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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第十五話

前回短かったと思ったから、今回頑張ってみたら大分長くなってしまいました

許してください、何にもしませんから

 お姫様との会話に気を取られ気付かなかったが、いつの間にか足元には金糸をあしらった真っ赤な絨毯が敷かれていた

その絨毯は、恐らく背後にも長く伸びているのだろう

そして目の前、開いた鉄扉の向こうに続いている


 この先がこの大国の元首、カエシウス王国国王に謁見する為の部屋、謁見の間なのだろう

言わば応接室、応接間なのだが、ここの様な大国家のそれは、個人の邸宅のそれとは比べ物にならない


実際に祖父の邸宅の応接間に入った経験があるが、長大で豪奢な机と無数の椅子が並んだ部屋で、その内容に相応しい広さだったと記憶している

ここは、その祖父邸のそれとは比較するも烏滸がましいものだと言えた

補足だが、俺が入った応接間は大人数が来訪した際に使用するもので、数人程度の場合は数人が座れるくらいのソファーとそれに挟まれる形で置かれた机があるだけの応接室が、別にちゃんとある


 閑話休題

俺達はお姫様に先導されて、謁見の間に進入する

そこでまず感じたのは、無数の視線、それも好意的なものではなく、多分に疑念を孕んだものだ

そんな視線を受けて、さしものクラスメイト達も、程度の差はあれどビクついてしまった様だ

例外は、俺、百合、そして波原だけだった

この三人に共通しているのは、それぞれが資産家の家に生まれ育った、ということだろう

要は、こうした不躾な視線には慣れっこだ、という話だ

俺の場合は、この視線を向けられるのを予期していた事が付け加えられる……他の二人?百合はどうでもいい事に思考を割かないから、多分予想していなかったんじゃないか?波原は知らん、知りようがない


 さて、そんな疑惑の視線の集中砲火の只中、歩を進めれば、部屋に入る前から前方に見えていた、これはひな壇、と言えばいいのか?

