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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
20/130

第十九話

聖夜、皆様は如何にお過ごしに為られますでしょうか?

今回は若干のシリアス展開です


舞島 理 男 16歳

Lv1/100

次レベルまで 5000000

成長率 1.05


生命力 1000


魔力 500


攻撃力 100


魔法力 100


対物力 100


抗魔力 100


機動力 100


感覚力 100


思考力 100


運勢力 100


アビリティ ―



手にした石板にはそう刻まれていた


これを見た時の俺の心情は、誰にも理解出来まい

血反吐を吐いて得た物を全て奪われ、全ての希望を絶たれた者の気持ちなど…

あまつさえ、それを奪っていった者は、俺にそれを持たせていなければならない事情があったのだ


国王は言った

女神の啓示に従い俺達を戦力として呼び込んだのだ、と


はっきり言おう

俺は強い、それも今周囲で浮かれているクラスメイト全員を、抵抗を許さず地に伏せられるくらいには強かった

自慢に聞こえるだろう、或いは夢でも見てるのか、と言われるかもしれない

だが事実なのだ


誤解の無い様に言っておくが、俺はその力を、強さを、確かな努力によって手にした

詳しくは省くが、俺にはどうしても守らなければならない家族が居て、その家族を守る力を求めていた

当時はまだ幼く、社会地位など得られる筈もなかったから、求めたのはもっと単純で純粋な力だ

そして、ある出会いによって幼い俺の道は切り開かれ、文字通り血と汗を流した果てに手にした強さだった

その後、百合が俺に触発され空手を始めたりと、色々とあったが、それらは置いておこう


そんな力を、理不尽に奪われた

それでも、俺はまだ希望を捨ててはいなかったのだ


確かに俺は弱くなった

だが、何の力も残っていない、というわけではなかった

周囲が、自分は強化されたと感じている様に、今でも一般人よりは力があるのだ

ならば、ここからまた始めよう、そう思った


幸いにして、ここではレベルを上げれば強くなれる

強さが数値で分かりやすく示される

なら、また頑張って強くなるのも一興だろう

そう、自身を慰め、叱咤した


ところがどうだ

示されたステータスは、まさかの成長率5%

波原の半分だ

さっきの波原と百合のステータスも、最終的には10%近い差が生まれていた

二人の成長率の差は僅かに0.1%だ

なら、5%の差はどれほどのステータス格差を生むのか

想像することすら恐怖だ


ここに来てから頻繁にそうなっていた様に、今も思考の海にどっぷりの浸かり切っていたらしい

またもや、気づけば百合に肩を掴まれて揺さぶられていた


「理?どうしたの?」


どうやら、俺の渦巻く内心は表に現れていない様だ

百合は普通に俺を正気に戻そうとしているだけ

今のこの心を知られれば、心配されるだけでは済まないだろう


「ああ、済まない。また考え事にはまり込んでいたみたいだ」


俺の内心を知られるわけにはいかない

それだけを心身に命じながら、百合に礼を言う


「もう、そういうのは後にしてよ。今は大事な話してるんだから」


「ゴメンゴメン。で、大事な話って?」


どうやらかなり動揺しているらしい

言ってすぐに気付いたが、かなりズレた質問をしてしまった


「なに言ってるのよ、今から理のステータスを調べるんでしょ?」


百合が呆れた様に叱りつけてくる

無理もない

流石に今のはないな、と考えながら、手に持った石板を担当の財務さんに手渡す


「度々申し訳ありません。よろしくお願いします」


「いえ、私もよく計算にのめり込んで、人の話を聞いてない事がありますから。はい、お預かりします」


財務さんはにこやかに返してくれた、いい人なのだろう

しかし、その顔もすぐに凍り付く事になる

俺のステータスを見たからだ


「なっ!!?せ、成長率が…!それに経験値も……」


そういえば経験値もひどいことになっていたな

確か、レベル2に上がるのに必要な経験値が5000000だったか

ハッ!ここまでひどいと、寧ろ笑えるな

これでどうやってレベルを上げろと言うのか

仮にスライム狩りで5000000稼いでも、その次は?

普通に考えれば、レベルが上がる毎に必要経験値は増えていくはず

次は5500000か?6000000?

