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エッセー拾遺 ― 文芸誌のコラムから  作者: 坂本梧朗
1990年代

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第16説 「きのくに子どもの村学園」来春開校 の1

 八月十日から十二日にかけて第九回ニイル研究会「夏のつどい」が愛知県岡崎市で開かれ、参加してきた。イギリスの自由教育の実践家ニイルについては本誌でも二度書いたが、彼の教育理念は日本においても脈々と受け継がれ、更に大きな飛躍を迎えようとしている。

 ニイル研究会は大阪市立大学の堀信一郎助教授が中心になって七〇年代半ばに発足したが、機関誌「ニイル研究」(年二回発行、現在三二号)を発行し、全国に四百五十名以上の会員が居る。月例会や毎年夏には何泊かの「夏のつどい」を行っている。

 今回のテーマは「教育ってなんだろう」ということで、三名の講師が話をし、質疑応答が行われ、サマーヒル(ニイルが一九二四年に開校した自由学校。その前身は一九二一年創立。現在も存続。)の最新のビデオを見たり、出席者全員の自由な討論、さらに来春開校予定の「きのくに子どもの村学園小学校」(和歌山県橋本市彦谷五一)のミニスクール(七月の一週間、入学予定の児童を対象に実施。)の模様を撮ったビデオを見たりした。

 「きのくに子どもの村小学校」は、授業は出席自由、校則は児童、職員同権のミーティングで決めるという、サマーヒルをモデルとした自由学校である。定員は各学年十五名、全校九十名、寮制(一部通学)で、授業料は毎月三万五千円。この学校で特筆すべきことは、この種の学校には珍しく和歌山県の正式認可を受けて発足するということだ。日本の公的な義務教育制度の一角にニイル式の自由学校が入った事の意義は大きい。日本にもニイルの精神を生かした学校が欲しいと語り合ってから六年、「新しい学校を作る会」は様々な苦労をしたようだ。この灯を守り大きく育てていきたいものだ。

 参加してみて、「野並子供の村」(名古屋市)、「じゃがいも天国」(静岡県磐田郡)、「野中保育園」(静岡県宮田市)など、ニイルの考えに沿った自由学校やそれに類する教育活動をしているグループの存在を知った。他にもいくつか自由学校をつくろうという動きがあるようだ。欧米では自由学校運動は公立の学校をも巻き込んで大きな潮流になっているようだが、日本でも「きのくに子ども村学園」の開校を機に大きく広がっていって欲しいと思う。


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