をすすめているのに不良債権が増えるのはなぜか。それは政府の経済政策の失敗によって景気の悪化に拍車がかかり、企業倒産が高水準で続いているからだ。不良債権の処理の推進が金融機関の自己資本比率を低下させ、それを引上げようとする金融機関は貸出を抑制し、中小企業に対しては「貸しはがし」(貸付資金の引き上げ)を行って、新たな企業倒産、不良債権の発生を生み出している。小泉内閣はこうした悪循環を今年も平然と推進しようとしている。
家計の安定はどうか。庶民にとっては大増税が待っている。発泡酒やワイン、たばこの増税、消費税率の引上げ、配偶者特別控除の原則廃止なのだ。減税策は相続税の引下げなど、富裕階層や大企業に恩恵のあるものだけだ。これらに健康保険の自己負担率の引上げや、介護保険料の引上げ、公務員の給与引下げにならう賃金引下げ、横行するリストラなどを加味すると、庶民の家計は更なる不安定に突き落とされることになりそうだ。それがまた消費を手控えさせ、景気回復の足を引っ張ることになる。政府はさらに年金についても保険料の引上げ、給付の削減、などの「改革」を計画しており、老後の安心も突き崩そうとしている。
国民に重税を課す一方、税金の無駄遣いという批判の高い公共事業費については一向に「改革」する気はないようだ。浪費の典型と言われるダム建設の見直しについては、進行中の九件のうち八件はそのまま継続するという。公共事業は政・官・財癒着の温床であり、政治腐敗の最大因子だ。「ムネオハウス」は記憶にあたらしいが、「自民党をぶっこわす」と叫んでいた小泉氏は、この自民党政治の伝統的悪弊はしっかり引き継いでいくようだ。
結局、小泉内閣の「改革」とはひたすら国民に「痛み」を押し付ける「改革」であり、それのみの「改革」と言えるようだ。




