第三十六話
三十五話を同時投稿しています
まだ読んでいない方は、そちらへどうぞ
今話は少しクドく、そしてグロイです
残酷な表現てんこ盛りですので、お気を付けください
もしかしたら消されるかも?
基準が分からない
暗がりの中、階段を下りる…
この階段が曲者で、人が歩く中で自然に拓かれていった様な、端的に言えばゴツゴツしてとても歩き難かった
こちとら重い荷物を背負って遠き(?)道をやって来たのだ
何が言いたいのかと言うと、足元が不安定ですっ転びそうで怖いって事だ
倒けつ転びつなどしていては、幸先が悪いにも程があるだろう
「そう言えば……」
こんな時の事前知識だろ、と記憶を探ってみると、ひとつ有効な手段に行き当たった
右手首の腕輪に目を遣る
この腕輪、収集魔法道具には収集機能以外にもう一つ、とても重要な機能がある
それは、荷物の出し入れだ
迷宮に持ち込んだ荷物を自由に収納し、又取り出す事が出来る機能だ、そのまんまだな
早速、事前に調べた通りに腕輪を操作する
この機能は、何と魔力を用いずに起動する事が出来る
起動方法は実に簡単だ
手首を素早く三回、手のひら側にクイッと曲げる
誤動作を防ぐ為に、それなりに早くしなければならないらしいが、本当にこれだけで起動する様だ
すると、腕輪から円柱状の光線が放射されるので、それを荷物に照射する
荷物が吸い込まれた事を確認して、収納作業完了だ
取り出す時は、手首を手の甲側にクイッと三回曲げる
これも同じく、誤動作を防ぐ為に以下略
手の甲側に曲げるのって、人によって差が大きいと思うんだが、その辺はどうなんだろう
俺は補助ありで、手の指が腕にくっつく位に曲げることが出来るので問題ないが
「これで身軽になったな」
結構センセーショナルというか、ファンタジーな出来事だろうに、そんな無感動な言葉が口を突いて出るあたり、もう大分現状に慣れてしまっているのだな、と思ったがすぐにその思考は打ち消した
何故なら、階段を下りた先には少しの隘路が在り、そのすぐ先には空間が広がっているのが見て取れたからだ
事前に仕入れた情報が正しければ、この広間に進入した瞬間から魔物が出現する筈だ
過去の事例から、その迷宮でどのような魔物が出現するかは完全に把握されている
ここの一周目一階層で出現する魔物は、ゴブリン幼生体、コボルト幼生体のみだ
ゴブリン幼生体は以前戦ったので、その外見は把握している
武器は、持っている個体と持っていない個体が居るが、大体が武器無しらしい
つまり、素手で殴りかかってくるか、爪や牙、角を用いて攻撃してくる訳だ
間合いは比較的対処が容易だが、無手になる事で攻撃速度や小回りが以前よりも優っている点に注意すべきだろう
問題は武器有りの個体だ
ここで出現する武器有りのゴブリン幼生体は、その全てが遠距離戦仕様だ
これは兎に角、今の俺には厄介だ、注意しよう
さて、新登場のコボルト幼生体についてだ
コボルトというと、犬の頭に人の身体の獣人を想像するだろう
確かに成体ならばその通りなのだが、幼生体は事情が変わってくる
コボルトの幼生体は四足歩行、つまりは普通の犬だ
と言っても、その大きさは小型、中型犬種とは比べ物にならないくらい大きく、全長一メートルを優に超える
また、四足歩行の特徴として、走行速度が極めて速い、加速も相当で、最高速に至るのも早い
ステータス的に言えば機動力に優れるといったところだろうか
ただ直線機動が素早いだけでなく、旋回能力にも優れ、この迷宮に入るなら、コボルト幼生体に対処出来ると判断される必要がある、とまで言われる程に厄介な魔物らしい
