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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
19/130

第十八話

獲得的セルフハンディキャッピングというらしいです


長めです

「俺達のステータスを確認するって、どうやるんですか?」


そんなバカな事を質問したのはどこの木偶の坊だ…

あいつは確か、波原にいつもくっついてる腰巾着だったっけ

名前は確か…


「上尾(かみお) 洋(ひろし)」


そうそう、それそれ!

名前を思い出そうと俺が首を捻っていると、隣に座る百合の向こう側に居る木野から答えが告げられる

こういう、百合が頼りにならない事には、毎度の様に答えをくれるのが木野だ

なんだかんだで、木野とも結構深い付き合いをしている気がする

百合とはまた違った息の合い方をしているな


「舞島くん、もう少しクラスメイトの名前を憶えた方がいいと思うわよ。いざという時困るし、相手もクラスメイトに自分の名前を憶えられていないのは、いい気分ではないと思うから」


全く持って仰る通り

見ず知らず、何の関わりもない人間の名前なら、寧ろ知らない方が自然だが、同じ教室で机を並べる学友の名前も知らないのは問題だということは、色々と無頓着な俺にも理解できる


で、その上尾某だが、こいつは人の話を聞いていないのか?

状況をちゃんと認識していないとしか思えない発言をかましてくれた


「ん?勿論、諸君のステータスを見るのは、こいつを使うぞ?」


そう言って元帥さんが、自分のステータスが刻まれた石板に近づき、ポンポンと手のひらで叩く

そうなんだよ、さっきからデンと聳える石板には、今でこそ元帥さんのステータスが刻まれているけど、最初はそこには何も刻まれておらず真っ平らだったのだ

少し考えれば、それか、類似の品を使うのは解るだろうに…

こいつ、この状況に対して危機感が足りないんじゃないか?

突然、未知の状況に放り込まれたら、まずは周囲の認識に努めるべきだというのは、サバイバルでは基本だ

そうして安全を確認してから歩を進める

これは何も特別な事じゃない、日常的に行っている事だ


「そうだぞ、洋。少し考えれば解る事じゃないか。そんな事で話の腰を折るのは感心しないな」


そう、上尾を諫めたのは、腰巾着の持ち主、波原だった

ちなみに、波原はいつも二人の取り巻きと行動を共にしている

一人はさっき頓珍漢な発言をした上尾 洋

こいつはよく分からない奴で、いつも波原にくっついて回り、何事か小声で進言してる様なのだ

勿論、今の様に普通に話すことは出来るのだが、波原に何か進言しているらしき時だけ、声を潜めて耳元でボソボソと話す、正直不気味な奴だ


もう一人は女子で、高田 理恵という、こいつの名前は憶えていた

何故ならこいつはよく百合を睨みつけ、強い敵意を露わにしているからだ

そんな奴を俺が警戒しない訳がなく、当然名前も憶えていた、という次第だ

どうしてあの高田が、あれほど百合を敵視するのかは、残念ながら判明していない


そんな事を考えている間も、当たり前だが連中の話は続いている


「あ、はい、旬さん。すみません、考えが足りませんでした」


「いや、突然のこんなに状況が目まぐるしく変化していってるんだ。ついつい先走ってしまうのは理解できるよ。でも、こんな時だからこそ、落ち着いて状況を把握しなければいけない。それは解るね?」


「はい。申し訳ないです」


「解ってくれればそれでいい」


なんだ、いつも意味不明な事しか言わないのに、今は妙に分かった様な事を言ったな

正論だが、普段が普段だけに違和感が凄まじい、あれは実は途中で別人に入れ替わった、とかじゃないよな?

