表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/130

第八十七話

続きです

前回の後書き通り、ここでこの数話の流れが終わります

そしてそのまま次の流れに、この話の中で入ります


「ひ、酷い目にあった……」


「さ、サトルが言うな……あの時はホントに酷い気分にさせられたんだからな……その、スマン。ちょっと気が高ぶったみたいだ」


散々に揺さぶられて、それでもとうとう我慢しきった俺は、消耗して頽れそうな体を、両膝に手を突いて支える

おっさんはおっさんで、自分が無体な真似をしたという自覚があるのか、気まずそうに愚痴りながら謝っていた


「はぁ……別にそれは構わないがな。だが、あの時は少し特殊な……というか、一つおっさんに訊きたいことが出来たんだが、いいか?」


もっと早くに気付くべき疑問だったが、怒涛の展開の連続で気付く事が出来なかった


「あ?まあ、何でもという訳にはいかんが、答えられる事なら。あ!アイギナの胸の大きさとか訊かれても、俺は答えられんぞ!」


「そんな事訊かないから安心しろ」


真面目な話である事を、声色で示す

……別に、それを知りたいとは思わない、いや本当に


「そんな事!?お前、俺がリアの身体の情報を知るのに、昔どれだけ頑張ったと思ってんだ!」


だが、おっさんには俺の真面目さが伝わらなかった様だ

……下心とか無いから、本当に


「いや、ホント真面目な質問だから……というか言い方気持ち悪いぞ」


「……何か釈然としないが、まあいいか。さっきも言ったが、答えられる範囲なら答えてやるよ」


そういうおっさんの目に、真剣な光が垣間見えた

どうやら、準備は大丈夫の様だ


「少し前の話だが、今回の件と同じ様にアイギナが一人で中庭に居た事があったんだよ。その時は俺が駆け付ける前に、おっさんの息子、カリド王子が駆け付けてくれて、連中は退散していったんだが」


「ああ、その話ならカリドから聞いている。お前、渡り廊下から書類の山を抱えたまま飛び降りたんだって?飛び降りるだけなら、ある程度の身体能力値があれば可能だが、あの時のお前は既にそれくらいの事が出来る程の変化があったんだな」