とは言っても、実は元の世界で野生の獣とやり合った経験ならあるので、それほど問題視していない
と、いう訳で、軽く体を解して広間に突入する
途端に現れる魔物
どの様に現れるのかまでは、調べた中にも記述が無かったので分からなかったのだが、それも今分かった
目の前で起きている現象
突然に光の柱が立ったと思えば次の瞬間には、その光の中に魔物が出現している
所謂、召喚と言っていいだろう
ローグライクRPGなんかで有りそうな出現方法だ
さて、出現したのはゴブリン幼生体
それが8体だ
何れを見ても、武器を持っている個体は居ない
事前に仕入れた知識と相違ない事に安堵する
やはり、紙上の知識と実際の経験では後者に比重を置いてしまうのだが、仕方ないことだろう
昔の偉い人も言っている、百聞は一見に如かず、と
敵の構成はそれでいい
次に確認するのは敵の配置だ
今俺は、隘路を抜け広間に進入したばかり
つまり、背にはこの広間の入り口が在るだけだ……既に塞がっているが
必然的に、敵の配置は俺の真横から前方に掛けての半円状の範囲に絞られる
さて、それを踏まえた上で、配置を確認しよう
先ず正面、意識的に見ている視野、ここでは意識視野と呼ぶが、その意識視野に5体が固まっている
意識視野はそれほど広くないので、その中に多数が収まっているという事は、横にでは無く縦に列が伸びているのだろう
これは、各個撃破出来れば相手をするのも容易だが、そうもいかない今の弱った俺では、少々面倒な配置であると言えよう
残りの3体だが、視野に入らない右側に2体
意識視野ではない無意識の、眼球の機能的に見えているだけの位置、これを便宜上、無意識視野と呼ぶが、無意識視野の左端に1体がそれぞれに居た
こちらに気付いていない、というより召喚され切っていないという方がいいだろう
この状態で仕掛けてもいいが、この、壁を背にした配置は出来れば崩したくない
ここなら背中を警戒する必要もないし、仮に背中を取られても、肉弾で壁に叩きつける事も可能だからだ
そう、壁や地面は意外と馬鹿に出来ない武器に防具になる
それで有効なダメージを与えられるかは分からないが、少なくとも行動を阻害する効果は期待できるだろう
そもそも、あの光の柱が突破できるのか分からない
あれが不意打ちを防ぐのなら、無駄に隙を晒すだけだ
ならば、ここは待ちの一手、と言いたいが、ひとつ確認だけしておくとしよう
俺は、足元に転がっていた小石を拾い上げると、正面の先頭に現れている最中のゴブリン目掛けて軽く投げつける
さっき言った、光の柱が障壁の役割をしているかどうかの確認の為だ
結論から言えば、やはり光の柱は攻撃を防ぐ機能があった様で、投石はカツンという軽い硬質な音を響かせて弾かれたのが見て取れた
これだけ色々としたが、実際に経過した時間は極僅か、数秒程だろう
その数秒が過ぎ去った後には、完全に消失した光の中から、牙を剥き唸り声を上げて、こちらを鋭く睨みつける子鬼の群れが現れていた
相変わらず背丈は小さいが、それ故に小回りが利きそうだ
前回有効活用させてもらった頭部の二本角も、その尖鋭さが容易に想像でき、警戒感が否応にも高まるのが解った
だが、恐怖は不思議と感じなかった
思考は綺麗に整い、状況を正確に把握して対策を練っている
身体は重いが、それすらもしっかりと把握して支配下に置けている
快進撃、とはいかないだろうが、堅実な戦術なら遂行可能だろう
少なくとも、過ぎた動きを前提とした作戦を組み立てる様な愚挙はしないと断言できる
「…………っ!!」
瞬間、どっぷりと首まで浸かった思考の海より引き上げられた
何が起きたか?
