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ゲーマーが往く、異世界チート発見!  作者: ヤタガミ
第二部 喪失と挫折
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第十一話

今回は中身がうっすいので、いつもより早く投稿します


「…おかしい」


真っ暗、と言うより真っ黒、と形容した方が適切だろう

凹凸が一切ない床面壁面に墨をぶちまけ、一切の明かりを断てばこんな空間に仕上がるのではないか

そんなどうでもいい事を考えながら、先ほどから感じる違和感について考えを巡らせていた


「なんだ…何にそんな違和感を感じるんだ」


絶賛落下中である筈の身で随分楽観的だが、正直現段階でできることは何もない


 何か掴まれそうな物があればそれに縋る事も出来た

或いは、迫る地面が見えればそれに恐怖する事もあっただろう

だが、文字通りに何も見えない、真っ黒一色の空間に居るのだ

仮にそんな物が在ったとしても、見えなければどうしようもない


 例外として、一緒に落ちているクラスメイト達が見えるが、見えるだけだ、その声は全く聞こえない

ただ、当然のことながら相当にパニック状態になっている様だ、手足をバタつかせている様が見て取れる

落下直前まですぐそばにいた百合と木野も、少し離れた場所を落下していた


 と、ここで違和感の正体に気付く


「そうか…落ちている筈なのに、風が轟く音が聞こえないんだ」


そう気付くと、色んな点がおかしい事にも目が向いた


 落下している筈なのに髪や服が靡いていない

実は落ちていません直立しています、と言われても素直に信じるくらいだ

その証拠に、目に映る範疇に居る女子勢の制服のスカートは、一切めくれていない

スカートを抑える仕草すら無いのだ、健全な男の子として実に物足りない


 そしてさっきも言ったが、風が轟く音が聞こえない

スカイダイビングの経験があるから分かるが、落ちている時は周囲の音が何も聞き取れない程の轟音が耳元で響いているものなのだ

なのに今はそれが全くない


 そこから連鎖的におかしい点が目についた

少し離れた場所に百合が、それとはまた別の場所に木野が、それぞれ落下していた、とは先程の俺の言だが、その二人はさっきから何かしら叫んでいる様なのだ

落下しているのだから、聞こえない事に疑問を感じなかったが、音の違和感に気付いた今となってはそれもおかしい事に気付く


初めこそ、何か身体に異常が、と心配した声を掛けていたのだが、今も見えるその姿は実に元気なもので、木野はこちらに声が届いていないと気付くや何事か考える様に黙り込んでしまったし、百合に至ってはこちらに声が届いていないにも関わらず、今も何かを叫び続けている

