第二十三話
前回の続き、というには話につながりがありませんが
場面としては、アイギナ王女とレイリア皇女の対談
その中での独白、という感じです
「さあ…出来損ないの私などには、貴き方々のお考えは理解出来かねますわ」
私は、机を挟んで対面するレイリア様に、正面からそう言い切った
彼女は、我が国に次ぐ大国の皇族
今でこそ、あのような事態に陥っていますが、何れ事態が解決した折には、再び彼の地を統べる帝国を治める立場に立たれるお方
前例のない異世界からの援軍を得た今、彼の地を取り戻す事はほぼ確定した事として扱われています
であるなら、その功労者の一人であり、現状ただ一人、無事が確認出来ている皇位継承権者であるレイリア様は、我が国にとっては、政治戦略上、非常に重要な存在で在られます
だからこそ、彼女には可能な限り弱みを見せず、かと言って強く出過ぎて心証を損ねてしまわない様、特に気を遣わねばならないのです
たとえ、今は力無き身で在れど、その将来はまだ定まっていないのですから
申し遅れました、私はアイギナ
カエシウス王国第一王女 アイギナ・ファーレン・カエシウスと申します
私の故国、カエシウス王国は、西大陸の約五分の三を治めている、世界最古にして最大の王国です
これは自慢ではありません、ただの事実です
今私達が居るここ、カエシウス王国王都は、女神降臨、人類生誕の聖地と呼ばれ、世界的にも特別な意味のある場所です
またこの地は、現在も世界中で用いられている、使用者のステータスを表示する石板の、最初の一枚が存在する地でもあります
そもそも石板とは、我らに強さを教え、力を得て、地を統べよとの女神様の御心から、我ら人類に授けられた物
後に、利便性を求め、大小大きさの異なる模造品が造られ、各地に散らばりましたが、一番初めに女神様より授けられた大石板は、今も我が国の王都に在るオースベル大神殿に収められています
というよりも、大石板に合わせて神殿が造られたのですが…それは別にいいでしょう
ある意味、世界の中心と言ってもいい我が国は他国から、人材の宝庫、と呼ばれています
ステータスには、個人によって違いがあるのは公然の事実ですが、その偏り具合にも方向性、と申しますか、幾つかの種類に分けることが可能です
戦士型、魔法士型、感覚特化型、賢者型、万能型、複合型の六つの分類がそれですね
幸運型、という型も理論上では存在しますが、飽くまで机上の空論ですので、普通は除外します
更に、攻撃力特化の戦士型や防御力特化の戦士型、魔法力に優れた魔法士型や抗魔力に優れた魔法士型、感覚特化でもどの感覚が優れているのか、と言った細かい分類がされます
一般的には、前者五つを純粋系と呼び、特化した分野ならば複合型の追随を許さない、という傾向にありますね
例を挙げるなら、お父様は機動力に特化した軽戦士型と呼ばれる純粋系です
攻撃力と機動力に優れる反面、魔法力と防御力、抗魔力が平均を下回り、感覚力と思考力が平均に留まっています
また、生命力もやや低めです、避けるのだから関係ないでしょう?と言いたげなステータス配分ですね、少し心配になるのは仕方ないことでしょう
魔力に関しては、戦士型は皆低い傾向にありますし、そもそも魔法力が低いので論ずる必要がありません
さて、話を戻しますが、我が国が人材の宝庫と呼ばれるのは、そうした各種ステータス型に於いて、その人在り、と謳われる様な者を多く輩出している事に起因しています
話は変わりますが、オースベルには、三人の探検王と呼ばれる偉大な探索者が存在しました
探検王達は、各々が偉大な功績を残し、その功績で、後の探索者達の行動基準を形作った、と言われる程の偉人達なのです
先ず、探剣王オズワルド
子供に語って聞かせる程の偉人で、当時オズワルドが編み出した戦闘技術は、今も全ての人が参考にして、現在の戦闘技術の礎となっています
今現在、世界で最も使われている武器が剣なのも、彼の影響でしょう
一部の歴史家の間では、その全方向に活用されている戦闘技術から、彼は万能型ではないか、と推測されています
だからどうした、と思ったのは内緒です
次に、探見王ファリアス
彼は感覚特化型で、視覚能力に特化していたと伝えられています
彼はその眼で、通常では見えないものを見て、そこから多くの知識を人々にもたらしたと言われています
一説には、彼は石板を用いずに他者のステータスを見る事が可能だったとか