当然、敵に動きがあった事が原因だ
と言っても大した動きではない
唸り声が止み、子鬼共が構えた、それだけだ
だが、警戒を強め、判断を迫られるには十分すぎる変化だ
(採れる選択は3つ)
分厚い正面を減らすか、薄い側面を破るか
半端な右側は選択肢には、初めから入っていない
最後の選択肢は、ここを動かず、連中を出迎える、所謂典型的な専守迎撃戦型だ
守るべき対象が居ない今、最後の選択肢は愚策に思える
だが、これが最も得意な戦術であるのも確か
正面突撃は、本来の身体能力なら可能だろう
だが、これも現状では愚策だ
敵の数を減らしている間に、囲まれ群がられてしまうのがオチだろうと、子供でも解る
そんな悪趣味で危険極まる押し競饅頭をするつもりはない
薄い左側を撃破し、囲みを抜けるのが最良の選択肢だろうとは思う
だが、やはりここは待ちの一手を選択するとしよう
そこまでを、一秒にも満たない思考時間で導き出し、身体をその為の姿勢に落とし込む
腰を落とし、腕は軽く広げて腰の辺りへ垂らす
目線は正面へ、しかし視野は可能な限り広く、出来るだけ焦点を合わせない様に意識する
「動いた……!」
口中でそう小さく呟く
正面と右側のゴブリンが駆け出したのを、視覚が捉える
総勢7体の魔物の進撃に、しかし怯えは全くない
胸中に在るのは、ただ静かに揺らめく蝋燭の灯の様に小さな、されど暗闇を確かに照らす、そんな戦意だけだ
戦況を分析する
正面からの5体は最脅威だ、最優先で無力化しなければならない
更に付け加えると、現状では最も先に到達する敵は、正面の5体の内の先頭2体になるだろうと予想された
右側面のゴブリン2体はどうか
これは、先に2体の後に到達するだろう
これの対処を誤ると、戦況は一気に悪化し、間違いなく瓦解するだろう
正面に手こずっている間に側面を突かれ、続く正面の3体に襲われれば、同時に7体に集られる事態になる
それは如何にも良くない、致命的と言ってもいい
勝利への道筋が見え始めた
絶対条件は、正面の先頭2体を可及的速やかに排除する事だ
今の攻撃力では、間違いなく不可能だろう
レベル10が適正と言われる戦闘で、レベル1が敵を一撃で屠れる訳が無い
だが、悲観はしない
可能性は二つ
一つは当然、以前に実践した、敵の武器を使って攻撃する事だ
この場合は、爪や牙、角を利用することになるだろう
幸いに、逐次相手をする事になるのは2体ずつだ
前回採った、ぶつけ合わせるのが有効だろう
そしてもう一つの可能性
同時に相手が出来ないなら、相手しなければいい
相手の隊列を崩してしまえば、そんな事に煩わされる必要などないのだから
どの様にしてそれを成すか
答えは単純だ
その腕でも首でも、むんずと掴んで投げ飛ばしてしまえばいい
相手は小柄、身長は100?に満たない、身体も細身、というかガリガリで、絵巻に描かれる餓鬼の様だ
見た感じ、体重も障害にはならないだろう
これまた幸いに、受けは得意だ
襲い掛かってきた所を掴み上げ、振り回して投げ飛ばせば、隊列は大きく乱れ、有利に立ち回る隙が生まれる
(さて、どちらを……)
と考えたところで、思考を打ち切る
流石に長考が過ぎた様で、即座に対処しなければならないところまで近づかれていたからだ
俺は迫る正面の2体に意識を向ける
武器を持っていないから、使える体部位を強調する様な格好をしている
爪を立てた手を掲げ、大きく裂けた口を開いて牙を剥く
その様は、そう丁度某有名RPGに出てくる敵、あの腐っている死体の格好そのままだ
そのまま、シャ−、と飛び掛かってくる様はどこか滑稽ですらあったが、脅威には違いない
気を引き締めて、掴みかかる手を逆に掴み取る
もう1体も同様だ
その掴んだ手を、突っ込んできた勢いを出来るだけ殺さずに交叉させ、爪をもう片方の目に深々と突き入れる
兎に角勢いをつけたので、その手の指は相手の眼球をズブズブと押し開き、入りきらなかった手や他の指は拉げてぐしゃぐしゃになった
選択した戦術は、前回実践したそれだ
相手の武器を用いる戦術
有用性が既に実証され、実績もある
何より、この戦術は俺自身の得意戦法と頗る相性が良かった
相手の動きに合わせて、それを利用し相手に打撃を与える
迎撃を主体とする俺の戦型にピタリと合致したそれは、次なる右側面の2体にも遺憾なく発揮された