そんな失礼な事を考えていると、不快な黄色い声が上がる


「上尾、アンタってホントどんくさいわねぇ。あんまり旬に迷惑かけないでよ!」


うるせぇ……

今のは高田の声だ、はっきり言って不愉快極まりない

これは、俺が高田に対して良い感情を持っていないからかもしれないが、アイツのキンキン声は本当に耳障りだ

頭のてっぺんから黄色い声を上げてヒステリックに叫ぶもんだから、まるで黒板に爪を立てたみたいに気分が悪くなる

俺が波原を避けるのは、波原自身のウザさもさることながら、こいつの声がどうにも受け入れ難い事が大きな原因としてあるのは否めないだろう


だってアイツ、波原が俺に何か言う度に「そうよ!旬の言う通りよ!」って繰り返すんだぞ

それでいて、こちらが何かしら反論する度に「旬の言う事が間違っているって言うの!?」とか噛みついてくるんだ

そうして、思考の焦点を目の前の高周波発生機からそらしていると


「理恵、洋も悪気があった訳じゃないし、ちゃんと反省もしている。そんなに強く責めないでやってくれ」


声が耳障りだから、俺ならそう続けたな、難聴になったらどうしてくれるんだ、まったく

波原が宥めたのが効いたのだろう

高田が途端にしおらしくなって、波原に媚びを売り始める


「う、うん…旬がそういうなら止めるね?」


周囲はその様子に白けているが、俺は波原のファインプレイを内心で賞賛していた

アイツも俺に対する時、というか百合に関わなければあんなにまともな奴なんだな

少し感慨深い思いを噛み締めながら、高田のキンキン声でささくれた神経を労わる事に集中する

なお、上尾は高田には一切反応を示さず、完全無視を貫いていた


状況も収まったと判断したらしく、元帥さんが話を続けた


「さて、甘酸っぱい青春模様も落ち着いたみたいだし、話を続けるぞ」


そう、茶化す様に言って場を弛緩させる

伊達に偉い立場に居ないし、歳もとってないって事だろう

締める所、緩める所はキッチリしている


「じゃあ、今質問した少年」


そう言って上尾を指名する元帥さん


「僕ですか?」


「そう、君だ。ヒロシ、と呼ばれていたな。では、ヒロシ、まずは君からステータスを確認したいと思う。良ければ、この石板に触れてくれるか?」


ポンポンと石板を叩く元帥さん

黒板とかもぞんざいに扱う奴とか居るけどさ、その石板も結構お値段するんじゃないのかな?

そんな気安く扱って大丈夫かね?まあ、俺の知ったことではないのだが


「ええ、僕は構いませんよ」


指名に応え、席を立って石板の前に立つ上尾


「どうすればいいんですか?」


「手で石板に触れてくれ。後はこちらで処理する」


「分かりました」


上尾は指示に従って石板に手を触れる

すると、最初に元帥さんが触った時と同じ様に発光すると、石板の表示が書き換わった


上尾 洋 男 16歳

Lv1/100

次レベルまで 20

成長率 1.099


生命力 1000


魔力 500


攻撃力 100


魔法力 100


対物力 100


抗魔力 100


機動力 100


感覚力 100


思考力 100


運勢力 100


スキル ―



なんというか…レベル1だから仕方ないとはいえ、何とも単調な数字が並んでいるな

スキル欄は、そもそもまだ何も覚えていないから、―、で表示されている

ここはこれからの項目だろう


「こ、これは!?レベル100!!?」


今、元帥さんとその部下?の人が驚愕している様に、明らかにさっきのステータスとは異なる部分があった

元帥さんのステータスでは、レベル上限は50だったが、上尾のステータスのレベル上限は100

実に倍のレベル差がある

倍のレベル差があるからといって、身体能力も単純に二倍になるか?

そんな訳はない


確かに、初期値は元帥さんのそれと比べてもかなり低いだろう

ざっと計算しただけだが、一番高かった攻撃力で約二倍の差があった、勿論元帥さんの方が上だ


だが、単純に考えても成長率で大きく上回っているし、何よりもレベル上限が違い過ぎる

流石に暗算出来ないが、最終的なステータスは今より4桁ほど上がる筈だ

つまり、100万程の身体能力値まで成長する

生命力と魔力に至ってはそれよりも十倍五倍まで成長する


これは女神が俺達を引き込んだのも納得してしまう程の、圧倒的な能力格差だ

もし仮に、上尾が最大レベルまで成長した場合、元帥さんはほんの一撃で即死する計算になる


寧ろ、ここまでの戦力を用意する必要がある相手、なんだよな


そう考えると、弱体化した自分で本当に守り切れるだろうか

不安は尽きない泉の様に滾々と湧き出て止まる事がない


俺の不安を余所に、元帥さん達は何やら固まって相談を始めてしまった


(おい、レベル100って、まさか全員こうなんじゃないだろうな!)


