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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第二十九話

今回は二話同時投稿です

前回を読んでいない方はそちらからどうぞ


意外と軽い荷を肩に担ぎ、やって来たのは一面の草原地帯

ここが、超初心者向けのレベル上げスポットなのだろう

どうやら、今この場に居るのは自分達だけの様で、辺りには人の気配は全くない

まあ、そんなに年中初心者も居ないだろうし、意外とこういう所は閑古鳥が鳴いているものなのだろう


「なあ、いい加減会話しないか?このままだと、お互いに色々とやり難いと思うんだが……」


そう、隣を見て声を掛けた相手は、言わずもがな、同行しているアルベルトだ

ここに来るまで、一切会話が無いのだが、いい加減何か話してくれないだろうか

ここに着いてからも、案内等は一切せず、ただ黙って俺の後を付いてくるのみ

一応警戒はしていたが、敵意はあれど害意を感じず、そろそろ警戒も飽きてきたので、再度対話を試みた、という訳だ


余談だが、ここまでは車の便が走っていて、駅で依頼する事で連れてきてもらう事が出来る、それもタダでだ

何でも、国が運営する交通機関らしく、交通費は全てタダなのだとか

但し、国が指定する場所しか向かわないらしいが


この世界の車だが、所謂牛車とか馬車ではない

そもそも動物に牽かせていない

その動力源は何と人だ

誤解の無い様に言っておくが、別に人力車という訳では無い

より正確に言えば、人の発する魔力で駆動するらしい

そういう装置が、迷宮から見つかるのだそうな

もっとも、上位の探索者パーティが年に1、2度手に入れられればいい方らしいが

そんな物を、タダで使用させるくらい所有しているなんて、流石に世界最大の国家だと感心したものだ


で、そんな車だが、運転には免許がいるらしい

何でも、走らせるだけなら子供でも可能だが、速度を一定に保ち、かつある程度自在に速度調節し、更に自在に動かすとなると、並大抵の努力では適わないそうだ

そこに、長時間の運行が可能という条件が加わると、それこそ数千人に一人の割合しか適性を持った者が出てこないらしい

その為、非常に高給取りで、中級程度の探索者よりも遥かに稼ぐのだとか

もっとも、その中級探索者がどれだけ稼ぐのか知らないので、比較のしようもないのだが

あれかな、ごみ収集の仕事が高給取りだと聞いたことがあるが、そんな感じか?違うか


以上は、俺達をここまで運んでくれた車、魔力駆動車、略して魔動車というらしい、その運転手のおじさんが自慢げに語ってくれた事だ

この国の人間なら当然知っているだろう事を、嬉しそうに語っていたのは、恐らくだがクラスメイト達に関係しているのではなかろうか


多分、クラスメイト達も最初にここへやって来て、初めての狩りをしたのだろう

そして、おじさんはそんな奴らの足を勤めた

その時に、クラスメイトがおじさんに魔動車について聞き出して、えらく喜んだのではないだろうか

そして、暫くして俺がおじさんの車を利用した

この国では、黒髪は一般的ではないらしく、王都近辺には全くと言っていいほど、黒髪の人間は居ないそうだ

そんな時、多くの黒髪の少年少女を車に乗せ、今また黒髪の少年、つまり俺がやって来た


これだけ条件が揃えば、俺が彼らの関係者だと推測するのは容易かろう

で、俺を喜ばせようと思ったのか、或いは俺と同行者の不穏な空気に耐えかねたのか、以前鉄板でウケた話をした、という事だと思われた


と、どうでもいい事に思考を割いてしまったのは、歩み寄ろうとした俺を、継続して無視する事に決めたらしいアルベルトに、ついつい怒りをぶつけてしまいそうになったから

ある種の現実逃避だな

ここで怒っては、後々に禍根を残しかねない

微かな可能性とはいえ、打ち解ける道を積極的に閉ざすのは、流石に気が引ける

とはいえ、口調が厳しくなってしまうのは仕方ないことだろう、俺もいい加減苛立ちが抑えられなくなってきているのだから

それでも説教の域は出ないように気を付けておこうと、内心密かに思う


「アンタは何のためにここまで来た?俺の付き添いとしてじゃないのか。その仕事は何だ?そうやって、仏頂面でただ付いてくるだけか?」


