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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第十四話

短めです

 扉を潜るとそこは石造りの大きな廊下だった

私みたいな頭空っぽな脳筋でも知ってる一節を捩ってしまうくらいには、その威容に驚いた


 突然だけど、私の家はお金持ちだ

理によく絡んでいる例のなんとか君、彼の実家も相当な資産家だと聞いているけど、私の実家 舞島家はそれに輪を掛けた資産家だそうだ、以前お父さんが言ってた


 何が言いたいのかというと、そんな私の家、正確には私のおじいちゃんの家は大豪邸な訳だが、そんな豪邸を知っている私から見てもこの城の廊下は驚いてしまうものだ、という事だ


 まず、天井の高さが違う、私五人分くらいの高さがありそうだ


「ねえ、美樹。スゴイね、この廊下。滅茶苦茶天井高いよ」


隣を歩く美樹に話し掛ける

すると美樹は、打てば響く様にすぐ答えを返してくれる


「そうね、アンタの身長五人分くらいありそう」


「私五人分…私の身長は160㎝だから、ええと……」


咄嗟に暗算出来ず、両手の指を使って計算しようとする私

そんな私に、呆れた様にため息をついた美樹は、すぐに計算して答えをくれた


「160×5は800でしょ?100×5は500、60×5は300。足して800、単純な計算でしょうが。それくらい出来るようになりなさい。将来家計を受け持つようになったら困るわよ。あと、アンタの身長は168cmでしょうが、8㎝もサバ読むな」


ついでにお小言と要らない暴露までセットで付いてきた、余計なセット売り反対!


「端数切り捨てたら160㎝だし、小さくて可愛らしい私だし」


「はいはい、可愛い可愛い」


こういうことには実に素っ気無いのが私の親友だ

まあ、そんな釣れないところも好きなんだけど


「私の嫁は、ホント釣れないよねー」


「ねえ、あのツボ、すごい良い物っぽくない?」


「スルー!?あぁー、ツボ?まあ、良い物なんじゃない?」


「拗ねないでよ。百合が変なこと言うからでしょ。何よ私の嫁って」


「さあ?何かお父さんが、好きな特撮のDVD観ながらそんな事言ってた」


その後お母さんに呆れ顔で頭を叩かれていたのは内緒だ


「そんなおかしなこと憶えちゃいけません!いい?」


美樹はこういうとこ細かいんだよね、小姑みたい


「……」


何か急に美樹がじとっとした目でこちらを軽く睨みつけている

な、何だろう


「アンタ…今失礼な事考えたでしょ」


「断言!?最後に疑問符付いてないよ!?」


な、何でバレたの!!?

美樹は時々いやに鋭いから、下手なこと考えられないんだよ


「そう思ってるんなら、少しは自重しなさい」


「ねえ?なんで分かるの?エスパー?超能力者なの?」


「ふぅ…」


「そんな呆れられても……」


何故か呆れた様子でため息を吐かれた、解せない


「まあ、異世界なんて来ちゃったし、ちょうどいいのかもね…」


何か呟いてる

どうしたのか、とても気になる


「百合、アンタさっきの、鋭いだの下手なこと考えられないだの、まるまる口に出してたわよ。後、その前の、表情で分かるのよ」


「え?私、口に出してた?表情?そんなので分かるの?」


「結構口に出してるわよ。心の中で考えているつもりだったんでしょうけど。あと、表情云々は舞島くんと百合のご家族が教えてくれたのよ」


お、お〜い!誰!?そんな事教えたのは誰!!?お母さん?牡丹?お、父さんは無いな、うん、お父さんだからね


「理が?私の表情の読み方を教えたって?」


「あと、百合のご家族ね。牡丹ちゃんが顔真似して、それをオバさんと舞島くんが解説してくれたわ、それはもう懇切丁寧に。とっても参考になったわね」


 わ、私のプライベートって一体……

と、その時私に電流走る!

つまり、理には私の考えてることが筒抜けってことよね!?