(どうなんでしょう?しかし、女神様が戦力として指名したのですから、これもある意味当然では?)


(そうは言うがな…レベル上限100なんて伝説の中でしか聞いたことがない。そりゃあ、過去にはレベル上限が普通より高い事例もあったがよ。それだって、55とか60くらいだぞ)


(確かに…ところで、これだと最終的なステータスはどのくらいになるのでしょうか?一応、成長率毎の最終倍率の一覧を持ってきていますが、レベル50の物で100なんて馬鹿げた数字には対応していませんよ?)


(馬鹿!それを早く言え!お前、ちょっとひとっ走りして、計算が得意な文官を至急集めて来い!)


(了解です。計算が得意と言うと、財務官辺りが妥当ですかね……)


どうやら、相談は纏まった様子で、今の今まで補佐的に動いていた人が、突然走って部屋を出て行ってしまった

多分誰か呼びに行ったんだろう、冷静に考えればこの人数のステータス確認作業を、たった二人で捌ききれるとは思えない


「ねぇ、皆のステータスって同じなんでしょー?だったら、もう調べる必要ないんじゃない?」


そう言ったのは高田だ

お前、年上に話しかけているって自覚あんのか?

えらく馴れ馴れしい言い方しやがって、ねぇ、でしょー、じゃねぇだろうが


ダメだな、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とはこのことか…

高田の態度、言葉遣い、どれをとっても俺を苛立たせる様にしか受け取れない

あの女が俺と関係ない誰かに、どんな風に話しかけてもどうでもいいだろうに


実際、元帥さんは気にした様子も無く、


「そういえばそうだったな。だが、一応確認させてほしい。どこまで同じなのか、成長率は?スキルは流石に無いが、レベル上限が全員100だったら、これはどエライ事態だし、そうでないなら正確に把握しておく必要もある」


と、そう答えた

実に分かりやすい説明だ

少なくとも表面上は、俺達を侮っていないし粗雑に扱うつもりもない事が伝わってくる、内心や実情は推し量れないけどな

これが年の功だぞ、高田、分かったら態度と口調を改めろ?


「はぁ〜い。分かりました〜」


おいゴラァ…

落ち着け、俺

今はそんな些末事に拘っている場合じゃない


元帥さんの言った事は、恐らく俺にこそ一番に関わってくる事だ

あのクソ虫女神が俺にした事…ただ全員同じ身体能力値に均しただけとは明らかに違う

もしそれだけなら、全員を弄くった時に…まあ、いつどうやって身体能力値を弄ったのかは分からなかったけど、その時に一緒に出来た筈だ、引くのも足すのも、数字上の事なら大した手間でもないだろう


俺を一人残して、わざわざ処置したのだから、そこには通常とは違う意味があると考えるべきだ

今の俺に出来るのはただ一つ、思考を止めない事

この往時ではあり得ない程に鈍重になったおつむでも、考える事は出来る


もっと思考を回せ、とばかりに集中力を高めていると、さっき出て行った部下さんが人を連れて戻ってきた

ぞろぞろと部屋に入ってくる人は、皆、線が細くてゆったりとした服装をしていた

何かインテリっぽいな、と考えていたら


「財務の連中だな?スマンが、召喚された異世界人達のステータスの計算を行いたい。…ひのふの……10人か。こちらは30人、で間違いないな、30人居るから。それぞれの判断で対応してほしい」