……言われてみればその通りだ

この変化は急激なものでは無く、かなり前から緩慢に進行していた可能性もある

だが、それ自体は問題になる事では無い

今は今の問題を片付けよう


「それは今はいい。話が通っていたなら次へ進もうか。それで、知っての通り二日前も同様の状態だった訳だが……」


「ああ、お前の訊きたいことは解る。何で、アイギナが一人で居たのか、だろう?」


「そうだ。幸いにして昨晩は何とか事無きを得たが、次もそうであるとは限らないだろ?」


そう、だからこそ、アイギナの強化は可及的速やかに実行しなければならない

仮に同じ事態が発生しても、最低限、救援が来るまで持ち堪えられる様にしなければ


「そうだな。アイギナの思いは尊重したいが、アイギナの命には代えられん。近衛隊長とも協議したが、今後は厳重な監督下に置く事が決まっている」


何だか、思っていた流れと違ってきた

だが、それはそれで有り難いとも思える

可及的速やかに

これは変わらないが、それに余裕が出来た


「つまり、これまではアイギナの意思を汲んで、近衛隊も或る程度は見逃していたと?」


「ああ、近衛隊長は断固として反対していたが、こんな事態になるとは全員予想していなかったからな。結局は、アイギナの意思に任せるままにしていたのさ」


その判断は、俺からすれば浅はか極まりない

寝る時や出かける時に、ドアのカギを閉めない家があるらしいが、その理由が


「まさか自分の家に泥棒なんか入らないだろう」


という、実に無根拠で馬鹿らしいものだというのだから、全く笑えない


尤も、こうした「自分に限って」という思考は珍しくない

誰しも、自らに危険が降りかかると、常日頃から想定して動いてはいない

常に警戒し続けていては精神が保たないという理由もあるが、それ以上に楽観的である為だ

その楽観主義を悪いとは言わないが、最低限度の備えくらいはしてほしいものだ


「なあ、更に気になる事が出て来たんだが……」


「ん?何だ?」


先程から見え隠れする事


「アイギナの意思に任せるままにしていたと言ったな?アイギナの思いを尊重したいとも」


「ああ、それがどうした?」


つまり、それは


「それって、一人になるのはアイギナの考えで、何かの悪癖とかでは無いって事か?」


一つ、アイギナの言葉に嘘が混じる


「ああ、アイギナはな…………」


その後に続く言葉に、俺はアイギナの嘘を確信した


「…………………」


「サトル?どうした、ニヤついて」


その意図を思い、信じてもらえなかったことを悲しく思う

だが同時に、流石我が同志と、称賛の思いが胸に満ちた

そして思った


我が意を得たり


今の今まで、アイギナの求めるもの、その一点に於いて、俺の考えは正しいのか

そればかりが気掛かりだった

彼女は、少なくとも己が出来るやり方を見付けている

共にこの国の為に

実際、彼女と初めて逢ったあの時、アイギナは間違いなく多くの信望を得ていた

ならば、彼女はその道を歩む事こそが望みなのではないか

血腥い世界など、彼女は望まないのではないか

ずっと、そう考えていた


客観的に見れば、彼女は力を欲していると考えるのが妥当だが、彼女の思いはそこにはない可能性もあるのだ


だが、見つけた

彼女の思いを


「これが、エウレカってやつかね」


「何を見付けたんだい~「うおっ!?」」


「おお、マイバラ少年。仕事はもう良いのか?」


「はい~。食堂長にお願いして、今朝の片づけは抜けさせてもらいました~」


「はははは、なかなか悪い奴だな、マイバラ少年も」


「いえいえ~、舞島くんほどでは~「おい!それはどういう意味だ!?」」


「くっ、ふふふ……思った以上に面白い奴だな、君は」


俺が、我が意を得たり、としたり顔をしていると、いつの間にか現れた米原が、カッコつけた俺の独り言を拾い上げた

俺はその両方に驚いていると、その間に何故だか俺を槍玉に挙げて、目の前の友人二人が意気投合しているではないか

俺の突っ込みも無視された

なんだか面白くない俺は、さっさとこの流れを断ち切る事にした


「こら、米原。妙な事言ってないで、さっさと話し終わらせんぞ」


ちょっと凄みを利かせて、恫喝する様に用事を済まさせろと告げる


「いやだな~、舞島くん~。その為に仕事を抜けさせてもらったんじゃないか~。勿論、話を聞くよ~」


「そうだぞ。後で食堂長には取り成しておくが、友人の為に無理を通してくれた相手に対して、その言い様は無いんじゃないか?」


だが、そこは二対一の状況

そもそもの口数で負けているのでは、口先だけで思う様に事を運ぶ事など、まずもって無理な話だ

結局、俺は槍玉に挙げられたまま、忸怩たる思いを抱えて大事な話を始める事になった


「……なんか幸先悪いが……まあいい。米原、お前に訊きたいことがあって来た」


「ん~?何だい~?僕で答えられる事なら、何でも訊いてよ~」


こういう時、友人というのはやり易くて良い

俺は率直に訊ねる


「お前、今のレベルは?」


「1だよ~」


「やっぱりか……」


