第二十四話
色々と詰め込んだ結果、非常に長く、読む人によっては非常に読みにくい内容に仕上がりました
一応、順番は、レイリア→アイギナ→レイリア→となっています
ここは城の一区画
政治的軍事的意味合いの強い王城とは違い、ここは華やかさに溢れ、見る者を楽しませる空間になっている
社交的な意味合いの強いこちら側は、便宜的に王宮と呼ばれている
王宮には、社交会で使われるダンスホールや、立食パーティが開かれる会場、催し物をする際に用いる大舞台、招待客が宿泊する客室、そして王族が住まう後宮などがある
そんな王宮の一角
季節折々の花が咲き乱れる大庭園の片隅で、カエシウス王国第一王女アイギナとラルオウム帝国第一皇女レイリアの対談が行われていた
「王国の首脳陣がそれほどに気に掛けるとは、その異世界人の男、余程の英傑と見えるな」
そう、言葉を発したのは、ラルオウム帝国第一皇女レイリア
帝国が謎の敵によって陥落し、命からがら脱出し、危機を報せにカエシウス王国までやって来た
「そうですね。正直な話、私も彼のお方には興味があります。何せ、彼だけでしたから」
そう返すのは、ここ、カエシウス王国の第一王女アイギナ
歳の程が近く、以前より交流のあったレイリアの話し相手として、度々こうして会話している
「彼だけとは?」
「貴女は、仮に全く知らない場所、誰も自分を知っている者が居ない、自分も相手を知らない、そんな状況に陥って、冷静に対応できますか?」
「無理だな。というか、何があればその様な事態に陥ると言うのだ?」
「当然の疑問だと思います。ですが、彼らは正にそういう状況に放り込まれたのですよ。他ならぬ我らの手で」
「…それもそうか。そう考えると、その原因を作ったわらわも、流石に罪悪感を覚えるな」
「貴女が罪悪感を覚える必要などありませんよ。貴女は、自らが為すべき役目を果たしただけ。仮に貴女からの情報が無ければ、事態はもっと深刻化していた可能性が、十分にあるのですから」
「そう言ってもらえれば、わらわも救われるというものだが、それで彼らの状況が改善される訳でもなかろう?」
「そう、ですね。彼らは、私達の怠慢の被害者の様なものですから。彼らには相応に報いねばなりません」
「話が逸れたな。件の男の事だが、つまり、その者は突然の事態にも関わらず、冷静に対処してみせたと?」
「対処…と言っていいかは分かりませんが、立派に対応されておいででしたよ。最初に彼と会話したのは私ですが、特に失礼だったり、或いは動揺していたりはしませんでしたから」
「ほう…それは、なかなか興味深いな」
「ええ、あまつさえ、こちらが信用するに足るか、探りまで入れてきましたから」
「ほうほう…だが、それだけでは、彼の閣僚方が興味を抱くには、少し理由が弱いな」
「その通りです。恐らくですが、彼らが興味をそそられたのは、謁見時の彼の対応にあったのではないでしょうか」
「謁見時?一体、何があったのだ?」
「お父様が異世界人に、力を貸してほしいと頭を下げられたのですが」
「ちょっと待て。天下のカエシウス国王が、この世界の上下関係とは関係ない異世界人とはいえ、若造相手に頭を下げたのか!?」
「…? 当然でしょう?彼らには全く関係のない戦いに参加してほしいとお願いするのだから、しっかりと頭を下げてお頼みしなければ」
「いや、そちらがそれでよいと言うなら、わらわが関知する事では無いが。威厳とか沽券とかは気にせぬのか?」
「当然気にすべきでしょうね。ですが、今回は事が事です。何せ、貴女の御父上、魔法士皇クリストファー・ラルオウムが、一人で一軍を相手に出来ると謳われた魔法士が勝てなかった相手ですから。お父様も相当衝撃を受けたのでしょう。お二人は仲がよろしかったですからね」
「……今でも正直信じられん。西に剣士王在り、しかして東には魔法士皇在り、とまで言われた我が父が、討ち死にした等とはな……」
「……あの方は、今の世に生きる全ての魔法士の憧れでした。我が国の魔法士団長も、彼のお方には一目置いておられましたから」
「そうだな…わらわは魔法士型ではないから、純粋に父の跡目を継ぐ、とは言えんが、それでも父を尊敬していたよ」