元帥さんが、そのインテリさん達に何やら要請しているではないか

どうやら、彼らが俺達のステータス、正確には成長率による最終倍率を計算してくれるようだ

財務って言ってたし、計算はお手の物だろう、ここはお任せしておく


「それは勿論お引き受け致しますが、対応表があるでしょう?あれを使われないのですか?」


「それが使えない理由が出てきたんだよ。取りあえずこいつを見てくれ」


石板を、そこに刻まれた上尾のステータスを指して言う元帥さんの言葉に従って、財務さん達が石板を見る

少しの間隔を開けて、財務さん達が眼を剥いて驚愕で顔面を歪めた


「なっ!?レベル上限100!!?」


「しかも、成長率9.9%!!?」


そういえば、成長率ってどれくらいが平均なんだろうか

さっきの説明にはなかったよな?確か

まあ、9.9%であれほど驚いているんだから、案外てっぺんは10%だったりしてな、キリがいいし


「分かってくれたか?なら早速仕事に取り掛かってくれ」


「「「「「「「「「「分かりました」」」」」」」」」」


……おう、キレイにハモったな

どんだけ息ぴったりなんだよ、仲良いな、アンタら


「ヘクター様、流石に大きな石板一つでは効率が悪いです。小石板を財務の人数分持ってきましたから、これを使いましょう」


「おお!そういやそうだな!早速配ってやってくれ」


いや、そんなんあるなら、最初から持ってこいよ

どう考えても、全員のステータスの調査は必要だったろうに

こんな事態は想定できてないだろうし、無理もないのか?


「もし、貴方?」


考えに耽っていたら、知らぬ間に近くまで財務さんの一人が近寄って来ていた

イカンイカン、周囲への注意が疎かになってたな

考え過ぎるのも問題だ、加減が大事


「はい、何でしょうか?」


取りあえず、用件を問う

しかし、どうやら愚問だった様で、百合からツッコミが入った


「いや、この人が私達のステータスを調べてくれるんだって、ってさっきから声掛けてたんだけど」


おお、それは気付かなかった


「そうなのですか。申し訳ありません、少し考え事をしていたもので。よろしくお願いします」


しっかりと謝罪する

この人に頼らなければいけないわけではないが、面倒を掛けるのだから、気分を害してしまうのは避けたい


「ああ、いえいえ。そんな謝罪していただく様な事ではないですよ。では、早速ステータスを見たいのですが、どなたから為さいますか?」


そう、財務さんが質問してきた

どうやら、この人は俺と、一緒に座っていた百合、木野を担当してくれる様だ


「百合、アンタ先にやらない?」


ホントは俺が率先してするべきなんだが、やはり不安を拭えない

そんな俺の心情が顔にでも出ていたのか、木野が百合に一番手を薦めた


「私?そうだね。じゃあ、私からお願いします」


百合も特に気負う事無く、財務さんから小石板を受け取った


「では、石板の使用法を説明しますね。と言っても、そんな難しいことをする必要はないんです。側面に突起があるのが分かりますか?」


百合はその言葉を受けて、手に持った石板の側面を撫でて確認した


「あ、はい。何か出っ張りがありますね」


「石板をしっかりと手に持って、その突起を押してください。そうしたら、石板が発光してステータスが表示されます」


さっきの大石板にステータスを表示する時、何やら元帥さんの部下さんがしていたが、その突起を押していたんだな


「分かりました」


そう言って、早々に突起を押したらしく、石板が発光した

それに続く様に、周囲でも発行が相次ぐ


「わ、これが私のステータス?」


そう言って、百合が石板を凝視した


「こちらに渡して頂けますか?」


俺達担当の財務さんが、手を差し出して石板を渡してほしいと申し出た

断る理由など何もないので、百合はすぐに手渡した


「ふむ…やはり凄まじいですね」


やはり、かなり凄いステータスの様だ

そう呟いた財務さんは、徐に紙と筆を取り出すと、百合のステータスの一部を書き写し始めた

覗き見てみると、どうやら名前と性別、レベル上限と成長率を書き出していうみたいだ

因みに、石板にはこう刻まれていた


舞島 百合 女 16歳

Lv1/100

次レベルまで 15

成長率 1.099


生命力 1000


魔力 500


攻撃力 100


魔法力 100


対物力 100


抗魔力 100


機動力 100


感覚力 100


思考力 100


運勢力 100


スキル ―



上尾のそれと殆ど同じだな、成長率も同じだ

違うのは必要経験値くらいか、これは個人差があるのな


「またもや、9.9%ですか…レベル上限も100……」


驚愕からか、呟きが漏れる財務さん

せっかくだから、俺は疑問を解消する事を選ぶぜ!


「あの、成長率9.9%ってそんなに凄いんですか?この世界の成長率の常識って分からないんですが」


さっき元帥さんが教えてくれなかった事を、財務さんに質問してみた


「え?ああ、そうですね。一般的な成長率は1.07程度なんですよ。係数の数値としては小さいんですけど、掛け算の回数が多くなりますからね。その1.07、7%の係数でも最終倍率は約27.5。初期値の約27倍です。これは私達の場合で、レベル上限が100となると、更に膨れ上がりますね。ちょっと待ってください、今計算しますから」


そう言うと、何やら懐から取り出した

少し見た目が違うが、どうやらそろばんの様だ

摩訶不思議な道具があっても、こうした器具は見た感じ相応なんだな

そう考えたのも束の間、突如として目の前で、高速で計算が始まった


(そろばんを弾く指が見えない…!)