また、迷宮において、彼は決して道を誤る事が無く、必ず目的を達成したそうです
最後に、探賢王イルドレア
彼の功績は特に偉大で、迷宮の仕組みや等級付け、魔物の戦闘行動傾向や生態、素材の効率的な剥ぎ取り方法や各種加工法、果ては様々な生活技術まで
その比類なき知恵の賜物は、全ての人類に多大な恩恵をもたらしています
スキルに関しても、何らかの見識を遺したと伝えられていますが、彼の死後に多くの資料が散逸し、残念ながら多くが闇の中に葬られました
その資料があれば、現在もその全容が解明できていないスキルのレベルアップ条件や、スキルの習得条件も解明されるこもしれないのですが…まあ、ない物ねだりは止めましょう
また、彼らは皆、成長率10%であり、生命力魔力を除いた基本身体能力値の最高値が、100000を超えていたそうです
先の偉業だけでも、後世に伝えられ、讃えられるのが当然であるのに、10000を超えれば優秀とされる身体能力値が、その10倍であったとあれば、女神の使者、などと、一部の者が称えるのも致し方無い事でしょう
それほどに、この世界に於いては、ステータスというのは、重大な価値を持っているのです
だからでしょうね、今回の異世界人召喚で呼び出された異世界人達には、多大な期待を寄せている者が多いようです
それは同時に、異世界からの侵略者とやらへの不安の裏返しでもあるのでしょうが
ほぼ全員が9.5%以上の成長率を持ち、我らの倍のレベル上限
最終的なステータスは、オースベルの常識では考えられない程の高みに届くという計算結果が出ています
中でも1人、特別なステータスを持つ者がいます
ナミハラ ジュン
伝説の探検王と同じく、成長率10%を示した、ただ一人の異世界人
成長率9.9%は、歴史上でも何人もいました
大体、200〜300年に一人か二人くらい現れるようです
いずれの人物も皆、歴史に名を残す様な大人物でした
勿論、成長率だけで語れるようなものではありません
彼らの偉業は、探検王に及ばずとも十分人類に貢献するものなのですから
それ故に、召喚された異世界人の内、10%が一人、9.9%が二人、という事実は、この世界の者ならば、どうしても期待してしまうものなのです
それでも、始めの内は弱さが目立ち、下手をすれば死なせてしまうかもしれない
彼らのステータス初期値は、それほどに高くありませんでしたから、その懸念も当然のものとして受け入れられました
結果、彼らには騎士団より、選りすぐりの騎士を付け、万に一つの事態も無い様に守らせています
異世界人方には、監督の為、と伝えてありますが
ただ、そんな彼らの中にも、所謂落ちこぼれというのは存在していました
マイシマ サトル
初めに私達に対応し、それなりに会話もした少年
お父様とも対等に舌鋒を交わした、妙に肝の据わった人
…その…知らぬこととは言え、お名前を呼んでしまったお方……
正直なところ、彼が落ちこぼれだ、と言われても俄かには信じがたいです
彼らの身に起こった災難
それが、自身に降りかかったとして、その時私は、サ、マイシマ様の様に振る舞えるでしょうか
見知らず他人に対して探りを入れ、為政者から譲渡を引き出す
私は出来損ないの王女
言うなれば、マイシマ様と同じ、爪弾きにされる存在です
手酷く扱われて当然、無視されることすら有り難い、と感じなければならないのが、我らの様な底辺で生きる者の宿命です
にも関わらず、マイシマ様は、手酷く扱われる筈の御命すら交渉の道具として利用為されました
その結果、彼は我が国の重鎮達の間で、一定の評価を得ることになったのです
お父様など
「マイシマ サトルは稀に見る傑物だ。彼が戦いに赴かないのならば、是非国政に参加してもらいたいな」
と言い出す始末です
はっきり言って、これは異常な高評価です
我が国では、厳しい、それはそれは厳しい実力評価制度を採用していて、所謂、縁故での昇進、というものを一切認めていません
その為、現在我が国で重要な役職に就く者達は、皆一人残らず現場からの叩き上げで構成されています
例えば、財務大臣
彼は、貴族の出身ではなく商家の生まれで、幼い頃からお金と計算に関わって生きてきたそうです
ただ、彼は実家の商売を継げる立場ではなく、探索者稼業で食いつなぎ、後に国に仕官して財務局の配属になり、そこからコツコツと頑張って大臣の地位を得たと、お父様から教えてもらいました
お父様は、彼をとても重宝しています