「……泣いて、おられるのですか?」
「…仕方なかろう。まだ、それほど時も経っておらん。それに、ここに来るまで、いや、来てからも忙しかったからな。彼等の事をゆっくりと偲ぶ事も、今の今まで出来なんだ」
「……」
「……」
「ところで、先程からずっと気になっていたのですが…」
「ん?なんだ、唐突に」
「いつまでその仰々しい喋り方をするのよ、レイリア」
「…そんな事か……ゴホン!これでいい?アイギナ」
「ええ、あんな話し方じゃあ、こちらも肩が凝ってしまうわ。貴女、もう少し公私の区別をしっかり付けられる様になりなさいね」
「うるさいわね!どうも、上手くいかないのよね…皇族として恥ずかしくない振る舞いを、って躾けられてきた結果だけど、これってある意味躾け失敗よね?」
「う〜ん…そうね。話し方をどうこう言うつもりはないけど、しっかりと切り替えられないのは、公人としては問題ね」
「わらわだって、あんな恥ずかしい喋り方、本当はしたくないわよ…でも、わらわには威圧感が足りないから、せめて言葉遣いだけでも威厳を感じさせるものを、って言われて身に付けさせられたの!」
「その話、もう何度も聞かされたわよ。皇族教育の賜物なのはいいけど、締めるべきところ、緩めるべきところをはっきりさせなさいって、私も貴女に何度も聞かせたわ、成果は今のところ無し、だけどね」
「そ、そんなに責めなくてもいいじゃない…わ、わらわだって、頑張っているのに……」
「私達には、結果が求められるの。頑張ったんだから評価してください、じゃあ罷り通らない…ああもう、泣かないの!相変わらず泣き虫なところは治らないんだから…それでよくここまで辿り着けたわね」
「泣いてない!…涙目になってるだけ…ひっく……あの時は本当に無我夢中で、正直、夢の中の出来事じゃないかと思うくらいよ…っく!」
「泣いてないって、貴女それ全然説得力ないわ、そんな嗚咽を漏らしながら言ってもね。でも…」
「…?」
「でも、貴女が生き残ってくれて、本当に良かった……その過程がどうあれ、貴女がどれほどに心を痛めたのだとしても。死んでしまっては、こうして苦しむ事も出来ない、嘆く事も出来ない、悼む事も、何より貴女とこうして話す事も出来ないのだから」
「アイギナ…貴女……」
「私の親友…本当に良く生きていてくれたわ……ありがとう………」
「…なによ、貴女だって泣いてるじゃない……」
「…あら?私は一言も、自分は泣いてない、だなんて言ってないわよ?」
「泣きながら言っても、カッコ付かないわね…っく!」
「ふふ…貴女もね…?」
「ふぅ…どう?涙の跡とか残ってない?」
「大丈夫よ。でも、流石に目は赤くなっちゃってるわね」
「それは仕方ないわ。しばらくすれば、赤みも引くでしょう」
「ねぇねぇ、わらわは?わらわは、跡残ってない?」
「そうねぇ…うん!大丈夫大丈夫!大丈夫だから!」
「ホントに?なんか適当に答えてない?他の人に見られたらみっともないんだから、ちゃんと教えて!」
「大丈夫だって。レイリアも、流石に目が赤くなってるけど、跡は残ってないわよ」
「そ、そう?なら良かったわ」
「お茶が冷めてしまったわね…侍女も遠ざけているし、自分で淹れるしかないわね」
「え?アイギナ、貴女が淹れるの?誰か呼べばいいんじゃないの?」
「それでも別に構わないけど、この真っ赤な目を見られてしまうわよ?それでもいい?」
「うっ…それは流石に……何か妙な勘繰りとかされそうだし」
「そうでしょう?まあ、心配しなくても、道具は揃っているわ」
「いや、そもそも貴女、お茶を淹れた経験あるの?」
「失礼ね。貴女なら知っているでしょう?私がそうした事が出来る理由を」
「あっ!ご、ごめんなさい…うっかりしてたわ……」
「別にいいけどね。まあ、そういうわけだから、安心して任せておきなさい。侍女が淹れるより上手く出来るとは、流石に言わないけど、ちゃんと飲めるものを淹れるわよ」
「ええ、お願いね。…ふふっ、でも、王女様手ずから淹れたお茶が飲めるなんて、わらわは幸運ね」
「あら、貴女ならいつでも飲めるわよ」
「いつでも淹れてくれるの?」