いずれにしても、いつまでもスライム狩りで上げられる数値じゃない

しかも成長率が低い

これについては計算結果を待たねばならないが、労苦に見合った成果は得られないだろうことは、想像に難くない


「どうした?」


財務さんの驚きの声を、偶然近くに居た元帥さんが拾い、声を掛けてきた


「あ、オルブライト元帥…」


財務さんが、若干蒼褪めた顔で元帥さんに応える


「顔色が悪いな…何があった?」


「こ、これをご覧下さい…」


そう言って俺のステータス入りの石板を、元帥さんに差し出す財務さん

訝しげな表情で、石板を受け取る元帥さんだが、すぐにさっきの財務さんと同じく、表情が凍り付く


「こ、これは……こっちの兄さんのか……?」


俺に視線を寄越して、財務さんに尋ねる


「は、はい…こちらのマイシマ サトルさんのステータスです」


「そうそう、確かサトル、だったな。しかしこれはひどい…」


やっぱりこっちの人達からしてもひどいのだろう


「と、とにかく計算してみろ。レベル100だとどうなるか分からん。意外と、それほどひどくはならないかもしれん」


明らかに慰めやお為ごかしにしか聞こえない事を口にして、計算を命じる

財務さんもそれに応じて


「分かりました」


高速でそろばんを弾き始める

さっきまでは純粋に驚いていたその高速そろばん術も、今はただただ空しい


ふと、隣の百合を見やると、何やら心配そうにこちらを見つめていた

ただ、一体何が起きているのかまでは理解出来ていない様だ

更に隣の木野は理解出来ている様で、顔色が良くない


二人は同じスポーツ推薦組だったはずなんだけど、何故こうもおつむの出来が違うのだろうか

全く関係ない事を考えて、心の荒波をなんとか鎮めにかかる

どれほどの効果があったかは分からないが、計算結果が出るまでの時間潰しにはなったみたいだ


「け、計算結果、出ました…」


財務さんの顔が真っ青だ

身体も小刻みに震えている

それだけで、計算結果があまり喜ばしくないものだ、という事が理解出来てしまう


「……これはひどい………」


元帥さんなんか、あまりの事に言葉が無いのか、さっきと同じ事しか言えてない

顔色も真っ青を通り越して完全に土気色をしている


「サトル…その顔、どうやら想像は出来ていたらしいが……見るか?」


その口から発せられるのは気遣いの言葉

その目に浮かぶのは憐れみ

それだけで、幾らか救われた気になるのだから、俺という男は何とも度し難い


この人はいい人だ

本当なら、使い物になりそうもないよそ者なんか、邪魔者以外の何者でもないだろう

軽蔑の眼差しを向けられても、何もおかしくはない

だが、この人は、いやこの人達は、俺を憐れだと思ってくれている

それが、傷付きささくれた心には、とても心地よかった

情けない事に、俺はそう思ってしまった


だからだろう、意外とあっさりとその結果を見る決断が出来た


「勿論。それを見ないことには、何も始まりません」


その言葉は、ただの強がりか…

今はまだ分からなかった


最終倍率 125.23929318695567145295003056544


最終ステータス


生命力 125240


魔力 62620


攻撃力 12524


以下同


流石にこれはひどい

最早苦笑するしかないな

眦に僅かに涙が浮かんでいるのが感じられる

最後の、以下同、がなんだか少しおかしく感じられるのが救いかな?