…お父様は完全な肉体派で、事務仕事がとても苦手だから、というのは公然の秘密です
元帥も同様ですね
彼はなんと農民の出で、食い扶持減らしの為に捨てられて、生きるために荒くれものが多いと噂の工兵部隊に入隊したのだとか
その様な噂のある部隊なら、万年人手不足でしょうから、身元不確かな者でも入隊出来るのでしょう
実際には、しっかりと身元の調査が行われますし、入隊してからも、素行に問題があれば除隊される事もあるそうなので、当時その様に考えたのは、全くの誤解だったのですが
そうした中で、ステータスが高く、戦力として活躍して戦果を上げる内に出世し、今では王国軍全てを統べる、軍務最高位の元帥職を得るに至ったと
これは、弟が私に教えてくれた事でしたか
弟は元帥閣下を、殊の外尊敬していますからね
魔法士団長は、見目麗しい女性です
まだ20代と言われても信じてしまう若々しい美貌の持ち主ですが、既に壮年期に入って久しい人生経験豊富な女傑として有名です
一部の口さがない者達は、彼女が身体を使って取り入り、今の地位を得た、等と恥ずかしげもなく吹聴しますが、それは飽くまでも一部の愚者の言葉、誰も本気にしてはいません
元々、魔法士団は女性が多い軍団で、その為、そもそも士団上層部には女性が多く、色仕掛けをしようにも出来ないのです
何せ相手も同じ女性なのですから
……まあ、なかには女性同士でも、いや寧ろ…という方も居られるかもしれないですが……
魔法士団に女性多いのは、魔法型のステータスを持つ者が女性に多い為です
それとは別に、騎士団に求められる防御力に優れる型は、男性に多く見られます
その為、騎士団には男性が多い、という傾向が生まれます
勿論の事、魔法士団に所属する男性も、騎士団に所属する女性も居ますよ?要は適性さえあればいい訳ですから
因みに、お父様は財務大臣を重宝し、弟は元帥を尊敬している、と言いましたが、私と妹は魔法士団長を尊敬しています
と申しますか、我が国の女性には、魔法士団長に憧れを抱いている者が多いですね
それだけ傑出したお方だ、という事なのです
騎士団長も紹介しておきましょうか
我が国では、騎士、というのは重装備の護りに優れた戦士を指します
重装備でいち早く前線に赴く為に騎乗しているので、そこから騎士という呼び名が定着したそうです
ステータス型で言えば、重戦士型に分類される者達が在籍しています
そうした者達が集まった騎士団は、非常に厳格な縦社会を構築しています
他者の為に命を投げ出す状況も珍しくない騎士団に於いては、上意下達の徹底が求められるから、だそうです
そうする事で、少しでも騎士の被害を減らすのだと、以前お父様が仰っていました
ただ、その為には、より優秀な指揮官が求められる
だから、騎士団では、特に実力主義が徹底されていて、最低でも軍団指揮Lv6以上無ければ、決して団長に選ばれる事はないのだとか
現在の騎士団長は、世界でも最上位の重戦士型で、軍団指揮のレベルは8
それ以外の戦闘スキルも高レベルで、完全実力主義の騎士団に於いて、絶対的な支持を集めておられます
騎士を志す子供たちの憧れの的であり、彼の扱う武具を模した装備が流行している程の人気者でもあります
本人は、絵に描いた様な堅物で、融通の利かない武骨者ですが…
正直、私は少し苦手です
彼は、能力を重視しますから、その分私の様な者は軽視する傾向にあるので
まあ、自身が守るべき存在としてなら、彼は一切の差別感情も持たないので、要は、私は出しゃばらずに弱者らしく後ろで隠れていろ、という考えなのでしょう
一理あるので、反論のしようもないのが困りものです
他にも戦士団や情報士団、政務局、などが在りますが、それらの長も皆現場から出世した叩き上げで、誰一人として無能な者は存在しません、いえ、優秀な者しか存在しない、と言ってもいいでしょう
当然、それらを束ね従えるお父様も、世界に名の知れた傑物でいらっしゃいます
先ほど、騎士団長は世界最上位の強さを持つと言いましたが、その騎士団長と闘って勝利できる程の、超一流の剣士がお父様 カエシウス王国現国王 ギュスターヴ・カエシウスなのです
それは言い換えれば、世界最高の実力を持つ戦士であると同義であり、オースベルでお父様に抗し得る者は、現役最強の探索者である探索者組合組合長か、東大陸の覇者 ラルオウム帝国皇帝 クリストファー・ラルオウム陛下くらいだと聞いたことがあります
……あと、お母様にも弱いと言っていました、ご本人が……
ゴホン!