「あら、そんな面倒なことしなくても、自分で淹れれば、王女様の、いえ、皇女様のお茶が飲めるじゃない」
「あ、そういうこと。貴女って本当に口が回るわねー」
「それくらいしか出来ないのよ。言わせないでちょうだい」
「はい、ごめんなさい」
「本当に反省してるのかしら…まあいいわ。ほら、淹れ終わったわよ。どうぞ」
「ありがとう!中々の手際だったわね、よく淹れるの?」
「ええ、自分で出来るなら、わざわざ人を呼んで、してもらわなくてもいいでしょう?」
「それってどうなのよ?別に大した手間でもないでしょうに」
「仕事中かもしれない、なんて気兼ねをする必要がないだけ、随分と気楽よ」
「そういうものかしら」
「そういうものよ。この話はもういいでしょう?それより、何の話をしていたのだったかしら?」
「ええっと…確かギュスターヴおじ様が、異世界人の男の子に、頭を下げられたって話をしてたわね」
「ああ、そうだったわね。彼、サt、マイシマ様がお父様達に認められているという話をしていたのだったわね」
「そうそう、で?その、マイシマ?って男の子はどんな感じ?カッコイイ?強そう?」
「強そう、と言うよりは、強かと言った方が適当じゃないかしら。少なくとも、普通の人ではあんな振る舞いは出来ないわね」
「おじ様と張り合った事?でも、おじ様だって、本気でやり込める様な事はしないでしょ。じゃあ、勝ちを譲ってもらった様なものじゃない」
「あのね…どんなに加減してもらったって、普通ならお父様と弁舌でやり合えるわけないでしょ?そもそも、お父様がそんな事をしていたなら、他でもないお父様が彼を認めるのはおかしいでしょう」
「う……じゃ、じゃあ、おじ様は真っ向から論戦をして、負けを認めたって言うの?」
「あとから考えればね。あの時は、お父様は彼らに強く出られなかったのよ。勿論、強硬姿勢を見せる事も出来たわ。でも、お父様はそれを選ばなかった」
「まあ、おじ様は筋の通らない事は嫌いだからね。本来なら自分達が解決すべきことなのに、異世界人を巻き込んだ事に罪悪感を覚えても仕方ないか…」
「そうね…こういうことを言うのは嫌なのだけど、仮に彼ら異世界人に助力を求めるとしたら、最低でも相手と一戦交えた後で無ければ筋が通らないと、お父様なら思われるでしょうね。その戦いで、お父様ご自身もお亡くなりになっていれば、なお良し、なんて考えそう」
「うわぁ…確かに考えそうね。おじ様ってば、父上と同じで、危険は自分が買って出る!って考えの人だからね。父上なんか、その為に強くなったんだって言って憚らなかったし」
「お父様も同じよ。自分には、他の者より優れた強さがあるのだから、自分が前に出るのが当たり前だ、って言ってたわ。その後で、お母様にこっぴどく怒られてたけど」
「あの二人は本当に王様なんて柄じゃあないわ。市井に下って探索者でもやってた方が、ずっと向いてたでしょうに」
「フフッ…まあ、そうね。話を戻しましょう?お父様とマイシマ様が舌鋒を交わした時の事だったわね」
「よく話の腰が折れるわね、私達」
「今も正に折れようとしているわ。本当に戻すわよ。お父様が、異世界人達に強く出れないってところまで話したわね」
「ええ、それがなんで?ってとこで逸れたのだったわ」
「まあ、それは解決したから。で、お父様は強く出られなかったのだけど、マイシマ様はそれすら利用して、状況を自分の思う着地点に持って行ったのではないかと思うの」
「着地点?」
「マイシマ様は、自分達の身の安全の保証が欲しかった、のだと思うわ。それだけなら、別に不思議な事ではないわね。誰だって、未知の環境に放り込まれたら、安全を確保するのは当然の事だもの」
「そりゃあね。私だって、一通りの教育は受けているし、その中には非常事態で生き残る為の知識もあるわ。その教えでも、まずは安全の確保が最優先だって言ってるし」
「ええ。でも、マイシマ様は違ったわ。彼は、自身の命を賭け金にして、皆の安全の保障を引き出そうとした。事実、お父様が、彼を殺そうとすれば、何時でも殺せたのだから。それを理解して、それでもなお、彼は強気でこちらを試した。あの時、彼は女神様を引き合いに出したわ。恐らく、信仰を貶す事で、私達がどういう反応をするか見たかったのではないかしら。彼は、私に対しても、同様に試す様な質問を繰り返していたし」