階段状の壇が見えてきて、その上に在る立派な椅子、恐らく玉座なのだろう、それに腰掛ける一人の男が近づいてくる

正確には近づいているのは俺達で、その男は玉座に深く腰掛け、こちらをじっと見つめているだけだ


 そこが所定の位置なのだろう

お姫様は、壇から3メートル程離れた位置で立ち止まり、その背中で俺達にも立ち止まるように促してくる

わざわざ逆らう理由も、今のところは、無いのでその暗示に従って歩みを止める


 ここまで近寄れば、壇上の玉座に座す男の様相も判別できる様になる

やはりと言うか、異世界でも同じなのかと思い、人の発想とは案外貧困なのだなと内心で呆れながら、その頭頂に輝く宝冠がまず目に留まる

その次は男の纏う白い外套だ

外套と言っても装飾が主目的で旅装としては不向きだろうと思う、明らかに目立つからだ

しかし、ホントに真っ白だ、漂白剤とかあるのかな

と、それはどうでもいいとして、そして最後はやはり身に纏う衣服だ

どれを取っても高級さが滲み出ている

上品さを欠くことなく、その品質も最上級である事が、素人目でも判るくらいだ


 ここまで装束の話しかしていないが、当然その容貌も視認できる

端正な顔だち、と言えばいいのだろうか

目は優しさを滲ませながらも強い意志を感じさせる大きく開いた吊り目をしている

その上に乗っかる眉も、キリリと整った弧を描いている

あれって抜いて整えているのだろうか、どうでもいいな

鼻もスッと顔面中央部を昇り眉間に消えている、小鼻も存在を主張しすぎていない

あれだ、漫画でよくある"く"の字の鼻だ、正面から見ているから鼻の高さは判らないが、きっと高々なのだろう

口は、口ひげが目立ちよく分からないが、ここまで来て不細工ということはなかろう、美しい口をしているに違いない、どうでもいいが

その口ひげは、王女様の髪色と同じ青紫色をしていた、親子だから別に不思議はない

当然のことだが、ひげの色と王様の髪色は同じ青紫だ、きっと腋毛とかすね毛も青紫色なのだろう、眉毛も青紫だしな


 と、野郎の容姿なんかどうでもいい、って声が聞こえてくるので解説はこの辺にしておく、言うまでもないことだが、その声は俺の心の声だ


 そんな美丈夫と言っても差し支えない国王様だが、一つ物足りない点がある

いや、国王だけでなく、この広間に居る男連中全員に言えることだが、いかんせん筋肉が足りない

全員見事にやせ形なのだ、兵士と思しき者までそうなのだから、違和感しか感じない

そんな体で勤めが果たせるのだろうか?筋違いだが、心配になってしまう

あ、例外が居たわ、何人かデブってる奴が居る

おそらく文官か何かなのだろう、流石にあれが武官という事は無いだろう、無い筈だ、無いと願いたい


 さて、品評はここまで

王様が何かを言う様だ、静聴しよう


「そなた達が天啓が示した異世界人か」


面を上げよ、とは続かない

何故なら、俺達は誰一人として頭を垂れていないから、更には膝を付いてもいない、棒立ちだ

気をつけすらしていないのだから、呆れてしまうというものだ

当然の帰結として、周囲に居並ぶ者達の一人から非難の声が上がる


「無礼者が!」


そう言ったのは、何やら豪華な甲冑を着込んだ長身の中年男だった

短く刈り込まれた白髪混じりの髪、ひげの一本も残らず剃り上げた厳つい顔

その顔面には右の蟀谷から右頬を経由し顎まで大きな傷跡が走っている

おそらくは歴戦の武人なのだろう、風貌がそう物語っている

が、やはりこの人も筋肉が付いていない

甲冑で判りにくいが、肉が足りていないし、肩幅も狭い

あの調子では腕や足も細そうだ、シックスパックも無いのではなかろうか

俺の常識に照らして、明らかに異常だ、違和感が凄い


その人はどうやら俺達の態度を責め立てている様だ

当たり前だと思う

一国の王の前で取る態度ではない

一応他の連中は緊張して、少し固くなっている様だが、さっき言った三人は完全にリラックスしている

それこそ、職員室に呼び出された方がまだ緊張するだろう


「頭を下げんか、頭を!」


……なんか、責められているというより叱られている感じになっている

面倒見の良い人なのだろうか

上下関係に厳しいらしく、不遜な俺達を叱りつけていると

なんかこの人とは仲良くなれそう

そんな事を考えていると、王様が


「元帥、良いのだ。寧ろこちらが頭を下げねばならぬ立場」


そう言って、こちらに視線を向ける

その目は、何か悲壮感を漂わせ、その上に期待感を感じさせるものだった


「異世界人の方々。余はここ、カエシウス王国第153代目国王 ギュスターヴ・カエシウスと申す。この度は、我が王国へようこそ御出で下さった。歓迎しよう」


頭を下げる、とか言ってたのに結構偉そうな口調で話すなぁ

と、思ったが立場があるだろうから仕方ないのか、と思い直す


「さて、方々は、自分達は何故、遥々異世界まで招かれたのか、当然気になっておられることだろう」


王様の話は続く


「事態はまず、この世界、我々はオースベルと呼んでいるが、オースベルに危難が訪れた事に端を発する」


 王様の話を要約するとこうだ

この世界には三つの大陸が在り、それぞれ、今俺達が居るカエシウス王国が在る西大陸、そして海を挟んで東に在る東大陸、そしてその二つの大陸の間の海を真っ直ぐ北上した所に在る魔大陸と呼ばれている

