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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第52説 欺かれるな

 一割を切るような支持率しかなかった森内閣が小泉内閣になった途端、支持率が十倍近い八割に上ったのには驚いた。ウソだろうと思ったが本当だった。森氏と小泉氏はそれほど違うだろうか。小泉氏は森派の会長として不評の森氏を最後まで支えた人物だ。森内閣の政策、森氏の行動は小泉氏の是とするところだったのだ。経歴もよく似ている。森氏が二世議員なら小泉氏は三世議員だ。小泉氏は自民党を変えるなどと言うが、生まれた時からその空気を吸い、四十年という間をその中で生きて厚生大臣にまでなった人間が、みずからを育んだ土壌を壊すことができるだろうか。両者とも自民党の利権構造の中にどっぷり漬かって育ってきた政治家なのだ。

 異常な「小泉人気」にはこの国の国民意識形成過程の特徴がよく出ている。それは文化状況の形成に密接する問題だ。

 第一にマスコミの情報操作の専制的とも言える威力だ。森氏と対比させることで、小泉氏は森氏とは対蹠的な人物であるかのような虚像をマスコミは作り上げた。小泉氏の唱える「改革」の中味はロクに報知せず、ただ「改革」を喧伝することで、国民の中に「改革」=「改善」という幻想を煽った。大企業・大銀行のための「改革」は、国民にとっては「改悪」となることを国民はしだいに知ることになろう。第二に、如上の権力・マスコミの情報操作にたいする国民の側の無力だ。日本国民は戦前からムードに弱かった。勝てるはずのない太平洋戦争だったが、弾圧とセットになった神国無敗という権力のマスコミあげての情宣に呑まれてしまった。今、同じような事態が進行している感が深い。事実に基づいて思考する態度が脆弱なのだ。政治家・政党に対しては事実の調査が必須だ。議会ではどんな行動をとり、法案にたいしてはどんな態度をとったのかという事実こそ、選挙における第一の判断材料だろう。この事実を国民自身が収集しなければならない。また、主権者として国民自身が自らの生活に即した政策を持つべきだ。それをモノサシとして政治家・政党を行動の事実で吟味すること。それこそが権力・マスコミの情報操作に抗する道だ。


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