「試す?何を?」
「私達がどれくらいで気を害するのか。そして、私達が怒って自分を害するならそれもいい、と考えていたのではないかしら。そうすれば、他の異世界人達は私達を警戒するわ。初めは恐怖で抑え付けられるかもしれないけど、何れは彼らの方が強くなる可能性が高かった。実際、彼らのステータスは、私達など足元にも及ばない程のものだったでしょう?つまり、マイシマ様を殺せば、異世界人達は一時の苦境を耐え、自分達の安全を確保出来た。殺さないのであれば、そもそも自分たちを害する意思がない、と判断出来たでしょう」
「……正気の沙汰じゃないわね。それでいて、尋常の才気で思いつく手段でもないわよ」
「そうね…だからなのでしょう。お父様達が、サ、マイシマ様に一目置いているのは」
「へぇ……ねぇ?さっきから気になっていたんだけど…」
「?何かしら」
「いや、さっきから何回か、マイシマ様、の前に、サ、って言いかけて言い直してるわよね。なんで?」
「えっ!!いや、あの、そのぅ……それはその…」
「なんで言いよどむのよ…そんなにおかしなこと訊いてないでしょ」
「あの…さ、最初にお名前を伺った時、マイシマ サトルって名乗られたから、てっきりサトルが姓だと思って……それで…」
「それで、サトルって呼んじゃったと?それがどうしたのよ、別にいいでしょ、歳の頃も近いって話だし」
「いや、でも!そんな、男性を名前で呼ぶなんて、なんか特別な関係みたいで……」
「……呆れた…アイギナ、アンタそんな初心な事、その歳になって考えてるの?婚約者が居てもおかしくない年齢してるのに?」
「い、いいでしょう!別に!!というか、居てもおかしくないって、どうせ私は婚約者居ませんよーっだ!」
「貴女、その苦しくなった時の幼児退行を何とかしなさいよ。流石にもう厳しい年齢よ?」
「なっ!?れ、レイリアだって、婚約者いない癖に…」
「反論が一歩ずれてるわね…年齢の事は認めるのね?反論してないものねぇ?」
「んなっ!!?」
「淑女として、その様はどうかと思うわよ、大口開けちゃって。というか、流石に反応が過剰ね…アンタ、そのマイシマってのに、なんか思うとこがあるの?どうなの?」
「お、思うところって何よ!?何もありません!!?」
「狼狽え過ぎよ。さ、この親友に何もかも吐いちゃいなさい!」
「なに、なにもないって言ってるでしょ!!」
「はぁっ!はぁっ!おっ、往生際が悪いわねっ……!」
「……!!無理矢理、はぁっ!聞き出そうとするからでしょっ……!!」
「……貴女ねぇ…流石にそれ、無理があるって、自分でも分かってるんでしょ?」
「……」
「だんまりも、貴女の悪い癖よね」
「……だって…」
「別にさ、貴女の恋愛事情に口出すつもりもないし、当然、揶揄うつもりもないわ。ただ、貴女って自分から相手に踏み込む事ってないじゃない?だから心配なのよ」
「それは…私が近づいたって、皆迷惑するでしょうし……というか!別に私はマイシマ様の事が好きとかそんなんじゃ!」
「はいはい、そーですね。うんうん、分かってますよー」
「………っもう!白状する!白状するから!」
「初めからそうやって素直になってれば、こんな引っ張らなくても済んだのにね」
「……」
「な、何よ…そんなジトッとした目で見ないでよ……」
「レイリアなら、こんな事を喜々として話せるの?ねぇ、話せるの?」
「い、いや、それは…その……」
「……覚えてなさいね。貴女の番が来た時は、何をしてでも聞き出してみせるから」
「ちょっ!!」
「さて、私がマイシマ様をどう思っているか…だったわね」
「ね、ねぇ…ごめん、ごめんなさい。許して?ね?ね?」
「許しません。私がマイシマ様と初めて話したのは、あの方が呼び出された直後だったわ」
「ううぅ……あ、う、うん。それで?」
「さっきも言ったけど、そうした場合に怖気ず対応出来る人は希少よ。異常と言ってもいいかもしれないわね」
「あぁ、うん、そうね。そんなの出来っこないじゃないのって言ったのよね、わらわは」