バチバチバチッ!っとそろばんを弾く音が、まるで電気がスパークしている様に鳴り響く

俺も、昔そろばんを習わされた事があるし、そろばんの大会も見た事があるが、このそろばん術はそれらを明らかに上回っている

弾く指が見えないと言ったが、超高速で動き回る肘から先もほとんど輪郭を失っていて、実は見えないんじゃなくて初めから肘から先が無いんです、と言われても信じてしまいそうな有り様だ


これがこの人だけならまだ、この人は凄い人なんだ、で済むのだが、周囲からもそろばんを高速で弾く音が聞こえてくると、そうもいかない

慌てて周囲を確認してみると、想像を裏切らない状況が展開されていた

財務官全員、そう見事に全員の片腕が霞み、手首と思しきところから先は完全に消失していた

恐らく、この人達は財務でも指折りの、最上級のそろばん術を修めた人達なのだろう、そうに決まっている

まさか、この水準が財務では普通だ、などと言う事はない筈だ


そう、自分に言い聞かせてしまう程に、この部屋で起きた事は異常だった

よく見なくても、クラスメイト達全員が唖然としているのが分かる……あ、高田と何人かの女子は興味ないみたいで、平然としているな

そういうところは、今は少し羨ましく感じてしまう、今だけだが


驚いている内に、財務さん達は計算を終わらせてしまった様だ

かなりの高速だったにもかかわらず、俺達が唖然とする時間があったのだから、その計算内容は推して知るべし、と言ったところだ

実際、相当な桁数になったらしく、手元の紙には数十桁に及ぶ計算結果が書き連ねられていた


「ええと、マイシマ ユリさんの最終倍率、並びに最終ステータスはこの様に成ります」


財務さんは紙を俺達に見せながら説明してくれた

それによると、百合のステータスはこうなるらしい


最終倍率 11449.105306132377431629900218934


最終ステータス


生命力 11449106


魔力 5724553


攻撃力 1144911


以下同


……なんというか、さっきの元帥さんのステータスを見せられた後だから、こんな風に思うのかもしれないが…


インフレもここに極まれり、だな


なんで二桁も数値引き上げた?言ってみ?怒らないと思うから

いや、これネトゲでこんな事されたら、ホントに訴訟も辞さないぞ

更に言うなら、ここは命懸けの現実世界ですからね?

これもさっきも同じ様な事言ったが、最終レベルの百合が一撃するだけで、全快の元帥さん即死するからな

ひどいインフレを見たよ


そうそう、上尾も百合と同じ成長率だから、ステータスは同じになるので、上尾の最終ステータス算出は省略した

当然だよね、時間の無駄だからね


と、そんな事を考えている内に二人目を調べ始めたみたいだ

またも考え込んで反応が無かった俺を飛ばして、木野が石板を操作していた

その発光で思考の淵から呼び戻された様だ


あ、先に調べたクラスメイト達の成長率が一部共通していたので、その辺共有されて、当て嵌まった場合は計算を省略する様にしたらしい

やはり、大国で実務を執り行っている人達は優秀だなぁ

そんな感想を抱いた


その時、一人の財務さんが驚愕の声を上げた


「元帥閣下!」


声を荒げ、元帥さんを呼ぶ財務さん

そのただならぬ様子に、元帥さんは即応した


「どうした!」


「これをご覧下さい!こちらのナミハラ殿のステータスです!」


波原?

よく見ると、その人は波原と高田を担当していた財務さんみたいだ

波原も何やらあたふたしている、いやオドオド、と言った方がいいか

さっきはよく考えていて、意外と頼れるかも、とか思ったが、何か落ち着きが無さそうでいざという時に頼りがいが無い様に感じられる


元帥さんは、受け取った石板を見て、同じ様に驚いている様だ

目を剥いて、今にも目玉が飛び出してきそうな気さえしてしまう


「せ…」


せ?