2体には若干の到達時間のズレがあったが、逆にそれを利用し、少し前に出ていた方を引き寄せ盾にする
盾にしたゴブリンにもう一方のゴブリンの爪が突き刺さるやいなや、その軽く刺さった手を取り思い切り引き下した
軽く刺さっていただけとはいえ、その到達深度は割と馬鹿にならず、引き下ろされた爪はザクザクと胸板から腹に掛けてを引き裂く
結果は火を見るよりも明らかで、胸の傷からは白い胸骨とあばら骨が見え、腹の傷からは中身が転び出てきた
有り体に言ってグロイ
日常でこんなものを見せられたら、トラウマ間違いなしだろう
だが、ここは戦場、誰憚る事無き鉄火場だ
臓物を撒き散らそうが、脳漿を飛び散らそうが、お構いなしに殺し合いが続く場所なのだ
御同輩をその爪で引き裂かされたゴブリンも、その例に漏れず、撒き散らされたはらわたを踏みつけ、血の水溜りを踏み越えてその爪を突き立ててくる
その爪は、盾にしたゴブリンのだらんと垂れ下がった腕を持ち上げて防いだ
腹をもう一度使ってもよかったが、中身が無くなり厚みが失せたそれは、下手をすると突き通される懸念があった為止めた
さて、俺も心得たもので、相手に平然と手に掴んだ武器を突き出す
武器とは即ち、つい今しがたはらわたをぶちまけたゴブリンだ
まだ死骸にはなっていないが、時間の問題のそれの後頭部を掴み、その頭部を相手の腹に叩き付けた
尖鋭な二本角は、遺憾なく敵の腹を突き破る、その感触を持ち主に伝えてきた
俺は、その感触を楽しむ事なく、腕ごと手首を捻り、突き刺した武器を抉り込む
一度切れ目が入った物は容易く裂く事が出来る、その先例に則り、穴の開いたゴブリンの腹もまた容易く引き裂けて、血の色に染まった内容物を飛び出させる
腹の中は、袋を膨らませる様に圧力が掛かっているらしく、こうして大きな穴を開けてやると中身が飛び出してくるのだ
と、グロ話はここまでにしよう
当初見出した勝利条件その一をクリアし、次なる標的に視線を向ける
8体の内、先着の4体は、カキ氷機のブレードに刻まれる氷の様にガリガリと、早々に削り取った
余りに想像通りに事態が動き、少々拍子抜けしているくらいだ
とはいえ油断は禁物、と気を引き締め思考を巡らせる
残りは、正面3体と左側面の視野ギリギリに1体……が居ない
!!居ない!!?
何時消えた!?
その自問にはすぐに答えが出た
消えた1体は左の視野ギリギリに居た
さっき相手にしたのは正面の先頭部分2体と右側の2体
恐らくだが、右側を相手にする際に右側に体を僅かに向けた隙に移動したのだろう
答えが出たのはいい
だが問題は解決していない
消えた1体は何処へ行ったか
迷宮内に於いて、魔物の逃亡は無い
その尽くが死兵となって、探索者を襲うのだ
従って、逃散した、という事はない
背後は壁、迂回もあり得ない、とそこまで考えが至って初めて、周囲の環境に意識が向いた
出現したゴブリン共ばかりを注視していたせいで、環境にまで意識が向かなかった
周囲は広場、今までの岩だらけの洞窟そのままな環境とは大きく変わり、起伏の激しい砂地が広がっていた
何故か周囲は明るく照らされ、視界の確保には困らない
にも拘わらずに完全に見失ってしまったのは、この起伏が原因だろう
兎に角、近々の位置なら視界には問題はない
実際に今も、正面の3体が襲い掛かってきているが、視界に問題はなく、無傷で捌けている
決定的なダメージこそ与えないようにしているが、何時でも望む様に料理出来る
では何故そうしないのか
判り切った話だが、消えた1体が何処に行ったのかが判らない事が原因だ
だから、いざという時の肉壁として保存している
倒れたゴブリンを、しゃがんで掴んで持ち上げるのは時間の無駄だから、倒さずに置いているだけ
後は、消えた1体が何処から現れるかだ
死角はあるが、そこは壁に塞がれている
ならば可能な限り壁際に寄り、3体の遊び相手を務めていればいい
何れしびれを切らせて、この眼に飛び出してくるだろう
現状余裕を持って3体相手に捌けているので、4体になっても可能だという目算があり、それは疑う余地のない事実だと言い切れた
それ故の判断だった
が、それは直後に、間違いだったと気付かされる
違和感は視界が僅かに暗くなった事だ
極僅かだが、上方から降り注ぐ光と地面に照り返る光が弱まった気がした
(?)