「もっとカチカチな口調だったけどね。その後も、少しの間、会話する機会があったの」
「いちいち刺さる事言ってくるわね、悪かったって。で?その時に何かあったの?」
「絶対に仕返しします、絶対に。その時は他愛のない話だったわ。この世界の名前とか、地理について尋ねられただけよ。後は、私が謙った態度を取る事を訝しまれたくらいね」
「特におかしなことはないじゃないの」
「だから、そう言っているでしょう?…まあ、私がつい漏らした一言が、気に掛かっておいでのようでしたが…」
「一言?何を言ったの?貴女の事だから、そんなおかしな事は言ってないと思うけど」
「それはそうよ。下手な事を言って、怒らせてしまったら一大事だもの。私はただ、皆様のお力添えを頂けるなら、この身を捧げても構わない、と言っただけよ。何もおかしくないでしょう?」
「……」
「…?さっき私に、大口開けてはしたないって言ってたのに、貴女が大口開けてちゃ説得力無いでしょう?閉じなさい」
「フガッ!?ちょっと!アゴ掴んで強制的に閉じさせるの止めて!?舌噛んだらどうするのよ!!?」
「別にどうもしないわよ」
「冷静に返さないで!いや、心配くらいはしてよ!」
「はいはい。それで?大口開けて、どうしたのよ?一体」
「どうしたのよ、じゃないわよ!貴女ね!乙女の貞操を何だと思ってるの!?」
「それで彼らに動いてもらえるなら、別にどうという事はないでしょう?まあ、しっかりと動いてもらえる様に、色々と対策しなければならないけど。身体を捧げたのに、結局動いてもらえませんでしたじゃあ、流石に堪えるからね」
「いや…な、何から怒ればいいのやら……」
「?」
「こら、訳が解りませんよ、って顔するな。あぁ〜、まずひとつ。いい加減にその自己犠牲癖は治しなさい。皆がどれだけ気を揉んでると思ってるの?」
「でも…私はそうでもしないと、皆の役に立てないから……」
「あのね…別に役に立たないからって、放り出したりしないわよ。毎度毎度、そう言ってるし、皆からもそう言われてる筈よね?」
「別に、我が身可愛さに言ってる訳じゃないわ。私が皆の役に立ちたいの。こんな出来損ないを受け入れてくれた皆だから、彼らの役に立ちたい。そう思うことがいけない事なの?」
「それは聞いたわ、何度もね。そして、これも何度も言ってるわね。貴女のしている事は、ただの自己満足。誰も喜ばないし、幸せにもならないって。誰が、自分の家族を犠牲にして喜ぶっていうの?おじ様達はそんな人達?」
「だって……私はたくさんのものを彼らから貰っているのに、私は彼らに何も上げられない…本当に何もないのよ……」
「はぁ…この話も何度目かしらね。いい加減に聞き分けてほしいところだけど…そうもいかないのでしょうね」
「……」
「もういいわよ、あまり責めても可哀想だものね。話を戻しましょ。マイシマにそう言ったら、彼はどう反応したの?」
「………何故そこまで出来るのか?何がそこまでさせるのか?って……」
「……へぇ…何々、なんかおじ様がやたらと買っているって聞いて、しかもおじ様と対等に渡り合った、なんて聞いたから、人間味が感じられないというか、正直異常者じゃないの?って思ってたけど、割と人の心の機微が理解出来るのかしら?俄然興味が湧いてきたわ、マイシマ サトル…」
「…そ、そう?」
「でも、貴女も王族として、巧言令色の類は飽き飽きしているだろうとは思っているけど、そういう内心に不躾に踏み込んでくる感じに弱いのね〜。なんか意外。寧ろそういうの、嫌がりそうなものだけど、貴女のこれまでを考えると」
「別に、そう言われたから気になってる訳じゃ……」
「?じゃあ、何だって言うの?」
「……これを言って通じるかしら…」
「そんな逡巡はどうでもいいから、取りあえず言ってみなさい」
「…そんな簡単に言わないでよ……目よ、目」
「目?そんなにカッコいい目をしてたの?」
「貴女そればかりね。違うわよ。うーん、なんて言えばいいか、迷うわね」
「どうしたのよ、口先の上手い貴女らしくないわね。はっきりしなさいよ」
「誰が口から先に生まれた舌先三寸王女よ。そんな風に呼ばれた事はありません!」