そう考えると、存外悪くないかも、と気分も良くなってくる


「……百合、顔がだらしない事になってるわよ」


おっと、いけないいけない

乙女として、外面はしっかりと取り繕わないとね


「大体、アンタは舞島くんの嫁でしょうが。なに人のことを配偶者にしてくれてるのよ」


「当然、私は理の嫁だけど。でも、だからって美樹を私の嫁に出来ないわけじゃないよね」


「こんなはた迷惑な旦那は要らないわよ」


そんな釣れない言葉と一緒に、私の額にデコピンをお見舞いしてくれる美樹

結構痛い


「ところで、アンタの旦那。今絶賛浮気中だけど。あれ、いいの?」


そう言って美樹が前方を指さす

その指し示す先には、青紫の髪の女性と話し込む理の姿が在った

だが、浮気と呼ぶには些か雰囲気が空々しい


「あれを浮気と言うのはちょっと……」


「そうね、何か質問しているみたいだし。探りを入れてるってところかしら」


「そうよ、理はいつだって矢面に立とうとするから」


「ホントにね。少し呆れちゃうわね」


そう言う美樹の顔はどう言い表せばいいのか分からない表情をしていた

その事を私は指摘しない


「あっちは彼に任せておけば問題ないわよ。伊達に天才君なんて呼んでないんだから」


何だかんだ言っても、美樹は理を信頼している

それだけの姿勢を理が示しているのだから、それも当然だと頷ける


「……何かして欲しいことがあれば、こっちに声が掛かるわよね」


私も、それは同じだ

そして、理が助けを求めるのなら、何を置いても必ず駆け付ける

そう決めている


「ほら、あそこが目的地じゃない?」


美樹が進行方向を指し示す

そこには、この巨大な廊下の終わりに相応しい、巨大な鋼鉄の扉が聳えていた


「こういうの、なんていうんだっけ?前に理が言ってたな……」


そう、何かの詩かなんかで大きな門がどうの


「汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ」


美樹が私の疑問に答えてくれる


「ダンテの叙事詩[神曲]地獄篇ね。アンタよくこんなの知ってたわね。まあ、うろ覚えで中身は出てこなかったみたいだけど」


「いや〜、理が教えてくれたのよ〜。有名どころは知っとけって言って。そういう美樹だって知ってたじゃない」


「舞島くんなら納得ね。彼、いっつもアンタのおつむの心配してたし。あと、アンタと一緒にするな」


「ひどっ!!私、物を知らないだけで、そんなに頭悪くないわよ!?」


「なお悪い」


私の言い訳を一刀両断にし、更に手刀まで頭に叩き込まれた

因みに、この手刀にも程度がある

私が馬鹿な事を言う度に(私にその自覚は無いのだけど)。その程度に合わせて威力を調節して放ってくるのだ

今のは中程度だった、つまりそれくらいの馬鹿を言った、と判断された訳だ

このツッコミ、以前は理が担当していた

私は理の愛を感じられて、寧ろ嬉しかったのだが、高校に上がって少ししたら美樹にバトンタッチされてしまったのだ、何でも外聞が悪い、とのことらしい、今までは悪くなかったのか?

美樹も愛の鞭とか言うけど、同じ愛なら理の愛が良かったと思うのは罰当たりですかね


 乙女の思考回路をクロックアップさせていると、急に前を行ってお姫様と話していた理が頭を下げた

何事!?と、私達だけでなく、後ろに続いてめいめいに雑談したり物珍しそうに周りを見ていたクラスメイト達も驚く


 その後の理の声は、驚いて言葉を発せなかった私達の耳によく響いた


「あまりに不躾な質問だった。どうしても気になってしまったのだが、気安く訊いていい話では無かったと思う。どうか許してほしい」


その言葉から、どんな会話をしていたかは察することが出来ない

でも、理が加減を忘れて、踏み込んだ質問をしてしまったのだろう、と私は直感した

理はとても冷静に物事を観察するが、いくつか、我を忘れて突き進んでしまうことがある


 ひとつは家族のこと

理は家族に関することには、どんな些細なことでも注視し傾聴する

もちろん、私達のプライベートを侵す様な真似はしないが、求めているものなどは必ずと言っていいほど熟知している


 もうひとつは、自身に共感できる存在だ、自身がと言い換えてもいい

以前、おじいちゃんが言っていた

理は生粋の守る側の人間だと

確かにそうだ、と思ったことを覚えている

理はいつも私達を守ってくれる、時には自分自身を全く顧みる事無く

そんな理を私達も守りたいと思う

けど、どうしたって私達は理の中では守る対象なのだ

だからなのか、理は自分と同じ存在を求めている様に感じる

自らの全てを懸けても守りたい物がある人間

私には出来ない事が出来る人間を、理は求めている


 あのお姫様が、理の家族を侮辱したのか

それはないだろう、それならば理はもっと怒りに燃えている筈だから


 では理の家族の事を尋ねた?それもない

そもそも、その程度で自制心を欠きはしないし、理が謝るのもおかしい


 なら、最後が当てはまるのだろう

理はあのお姫様に、共感できる何かを見出した、のかもしれない

その事は喜ばしいことだ、その筈なのだが…

素直に喜べない自分に、驚きが隠せなかった


「百合…」


美樹が心配そうに声を掛けてきた


「大丈夫……大丈夫だから………」


私はそれしか言えず、自身への不信感と目の前の出来事に対する焦燥感に思い煩う羽目になった



前話の補完がしたいと言いました、私は確かにそう言ったんです

しかし、特に補完すべき内容が無く、結局百合視点という名目のガールズトークになってしまいました

本当に申し訳ない

次回、謁見の間で国王様と対面の予定

一週間以内に上げたいです

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