まず生命力

これは流石に高いが、さっき見せられた元帥さんのそれと大差は無い


次は魔力

さっき聞いた話から判断するなら、だいたい平均の倍だ


以下の身体能力に関しては一概には言えない

攻撃力は超一流の数値だ

魔法力も同じく

対物力、抗魔力は非常に高い水準にあると言えるだろう

機動力もまた然り

感覚力に関しては、数値の高低で測れないので今は放置

思考力は多分高い方なのだろう、少なくとも平均値の三倍ある

運勢力は…元が比べようもないくらいなので除外する


以上、オースベルの基準に照らし合わせてみれば、非常に優秀だと言えるだろう

だが忘れてはいけない

俺はオースベルの人間ではないし、これはレベル100でのステータスだ

当たり前だが、レベル50ではもっと低くなるし、クラスメイト達のそれとは、比べる事も烏滸がましい

気分は、最強装備最大レベルの勇者に挑むスライムのそれだ


先程の懸念に明確な答えが突きつけられた

スライム狩りで苦労してレベルを上げても、それに見合う成果は得られない

仮にそうやってレベルを最大に上げても、どう足掻いても足手まといにしかならないのだ

まさしく、どう足掻いても絶望だ


これだけのステータス差なら、装備で補う事も出来まい

仮に出来るのだとしても、その装備をクラスメイト達に装備させた方が、より効果的だろう


「理……?」


あまりの事態に、思考があちらこちらに交錯し、混迷を極めていた精神は、自身が守るべき対象の一人からの呼びかけに反応し平静を取り戻した


「百合…どうした?」


声をかけてきた百合は、あまりにもひどい顔色をしていて、俺の現状もどこへやら行ってしまって、ついつい心配する声を上げてしまう


(今の俺に守れる相手ではないのにな…)


最早脊髄反射と化した守るという行為に、現状を再確認させられ苦悩が胸中に渦を巻く


「どうしたじゃないよ!理、ひどい顔してる…」


百合は心配そうにしているが、それ以上何かをしてくる事はない

いや、出来ないのだろう

百合は、俺の思いも努力も知っているから

それが覆ったのを目の当たりにして、下手な慰めなど出来る訳もない、という事なのだろう


その心遣いが、嬉しいやら寂しいやら

最早、自身の心情も把握出来なくなり、内心はぐちゃぐちゃだ


「……舞島、そんなにひどいステータスだったのか………?」


誰かがそう言った

そこからは速いもので、クラスメイト達は憶測に憶測を重ね、下衆の勘繰りとはかくあるべし、と言わんばかりに次々と話を膨らませていく


だが、多くの場合がそうである様に、ここでもそうした集団心理はお定まりの終着点に辿り着いた


「…なんだよ、天才って言っても大したことないな……」


その言葉は、いやにはっきりと部屋の中に響いた

それを聞いた俺は、情けなくも何の反応も返す事が出来なかった

代わりに動いたのが百合だ


「ちょっと!!今の言った奴、誰よ!出てきなさい!!」


百合がこれほどまで怒りを露わにするのも珍しい

気に入らない相手は意識から完全に外してしまう奴だから、基本的に怒るという事はしないのだ

少なくとも、百合が本気で怒鳴り声を上げたのは、この中で一番付き合いの長い俺でも初めて聞いた


流石に言い過ぎたという自覚があったのか、言い出した奴はすぐに名乗り出て謝罪していた

…もっとも、俺はそれどころではないので、殆ど聞き流してしまっていたが


「でも舞島さん、実際のところ、彼はどうするんだい?」


そう言ったのは波原だ

波原はクラスメイト全員の中で最高値を叩き出した

恐らく、クラスの中心的役割を、今後は担う事になるだろう


その自覚からか、波原は今後の方針を、俺の処遇を求めるという形から決めようとしているのだろう

そんな波原に、百合も流石に答えを窮したらしく、返答する事が出来なかった


一気に重量を増した空気は、思わぬところから切り拓かれた


「ああー、その事なんだが、ちょっといいか?」


そう、言葉を差し込んだのは、この場で最も頼りになる人物

最年長者である元帥さんだった


「サトルの、というか召喚された異世界人の中に、戦力外の者が居た場合の対処については、既に一つの結論が出ていてな」


その言葉には、多くのクラスメイトが警戒心を抱いた様だ

少し空気がピリピリとした

中でも百合と木野の二人は、最大級の警戒心を剥き出しにしていた


「彼を、どうすると仰るのですか?」

「理に手を出すのは許さない」


殆ど同時にそう言い放って、俺を庇い立てる二人の背中を見て、俺は目眩を覚えた


「まあ、聞け。そんなに悪い話じゃないから」


元帥さんは困り顔で、そんな二人を宥めにかかる

二人も、取りあえず話を聞く気になったらしく、怒気を収める


「サトル、お前は明らかに他の奴らよりもステータスが劣っている。彼らと共に戦うのは、逆に彼らの身を危険に晒す事にもなるだろう。これは俺の経験からも明らかだ」


そうだろうな

元帥さんの言葉は、俺に深い納得をもたらした

確かに、明らかな足手まといの俺が居ては、他の連中に累が及ぶ可能性は極めて高いだろう

少なくとも、俺はそう教わってきたし、実感もしてきた

こういうことを、納得できる様に言えるのも、年の功って言うのかな?