「わらわもそんな風に呼んだ事ないわよ。妄想力逞しいこと言ってないで、早く続き」
「冷静に指摘しないで…流石に恥ずかしいから………寂しそう…と言えばいいのかしら」
「は?寂しそう?なによ、あれだけの人数が居て、そのマイシマは独りぼっちなの?友達居ないの?」
「知らないわよ。あれから会ってもいないし。って、そういうことじゃなくて!」
「じゃあ、どういうことなのよ」
「…貴女に出会う前の私みたいな、と言えば、貴女なら解るかしら…」
「え?そんなの言われても解らないわよ。第一、殆ど憶えていないもの」
「まあ、私も殆ど憶えていないんだけどね。でも、貴女に会う前の私がどういう子供だったかは憶えているわ」
「…まあ、そうね。初めて会った時の貴女って、結構つまらない子だったわね」
「ふふっ、辛辣ね。でも、そうね、その通りだと、私も思うわ。本当に、つまらない子供だった」
「で?そのマイシマもつまらない男だと?」
「だから、貴女はどうしてそう結論を急ぐの」
「まどろこっしいわね。結論を言いなさい、結論を。別に貴女と討論しに来た訳じゃないんだから」
「分かったわよ…だから、彼は理解者が欲しいんじゃないかしら?」
「理解者?」
「そう、彼は何か人に言えない、或いは理解されない事を抱えていて、それを理解してくれる人、共感してくれる人を探しているのだと、そう感じた。より正確には、私がそうではないか、と。そう、目が訴えかけていた様に思うわ」
「ふーん」
「興味なさそうね…」
「そうね…共感とか理解者には、特に興味はないわ」
「はぁ…ただの話し損じゃないの……」
「というか、何故貴女は、彼が気になっているの?まずそこが理解できなかったわ」
「…?今話したでしょう?」
「それは解ったけど、それを貴女が気に掛ける理由が解らないって言ってるのよ。おかしいでしょう?相手が貴女に縋ってきたからって、貴女が心動かされる理由は何もないじゃないの」
「それは…」
「なのに、貴女はマイシマ…言いにくいわね、サトルでいいでしょ。サトルの事が気に掛かっている。それも、ちょっと話しただけの相手にしては、過剰とも言える位に。それは何故?」
「……今から話す事は、決して他言しないで」
「え?何よ、急に」
「いいから、約束して。決して他では話さないって」
「わ、分かったわ」
「…私の抱える事情、というか欠陥については、もう言うまでもないわね」
「欠陥って言わないの。今の貴女は、そんな事が問題にならないくらいに立派になったんだから」
「それでも欠陥は欠陥よ。このステータス絶対の世界で、ステータスが低いっていうのはね。しかも私は王族、それもただの王族じゃない。天地に名だたるカエシウス王国の第一王女。本来なら、この事が判明した時点で王宮から放逐されていてもおかしくなかったのだから」
「やめなさい」
「…っ!」
「貴女が自分を卑下するのは、まあいいわ、本当は全然良くないけど、まあ見逃してあげましょう、聞き流してあげましょう。でもね、放逐云々は聞き流せないし、見逃せないわ」
「……」
「もう何度目かしらね、これを言うのは。でもいいわ、何度だって言ってあげる。大事な親友の間違いを正すのも、わらわの務めだものね。ねえ?理解している?貴女が自分を卑下する度に、おじ様おば様の事も愚弄しているのだ、という事を。貴女を慕う弟妹を馬鹿だと言っているも等しいって事。貴女はちゃんと理解しているのかしら?その場だけ、解りましたって言ってるだけじゃないの?これは本当に、何度目なのかしらね」
「そ、そんな事は…」
「それも毎回言ってるわね。でも、また同じことを言った。貴女、まさかおじ様達の前で同じこと言ってないでしょうね。言ってたら、流石にタダじゃあ置かないわよ」
「言ってない…言えるわけないわよ……」
「そう…流石にそこは弁えていたわね。まあ、それを聞かされるわらわの身にもなってほしいものだけど…それも仕方ないか…厄介な親友を持った我が身の不幸を呪いましょう」
「うぅ……」
「で?話の続きは?」
「え?あ、ああ、うん。でね?マイシマ様も、私と同じだったって事を、言いたかったの」