この狩りには俺の今後が係っているのだ、役に立たない奴を引き連れる心の余裕はない

アルベルトがどれ程有能かは知らない、一等近衛騎士と言っていたが、恐らくは相当優秀で将来有望なのだろう

だが、それが何だというのか

何もしないなら、そこに居ないのと何も変わりはしない

更に不快な気配を撒き散らすなら、無能な奴より性質が悪い


「俺に対する感情が職務の邪魔をするというのなら、遠慮は要らないから帰るといいよ。あ、車は俺が帰りに使うから、歩いて帰れよ。それほど離れてないし問題ないよな」


言いたい事を言い終えると、完全に視線を切って周囲に集中する

何かの気配を感じた為だ

ついでに後ろから、凄まじい敵意を感じるが、ここまで言ってもなお害意が無かったので、意識から弾き出した


周囲に意識を巡らすと、やはり何かの気配を感じる

敵意でも悪意でも殺意でもない

そんな気配が、恐らく3つほど、周囲から感じられた


(…あまりにも気配が漠然とし過ぎている……まだそれなりに距離があるのか…?)


これは俺の持論だが、気配というのは常に全方位に放たれているものなのだ

それに何かしらの意思が働くことで、指向性を得る

今感じる気配に敵対的な意志を感じる事は出来ない、勿論好意的なものもだ

故に、その発生源を辿る事が出来ないという訳だ

そして、相手がこちらにそうした意思を持っていないという事は、相手がこちらに気付いていない可能性が高い、と推測できる


(なら、こちらから奇襲を仕掛ける好機、という事だな。念のために息を殺しておけば、ある程度相手を観察する事も出来るだろう)


そこまで考え、一度静かに深く息を吸い、息を止める

こうする事によって、呼吸による空気の流れが途絶え、人が発する生活の気配を一つ潰す事が出来る

俺は、確りと息を整える事で約2分間、呼吸を止めて活動できる、動かなければ5分だ


そこまでお膳立てをしたが、一つ重大な事を見落としていた


「おい、前方に魔物が3匹屯しているぞ。何て事ない雑魚だ、あれで実践するぞ」


今の今まで、ろくに口を利かなかった奴が、よりにもよって、この時に、それも大声で話し掛けやがった

あまりの事態に、気配を消していた事など忘れて振り返ってしまう


「なんだ、急に。怖いのか?安心しろ、私が付いている以上、あの様な雑魚に殺される事は有り得ない。どうだ?ちゃんと仕事はする、私情は挟まない」


最早その様な事はどうでもよかった

何やらニヤケ面で見下した様に上から目線で話しているが、それらの言葉の全ては本来の意味では俺の耳に届かず、ただただ俺の怒りを煽るだけだった


唯一得られた有益な情報は、敵は前方に居る、という事だけだが、そんなものは気配の濃さから大体の見当をつける事は出来たのだ

そして、その前方の気配は今や、完全にこちらに気付き、強い殺意を向けてきている

これでは、奇襲など出来る筈もない

完全に優位を失った事になる、この無能騎士のせいで


「何をしている。とっとと腰の剣を構えろ、相手はこちらに向かってきているぞ」


偉そうにペラペラと警告してくる無能は、自分が何を仕出かしたのかまるで理解していないのだろう

奴にとっては完全に雑魚なのだろうから、この傲慢さも納得できるが、俺からすれば迷惑千万極まりない事だ


憤っている間にも事態は進行している、それも良くない方向へ

前方より迫るは、何もかもが未知の敵、それも今の俺では危険が大きい相手だ

だからこそ、奇襲できる可能性があると判った時は安堵したのだが、それも今はご破算だ


仕方ないと思考を切り替えて、迎撃姿勢を取る

脚を左右に開き、更に右足を前に半歩踏み出す

そして腰を軽く落とし、腕は完全に脱力し、直下に垂らしておく


「おい!剣を抜け!遊んでいる場合じゃないんだぞ!聞いているのか!」


小物が何やら口やかましいが、今はそれらは無視する

そして、前方に向ける視線に集中すると、背の高い草の向こうから、敵と思しき影が2匹、こちらに飛び出してきた


人間の子供くらいの痩せっぽっちな体躯、深い草色の肌、禿頭から突き出た二本の小さな角、大きく裂けた口から飛び出た太く長い犬歯

あれは、調べた本の中に載っていたゴブリンの幼生体だろう

ゴブリンの成体は、大人の二倍の身長に筋骨隆々の体躯、肌は草色を通り越し枯葉の色に変わり、頭の角は小さな二本角から大きく長い一本角になり、犬歯は牙と言い換えた方が正しい有り様に変わるそうだ