その様子から、どうもこちらを心配してくれている様だ、手で宙をかく様な仕草からこちらに来ようとしているのが解る


 取りあえず、問題ない、動くな、という意味のジェスチャーをしておく

これで止まってくれるかは別問題だが、しないよりはいいだろう


 そんな事を考えていたら、空間に変化があった

進行方向、というか落下方向から光が差してきたのだ


 それからすぐに空間は真っ白に変わり、落下速度が落ちているのか、不思議な浮遊感を感じた

周囲を見ると全員がそんな感じになっている様だ

どうやら着地は問題なさそうだな、と考えるのとそう間もなく地に足が着いた


 俺はすぐ百合の側に寄ろうとしたが、百合が俺の後ろを驚いた顔で見ていたので、そちらに顔を向けてみた

そこに在ったのは、というか居たのは、何やら巨大な人型の何かだった

おそらく生き物なのだろう、故に、居た、と表現したのだ


 身体の線から推測するに、おそらく女性だろう

身体は薄い布を巻き付けた様な、世界史か美術の教科書で見た様な服装をしていた

そして、顔にはベールと言えばいいのか、よく分からないがそんな薄布が顔を隠している


 しかし、それらよりも目に付くものがあった

浮いているのだ、この女性は

何か透明な物の上に立っているのでなければ、間違いなく浮いていた


 些細なことが気にかかる、俺の悪い癖が出て色々観察していたら、その女性が声を発した


「ここは何処なのか…自分たちはどうなったのか、これからどうなるのか…私は誰なのか…皆さんが気にしていらっしゃる事でしょう」


それはそうだ

図らずも、その瞬間だけは俺たち全員の思考は一致した


 女性はこう続ける


「まずは自己紹介から。私はオースベルと呼ばれる者。皆さんの住まう世界とは異なる世界を治める女神です」


はあ?と思ったが、この威容を見れば、神と言われても信じてしまいそうだ

実際に周囲にいるクラスメイト達からは、反駁の声は上がらなかった


 オースベルと名乗る女神は更に続ける


「ここは皆さんに分かるように言えば、玄関です。私の治める世界、オースベルに入る入り口」


どうやら、ここは玄関らしい

実に殺風景な玄関だ、小物の一つでも置いとけ

そんなどうでもいい事を思っている間に、女神は説明を続ける


「皆さんは私の世界に住まう者達に呼び出され、そこに向かう途中なのです。当然このまま呼び出された場所に出現します」


そんな事を一方的に言われても、どう反応したらいいか分からない

皆もそうらしく、唖然としながら言葉を発することが出来ない様だ


「皆さんには突然の事で、私も恐縮しております。そこでお詫びの印に、皆さんの身体能力値を全員同じ値に変更いたしました。これにより、相当の強化が施されることになります」


「では皆さん、私の世界へようこそ」


会話する気などないのだろう

早々に話、というか宣告を終わらせ、知らぬ間にその手元に浮かんでいた杖で地面を一叩きすると、遠くで光の柱が現れた


「な、何だ!?これぇ!!?」


誰かの驚愕に満ちた声が聞こえてくる

その声に恐怖が混じっていないのは、今の話を聞いたからだろうか

ここに居るよりはマシだと考えたからかもしれないし、新天地に期待を抱いているからかもしれない


 遠くで立った光の柱の中を男子生徒が浮かび上がっていく

光は高く、遥か遠くまで伸びている

おそらくは女神の世界、オースベルとやらに続いているのだろう


「あの光の柱は、俺たちを攫っていくトラクタービームって訳か…UFOかっての……」


あれはどうやら一人用らしいので、飛ばされる順番を待つことにする

このままここに居ても仕方ないし、女神に抗う手段も無いのだ、ここは大人しく従うのが吉だろう


「百合、ここは大人しく従うしかないと思う。木野もそれでいいか?」


「しょうがないでしょうね。ここに放置、なんて事になっても嫌だし」


「私もそれでいいわ。理と一緒なら怖いものなんか無いわよ!」


木野は冷静に、百合は鼻息荒く、それぞれ特徴的な返事が返ってくる

その変わらぬ様に、不謹慎ながらも笑みがこぼれてしまう


「お、次は木野の番か」


木野の足元から光の柱が立ち昇った

光の中から木野が話し掛けてくる


「先に行ってるわ。腹痛で遅れました、なんて言い訳は聞かないわよ」


「うるせー。黙って行け!」


「ふふ…百合、お先に」


「私もすぐに後を追うわ。あなた一人を死なせやしない」


「あら、私の覚悟を無にする気?甲斐のないことねぇ」


「さっさと行け!何だよ、その小芝居は…」


「ハイハイ。百合、あんたのダンナがうるさいかもう行くわ」


「いってらっしゃ〜い」


のん気なやり取りをしながら、浮かび上がる木野を見送った

始めはゆっくりと、次第に速度を上げていく様だ

すぐに天頂の彼方にその姿が消えた


「次は百合か…俺が最後みたいだな」


「理、待ってるからね。すぐ来てよ?知らないうちに先に行っちゃダメだからね」


「お前、まだそれ根に持ってるのかよ。はいよー、了〜解。お前こそ知らない人に付いて行って迷子になるなよ」


「い、いつの話してるのよ!?理と逢ったばかりの頃の話でしょ!もうそんな子供じゃありません!!」


「ははは…まあ、まだ何があるか解らん。気を付けて行け」


「…うん、理もね」


軽口を交わして、百合を見送る

どうせすぐに俺も飛ばされるんだから、と天外へ消え去った百合から視線を切る

これからどんな苦境が待つか分からない

せめてその元凶、と思しき眼前の女神の憎たらしい姿を眼に焼き付けようと視線を向ける


 光の柱が出現するのを待つが、一向に現れない

その事に焦っていると、唐突に女神が口を開いた


「先ほど、皆さんに強化を施した、と言いましたが、ただ一人の例外が居ます」


例外?それが何だと言うのか

そんな疑問に答える様に、女神は言葉を続ける


「貴方の能力は素晴らしく高いのですが、不公平で他のみなさんが可哀想なので、弱体化させますが我慢してくださいね?」


は?俺?弱体化?可哀想?何を言っているんだ?

女神は、混乱する俺に杖を向けて、何か黒い球体を撃ち出した

それは俺の腹にめり込み、グググッと中に入ってしまった

すると、すぐに全身が黒いモヤに包まれ、急激な脱力感に見舞われた


 俺はすぐにさっきの言葉の意味を理解した

この女神は、不公平だ皆が可哀想だ、とかいう訳の解らない理由で俺から身体能力を剥奪したのだ

或いは単純に細かい性格をしているだけかもしれない

全員の身体能力を同じにしたのに、なんで一人だけ飛び抜けてるの?気になるからそういうの訂正するね?とかそういうの

 

 いずれにしても、ふざけるな!