それはまあ置いておくとして
そんな世界最高の強者達が、皆一様に口を揃えて言うのです
「王と渡り合った彼の少年は、出来れば我が○○(それぞれの所属部署の名です)にて引き取りたい」
これには、それぞれの副官の方々も驚いておられました
無理もありません
彼らは、自身が非常に努力して昇りつめた事から、他者にも同様の努力を求めるきらいがあります
決して強要はしないのですが(そんなことをしても無駄だ、と仰っていました)代わりに努力しない者、結果を出せない者には、一切の昇進を認めないのです
当然、お父様も彼らの反応には意外さを感じた様で、引き取ってどうするのか、と尋ねておられました
当然ですね
彼は異世界人、彼を粗雑に扱えば、それは他の異世界人の方々へ不信感を抱かせる結果に繋がりかねませんから
そうして尋ねられた彼らの反応は様々でしたが、纏めると
「自分の下で育て、鍛え上げ、何れは後継としたい」
との事でした
これには流石に、お父様も反対されましたが、気持ちは解る、とも仰っていました
もう一度言いますが、彼らは叩き上げの実力主義者ばかり
そんな彼らに、引き取りたい、と言わしめたマイシマ様
そんな彼が落ちこぼれで在る筈がありません
その証左なのでしょうか
彼は、自身に戦力外通告が為されてからすぐに、何か動き始めたらしい、と耳にしました
一体何が、彼をそこまで駆り立てるのでしょうか
その理由こそが、我が国の首脳陣が彼を求める理由に繋がると、何故かそう確信してしまいます
彼に関われば、こんな出来損ないの私にも道が開けるでしょうか
彼と同じ、成長率5%の私にも…
まだ、王女方(片方は皇女ですが面倒なので纏めます)が、理と関わりを持った場面が出てきてません
一応、次回にその場面が入る予定ですが、まだ何も思いついていません
友人に、バトルはまだか?と訊かれ、そういえば説明してないわ、と自身の失態に思い至ったので、これよりご説明します
まず、一章ではバトルは殆どありません
一応ありますが、すぐ終わる予定です
また、予定している二章でも、しばらくはバトルはないです
ですので、本格的に理が戦闘するのは、二章後半からになるでしょう
バトル大好きな皆様には申し訳ないですが、理くんにはしっかりと這い上がってもらわなければなりません
その為に、いささか時間を掛けさせていただくことを、先にお詫び申し上げます
そもそも、登場人物の戦闘スタイルに関してはまだ決めかねている部分も多いので…
さて、話は変わりますが、今話でカエシウス王国の組織図について触れました
ここで一応、一部を軽く説明しておこうと思います
興味ない、という方は、以下は読まれずとも、必要になれば作中で説明しますので、飛ばしてください
説明の前に、次回投稿は一週間以内に、と予告を載せておきます
カエシウス王国は国王を頂点に、財務を司る財務大臣 政務を司る政務大臣 軍事を司る元帥の三大臣が存在し、その下部に、それぞれ財務局、政務局、各種軍団が続きます
以下はその説明です
財務局
国内の財務の一切を取り仕切る
税金の徴収 軍が採取した魔物の素材の売却 自国の責任下で買い取った金銀の、貨幣への鋳造 各種予算の承認並びに支給 他、国内の金銭に関すること全ての業務
彼らの仕事無しには、他の部署は一切の活動が出来ない為、絶大な発言力を持つが、それ故に様々な拘束も存在する
その一つが、国王による予算承認権
財務大臣が予算案を承認しなかった場合、国王が提起し、他三大臣の内予算案を提出した者以外の承認を受けた場合、財務大臣の不承認を却下し、当該予算案を承認することが出来る、というもの
例として、元帥が提出した予算案が不承認であった場合、国王がそれを問題として提起
その上で残る三大臣の政務大臣がそれを承認した場合に、当該予算案は承認される
また、財務大臣のみならず、三大臣は国王と他の三大臣、並びに対象の大臣の所属する部署の構成員の過半数の意思で解任する事が出来る
就任はもう少し緩く、三大臣の承認は必要なく、対象の部署からの推薦者を、国王が承認する事で決定される
今回はこんなところで
では、次回を乞うご期待