その三大陸に囲まれる様に、小さな島が集まる群島地帯が存在している


 その三大陸の内、東大陸には一つの帝国が存在する

その名をラルオウム帝国と言う

その国力はカエシウス王国に次いで強大であり、その威光で東大陸を普く支配しているのだとか


 ところが、ある日その大帝国から一隻の船が西大陸に流れ着いた

その船が流れ着いたのは、カエシウス王国の領土内で、当然のことながら王国より調査の人員を送る事になった

そこで判明したのが、船に乗っていたのはラルオウムの皇女で、帝国から逃げてきたらしいという事

そして、ラルオウム帝国は皇都が陥落し、皇族を含め主だった重臣達は全て討ち取られ滅亡したという事が、生き残りの皇女の口から明かされた


 世界第二位の大帝国の、突然の凶報に王国上層部は驚愕と混乱の渦に叩き込まれたそうだ

当然だろう、俺達の世界で言えば、突然常任理事国でクーデターが発生し首脳部が処刑され、政権が奪取されたと聞かされた様なものだ、多分


 そして、皇女に最も重要な事を問い質した

一体何者が、帝国を滅亡させたのか

世界第二位の大帝国の名は伊達ではない

それを陥落させた者なら、王国とて他人事では済まされない

必ず聞き出して対策を講じなければならない


 その問いに皇女は答えられなかった

相手の正体が理解出来なかったらしい

山の様な巨体が地平線から現れたかと思ったら、次の瞬間には視界が光に包まれ皇都が半壊していたのだとか


 事態を重く見た王国上層部は、帝国皇都へと調査隊を派遣

その報告を受けた上で派兵するか防衛するかの判断を下そうとした

結果として、調査隊は事前に定めた期間の倍を過ぎても帰還せず、王国上層部は調査隊は全滅したと判断し、防衛に徹する事にして、王国西海岸に兵を置き未知の脅威に備えた


 ここまで聞いても、異世界から助っ人を呼ぼう、なんて荒唐無稽な話に繋がらないが、話にはまだ続きがあった

まず、防衛に徹するにせよ、情報は必要だから、何度か西大陸沿岸にまで船を進めたらしい

当たり前だ、情報は戦略の要、戦術の基礎、それを得んとするのは理解出来た

しかし、それらは全て失敗に終わった

生き残りの話では、大陸を視認し得る領域侵入すると、大陸から閃光が飛来し船を破壊されるそうだ


 事ここに至って、王国側も困窮してしまったそうだ

明らかな脅威に対し、何の情報も得られず有効な対応が一切取れないのだから、それも当然の事と言えるだろう

こんな時、人間はどうするか

俺はそこまで話を聞いた時、非常に嫌な予感がした


 彼らは最後の手段として、神頼みに走ったらしい

この世界では、神は実在するものとして信仰されており、困った時の神頼みも珍しくないのだとか

ただ、国家の大事に神頼みをする事は、少なくともここ何代かの国王はしてこなかったらしく、今回もかなり追い詰められての決断だったと言っていた


 その話を聞いた時の俺の心中たるや、誰も正確に理解出来はしないだろう

しかし、対する位置にいる国王は何かに気付いたらしく、表情を強張らせ


「そ、そなた…様子が妙だが、いかが致した?」


何か気に障る事を言っただろうか?

そんな風にも取れる様子で、恐る恐る尋ねてきた

俺は、自身の失敗に気付き


「いえ、申し訳ありません。国王陛下やこの場に居るお歴々に原因がある事ではございませんので、どうぞお気になさらず話を進めて下さい」


可能な限り表情を取り繕って、そう答えを返した

国王も、自身が失敗したわけではないと知り、安堵したのか


「そうであるか。気分が優れぬのであれば、遠慮なく申し出られるとよい」


そう気遣いの言葉を掛けてくれた

それに僅かな罪悪感を抱きながら、話の続きに耳を傾ける


 神頼みをしたところ、相手はなんと異世界からの侵略者で、その対策としてこちらも異世界から救援を呼ぶべし、と啓示を頂いたそうだ

そこまで聞いて、再び俺は怒りに我を忘れそうになった

だってそうだろう!?

つまりあのカス女神は、異世界からの侵略者に対抗する戦力として俺達をこの世界に呼びこんだ訳だ

なのに、この中で最大の戦力を持つ俺の能力を封じてどうすんだよ!!