一瞬の疑問も、すぐさま氷解する……いや、させられる
地面からの照り返しが弱まったのは、上方から降り注ぐ光が弱まったから
上方から降り注ぐ光が弱まったのは、それを遮るものが出現したから
ここまで思考できたのも奇跡と言える
実際には、疑問を抱いてすぐ、首に何か重い物が落ちてきた
その存在に、答えを押し付けられたのだ
思考は、その刹那に閃いただけに過ぎない
兎に角、この状態はまずい
頭部で特に弱いのは、頭頂部から少し下の部分と、その更に下
首と頭が繋がる部分とされている
顔面と頸部は除くが、首から上で狙われるとまずいのはその二か所だ
蟀谷も良くないが、ここは兎に角まずい
そして、何よりまずいのは、そこを無防備に晒してしまっているという現状だ
「っ!!……離れろっ!!!!」
俺は声を荒げ、満身の力を込めて、頭部のゴブリンを引き剥がして目の前で相手をしているゴブリンに向けて叩き付けた
その判断が功を奏し、叩き付けたゴブリンは首が海老反りになり、圧し折れて痙攣している
叩き付けられたゴブリンは、その下敷きになり腹が潰れていた
双方、普通に考えれば死んでいるだろう
巻き込まれて、もう1体が転げている
油断は出来ないが、一先ず危急存亡の秋は乗り切った……大げさか………
そう、気を緩めた一瞬
左の二の腕に鋭い痛みが走った
何事かと視線を向けると、そこには腕にしがみつき、腕に牙を突き立てているゴブリンの姿があった
(油断出来ないとか言ってすぐこれか……!!)
愚痴るのは心の中で留め、こいつも引き剥がしに掛かる
噛みつかれているので、無理に引き剥がすと肉をごっそり噛み千切られる可能性がある
実際にはそれほどの強さで噛みつかれている訳ではないのだが、焦りから正確な判断が出来ず、回りくどい手段を選択してしまう
牙というものは、その尖端が口中に向かって反って生えている
例外はあるだろうが、大体がそうだ
これは、引っ掛けて抜けない様にする目的があるのだろうが、逆に利用することで対処が出来る
つまり、更に口の中に突っ込んでしまえば抜けやすくなるという事だ
俺はそれを実践した
先ず、変にぶれない様に、噛みついているゴブリンの首を掴んで固定する
次に、思いっきり左に倒れ込む
要点は、噛みついているゴブリンを下敷きにする事
手を噛まれたなら、ただ突き出せばいいだけだが、腕を噛まれていてはそれも出来ない
苦肉の策として、全身を使って体ごと叩き込む事にした
その結果がこれだ
身体の下で、ゴブリンの頭蓋は砕け、溢れ出た中身はべっとりと左上半身にこびり付いている
頭蓋の破片なんかが刺さっているかと思い、まさぐるがそれは無く、代わりに右手にはプルプルした肉片が纏わり付いてきただけだった
「これ、傷口から感染症に罹ったりしないだろうな……」
噛みつかれた傷痕には勿論のこと、奴の血液が染み付いていて、現代医学に照らせば、感染症の可能性を疑わなければならない
所謂ズーノーシス(人畜共通感染症)だが、そっちの知識は全くない
こういう時は、大財閥の跡取りとして受けてきた英才教育も、屁の突っ張り程度の役にも立ちはしない
一応は応急手当程度の知識はあるのだが…
と、思考はまたも中断を余儀なくされる
転んでもがいていたゴブリンが、体勢を立て直したからだ
とは言っても、3体を余裕で捌いていた俺だ
左腕も、痛みはあれど動かせないという事はない
つまりどういう事かと言えば……
「まあ、こうなるな」
俺の目の前には、後ろ手に両手を捕られて、首根っこを掴まれて、足をバタつかせるゴブリンが居た
まるで悪戯小僧が捕まってしまったみたいな構図だ
が、そんなに可愛らしいもので無いのは、ズキズキと痛みを訴える左腕が証明している
俺は躊躇せず、掴んだ首を地面に叩きつける
身体能力が下がっているせいで、一回では殺しきれないので、何度も何度も叩き付ける
捉えている手に抵抗が感じられなくなってから、手を引いた