そう叫びたかったが、弱体化の影響なのか、疲労感が凄まじく、声を上げることが出来なかった


 すぐに俺の足下から光の柱が伸び上がり、弱り頽れそうな俺を浮かび上がらせ、虚空の彼方へ連れ去る

落ちていた時とは真逆のきらめく景色を視界に収めながら、あのクソ女神絶対にしばき倒す!と心に固く誓った



「……行きましたか…」


最後の少年が彼方へ消えた事を確認した女神は、そう呟いた


「あんな規格外が混じっているとは…早目に対処出来て幸いでした」


ホッと安堵のため息を漏らす


「あなたには申し訳ないですが、これも身の不幸と諦めて下さいね。あちらには保護する様に言っておきますから」


そう言って、少年の消えた方向から視線を切った



「…結構時間掛かるな……」


弱体化によるものと思われる疲労感も抜け、何だか重く感じられる身体に戸惑いながらも、頭は冷静に状況を観察していた


 光の柱は本当にどこまで続いているのか判らないくらい長く、かなりの高速で飛び上がっている筈なのに、一向に終点に辿り着かない

視界には無数の、恐らくクラスメイトの数−自分、の29本の光の柱が見える

当然ながら、その中には誰もいない

相当出遅れた自覚があるから、皆遥か上空だろう

もしかしたら、既に何人かは異世界に到着しているかもしれない


 それ以外には、この光の柱のせいか、真っ白な空間だった筈が、気付いたら世界が虹色のシマシマ模様に染まっていた

あれだ、典型的な太陽光スペクトルの画像そっくりだ、違いは縦縞じゃなくて横縞な点だろう


 しかしあれだな、俺のこのどうでもいい事をついつい考えてしまう癖、どうにかならないかね?

若干現実逃避気味なのが、また不安を煽るな、ホントに


 と、どうやら終点に辿り着いた様だ、クラスメイト全員揃っていた

俺は光の柱の先に目を向ける

そこには光の壁が在り、その壁面に大きな亀裂が走っている

どう見てもまっとうな入り口には見えない


(あのクソ女神…玄関だ入り口だの言ってたけど、全然体裁が整ってないじゃねぇか!)


仮にも神に対する言葉遣いではないが、俺の中では父親と並んでブラックリスト入りしているので、面従腹背すら御免被ると考えていた


(まあ、実際には誰かを外界から迎え入れる、なんて想定していないんだろうな…で、急遽それらしき物を用意したと)


全然それらしき物になっていない、とは思っても口にはしない


グチグチ考えていたのは、実際にはごく短時間の事だ

その時間、外側では百合が俺に話し掛けてきていた


「理?顔色が良くないけど、何かあった?随分と遅かったけど…」


流石に長い時間を共有している従姉妹殿

もう完全に疲労感は抜けきったが、それでも鈍い身体に対する戸惑いや不安はある

それが顔に出てしまったのだろうな


取りあえず言い訳をしておこう

如何に大事な家族である百合でも、こんな体たらくは知らせる事は出来ない


「ああ、落ちてる時は感じなかったけど、昇ってる時は高さを意識しちゃってな」


「なぁに?高いとこが怖かったの?」


百合がニヤニヤしながら茶化してくる

その様子に、上手く誤魔化せた、と俺もニヤニヤしてしまった、内心でだが


「うるせー。お前も下を見てみれば解るよ、あの空間もとっくに見えやしないから」


「……いや、ホントにもうなんも見えなくて、何の感想も湧いてこないんだけど…」


「…あー、そうですか…」


なんか気まずくなっちゃったよ、微妙に恥ずかしい

上手いこと疑惑、というか心配を逸らして、更に小粋に決めたと思ったら、見事に外してしまった

……小粋ってなんだよ

と、自分にツッコミを入れていると、全員が一斉に亀裂に向かって浮かび上がっていく


「とうとうか…さて、どうなることやら……」


明らかに幸先の悪い俺は、この先に待つ異世界に不安しか感じることが出来なかった

謎の空間を落っこちてました

変な女神が居て、何か言われました

皆飛ばされました

俺だけ逆特別扱いされました

なんか妙な亀裂に辿り着きました

亀裂に放り込まれました


6行で済む話を長々と…

構成力に難がある筆者ですが、お付き合い頂けると嬉しいです

次回は少し遅れるかもしれません

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