他の連中がどれほど強化されたのかは知らない

が、今の俺達は全員が同等の身体能力を持っている筈だ、女神がそう言っていたからな

それで連中は結果として強化、俺は弱体化

どう考えても、今の強化された連中が、弱体化前の俺より個々の戦力で優れているとは言えないだろう、常識的に考えて

集団でなら分からんが、それだって俺の能力を下げる理由にはならない


 そこまで考えて、今憤ってもどうにもならない事だ、と思考を切り替える

つまり、彼らが俺達に頼みたい事というのは、その異世界からの侵略者との戦いに力を貸してほしい、寧ろ主戦力として戦ってほしい、って事だろう


普通なら、ふざけるな、と一蹴してやるのだが、ここは異世界で、俺達は寄る辺の無い身の上だ

少なくとも、俺一人の判断で決められる事では無かった


 取りあえず、訊かねばならない事を訊いておく


「もし、その要請を断った場合、俺達をどうなさるおつもりですか?」


これだけは確たる言葉を貰わねばならない

追放で済めば、寧ろ有り難いくらいだ


「勿論、どうもせぬ。城で世話をしよう。働かずともよい、とは流石に言えんがな」


当然そう言うだろう、俺達は女神の啓示で呼び出されたのだから、粗略には扱えない

だが、俺はその言葉に嘘偽りや場を取り繕う感情が無い事を確かめねばならない

それが確かに履行されるのか、確証は無理でも確信が欲しい

だから、俺は地雷原と思しき場所でも、踏み込む覚悟を決める、この先の安寧を得る為に


「そうでしょうか?私なら、何らかの方法を用いて、縛り付けてでも戦場に引き摺り出しますが」


自国の存亡が係っているかもしれないのだ、それを打破しうる可能性には縋るし、拒むなら首に縄括り付けてでも、と考えるのが正常な思考だ


「その様な事をして、何になろうか。そなた等は、言ってしまえば神の使徒。その使徒を乱雑には扱えんよ」


いい話題を振ってくれた

俺は、相手を怒らせる可能性のある話に、寧ろ喜々として飛びつく


「信仰故に、ですか?申し訳ありませんが、私達の国は無神論が一般的でして。ましてや、他力本願も甚だしい、そんな頼りない神様を引き合いに出されても、何一つとして安心は得られませんよ」


彼らの信仰を否定する俺の発言に、謁見の間に居並ぶお歴々が色めき立つ

狙い通りの展開に内心でほくそ笑む俺を、百合と木野は呆れ顔で、他のクラスメイト達は驚愕に歪んだ顔で見つめている、よせやい、照れるじゃないか


「痛い所を突いてくるな。そなたの名を尋ねても良いかな?」


王様は周囲のざわめきなど知らんといった風情で、感心そうな顔をして俺の名を問うてきた

この場合、安易に名乗らない方がいいのが定石だと思うが、俺は敢えて火中の栗を拾う、それは栗では無く璧だと信じて


「勿論構いませんよ。俺の名前は舞島 理。舞島が姓で理が名です。皆さんとは姓名の並びが逆なんですよ」


ニヤリと、王様が不敵に笑うのが見えた、あとさっきから脇に控えているアイギナ王女が驚いているのも見えた…なんでだ?

ともかく、やはり罠か!?と、そう警戒するも、王様はすぐに笑みを引っ込め、


「確かに、我らが他力、この場合はサトル殿達だな、それを当てにしているのは事実だ、我らが後手後手に回ってしまっているのもな。こうしている今も、正直どうしたら事態を打破出来るのか、まるで考え付かないのだから、実に情けない話よ」


そう言って自嘲する様からは、演じている様子は窺えない


「だから、本音を言えばサトル殿達の力に縋りつく事に罪悪感を覚えているのだよ。自らの無能のツケを払わせている様に思えてな。ましてや、皆、私の娘と同じくらいの年の頃ではないか」