途端に、周囲に転がっていたゴブリンの死体が光を放ち始め、キラキラと光の粒子を立ち昇らせながら消滅する
後には、皮とか爪、牙、そして角が残されていた
事前に調べていた通り、素材を残して消滅した様だ
「本当にゲームみたいだな」
出現時にもゲームに喩えたが、ここはまるで現実感が薄い
それでもなお、ここを現実だと知らしめるのは、今も痛む左腕の傷と、戦闘中のひりつく様な殺気があるからだ
それが無ければ、ここは夢の中だと思い込んでも不思議では無かった
「と……素材を回収しないとな」
要らざる事に思考が飛びそうになったが、どうにか今しなければならない事を済ませる為に身体を動かす
先ずはそこらに転がる素材の回収だ
腕輪を起動し、素材を回収する
実に味気なく、しかし、何とも心躍る光景だろうか
俺は、部屋の掃除はきっちりとする男だ
ゲーム機に埃を被らせるのは我慢がならないし、ゲームソフトはしっかりと整理整頓して収納している
特に、端子接続型のソフトはしっかりと管理しないと、何十年と保たないだろうから入念にだ
当然、部屋の床にゴミなど落ちていないし、部屋の何処にも埃は積もっていない
机も動かして掃除するのだから、その念の入り様が理解できることと思う
さて、全く関係ない話に飛躍したと思うだろうが、そうではない
俺は、塵埃が掃除機に吸い込まれていく様がとても好きだ
その様が、腕輪に吸収される素材から連想されて見えた
だから、心が躍ると言ったわけだ
どうでもいい話をしている間に、腕輪から荷を出し、水筒型の魔法道具と止血膏薬を取り出す
左腕の手当をしなければならない
いつ敵が湧きだすか知れたものじゃないからだ
この間隙を有効に活用しなければ、流石に生き残れないと、今の戦いを通じて理解した
流石に、汚れた左半身を綺麗には出来なかったが、傷は綺麗に拭って膏薬を塗り、肉片はほぼ全て洗い落とした
そこまでして、荷を仕舞い込み、装備の確認をして先へ踏み出す
その先では、光の柱が立ち昇っていた
グロかったでしょうか?クドかったでしょうか?
個人的に、殺し合いはグロくて当然と考えています
そして、理くんの戦闘は基本的に待ち主体です
そこには当然のように複雑な知略が巡らされています
そうした理由から、クドく、そしてグロい話となりました
ご容赦ください
さて、理くんですが、前回で強化されている事実が発覚しました(本人は知りません)
思考力が増大していました
その為、戦闘中に高速で思考できるようになりました
つまり、長々と戦闘中に考え事をしているのは、そういう理屈です
そういう理屈なんです
更に、怪我も負いましたね
本来なら即死してもおかしくない生命力へのダメージなのですが、強化は生命力魔力にまで及んでいます
その為、何とか生き延びています
また、膏薬には生命力を回復させる効能があるので、しっかり回復しています
ですので、次回、またダメージを受けても死にません
死にませんったら死にません
「僕は!死にませーん!!」
このネタって、相当古いですね
いえ、特に意味のある話ではないですが
さて、ここからは極めて私的な話です
いつも通り、興味ない、いい加減にしろ!っという方は、読み飛ばしてください
次回は、今回ほどクドくもグロくもしないつもりです
というか、さっぱりと初迷宮回を終わらせて脱出させます
さて、私的なお話しですが
パソコンが逝きかけました
正確には増設したメモリーが死んだだけだったのですが、突然起動しなくなり、かなり焦りました
買い替える金もありませんし、しばらくは更新出来ないんじゃ、と覚悟しました(サボれる口実ができた、とは考えてません、ホントに)
さらに悪い事は重なるもので、愛用のパソコン机が死亡しました
買い換えたものも、なんだかしっくり来なくて、どうにも書けない日が続きました
まあ、こうして更新出来た以上は、それらの問題は解決したのですが
次回はもう少し早く投稿できるように心がけます
拙いお話ですが、今後ともどうかご贔屓に