「うん~。僕、別に戦いとか興味ないからね~」


思った通りの答えで、綻びそうな表情を引き締める

今はまだ話の途中だ


「帰りたくないのか?」


「帰りたいけど~。それは、皆がやるみたいだし、それに任せればいいかなって~」


「自分は安全なところで、成果だけ掻っ攫おうってか?」


「まあ~、そう言われてもしようが無いよね~」


「お、おい……サトル。お前、喧嘩しに来たのか?」


少し不穏な会話の流れに、おっさんが困惑と心配の入り混じった声で訊ねてくる


「黙って聞いててくれ」


だが、俺はそれを一顧だにせず切り捨てた


「だって~、舞島くんが居るんだよ~?どうとでもしちゃうでしょ~?」


俺は、その言葉を受けて唇の端を大きく吊り上げた


「おいおい。俺は低成長率、低身体能力値の最弱野郎だぞ!お前にだって勝てやしねぇよ!」


俺は高らかに自らがいかに無能であるかを謳い上げた

しかし、この時にはおっさんも何かを心得た様子だった


「君がその程度でどうにかなるのかい~?非常識極まる君が~?」


「ふふっ、ああ。その通り、お前の言う通り。俺はこの程度の逆境で諦める様な殊勝な男じゃない」


本当は一度折れてしまったのだが……

そんな事はおくびにも出さず、自信満々に宣い続ける

それが、この茶番劇の筋書きだ


「だが、一つどうしても知りたい事があるんだ」


そして、遂に本題を告げる


「それが、僕に訊きたいって事かい?」


米原の声から、間延びした独特の語尾が無くなった

これから、とても大事な話をすると察してくれたからだろう


俺は、得難い友を得た


その事実を胸に刻み込む

徐にポケットに手を突っ込み、そこに用意していた或る代物を取り出す


「これを使って見せてくれ」


差し出したそれを


「解ったよ」


躊躇なく受け取った米原は、ここに来た初日にもした様に、それを操作した

途端に輝きが溢れる


「はい、これで良いかな?」


米原はそれを見ずに、そのまま俺に差し出す

信頼を感じて嬉しかった


「ああ、ありがとう」


俺も親愛を込めて礼を述べ、それを受け取る

掲げて見る


米原 人良 男 16歳

Lv1/100

次レベルまで 100

成長率 1.095


生命力 7670


魔力  3835


攻撃力 1432


魔法力 153


対物力 100


抗魔力 100


機動力 1096


感覚力 2001


思考力 1154


運勢力 100


アビリティ ―


「やっぱり……」


だが、腑に落ちない点もある

そこを詰める必要は、有るか無いか


とりあえず、おっさんと話をしよう


「おっさん、一先ずここを離れ「そうしよう」……そんな喰い気味に……」


戸惑半分呆れ半分で、隣に立つおっさんを見やると


「いいから、早く行こう。とにかく早く行こう」


小さく上下に身体を震わせながら、無表情のまま早口で「早く早く」と急かす中年が居た

中年の筈なのに、何故か子供が駄々をこねている様にも見えて、戸惑い半分が呆れに食い潰される


呆れ全部の視線を向けると、何故身体が震えているのかを知ることが出来た

このおっさん、小さく踵で足踏みしている

小便でも我慢してるみたいに見えるが、間違いなく我慢しているのは別の事だと確信した


「米原、良い物を見せてもらった。もし気が変わったら先ずは俺のところに来い。その腹のプルプルした贅肉をそぎ落としてやるよ」


この言葉の意味するところを、まだ理解する必要は無い

ただ、もし参戦する気になるなら、その生存確率を上げておきたいと思うのだ

俺の推測が正しければ、”レベルは直ぐに上げない方が良い”筈だ


「ええ~、これもお客さんには人気なんだけどな~。皆、ヒトくんヒトくんって言いながら、このお腹を触っていくんだよ~」


撫でるとご利益がある、みたいに思われているのかもしれないな

まあ、気持ちは解らんでもない


「腹が凹んだ方が動き易いぞ。お前の爺さんもペタンコだろう?」


贅肉の代わりに筋肉で盛り上がってるけど、あの爺さん

丸太んぼうみたいな腕と脚してるし


「おじいちゃんは特別だよ~。熊肉を使いたいとか言って、一人で山に入る様な人だもん~」


「…………そうなのか。ま、まあ、あの爺さんならおかしくないのかな?」


こいつからして、ある種の変人なのだが、それに輪を掛けた変人揃いの米原食堂

その長たる爺さんは、先に言った通り筋骨隆々の好々爺なのだが……

まさかそんな事までしているとは思っていなかった


「そういえば、孫が用事に付き合ってくれんから、お前一緒に来ないか?って誘われた事があったな……あれがそうなのか?」


爺の用事なんぞ、どうせ通院とかだろ、とか思って断ったんだが

爺さんともそれなりに話をするが、流石に通院に付き合う気など無かった

しかし


「ああ、おじいちゃん言ってたね~。舞島くんを誘ってみれば?って言ったら、アイツは見込みがある。儂の狩りの技を仕込んでやろうか、って~。でも断られたんだって、しょげてたよ~。酷いよ、舞島くん~」