これは情に訴えかけようとしているのか?いまいち判断しかねる


「なあ、サトル殿。もう止めにしないか?」


突然の話の転換に、周囲を置き去りにして俺達だけの対話は終盤を迎える


「余は、そなたが何を憂慮してその様に振る舞うのか、既に気付いてしまっておる。で、ある以上は、そなたの駆け引きは、既に通じぬ。まさか実力行使、などすまい?」


「……」


俺は沈黙で続きを促す

王様もそれを正確に受け取った様で、話を続ける


「恥ずかしい話だがな、この場合、余に出来る事はそれほど多くない」


どうやら少し迂回する様だ

出来れば直截に結論を言ってほしいものだが


「そなたは余に対する、ある種の信用が欲しい。それを以て、余が発する身命の保証を確信したい」


そう、だからこそ、わざわざ神経に爪を立てて逆さに引っ掻く様な真似をした、相手の人間性を測るには怒らせる様な事をするのが一番手っ取り早い

特に今回の様な、相手に切羽詰まった事情がある場合は


「故にそなたは、こちらがどれくらいで怒るのか、確かめつつ本音の引き出しを図った訳だ」


それ以上はもういい

知らずに居ればいい事が、この世には多くあるのだから


「仰る通りです。流石の御慧眼、恐れ入ります」


 話を切り、そこまで分かっているなら、俺が求めるものも解るだろう?と、態度で答えを催促する

まるで長年の親交がある様な阿吽の呼吸で、ツーと示した俺にカーと返してくれる王様は


「と、言われてもこうする事しか、余には出来ないのだよ」


そう苦笑に歪む口元から溢し、徐に玉座から立ち上がり壇上を一歩ずつ下っていく

そして、広間の中央を縦断する赤絨毯の脇に控える兵士、もしかしたら騎士なのか?その彼に近寄り、佩いた剣を抜き放つ

そして、片手に剣を携え、こちらに歩み寄ってくる

その動きはとても自然で、ちょっと飲み物取ってくるわ、とでも言いそうな所作である


 あまりに突然の事態の推移に、置いてけぼりになっていた周囲が、その国王の行動にやっと反応する

一番に反応したのは、俺達の前方より脇に移動し控えていたアイギナ王女だった


「陛下!?何を為さるのです?!彼らは天啓に示された者達!その様な無体はお止め下さい!!」


突然の父王の乱行を止めようと、俺と王様の間に立ちはだかる王女様


「退くのだ、アイギナ。余はその者に示さねばならぬ」


「何を示すと言うのですか!?彼らは異世界からの来訪者。その様な者達に、その様な尋常ならざる様子で何を示せると仰るのですか!!?」


アイギナ王女、かなり焦っている様だ

彼女には彼女なりの考えがあるのだろう

だが、今この時は邪魔にしかならない

幸いにも、王様がツーと言ってくれたので俺はカーと答えよう


「アイギナ王女、俺からもお願いします。そこを退いてください」


王女様に庇われる形になっているので、その長い青紫色の髪とすらりとした柳腰に向かって声を掛ける、それより下は見ない、見ないったら見ない


流石に庇っている者から、それは不要だ、と言われるとは思わなかったのだろう

王女様は驚きを隠せない様子で、こちらに振り向くと声を荒げて


「何を馬鹿な事を言っているのですか!!あの手に持った剣が見えないのですか!?大体貴方が突っかかっていくから、こんな事になってしまったのですよ!?」


言ってる事は全くもって正論だ、ぐうの音も出やしない

が、この状況は俺が意図して作り出したもの

それを妨害されては、やはり黙ってはいられない


「剣?ええ、見えますよ。国王様が逆手に持ったそれのことですよね?」


俺の言葉に王様がニヤリと反応した

この人、ちょっと表情に出過ぎじゃないですかね?大丈夫か?王様として

そんなどうでもいい心配をしながら、王女様に言い放つ


「まあ、別に庇ってもらう様な事ではないので。すみませんが退いてもらえますか?」


当然黙って退く訳がなく、王女様はしっかりと反駁する


