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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
2000年代

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第46説 環境には社会環境と自然環境がある。……

 環境には社会環境と自然環境がある。私はやはり社会環境について書こうと思う。日本社会の状況は相変らずよくない、と言うより益々悪くなっている。頻発する殺人事件が殺伐とした世相をよく表している。最近もいろいろ凶悪な事件が起きたが、中学生が五千万円を恐喝したという事件には驚いた。とても中学生が脅し取る金額ではない。被害がこれほど巨額になるまで事件が進行したについては、加害者、被害者の双方に不可解な点があるのだが、そこにもまた我々の社会の病相が表れているようだ。新聞報道によれば被害者の中学生と母親は学校に行って相談し、警察にも被害を話しに出向いているようだ。警察にはそれより先に同じグループから恐喝されていた別の中学生が被害届を出していたという。しかし警察はまともな捜査をせず、学校も適切な対応ができなかった。少女が九年間監禁されていた事件(この事件でも犯人と母親との関係に不可解な点があるが)でも警察の捜査ミスや怠慢が事件の長期化の原因をなしていた。警察官の不祥事や警察の機能麻痺も社会の病変の表れだろう。いじめ事件で思い出すのは六年前の大河内清隆君の自殺だ。悲惨な事件で衝撃を与えたが、あれからもいじめが原因の子供の自殺は跡を絶たない。その三年後には切断した首を中学校の正門に置いた神戸の小学生殺害事件が起きた。我々の社会はこの種の青少年の事件をなくせないどころか、近頃ではストーカー犯罪といういじめの大人版のような事件が多発している。

 大人の世界では依然として不景気が続いている。六十兆円に上る銀行支援策を決め、血税を惜しみなく注ぎ込んでいるのに、九九年九月~一二月のGDP(国内総生産)は二期連続でマイナス成長となった。雇用の面では野放しで進行するリストラの影響もあり、九九年の平均の完全失業率は四・七%で、一九五三年以降の最高・最悪を記録している。中小企業向けの融資を増やす約束で税金の注入を受けている大手銀行は、もらうものはもらいながら貸渋りを続け、政府もそれを放任している。その一方で利益の上がる商工ローンには低金利で巨額の資金を融資している。この商工ローンが苦しむ中小企業に高利で貸し付け、日栄の事件のような問題をおこしているのだ。近頃、大手銀行同士の統合・合併が続いているが、それを機会に社員のリストラが強行され、また融資先の選別が行われ、業績の悪い中小企業は融資を切られることになる。それが中小企業の倒産に拍車をかけている。血税を頂いた国民への銀行のお返しはこんなことだ。

 あれこれ考えると社会環境悪化の原因はやはり政治にあると思われる。総選挙では与党、野党で対立していた政党が、政権に与かる利得をそれぞれ打算したうえで野合して出来た政府のもとでは、社会環境の悪化は不可避ということか。             


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