生命力?いや、身体能力値は同じなんだから、成長率か

なんだ、余程の高数値でも出てきたのか?

でも、9.9%以上となると、やはり10%かな


「成長率10%だと……!?」


あ、やっぱり10%だったか

0.1%の差でも、99回も掛け算すれば大きな差が生まれるからな

このステータス絶対のアル〇リオス式世界だと、その重要性は更に際立つだろう


「と、とにかく計算してみろ…」


元帥さん、若干震えているな

なんか、ただ高い数値ってだけじゃない、特別な意味でもあるのか?


波原組担当財務さんも、かなり震えながらも石板を受け取って、計算の体勢に移る

そこからは、流石にプロフェッショナル

震えも一瞬で収まり、またもや高速そろばん術を見せて、いや魅せてくれる


周囲もその計算結果を固唾を飲んで待っており、他の財務さん達のそろばんの音は聞こえてこない


やがて、その動きも止まり、計算結果を紙に書き込む

緊張を持って待ちわびたからか、さっきよりも時間が掛かった様に感じながら、その様子を周囲はじっと見守っていた

脳ミソの足りなそうな高田も、事が波原のそれだからか、財務さんの動きを黙って見つめていた


「ど、どうぞ…」


財務さんは計算結果の書かれた紙を、震えた手で元帥さんに手渡す

元帥さんも、同様に震えた手でその紙を受け取った


途端にさっき以上の驚愕に、厳つい顔面を歪めた


…百合のそれと比べても、そんなに大差ないだろうに

いささか驚きすぎな感が否めないが、何か俺の知らない事情があるのだろう


読み上げた内容はこうだ


最終倍率 12527.829399838427440107579247354


最終ステータス


生命力 12527830


魔力 6263915


攻撃力 1252783


以下略



あ、最後が以下略になってる

俺達担当の財務さんは以下同、だった

特にどうという事はないが、少しクスッとした


俺がちょっと和んでいる間も、元帥さん以下カエシウス王国組はぷるぷる震えていた


「で、伝説の再来だ……」


伝説?

あれか、伝説の勇者とか、救世主とか、そんなのか

個人的には胸熱展開だ、自分に危害が加わらないところで繰り広げられるなら


どう考えても、伝説云々に関わって碌な展開になる訳が無い

下手をしなくても、俺達に危害が及ぶ事請け合いだろう

しかも、百合は波原に次ぐ成長率、当然ステータスも同様だ

必ず、その伝説なんとかの展開に巻き込まれる事になるだろう


新たに出来しそうな難事の予感に頭を悩ませていると、肩を揺さぶられる感覚に、思考の淵から舞い戻らされる

イカンイカン、またのめり込んでいたみたいだな


目の前には知らぬ間に百合が立っていて、俺の肩を掴んでいた

どうやら、今揺さぶっていたのは百合の様だ


「理?気付いた?次、理の順番だよ?」


そう言われたので、担当の財務さんに視線を向けると、何やら困り顔で立っていらっしゃった

どうやら、俺がまたもや反応を示さなくなったので、どうしたものかと苦慮した様だ


申し訳ないです、と謝意を示して、差し出された石板を手に取り、突起を押し込んだ

途端に、石板が強い光を放つ

そんな中、俺の頭の中には、一つの考えが浮かんでいた


なんだかんだで、皆極めて高いステータスを示していた

なら自分も、例え弱体化していてもこの世界の人間よりは随分マシなステータスになるだろう

初期値は皆同じなんだから


その考えには何の根拠もない

それほどに自分自身を追い込んでいたのだろうか…或いは、身体を蝕んだ弱体化という事実に追い込まれていたのか

だからこそ、そんな甘えた逃避に走ってしまった

俺はすぐに、その腑抜けた考えを後悔する事になる


前書き、いきなり何を、と思われた事でしょう

仕事が忙しくなるので年内に云々と前回後書きで申しました

実際、仕事が忙しく納期は間近に迫っています

常識的一般人でしたら、じゃあ駄文書き連ねてないで仕事しろよ、と仰られる事でしょう

はい、正論です、ぐうの音も出ません

私、仕事してました

でも、一話書きあがってました、しかも長めです


こういうのを獲得的セルフハンディキャッピング、というらしいです

詳しくはwebで


次回は、やはり年内になるかと思われます

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