「何ですか、その言い方は!?庇ってもらうことじゃないって、そういうことなんです!お父様は国でも最上級の剣士、このままだと確実に殺されますよ!!?」


やれやれ、ここまで言っても…いや別に大したこと言ってないわ

とにかく、いい加減互いの空気が白けてしまいそうなので、少しキツく言おう


「「退け、アイギナ」」


ん?なんか今被らなかった?というかハモったな

あ、王様がニヤニヤしてる、ホント表情隠せない人だな、ここまで来るとわざとかと邪推してしまう


俺はそれ以上出来る事は無かったが、王様は流石王様


「近衛、王女を退かしておけ」


やや苛ついた口調で、さっき剣を取られた騎士さん含む控えている騎士さんにに命令した

その命令に即応して、騎士さん達は王女様を脇に退かして周囲を固め動けない様にした

流石に腕を極めて拘束、とかはしないみたい、当然か


「邪魔者が居なくなったな」


 騎士達に囲まれ、動きが取れず何やら騒ぐ王女様を一瞥して、王様がこちらに向き直り歩み寄ってくる

相変わらず、その手には剣が逆手に携えられている


俺はそれを黙って見つめ、王様の行動をただ待つ

流石にこの後の王様の行動に確信は無いので、不安はあるのだが、どう転んでも俺にとっては都合がいい

そうなるように話の流れを持って行った、つもりだ


元々かなり近づいていた事もあり、王様が持つ剣の間合いに俺が収まるのはすぐだった

背後に居並ぶクラスメイト達から固唾を飲む音が聞こえた

王女様は…流石に五月蝿かったのか、口を塞がれ強制的に黙らされていた、代わりにかなり暴れている様だが


「「……」」


向き合い、見つめ合う俺達

腐った脳ミソの御婦人方が騒ぎ出しそうなんで、早くしてほしい

男と見つめ合う趣味は無いし

そんな思いも、阿形吽形な俺達にはしっかり通じた様で、王様が動きだした


王様は手に持った剣をこちらに突き出す

…但し、柄頭をこちらに向けて、だ

ついでに言うなら、手は逆手、更に柄の端を握りしめている

これでは満足に扱えないだろう、少なくとも、このまま俺を斬り殺す事は出来まい


その意図するところをちゃんと汲み取った俺は、空いている柄の根元をしっかりと握り剣を受け取る

それを確認した王様は、床に膝を付き、頭を下げてこう言った


「どうか、お願い申し上げます。そのお力を、この危難を乗り切る為に貸し与えては下さいませんか」


更に王様は続ける


「この願いが、例え聞き届けられなくとも、それを理由に我らが皆様に害を及ぼす事は決してしないとお約束いたします」


……十分だ

国王はその命を差し出して、約束の担保とした

正確には担保になっていないが、その覚悟を示した

こちらも命が懸かっている、これくらいはしてもらわないと、到底信じることなど出来はしない


 話し合いと仮称される化かし合いは、国王が折れる形で幕を閉じる

この場合は、俺が物理的に折らされるか、国王が譲る形で折れるしかなかったのだから、しょうがないだろう


 その後はスムーズに事が運んだ

まず、クラスメイト全員での話し合いの場と時間を設けてもらった

その上で、先程の願いに対する答えを、俺達の総意として出しておく事に決まった


次に、この世界についての説明をしてもらわないといけない

これは天啓で告げられた事らしいが、この世界と俺達の世界では、決定的に異なる点があり、更にその異なる点が今後重要になってくるらしい

なので、それについて重点的に説明しなければならないそうだ


 以上が今後の予定であり、まずは後者の説明を先に済ましてもらう事になっている

その為に、皆が腰を落ち着けて話が出来る場所に移動を開始した

後半の野郎二人の遣り取りは、然したる意味はないです

ただ、ちゃんとした対話も無いのに、信用するのはおかしいと常々感じていたことが発露しただけです

次回、途中で叱りつけたオジさんを講師に楽しい説明会の予定

今回は、少し投稿間隔が開く可能性大

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