「やかましいわ。ならお前が付き合えや、実の孫」


だが、そういう用事なら今度誘われたら付き合ってもいいかもしれん

まあ、一度断った以上誘ってもらえるか分からんが


「あはは~。舞島くん、ほら~。陛下が早くしろって~」


笑ってごまかす米原


「言ってねぇよ「早くしろ」……言ったな」


隣からの漂う鬼気迫る何かを、急に感知した俺はちらりと一瞥する

その先で見たおっさんの目は、危ない薬物中毒者の様な、ギラギラとした剣呑な光を放っていた


駄弁ってないで早く行くぞ


ギラつく目がそう言っているのが、嫌でも理解出来た


「おい、米原。ホント、気が変わったらまず俺のところに来いよ?」


とにかく、それだけは釘を刺しておく


「うん~。解ったから、早く行きなよ~。僕もお昼の仕込みがあるし~」


ホントに解ったかは不明だが、そこは友人として信じておく事にする


「ああ。じゃあ、またな」


「うん、またね~」


「マイバラ少年、すまんな。また、飯を食べにくるぞ」


「お気に為さらず~。陛下、またのご利用お待ちしております~」


手を振りながら、立ち去る俺達を見送る米原

その姿を振り返り見ながら、手を振って応える俺達


「……本当に仲が良いんだな」


おっさんが、先程までの焦燥感に満ちた様子とは変わって、落ち着きを取り戻した穏やかな口調でしみじみと言った


「ああ……アイツとは百合が仲良くなったのを切っ掛けに仲良くなったんだが……馬が合ってな」


妙に、とも、不思議と、とも言わない

米原と俺には、間違いなく互いに共感を抱くだけの想いが在った


「そうか……大事にしろよ」


「分かってる……だからさっきも、散々に念押ししたんだからな」


俺は家族と目した相手には、基本的にとても甘い

だから、彼らを守る為には何だってやるし、何だってしてやるつもりだ


「……それは、お前が気付いた事に関係があるのか?」


おっさんが核心を突く

流石に、これだけ話せば理解もするだろう


「ああ。その話をしよう。だが、あまり人に聞かれたくない。どこか良い場所は無いか?」


俺の気付いた常識が、この世界では非常識を超えたものであるなら

そして、その気付きが持つ、この世界を覆す可能性を考えれば

話は可能な限り、小さな範囲で留めておきたい


独占するつもりだ

少なくとも、おっさん達が広めたいと言わない限り、これを広く知らしめるつもりは全く無い


「なら、俺の私室に行こう」


おっさんが、俺を部屋へ誘う

てっきり執務室あたりに連れていかれると思ったが


「執務室じゃダメなのか?」


「ああ。あそこは、フェルディナンドが合い鍵を持っているし、もともと秘密話をする様な造りでは無いからな。扉の外のすぐ傍で近衛兵が立っているし」


「そうか……行くのは初めてだが、どこに在るんだ?」


執務室なら、おっさん達のでもアイギナのでも、道に迷うことなく辿り着ける

だが、思えばおっさん達の私生活というものは、全く知らなかった事に気付く

私室がどこに在るのかも分からない


「執務室からそれほど遠くでは無いな。遠いと朝と夜の移動が面倒くさいし」


あっけらかんとした物言いだが、割と大事な事だと思う

通勤通学に利便性が高い物件が高額になりがちなのは、日本でもそれが重要だからだ

ならば、執務室から近場に在るという事は、それほど意外な事実でも無かった


「そういえば、おっさん達が住んでるところって知らなかったな……アイギナ達もその辺りに住んでいるのか?」


この質問に他意は無い

ごくごく純粋に疑問に思ったことを、率直に口にしただけだ


「んん?何だ、サトル。アイギナの部屋が気になるのか?」


だから、おっさんの妙な反応には戸惑ってしまった


「え?まあ、そうだが……」


このおっさんの表情は、もう何度も見た

俺の質問のどこに食い付ける要素があったのかは知らないが、確実に揶揄いに来ている


「ふ~ん。ほぉ~、へぇ~。成程ねぇ~」


何度も見た、慣れた事だとしても

変わらずイラつかせるその話術には、ある意味脱帽せずには居れない

見習いたいとは全く思わないが


「……なんだ?」


何がそんなに琴線に触れたのか

それが判らないではどう反応したらいいのかも解らない


「つまりサトルはあれだ。アイギナの部屋に入りたいわけだな」


「?」


突飛な理論展開に、最早俺の理解力は付いて行くことが出来ない


「いやいや!皆まで言うな!俺もな、昔はリアの部屋に忍び込んでは、下着を漁ったりしたもんだ。なんせ、リアはあまり相手をしてくれないもんでな?それはもう、滾る若き欲求は当然そっちの方へ進むことを要求してくるわけよ、仕方ないよな!」