ここで出没する以上、ゴブリンの幼生体は本当に弱い、無能の言葉を借りるなら、雑魚なのだろう


相手の思考を読む

連中の右手には、先端を削り尖らせた木の棒が握られている

それを高々と上段に掲げていた、恐らくあれを振り下ろして攻撃するつもりなのだろう


敵は右斜め前方から1体、ほぼ正面から1体、走って接近してきている

到着はほぼ同じになるだろうと予測する

同時に正面と右斜め前方からの振り下ろし

但し、背は俺の半分程なのであれは胴体に命中するだろう


幸いに、相手の武器は一つ、木の棒だけだ

そして俺は両手に武器を身に着けている

それは、木の棒など軽く防ぎきれるほどの防具でもあるのだ


俺の作戦は決まった、後は実践あるのみ

そこまでで、ちょうどいいタイミングだった様で、連中が俺をその間合いに捉えた

同時に木の棒が振り下ろされる、いい軌跡だ、尖端が綺麗に胴にめり込む軌道を辿る様に振り下ろされている

あれをまともに受ければ、鎖帷子越しとは言っても肉が軽く抉れるかもしれないな、などと考えながら作戦を決行する


それなりの速度で振り下ろされた木の棒を、右側の物は右手で、正面の物は左手で掴み取りに掛かる

反応の鈍さ、思う通りの軌道を取れない体

それらに歯噛みしそうになりながらも、何とか受け止める事に成功した

流石にかなりの衝撃があり、そのせいで痺れた手でそれを掴んだまま、腕を交差させる


するとどうなるか

ゴブリンはその幼さ故か、状況を的確に判断出来ず、武器を頑なに離さなかった為に、身体を引っ張られた

結果、互いの頭同士が衝突したのだ

直後に目の前から響いた、グシュッ!!という音と飛び散る赤黒い血液から、目論見が成功した事を確認する

ゴブリンは自分の角で相手の頭を深々と突き刺し合い、そのまま崩れ落ちた

小さな角だが、ゴブリンの頭もそれに見合う小ささだったのが災いし、それが致命傷になってしまったのだろう

流石にこうまで上手くいくと、些か拍子抜けしてしまう


そこで気を緩めてしまった

先に得た情報では、敵は3体

今目の前で殺したのは2体

では残りの1体は?


俺はそれを失念していた事を、直後に起こった事で甚く理解されられた


左耳に、ガサガサッという音が届いた

それと同時に左側の草むらの中から、握りこぶしくらいの石が投げ込まれたのだ

思わぬ事態に驚き、意識がその投石に集中させられる

反射的に左の籠手を持ち上げて、石を弾く事には成功した

だが、その意識の間隙を縫われ、飛び出してきたゴブリンの突撃に、無防備に身を曝してしまう羽目に陥った


ゴブリンは、先の二匹が持っていた物と同じ様な木の棒を、鋭く前に突き出してきた

油断し、完全に虚を突かれた俺は、その突きに意識が追い付かなかった


(中る!!)


その一瞬で痛みを受ける覚悟を決め、せめて反撃をと右手を強く握り締める

次の瞬間には右拳は放たれ、左脇腹に鋭い痛みが走る

俺は痛みに構わず、そのまま右拳に意識を集中し、大きく体を捻りながらゴブリンの側頭部目掛けて拳撃を叩き込んだ


その一撃を受けてゴブリンは吹っ飛んだ

俺はその機を逃すまいと、痛みに顔を顰めながらも構わずにゴブリンを追いかける

具足の重みに足を取られそうになりながらも、直ぐに転がるゴブリンに追い付き、姿勢が整っていないのをこれ幸いと飛び掛かる


軽く跳び上がった勢いを使い、思い切りゴブリンの胴体を踏みつける

重い具足が功を奏したのか、ゴブリンは胸腹部を踏み潰され、大量の血を吐き絶命した


俺はその様子を、今度こそ油断なく確認した後、痛みの走る左脇腹に目を遣る

覚悟はしていたものの、やはり恐怖が先に立ち、恐る恐る観察するが、思っていたより出血量が少ない事に気付き、帷子を捲り上げ直接視認してみた


「…それほどでもない、か?」


どうやら傷はそれほど深くなく、肉を軽く抉られただけに留まった様だ

咄嗟の反撃と、その為に身を捻ったのが良かったのだろう

傷は脇腹から入り、腹の方へ抜けていた


俺は周囲に気を配り、おかしな気配が無い事を確認した後、最初に敵を感知した所に放っておいた荷物から、止血作用のある膏薬と包帯、水の出る魔法道具、手拭いを取り出して傷の手当てを行う