そんな俺の心中と関わりなく、元帥さんの話は続いていく


「諸君はこちらの都合で呼び出された。危険な戦場に立ってほしいという、実に身勝手な理由でだ。当然のことだが、そんな諸君を軽々しく扱うつもりは我が国には一切ない。それは、戦力外であるサトルも同様だ」


何が言いたいのか、結論を行ってほしい


「サトル、君に我々から提示するのは、我々の保護下で戦いが終わるまで普通に生活しないか?というものだ」


それはあれか、衣食住保証で戦いが終わるまで安穏とした生活を満喫しろ、という事かな?

それはそれは、至れり尽くせりだな、ホント

実際に至れり尽くせりかどうかはともかくも、少なくともこの国の標準的な生活はさせてもらえるのだろう


……それもいいのかもしれないな


そんな事を考えていた俺の耳に、寝耳に水とばかりに、予想外の言葉が飛び込んでくる


「これは、女神様からのご指示でもある」


………なんだと?

女神?俺をこんな状況に追い込んだ元凶が、俺を保護する様に申しつけたと?

俺の矜持を圧し折っただけじゃあ飽き足らず、圧し折れた矜持にカビを生やす様な生活を送れと?

守るべき相手を戦場に立たせ、自分は安全な場所で帰りを待つ

そんな屈辱の日々を与えろと、あのデカ女が命じた?


なんだそれは……


今の俺の心情は、誰にも理解出来まい

周囲は、女神の慈悲にいたく感動している様だ

俺に、そうしろ、と薦めてきている

百合は流石に、どうしたらいいのか、と迷っている様だが、その迷いすら俺には耐え難い

俺の体は怒りのあまりに、軽く震えているが、それも、女神の慈愛に感じ入っているのだ、と女神にとって好意的に解釈されてしまっている


まあ、無理もない

彼らは何も知らないのだから

仮にそれを知らせても、何の意味もないだろう

今、俺が足手まといだ、という事実は覆りはしないのだから


「元帥さん」


俺は一つの決心を抱き、元帥さんに問いかける


「ん?なんだ?」


元帥さんも、何やら感じ取ったのか、真剣な表情で応じてくる


「それは強制ですか?俺は、それに従わなければいけませんか?」


少し語気が強くなってしまうのは見逃してほしい

怒りもある

が、それ以上に自らを強く鼓舞して、言葉を発しているのだ


元帥さんは、特に気にした様子もなく、受け取り方によっては無礼極まりない質問に、真摯に返答してくれた


「いや、さっき陛下も仰ったが、俺達は君たちにお願いする立場だ。だから、君たちに対して、何一つとして強制はしない、という事が国王の名で決定している。だから、この件に関しても、サトルの自由にしてくれていい」


俺達は、いや、俺はある意味で運がいい

こんな役立たずを放り出さず、保護してくれる、と言う

そんな温情を蹴り飛ばした俺に対しても、なお真摯に相対してくれる


勿論、強制しないと言っても限度はあろう

犯罪を犯せば捕まり、裁きを受ける事になるだろう

だが、そうした秩序を乱さないなら、何も強制しない

それは、多くの自由が認められるという事だ


「では、申し訳ありませんが、自由にさせていただきます」


そうして、俺は矜持を守る道を選んだ

その道はどこへ続くのか

今はまだ、その先を窺う事は出来ない

理くんのステータス

必要経験値が異常に多いことにも、成長率が低いことにも、ちゃんとした理由があります

身体能力値は、クラスメイトと同じく、女神にイジイジされた結果ですけどね

その理由が明かされるのは、大分先になるでしょう


最後、男坂みたいな引きですが、当然まだ続きます

男坂も続き出ましたからね

まだ、理くんの挫折が残ってますから

しっかりと挫折してもらわないと


次回更新は、やはり年内に可能だと思います

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