「……………………」


今の俺の心情を、敢えて文字に起こすなら


何言ってんだ?このエロオヤジ


というところだろうか

いや、このおっさんがエロを爆発させていたのはもっと若い頃の様だから、エロオヤジよりエロガキ……真面目に考えるのが馬鹿らしくなってきた


「まあ俺も、友人に愛娘の部屋への道案内をしてやりたいという思いはある」


あるのか

そこは例え嘘でも、愛娘を守らなければ、とか言えよと思う


「だが、そこはそれ。俺も父親としての責務があるんだよなぁ、うん。俺も辛いんだ、友情と親の情を天秤に掛けなければならないこの苦しみ」


知らんがな

そこで天秤に掛けられる俺との友情とアイギナへの情が哀れでならんわ


「だから……すまん!!お前をアイギナの部屋へ上げてやる訳にはいかんのだ!許してくれ!」


許しを乞われても……

もう、俺はどうしたらいいのか解らない


「しかし、ただという訳にもいかんよな……そこでだ!俺がアイギナの部屋から下着を盗んでくじゅ!」


「あ」


あまりの暴走っぷりに、つい手が出てしまった


「……酷いぞ、サトル。いきなり殴るなんて、まるでアイギナみたいな」


「……いや、おっさんがおかしな事を言い出すから……というか、アイギナにも殴られてるのか……」


その時、俺は殴られているおっさんよりも、殴ったアイギナを哀れに思った

きっと、今と同じようにおっさんが頭のおかしな事を言ってはアイギナを怒らせたのだろうと、容易に想像がついたからだ

以前、机に跳び乗っておっさんの服を掴み上げていたアイギナを見ているからな……それは、容易も容易というものだ


「……ふぅ。途中になったが、俺がアイギナの下着を盗んで「もういい」……アイギナの下着、要らないか?」


「はぁ…………早く行こう」


俺の口からは、もうそれしか言葉が出てこなかった










職員用入り口から直接厨房に入った僕は、去って行った友人の顔を思い浮かべる


「……この前は元気が無さそうだったから、色々と楽しい話をしてみたけど~……」


その友人が聞けば、文句を言う事間違いなしの独り言を呟く

だが、僕にとっては楽しい話だった


「今日はとても生き生きしていたな~。うん、きっとご飯が美味しかったんだね~」


友人の元気が出た事が嬉しかった

そして、彼の去り際の言葉を思い出す


「……気が変わったらか~」


本当は、自分の現状が良くないのは分かっている

だけど、今一つ踏ん切りがつかない


「気が、変わるかな~?」


今日の昼の献立表を思い出しながら、その手順を思い浮かべる思考の端

変化への僅かな期待感を覚えながら

制服の帯を背中で強く結び直して、立て掛けてあった包丁を手に取った


「今日のご飯は美味しいかな?」


それは、まだ僕にも解らない

頑張れば報われる

望む結果が得られるかは別として、必ず何らかの成果は得られるものです


では、この世界に於いて、頑張るとは何か?

その答えは、この作品の柱の一つとなります

そして、次話からその答えに言及していきます


しかし、この父親は娘を何だと思っているのだろうか

というか、父親が自分の下着を持ち出したとか知ったら、殺されてしまうんじゃなかろうか

アイギナさん、下着を持ち出されて、禁忌を犯す

国王陛下、娘の下着を持ち出して、崩御


この場合、どちらが精神的にキツイかと言えば、二人以外の家族が一番キツイだろうなと思う


次回投稿は6月19日です

妙に寒い昨今ですが、この話が投稿される頃には暑くなっているだろうか

もし暑くなっているなら、熱中症対策をお忘れなく

経口補水液は自分で作る事も出来ますので、ネットでレシピを調べてみるのも良いでしょう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