魔法道具から水を掛けて、傷を洗浄する

その後、ポンポンと手拭いで傷口辺りを軽く叩いて水分を拭き取り、血が滲んでいる傷口に膏薬を塗り付ける


「…っ〜〜!!!」


膏薬が傷口に染みて声を上げそうになったが、何とか我慢する

傷の痛みは我慢できるのに、傷薬の痛みには声を上げそうになる

何故だろうか……分からん


後は畳んだ手拭いを包帯で傷口に固定して、手当は完了だ

本格的な医療処置となると、明らかに知識と技能が不足しているが、それほど深い傷でもないのだから、これでいい


「回復魔法が使えたらな……」


この世界には魔法があるのは、既に俺の中で常識となっているが、その有用性から特に着目していたのが回復魔法だ

今もそうだが、これから怪我は絶える事は無いだろう

その度にこんな手当をしていたら、はっきり言って体より先に精神が参ってしまう

だからこそ、回復魔法が使えたら、と思ったわけだが、そもそも魔法に対して適性を見出せなかったのだから、回復魔法なぞ使えるとは思わない


いや、ただ使用するだけなら出来るのだ

この世界の魔法は、本当に些細なものなら誰にでも使用可能なのだから

だがそれは、例えば火なら火花が散る程度、水なら手のひらが湿る、氷なら何だかひんやりする、風なら感じ取れない程度に空気が動く、土なら手に砂粒が付く、その程度なのだ

そして肝心の回復魔法では、叩かれて赤くなった痕が治るくらい、らしい

ちょっとした切り傷や擦り傷も治す事が出来ないのだとか

実用には程遠いと、魔法に適性が無いと判った段階で早々に諦めた


「貴方が回復魔法?分際を弁えた方が自身の為ですよ。そもそもあんな雑魚を相手に怪我をしている様じゃ、貴方の底もしれますね。大人しく城の片隅で過ごしていたらどうです?私もこんな不毛な役目から解放されますから、お互いの為になるでしょう」


無能騎士が何やら喧しいが、無能の行き場としては、この役目は割と妥当なのかもしれないな

正に割れ鍋に綴じ蓋、といったところか

そもそも、この無能があの時奇襲の邪魔をしなければ、と思ったが止めておく

その後の二匹同時は対処できたし、次の不意打ちに対処しきれなかったのは明らかな俺の失敗

その責任転嫁は、流石に道理に合わない

そんな事は言ってやらんが


俺は無能の相手をするだけ時間の無駄だと、何やら言っているのを聞き流し、荷を纏める

反省点はあるが、収穫も確かにあった

それを頭の中で整理しながら、駅舎で待つ車の下へ向かった

前回後書きに書いた通り、今回は元々一話分でしたが、あまりにも長くなったため分割して投稿しました

次回投稿は、申し訳なくもまた二週間の猶予を設けさせていただきます

これは演出的な問題です、次回は複数視点のお話を複数話に分けて投稿する事になるでしょう

よろしければ、ご期待の上、お待ち下さい


以降は私事です、興味ない、そんなん書くなや、という方は飛ばして下さい、一応はこの作品に関する事です


さて、今回ですが、長い投稿間隔を設けたのは理由があります

別にモチベーションが下がったとか、仕事が忙しかったとかいう理由ではないです

答えは単純

私が、ファンタジーものを書くのが初めてだからです、そして何より戦闘描写を書くのが初めてなのです

そして今回、ごく僅かですが、戦闘シーンが入っています

はい、聡明な皆様は既にピコーン!と閃いていらっしゃると思いますが、単に自信が無かったというだけです

実際今でも自信はありません

なるべく動きが理解できるよう、そして長々とした表現にならないように心がけましたが、いかがでしたか?

正直、慣れるにはかなり時間が掛かりそうです

今後も同様の理由で投稿間隔が延びる事があるでしょうが、ご了承頂けますようお願い申し上げます


余談ですが、作中で車について話が出ました

魔動車に関しては置いておくとして、牛車や馬車の様な、家畜に牽かせる車が無い、という様な描写がありましたが、当然そんな事はないです

魔動車は希少で高価なので、一般にはそうした物が使われています

では何に牽かせてるんだ、という話になると、まだ決めてない、と言う他ありません、情けなくも

どうしましょうかね?ファンタジーらしく、そうした世界観に即した動物に牽かせるべきでしょうか、悩み中です

竜とか一般的ですよね、変わり種だとデカい芋虫とか


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