「同じ…って、まさか成長率?でも、異世界人はわらわ達よりも高いステータスを持っているんじゃ…」
「ええ、でも一人だけ例外がいるって、女神様は仰ったそうよ」
「その例外が、サトル?え?でも、サトルっておじ様達が絶賛したって」
「そうよ、つまり、お父様達は、彼のステータスではないところを見込まれたってことじゃないかしら」
「はぁ…確かにこれは他では言えないわね。というか、これはどれだけの人が知っているのよ?」
「お父様、お母様、元帥、財務大臣、政務大臣、他主要な各種部署の長たちは知っているはず。あと、測定時に居合わせた財務官十名と、元帥の副官も知っているわ。でも、それ以外には知らせていない」
「カリドとアミリアは?」
「弟と妹には知らせていないわ。知ってる人は、可能な限り少なくしたいからって」
「いや、でも結構知っているわよね。漏れると結構まずいと思うんだけど、その辺りはどうなのよ?」
「……それについてなのだけど、現在、サ、マイシマ様は城中を自由に行き来なさっておいでよ」
「また、サトル、って言いかけたわね。って!それは大丈夫なの!?」
「解らないわよ!でも、もしマイシマ様の事を知られたら、城中でのマイシマ様のお立場はかなり悪くなるわ」
「解らないって…おじ様達は何か言ってなかったの?」
「……お父様は、彼なら何とかするだろう。責任は俺が取るから心配するな、って」
「いや、責任って…」
「とにかく、お父様には何かお考えがある様だったし、それを信じるしかないわ」
「そう…ね。でも、それじゃあ、わらわが会いに行くのってまずいかしら?」
「え?」
「いや、え?じゃなくて。一度会って話してみたいって言ってるんだけど、それってまずいかしらね?って」
「……なによ、レイリアもサト、マイシマ様が気になるの?」
「いや、そういう事じゃ………おやおやぁ、どうしたんですかね、アイギナさん。今度はサト、まで言ってしまいましたけど」
「ふぇっ!!?そそそそ、そぉんなことはないですよ?幻聴でも聞こえたんですか!?耳の中に蛆でも湧いたんじゃ!!?」
「……貴女、どさくさに紛れてヒドイこと言うわね…まあ、それは置いておいて。実際のところどうなのよ?」
「えっ!?な、何が?」
「だから、わらわがサトルに会いに行くのはまずいかしらって、さっきから訊いてるでしょ?」
「あ、ああ、そうね。……マイシマ様が注目を集めてしまう、という点ではまずいかも…でも」
「でも?」
「貴女は、今やラルオウム帝国皇族唯一の生き残りと言ってもいい存在よ。その貴女と繋がりがあると周囲に知らしめる事には、それなりに効果があるんじゃないかしら」
「ふむふむ。つまり、わらわがサトルに会いに行っても、それほど悪いことにはならない。寧ろ、わらわがサトルを庇護する形に持っていく事も出来るかもしれないと、そういうことね?」
「えぇ、まあ、そうなるかもしれない、という、飽くまで想像だけどね」
「よし!じゃあ、早速今から会いに行きましょう!そうしましょう!」
「ええぇっ!?ちょっ、待って!今からって、サトル様がどこにいるか、貴女知ってるのーっ!!?」
いかがでしょうか?
この様な内容になったのは、ちゃんとした考えがあっての事なのですが、この場では説明を省かせていただきます
こうした話は、今後も数回書くつもりでいます
悪しからず、お含みおきください
アイギナ&レイリアコンビは、会話の受け攻めがリバーシブルとなっています
正確には、アイギナが公的な話題に強く、レイリアが私的、感情的話題に強いです
社会人的能力が高いのがアイギナで、女子力が高いのがレイリア、と考えればいいでしょうか
アイギナが抱える問題は、(本人にとっては)かなり根深いものとなっています
今後、どの様に解決していくのか
どうぞ、ご期待ください
次回投稿は、やはり一週間以内とさせていただきます
次回は、理、アイギナ、レイリアの絡みを予定
あ、この後レイリアさんは理に適当にあしらわれ、アイギナさんに連れられて行きました、ちゃんちゃん
女子二人の会話なんてわかんねぇよ
あと、PV10000突破、ユニーク2000突破しました
ご愛顧いただいた皆様に感謝を




